5.葬られた「T」 −その2−




 佐波川の河川敷に放置されていたこのT1500、その荷台には同じマツダのファミリアプレストが小亀のように乗っかっています。
 一般に、クルマが廃車の道を歩む理由のひとつとして事故が挙げられますが、この「T」も粉々になったフロントウィンドウ、そして大きく凹んだボディに、壮絶なクラッシュの跡が見てとれます。おそらく運転席側を下にして激しく転倒したのでしょう。痛々しく変形した「T」のフェイスも悲しみを誘いますが、私はついつい運転していた人の安否まで気遣ってしまうのでした。

(1981.4 山口県佐波郡徳地町)

 本来なら愛嬌のある「T」のフクロウ顔も、その骨格を大きく歪ませ、両眼まで失ってしまうと、まさしく骸骨のような不気味な面持ちに一変してしまいます。
 この車両はT2000の10尺高床車で、ボディをよく観察すると助手席側から転倒したような形跡があります。ただし、おそらく廃車を決定付けたであろうルーフ部の大きな凹みとは、直接の因果関係はないかもしれません。最大積載量2tプラスアルファの積荷を満載した状態での事故・・・、ちょっと想像しただけでも思わずゾッとしてしまいます。

(1981.3 山口県熊毛郡熊毛町)

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