<旧車シリーズ 826>


MAZDA TCS型


 
東洋工業がオート3輪のマツダ号の販売を開始したのは1931年のこと。空冷サイドバルブ単気筒の482ccエンジンを搭載した最初のモデルはDA型と命名された。最大積載量は200kgで、翌1932年には二重フレームを採用したDB型となり、1934年には排気量を485ccとし400kg積みとなったDC型へ発展する。その一方で、強化された単一フレーム構造を復活採用し、654ccの新エンジンを搭載したニューモデル・KA型も同年に登場している。このKA型からエンジンとトランスミッションを結合した単体鋳造方式が採用された。
 こうした中で1935年に登場したTCS型は、DB型以来の二重フレーム構造と、KA型に搭載された新型エンジンを組み合わせた派生的存在のモデルである。後車軸は半浮動式で、ブレーキは足動および手動の二系統式となっている。TCS型は1935年に424台が生産された。
 当時オート3輪の製造に進出したばかりの東洋工業には独自の販売網がなく、マツダ号の販売を三菱商事に委託していた。この販売契約は1937年まで継続され、国内の主要都市に設けた特約店を通じた販売のほか、中国や満州、ブラジルなどにも輸出された。


 
マツダ本社に展示されているこのTCS型は、現存するマツダ号としては最古の部類に属すると思われます。換言すれば、今や累計生産台数3,500万台を超えるマツダの自動車製造の歴史の中で、推定年齢約70歳のこの個体はその祖先といえる存在です。
 進出当時から本格的な生産設備を導入して高性能なオート3輪を送り出し、業界に大きな衝撃を与えた東洋工業の志の高さと勢いが、この凛々しいスタイルからも十分に感じ取れますね。


推定年式:1935
撮影時期:2003年8月
撮影場所:広島県広島市南区 マツダミュージアムにて