<旧車シリーズ 825>


HOPESTAR SY型


 
1952年に東京で創業したホープ商会は、ホープスターという名の軽三輪トラックをリリースする。処女作・ON型の構成部品はくろがねやダットサン、ダイハツ、マツダの市販部品を巧みに流用していた。1954年にはホープ自動車工業に社名変更、1956年には東京発動機のロータリーバルブエンジンを搭載したSU型で人気を博し、軽三輪界のパイオニア的存在となった。この2ストロークエンジンは、燃焼室は単室ながら気筒内部を逆U字型としたダブルピストン構造となっており、前側ピストンが吸気、後側ピストンが排気を受け持つユニークな単気筒エンジンである。15psの最高出力は当時の国産エンジンで最強だった。翌1957年には、2灯式ヘッドランプや曲面フロントガラスの採用でキャビンスタイルを一新した。
 1958年に登場したSY型は、このSU型後期の新キャビンを踏襲しつつ、丸ハンドルやセルモーターの導入、エンジンのラバーマウント化や引床式ラダーフレームの採用など、オート3輪にも通じる本格的なメカニズムを投入した発展型モデルである。サイドドアが装着されたのもこのSY型からである。翌年には改良型のSY2型となり、タイヤ径が16インチから14インチへ小型化された。


 
ホープスターは軽三輪史を語る上で欠かせない存在ですが、私はなかなか実車を見る機会に恵まれませんでした。最近になって広島県内のとある観光施設に展示してあることを偶然知り、念願の初対面となったわけですが、後発組のミゼットやK360が爆発的にヒットして販売を伸ばしていた頃、ひっそりと姿を消していった軽三輪のパイオニアの末裔の姿には、どこか物悲しさを感じずにはいられませんでした。・・・それにしても、施設の片隅で不特定多数の人々の手垢に塗れるにはあまりに勿体ない、大変貴重な個体だと思います。

推定年式:1958
撮影時期:2003年4月
撮影場所:広島県福山市藤江町 みろくの里にて