<旧車シリーズ 813>


TOKUSAN TF型


 
終戦後、四国・高知にオート3輪を製造する自動車メーカーが存在した。1948年に「土佐号」というの名の木炭自動車の製造を開始した高知県自動車工業鰍ナある。ただし、全てを自社開発する手法ではなく、既存の4輪トラック用のシャシーを流用して、フロント部にオート3輪のキャビンを載せた改造車としたことが特徴である。当初は四国地方に限定した使用許可しか与えられなかったが、地元産業の振興を図る高松陸運局の働きかけが実り、1955年頃には他県での販売も可能となった。
 シャシーは主にトヨタの中型トラックの部品が流用されたが、エンジンに至ってはトヨタをはじめ、フォード、シボレー、ニッサン、三菱、いすゞなど様々なパワーユニットが選ばれた。1954年に登場した最終モデルのTシリーズでは、トヨタの5トン積みボンネットトラックのシャシーに、同じくトヨタの直列6気筒・3398ccガソリンエンジンか、いすゞ製の4気筒・4084ccディーゼルエンジンが搭載された。
 年々大型化・高級化が進んだ国産オート3輪だが、トレーラーなどの特殊車両を除けば2トン積みが上限であった。これに対しトクサン号は最大で4トン積みという圧倒的な積載量を誇り、材木商を中心として遠くは中国地方や九州地方からも引き合いがあった。


 
このトクサン号は中型車サイズの大柄なオート3輪ですが、その最もユニークなところは、過酷な積載条件にも耐え得るよう後輪がダブルタイヤになっていることです。つまり、正確には3輪トラックではなく5論トラックなのです。トクサン号は地域性が非常に強いため、一般的には全くといっていいほど馴染みがありません。1975年まで細々と生産が続けられたようですが、わずか数台が四国近辺で現存しているのみのようです。

推定年式:1965
撮影時期:2000年9月
撮影場所:広島県福山市北吉津町 福山時計自動車博物館にて