<旧車シリーズ 812>


Kurogane KGL2型


 
戦前からくろがね号のオート3輪製造を行なっていた日本内燃機鰍ヘ、戦時体制下でも製造が許可されていた数少ないメーカーだが、1949年に企業再建整備法に基いて解散し、新会社・日本内燃機製造鰍ニして再スタートを切った。当初は戦前からのオートバイスタイルを継承したオート3輪を製造していたが、1951年に発売したKD2型から、平板鋼板を接合したフロントキャビンを採用してスタイルを一新した。V型2気筒エンジンの挟み角も従来の45度から90度に変更されている。
 1952年からはウィンドウスクリーンと幌屋根が装備されるようになり、1954年には鋼板プレス製の曲面キャビンを持つKGL型が発売された。ヘッドランプはまだ単灯式であるが、これは頑丈さが売り物だったくろがね特有のスタイルをより一層際立たせた。KGL型のエンジンは875ccのVXA型で、22psの最高出力を発生した。最高速度は65km/h、補助席付きの2人乗りで、最大積載量は750kgというスペックである。
 この年、くろがねは1万台を超える過去最高の生産台数を記録した。


 
三輪車メーカーとしてもっとも古い歴史を持ち、一時は3大メーカーのひとつに数えられたくろがねですが、現存するクルマは驚くほど少ないことに気付かされます。これは1955年以降の経済不況下で著しく経営を悪化させ、衰退の一途を辿ってしまったためですが、これはライバルメーカーとは違い、大規模な設備投資による量産体制の確立に大きく立ち遅れて競争力を失ったことと、販売網が脆弱だったことが原因と言われています。技術力の高さだけでは企業は存続できないという典型例かもしれません。

推定年式:1955
撮影時期:1989年3月
撮影場所:大分県湯布院町 九州自動車歴史館にて