<旧車シリーズ 718>


ISUZU WASP (KR10)


 
いすゞ自動車は1963年に小型乗用車べレットを登場させるが、このベレットをベースにした商用モデルも用意していた。貨客兼用とした小型ライトバンのべレットエキスプレス、そして小型トラックのワスプがそれである。
 ワスプのデザインはベレットエキスプレスと同様、べレットセダンのデザインを踏襲しており、ヘッドライトは当初から4灯式を採用していた。最大積載量は1トン積み、乗車定員は2名であり、いすゞのボンネットトラックとしては、2トン積みで3人乗りのエルフィンの1クラス下に位置するものである。
 パワーユニットは、べレットセダンに先駆けて搭載したG130型ガソリンエンジンと、ベレットと共通のC180型ディーゼルエンジンの2種類が用意された。G130型は水冷直列4気筒1325ccOHVで、最高出力58ps/最大トルク9.8kgm、前進4段のトランスミッションにより最高速度は116km/hに達した。一方でC180型は1764ccOHVディーゼルで、最高出力は50psとなる。いずれもスペックはベレットセダンと同じである。
 1966年にはマイナーチェンジを受け、ベレット・Bタイプと同じ異形2灯ヘッドランプとなる。


 
ワスプは思わず「べレットトラック」と呼んでしまいそうなフロントマスクをしていますが、この当時の商用モデルの例に洩れず、乗用モデルとは別の名称が与えられています。
 私はワスプの実車と出会ったのは写真の個体の1回きりですが、このように珍しい商用車を見るにつけ、一度でいいから'60年代の日本の街角にひょっこり出没して、地味ながらもせっせと働いている商用車をじっくり眺めてみたいという強い衝動に駆られます。

推定年式:1966
撮影時期:1989年1月
撮影場所:東京都新宿区神宮外苑 '89ニューイヤーミーティング会場にて