<旧車シリーズ 712>


GIANT CONY 360 (AF7)


 
終戦直後からオート3輪のヂャイアント号で名を馳せた愛知機械工業は、1960年にコニー360トラックで軽四輪車への進出を果たした。一見普通の軽トラックだが、この当時4サイクルエンジンを採用していたのは、くろがねベビーとこのコニーのみであった。床下に搭載された空冷水平対向2気筒359ccOHVエンジンは、最高出力16psを発生した。
 1962年には初のモデルチェンジを受け、AF7型となった。フロントサスペンションが独立懸架式へ進化し、最高出力も19psに向上した。さらに1965年のマイナーチェンジでは、直線基調だったボディを丸みを帯びたデザインへ一新し、一層人気を博すことになった。その後も、1967年には最高出力を21psとし、1968年の最後のマイナーチェンジでは軽商用車初の4速フルシンクロミッションを皮切りに、ダイヤフラム式のクラッチ、2フロート式のキャブやドライサンプ式のオイル潤滑方式、装備ではシールドビームヘッドランプを次々に採用してみせた。
 しかしこの間、愛知機械工業には大きな環境変化が訪れていた。1962年の日産との技術提携から、1964年には資本を受け入れ、翌年に業務提携を結ぶなど、次第に系列企業としての色合いを強めていき、1970年11月のコニー360生産中止をもって、ついに完成車製造から撤退した。


 
一時は軽商用車で10%近いシェアを誇ったとされるコニーですが、やはり中部・近畿地方が販売の中心だったのか、中国地方在住の私の身の周りでは実動車に遭遇することがありませんでした。唯一記憶にあるのは、小学生時代に秋吉台近くの民家の軒先に朽ち果てた見知らぬ軽四輪を発見してカメラに収めたところ、かなり後になってそのクルマがコニー360と判明した事例くらいです。
 この頃の軽商用車にはこうしたミステリアスな存在のブランドが幾つもあります。できることなら当時にタイムスリップして、じっくりと探索してみたいものです。


推定年式:1968
撮影時期:1989年1月
撮影場所:東京都新宿区神宮外苑 ニューイヤーミーティング会場にて