<旧車シリーズ 606>


MAZDA KRAFT (DUC9)


 
1959年、東洋工業は水冷式エンジンを搭載する新しい小型トラック・D1100/D1500を発売、4輪トラック市場への本格進出を果たした。'60年代に入ると、2トン積みクラスのD1500は途中D2000を経て、1964年にはタイタンの前身となるE2000へと発展する。一方の1トン〜1.5トン積みのD1100は同じようにD1500を経て、1965年にブランニューモデルのクラフトへ生まれ変わった。クラフトとは技巧を意味する英語(Craft)ではなく、力強さを意味するドイツ語(Kraft)である。
 クラフトのキャビンスタイルは、ロンパーからDシリーズに至るセミボンネットスタイルを踏襲しているが、開閉式のボンネットフードや後方開きのフロントドアを採用して利便性を向上、クラス初の4灯式ヘッドライトで目新しさを演出した。パワーユニットは、前身となるD1500やB1500/T1500で実績を積んだUA型・水冷直列4気筒1484ccOHVエンジンで、60psの最高出力と10.4kgmの最大トルクを発生、4速のコラムシフトを介して最高速度は100km/hに達した。前後サスペンションに筒型ショックアブソーバーを採用し、フロントにはスタビライザーを装着した。


 
クラフトは中国地方ではファイアチーフカーとして数多く導入されていたようで、私が旧車撮影を始めた'80年頃でも、近所の消防署裏に行けば、必ずといっていいほど写真のように状態の良い朱色のクラフトを見かけることができました。エンジン等のメカニズムだけでなく、サイドミラーやテールランプなどに、当時のT1500/T2000との共通部品を見つけることができたので、オート三輪好きの私がとても親近感を覚えたのがこのクラフトでした。

推定年式:1965
撮影時期:1982年7月
撮影場所:山口県徳山市孝田町にて