<旧車シリーズ 310>


SUZULIGHT SS


 戦前から自動車業界への進出を目指していた鈴木自動車工業は1955年10月、ついにスズライトSFシリーズという軽自動車を発売する。2ストロークの空冷2気筒359ccエンジン(最高出力15ps)を搭載するFF駆動車で、セダンSS、ライトバンSL、ピックアップSP、デリバリーバンSDという多彩なボディバリエーションが存在した。
 サスペンションはウィッシュボーンによる4輪独立懸架で、当初Frは前側と後側に2本ずつ、Rrには2本のコイルスプリングが配され、油圧式のショックアブソーバーと組み合わされる頑丈な構造だったが、1957年には一般的な横置きリーフによる独立懸架に変更された。
 スズライトは全車16インチという大径タイヤを採用したが、これは当時入手できた最小サイズであり、優れた乗り心地の実現に貢献した。
 しかし、販売の主力はあくまで客貨兼用のライトバンであり、セダンやピックアップは1957年途中で一旦生産が打ち切られた。その後、セダンモデルの復活は1962年のフロンテまで待たなければならなかった。


 小さいボディサイズにスペース効率の良いFF方式を導入したスズライトは、当時の西ドイツのロイト300というクルマを参考にしたと言われています。今や日本の軽自動車もFF方式が主流を占めるようになって久しいですが、あの偉大なミニの登場よりも先に、超コンパクトなFF車がこの日本に登場していたとは驚きです。
 写真のSSは後期型の14インチ仕様と思われますが、大径タイヤがやけに目立つ黎明期の軽自動車のスタイル、なかなか味わいがありますね。 

推定年式:1957
撮影時期:1989年5月
撮影場所:愛知県愛知郡長久手町 トヨタ博物館にて