<旧車シリーズ 308>


FLYING FEATHER


 日産系のボディ架装メーカーだった住江製作所は、1950年に専用設計のリアエンジンオープンカーの開発に着手する。その後何年もの試行錯誤の期間を経て1954年に発表されたのが、鴎の飛翔を意味する「フライングフェザー」である。
 軽量&省資源を目指したフライングフェザーでは、フレームはコ型断面の部材を効率的に配置、ボディは可能な限り薄く作られた。特徴的な細い大径タイヤは転がり抵抗低減を目的としたもので、2輪車用の19インチワイヤータイプを使用した。サスペンションは横置きリーフとウィッシュボーンの組み合わせの4輪独立懸架で、ブレーキはリアのみに装着された。駆動はRR方式で、リアに搭載された自社製の空冷V型2気筒OHVエンジンは、350ccの排気量から12.5psの最大出力を発生した。価格は38.0万円だった。
 フライングフェザーは小規模メーカー製の軽自動車としてはかなりの意欲作だったが、経営環境の悪化などにより早くも1956年には生産が中止され、合計で48台が販売されるに留まった。

 
国産初の本格乗用車クラウンが登場した1955年に、僅か50台足らずがこの世に送り出されたに過ぎないクルマが、およそ半世紀が経過した今、なおも複数台残存しているという事実には、正直驚きを隠せません。
 こうして、当時でもおそらく目にする機会がなかったであろう珍車に出くわす一方で、どこの街角でも見かけたはずの生活感あふれるクルマにはもう出会えない・・・旧車好きにとってはフラストレーションの溜まる悲しい現実がそこにはあります。


推定年式:1955
撮影時期:2002年5月
撮影場所:石川県小松市二ツ梨町 日本自動車博物館にて