<旧車シリーズ 307>


MAZDA CAROL 360 (KPDA) 


 R360クーペで念願の乗用車市場への進出を果たした東洋工業は、1962年に本格4人乗りセダンのキャロルを登場させた。「2+2」的なR360クーペに対し、キャロルはルーフ後端を垂直に切り落としたクリフカットと呼ばれるデザインを採用、ファミリ−カーとして重要な後席空間を確保することに成功した。リアに搭載された新開発のアルミ合金製エンジンは、クラス初となる4ストローク・水冷4気筒エンジンで、軽自動車としては抜群の静粛性を誇った。翌1963年には最高出力を18psから20psへ向上させたほか、軽乗用車初の4ドアモデルも追加した。
 キャロルは瞬く間に東洋工業の主力車種となり、1962年から1964年まで軽乗用車シェアの過半数を確保する原動力となった。1964年にメッキタイプのフロントグリルを採用、1965年にはエンジンの低回転域の性能を向上させ、バンパー形状やボディカラーを変更、再度フロントグリル形状が変更されている。翌1966
年のマイナーチェンジで前後デザインをリファイン、トランスミッションもフルシンクロ化された。この後期型はその後1970年まで生産が続けられた。

 私が旧車撮影を始めた'80年代の前半は、まだこの初代キャロルの後期型を街でよく見かけたものです。スバル360なども同様ですが、このキャロルが比較的多く残存していた理由は、累計販売台数の多さや実用性の高さだけでなく、その個性的なデザインや佇まいが、いつまでもユーザーに愛され続けたからではないでしょうか。他の多くの軽乗用車が時代の変化とともに静かに消え去っていったのとは対照的です。

推定年式:1965
撮影時期:1982年8月
撮影場所:山口県徳山市舞車町にて