<旧車シリーズ 306>


HONDA N360 (AN360)


 1967年3月、本田技研が初の4人乗り乗用車として送り出したN360は、スペースユーティリティに優れるFF2BOXスタイルと高い動力性能で大ヒット作となり、軽自動車の王座に君臨していたスバル360をその座から引き摺り下ろしたほどである。
 心臓部は二輪のトップメーカーらしく、CB450用ユニットをベースに作られたアルミ合金製の空冷直列2気筒354ccの4ストロークエンジンで、OHCの採用は軽乗用車初となった。京浜製CV型負圧キャブレターを採用、最高出力31ps/8500rpmという破格のスペックはライバルの追随を許さなかった。前進4段フルシンクロのトランスミッションはエンジンと一体構造化されている。最高速度は115km/hに達した。
 N360はその後、様々なバリエーション追加を行ないながら、1969年から通称「NU」シリーズへ移行。外観の変更は小規模だったが、保安基準強化を先取り対応したほか、ボディ剛性アップやエンジンマウントの改良で静粛性を向上、前後サスペンションを改良して乗心地も改善した。これと同時に、上級モデルのスーパーデラックス、カスタムが追加された。


 ミニクーパーに倣った優れた基本パッケージングや、31.5万円からという低価格もさることながら、N360のリッター87psという高出力は衝撃的なもので、のちの軽自動車のパワー競争の引き金になったとされています。また、手軽に入手できる高性能車として、底辺モータースポーツの発展にも大きく貢献したようです。
 このクルマには「エポックメイキング」という言葉がホントによく似合いますね。

推定年式:1969
撮影時期:1982年2月
撮影場所:山口県徳山市築港町にて