<旧車シリーズ 303>


MAZDA R360 COUPE (KRBB)


 1960年に登場したR360クーペは、戦前から戦後にかけ三輪トラックメーカーとして名を馳せた東洋工業が、念願の乗用車市場への進出を果たした記念すべきモデルである。
 クーペという名の通りパッケージングは2+2的なもので、新開発のV型2気筒356ccエンジンをリアに搭載するRR駆動方式を採用した。空冷4サイクルのBC型エンジンは最高出力16psだが、エンジン部材に軽合金を惜しみなく使用、サイド/リアウィンドウも透明アクリル樹脂として徹底的な軽量化を図り、必要十分な動力性能を確保している。サスペンションはトーションラバースプリングに筒型両効きオイルダンパーを併用した4輪独立懸架で、良好な乗り心地を得ていた。4速の「ギアミッション」の他、トルクコンバータと2段のプラネタリギアを組み合わせた「トルクドライブ」もチョイスできた。
 最も衝撃的だったのは、スバル360を10万円近く下回る30万円という低価格で、東洋工業の乗用車のエントリーモデルとして、本格的な軽セダンのキャロルが発売された後も、1966年まで販売が続けられた。


 この愛嬌あるボディスタイルを生涯貫き通したR360クーペですが、発売当初の初期モデルは左右のドアウインドが引き戸式で、翌1961年の初めに写真のようなオーソドックスな巻き上げ式に変更され、併せて三角窓が設置されました。これと同時に豪華仕様のデラックス車が追加されたのですが、これ以降はモデル末期まで大きなデザイン変更がないため、外観情報だけで車両年式を推定するのは、結構難しい作業となってしまうのでした。

推定年式:1961
撮影時期:1985年4月
撮影場所:山口県徳山市岐山通にて