<旧車シリーズ 121>


PRINCE SEDAN (AISH)


 戦後初の国産1500ccセダンとして1952年に登場したプリンスセダンは、電気自動車で名を馳せたたま自動車が開発した車体に、富士精密工業が開発した直列4気筒エンジンを搭載したモデルである。両社は合併し、同年11月には社名がプリンス自動車となる。
 排気量1484ccのFG4A型エンジンは国産小型乗用車として初のOHVで、45psの高出力を誇った。これに組み合わされるコラムシフトの4速ミッションも日本初とされた。シャシーはキックアップタイプのX型フレームとして低床化を図り、リジッドアクスルのフロントサスペンションはスプリングにラバーブッシュを取り付けて振動を抑制した。
 6人乗りの堂々たる車体サイズと先進的なスタイリングで、プリンスセダンは当時の国産乗用車の中で傑出した存在となったが、まだまだ庶民の手が届く存在ではなく、主にタクシー業界に迎え入れられた。1954年のAISH-3型では車重を大幅低減、1955年のAISH-4型では最高出力を52psに向上、同年のAISH-5型では日本初と謳われたツートーンカラーを採用した。1956年にはフロントサスペンションをダブルウィッシュボーン式独立懸架へ改めたAMSH型が登場する。


 戦後初の本格国産乗用車といえば、1955年発売の初代クラウンが代表的存在ですが、その3年も前にこのような力作セダンが誕生していたことには驚かされます。さらに、そんな黎明期の国産乗用車が、かくも綺麗な状態で現代にその姿を残していることにもまた驚きを禁じ得ません。
 プリンス自動車は、航空機開発で培った高い技術力と、プリンスセダンで得た自動車開発のノウハウを生かし、スカイラインという名車をこの世に送り出すことになるのですね。


推定年式:1955
撮影時期:2002年5月
撮影場所:石川県小松市二ツ梨町 日本自動車博物館にて