<旧車シリーズ 113>


MAZDA FAMILIA 800 Dx (SSA)


 R360クーペやキャロルで乗用車市場に進出した東洋工業から、初の本格小型乗用車として登場したのがファミリアである。まず1964年4月にワゴンを、そして同年10月に4ドアセダンを発売した。
 居住性をテーマにスピード感を強調したセミモノコックのボディは流行のフラットデッキスタイルを採用、周囲をシャープなラインモールで取り囲んだ。パワーユニットは「白いエンジン」と呼ばれたオールアルミ製直列4気筒OHVエンジンで、5ベアリングのクランクシャフトやツーバレルキャブレターを装備し、782ccの排気量から42psの最高出力を発生、4速フルシンクロのコラムシフトを介し「連続最高時速115km/h」の高性能を誇った。フロントサスペンションにはダブルウィッシュボーン/コイルの独立懸架を採用、足廻りは車検までグリスアップ不要のメンテナンスフリーとされていた。
 価格は2ドアスペシャルの41.5万円から、ラジオやヒーター、熱線吸収ガラス等を標準装備する4ドアデラックスの54.8万円まで幅広く設定された。


 もしも当時このクルマの量産体制が盤石であったなら、その後の日本の自動車業界の勢力分布も大きく変わっていた可能性がある、とどこかで聞いたことがあります。やや誇大な表現であることは否めませんが、かつてオート3輪業界をリードした東洋工業の高い技術力とチャレンジ精神が、このファミリアという待望の新型乗用車にしっかりと息づいていたことは容易に想像できます。家族に夢を運ぶ大衆車にピッタリのこのネーミングもまさに秀逸といえますね。

推定年式:1964
撮影時期:1990年1月
撮影場所:東京都港区東新橋汐留 '90ニューイヤーミーティング会場にて