<旧車シリーズ 104>


ISUZU HILLMAN MINX Dx (PH400)


 1950年代の日本では欧州車のノックダウン生産が多く実施されていた。日産は英国オースチンと、日野は仏ルノー公団と提携して自動車生産の技術を習得していった。
 いすゞが英国ルーツグループとの技術提携により1953年に生産開始したのがヒルマンミンクスで、本国版のモデルチェンジを受け2代目ニューヒルマン(PH100型)が登場したのが1956年のことである。この間、エンジン、ガラス、シートといった主要部品の国産化を推し進め、1957年にはついに完全国産化を達成した。ヒルマンにはほぼ毎年のように細かな仕様変更が加えられていったが、'60年式からはエンジンが1500ccにスケールアップ、'61年式からはリアフェンダー周辺を「ハイスタイル」と呼ばれるテールフィン風のデザインに改めた。
 気品溢れる佇まいに鮮やかに塗り分けられたツートーンカラーなど、ヒルマンはそのファッショナブルなスタイルで国産車とは一線を画しており、とりわけ女性に人気があった。


 10年余りにわたりライセンス生産されたヒルマンミンクスはいすゞの乗用車開発に多大な影響を与え、その後ベレルやベレットといったオリジナル車を生み出す技術的ベースとなりました。
 今でこそ日本車メーカーが海外のKD工場で組立生産を行なうことは一般的ですが、これとは全く逆の立場でKD生産と関わっていた時代もあったわけです。こうした下積みの時代が、やがて日本の自動車産業が世界でも有数の存在に登り詰める契機となったことは確かでしょう。


推定年式:1961
撮影時期:1989年1月
撮影場所:東京都新宿区神宮外苑 '89ニューイヤーミーティング会場にて