<旧車シリーズ 105>


MITSUBISHI 500 SDx (A11)


 通産省が1955年に発表した国民車構想案に応える形で、新三菱重工業の名古屋製作所が開発を担当して登場させたのが、1960年4月に三菱初の乗用車として発売された三菱500であった。価格は39.0万円に抑えながら、車体軽量化のためモノコックボディを採用、サスペンションは4輪独立懸架を奢った。リアエンジン・リアドライブのRR駆動方式で、その心臓部には空冷4サイクル2気筒の493ccOHVエンジン(最高出力21ps)を搭載した。
 同年10月にはグリルデザインの一新とともにサイドモールを追加する小変更が施され、これと同時に、三角窓付きのデラックスを追加。さらに、翌1961年8月にはエンジンを594ccにスケールアップしたスーパーデラックスを追加した。スーパーデラックスの最高出力はプラス4psの25psとなり、乗車定員も5名となった。豪華さを増したつば付のヘッドランプリング゙もこのスーパーデラックスの特徴である。


 このスーパーデラックスには、可愛らしさと豪華さが同居する不思議な雰囲気を感じますが、それ以上にミステリアスなのは、600ccなのに「三菱500」だということ。この当時、三菱はすでに外観スタイルを一新した「コルト600」を準備していたので、スタンダードとデラックスは500ccのままだったことからも、古いスタイルを持つこのクルマには引続き「500」を名乗らせたのでしょう。三菱500/コルト600ともに販売は苦戦したようですが、現在の三菱の乗用車のルーツとなった貴重な存在です。
 ボンネット中央部のオーナメントは、なんと給油口のフタも兼ねているそうです。


推定年式:1962
撮影時期:1990年1月
撮影場所:東京都港区東新橋汐留 '90ニューイヤーミーティング会場にて