'97 efini RX-7 Type-RS




 気に入っていたランティスを手放させたのは、私にとってマツダの象徴であるロータリーエンジン(RE)への強い思いでした。前の年にマツダがフォード傘下になり、業績の悪化からその存続さえ危ぶまれている昨今。この素晴らしい個性的な技術が、超高価なRX−7の販売不振だけを理由に無くなるなんてとんでもないことだ、自分が購入してまず新車販売台数に(1台分)貢献しよう。そしてサーキットを速く走ることで、セブンやREのアピール活動をしてやらねば…。かつてJSPCというレースでのロータリーサウンドにシビれた人間がそのように思うのも無理ないでしょう。

 と、急に思い立って購入したまでは良かったんですが、このマシンはなんと私にとって初ものづくし。まずは「FR」に始まり、ロータリーエンジンターボチャージャーインタークーラーオイルクーラー、トルセンLSD4W−ABS、ついでに言うとエアバッグ、前後で異サイズのタイヤ、アルミジャッキ、リトラクタブルライト…、今までのクルマとの共通点はタイヤが4つあることくらい?
 幸い、サーキットでの「スピード勘」は十分に持っていたので、格下(失礼!)のマシンに突つかれることはありませんでしたが、最初のうちはオーバーステアを恐れるあまり、コーナーの脱出でもジワジワとしかアクセルを踏めませんでした。
 とかくマフラー、コンピューター、タービン…と、チューニングマシンの多いこのFDですが、FRの挙動をしっかり体得するまで
ノーマルで行くこととしました。馬の数上げてタイムを稼ぐのは最後の手段として残しておくことに。
 ところが、意外にもサーキットではノーマルパワーで結構通用することがわかりました。たいした腕のないライトチューン勢ならば、セブンであろうがGT-Rであろうが軽くあしらうことができたのです。走行終了後にあわてて偵察に来たライバルが、このマシンのあまりのフツーさにキョトンとしているのがおかしくておかしくて…。(ちょっと天狗モード?、いやいや、ドライバーの腕じゃなくてクルマの素性がいいんですからね)

 そのままの仕様で一年間、各地のサーキットを走り込み、ラップタイムが落ち着いてきた(頭打ちになったともいう)ところで、98年夏に
マツダスピードの車高調ユニットを装着。こと足回りに関しては「脱・ノーマル」仕様となりました。このユニットはかなり街乗りを重視しており、ここ一発の高負荷時に頼りない面もありますが、ロールが減ってクルマの挙動が安定したおかげで、遥かに早いタイミングでアクセルを全開まで踏み込めるようになり、「アクセルで曲がる」感覚がハッキリとつかめるようになったのは大きな収穫でした。実際、真夏という厳しい条件下ながら、MINEサーキットでのラップタイムがポンッと1秒2も向上。

 とにかくこのFD、サーキットで走らせるとドライバーの意のままに操れる相当
ファンなクルマです。何となくカッタルい街乗りでの印象はガラッと一変します。
 しかし、もっとも厄介なのが熱対策。高密度なエンジンルームゆえ連続全開走行はキツく、ドライバーの調子が出てくる頃にはマシンが疲れ始めてしまうんです(
最新のRX−7では十分に対策がされているようだ!)。よって、気候の比較的涼しい春先や秋口が主な活動期間となっています。

 
尚、99年の現在は主に財政的理由で自身のサーキット活動を休止中。しかし、黄色いリムのFDがサーキットに復活するのはそう遠くないでしょう、きっと。
(ちなみにホイールのデザインは、かつてN1耐久に参戦していた
片山レーシングRX−7のダンロップカラーをモチーフにしています)



(’99/12追記)
 99年8月に約9ヶ月のインターバルを経てサーキットに復帰しました。その間、純正マフラーが壊れたため、中古品の
マツダスピード・スポーツサウンドマフラー(タイプ2)に変更。中低速のトルク感が大幅に増し、いきなりMINEのラップタイムが1秒短縮しました。同時にラジエター上部に位置する吸気ダクトを最新RX−7用のものに換装。たったこれだけでも効果は絶大で、吸気温度の低下が排気温警告灯の点灯頻度を大幅に下げてくれました。
 12月には、度重なるサーキット巡業でメッキリ低下したボディ剛性を補うべく、
tanabeの強化スタビを装着。劇的な操縦性の変化こそなかったものの、ロールが抑制され、コーナリング時の回頭性は幾分改善されました。欲を言えば、さらに発泡ウレタンでのボディ補強等が望まれるところです。

 結局、99年最後の走行会では
RSV98スペックというハイグリップタイヤを得たこともあって、これまでのMINEでのベストを1.5秒も更新(1'47"685)。わずか4ヶ月の復帰劇で、98年から2.5秒もの大幅なタイムUPを果たしました。総走行距離が5万キロを超え、エンジンのパワー感は微妙に落ちてきていることを考えると、トータルとしてのクルマの仕上がりは大きな改善を見せたと言えるでしょう。

 こうして見ると、愛車でのサーキット走行を思う存分楽しむためには、例えばこのRX−7のように動力性能とコーナリング性能が高次元で両立されているクルマならば、
そのバランスを崩さないようにしながら、あくまでドライバーが扱える範囲の性能で十分に走り込んでいくことが、もっとも有効であることがわかりました。


 私にとって3台目のサーキットマシンとなるこの
RX−7ですが、たしかに、ガソリン代やタイヤ/ブレーキ代などのランニングコスト的には決して安価な部類に属するクルマではありません。
 しかし、それと引き替えに得られる
絶対的な速さ際限ないドライビングプレジャー、さらに、ドライバー自身の成長をも促してくれる懐の深さを考えると、「バリュー・フォー・マネー」が飛び抜けて高いクルマだと断言できます。
 ここまでの賛辞はこのRX−7を「サーキット」という最高のステージで走らせてこそ得られるもので、街乗りONLYだったらおそらくその価値の1/10も味わえないでしょう…。もちろん、「走り」以外にもこのRX−7には十分な存在価値があり、例えばREという革新技術やその美しいスタイルなど、楽しむ要素はたくさんあります。が、高速道路やワインディングロードといった一般道で多大なリスクを犯しながら、こっそりとこのRX−7の走り(のごく一部)を楽しむことだけは、このクルマの果てしないポテンシャルを考えると、あまりにも非効率的な行動だと言わざるを得ません。(免許の点数ももったいないですしね)

 「ZEHIいっしょにサーキットを走りましょう!」 全国のRX−7オーナーに私はこう声をかけたい気持ちでいっぱいです。


アンフィニRX−7タイプRS (99年最終仕様)
TYRE DUNLOP FORMULA RSV
(235/45&255/40R17)
SHOCK & SPRING MAZDASPEED
Adjustable Ride-Height Unit
STABILIZER tanabe
BRAKE PAD (Fr) Winmax Quest β
BRAKE PAD (Rr) Winmax Quest γ
MUFFLER MAZDASPEED
Sports Sound Muffler Type-2
SEAT MAZDASPEED Sports Seat Type-F
SHIFT MAZDASPEED Sports Shifter
AIR FILTER MAZDASPEED
ENGINE PLUG NGK RACING (#10&#11)
PLUG CODE NGK Power Cable

 

RX-7主要諸元('97 Type-RS)
ENGINE : 13B-REW (654x2cc)
MAX POWER : 265ps/6500rpm
MAX TORQUE : 30.0kgm/5000rpm
DIMENSION : 4280x1760x1230mm
WHEELBASE : 2425mm