ネズミの お餅つきの お話                     ちっちゃくてかわいい花ちゃんは おじいちゃんが大好き  おじいちゃんは 牧場や山に連れてってくれるので花は山も大好きです  来週は 十和田湖に行く約束をして うれしくておどりだしました 「花は 早く起きれるかなァ」 『早く起きるから サッカーボールを持って行こう みーんなで行くの?』 「みんなで行くんだよ 山に行って鍋をして食べよう 何がいいかな」 『おばあちゃんの作るのがいい』  花は おじいちゃんと まくらをならべて となりにねます 「今日は ネズミのお話をしようか」 『うん おじいちゃん お話して』 「むかし むかし あるところに おじいさんとおばあさんがいました」 『あるところって どこなの?』 「お山にある おじいさんとおばあさんの休憩するお家なの」 『二人だけで居るの? 他に誰も居ないの?』 「おじいさんとおばあさんは 元気だし 健康だし とっても仲がいいんだよ」 『ーーー ふーん ーーーー』 「おじいさんは 秋になると冬支度のため 山に たきぎを取りに行くんです」 『おじいさん 一人で山に行くの?』 「そうなの おじいさんはね とっても良い人なんです それでネ 山に行く 時はお昼に食べる麦ダンゴを おばあさんにたくさん作ってもらって 大事に 大事に風呂敷に包んで持っていくんです」 『おじいさんのお昼は ダンゴだけ食べるの?』 「そうだよ 中に甘ーいアンコの入った麦ダンゴ はとっても体にいいんだよ」 画像P1 『おじいさんは山に お茶を持って行くの?』 「そう お茶とか 水を持って行くの」 『それで それから どうしたの?』  おじいさんは 山でいっぱい芝狩りをして  お昼になったので 木の切り株に腰を下ろして  おばあさんから作ってもらった麦ダンゴを広げ  て アーア腹が減った と言って ダンゴを  食べようと風呂敷を広げた時に ダンゴの一つ  がコロコロ コロリンと地面に転がって落ちて  しまいました  『地面に落ちたらダンゴに土が付いたんでしょ』   コロンコロンと転がり落ちると その先の地   面に小さな穴が開いていて その穴の中にダンゴ   が入って行きました   『その穴は何の穴なんだろうネ』 「山にいる とっても気のやさしいネズミの穴なんだよ」 『おじいさんは そのダンゴが穴に落ちたから 食べれないんだよネ』 「うん それで おじいさんはネエ そのダンゴを追いかけて ダンゴと一緒 に穴の中に入って行きました」 『おじいさんは 小さな穴にどうやって入って行ったのかなァ』 「でもネ おじいさんがダンゴを追いかけて行くと スルスルッと入れたんだよ」 『おじいさんは どんな所にも行けるんだネ』  しばらく入って行くと 奥の方でネズミ達が 寒い冬に備えて みんなで餅を 作っていました 臼に入った餅をきねで ペッタンペッタンペッタンコと 楽しそうに ついていました おじいさんは これは珍しい しばらく見て行 こう と思って 物の影にかくれてネズミ達の餅つきの様子を静かに見ていま した 『おじいさんは ネズミの穴に入って行って 苦しくなかったのかなァ』  しばらく様子を見ていると ネズミ達が楽しそうに歌を唄いながら  おいしくなーれ お餅さん おいしくつけたか お餅さん  ペッタンペッタン ペッタンコ トッテン ペッタン トッテン ペッタン  歌のリズムがとっても良かったのでおじいさんは耳を澄まして ずーっと聞  いていました  なんぼになっても ネーゴの声こは聞きたぐねエー  なんぼになっても 地獄さ行っても ネーゴの声こは 聞きたぐねエー  と楽しい歌が続きました やっぱりネズミは猫がきらいでした  おじいさんは 楽しそうに餅をついているネズミ達の家族が うらやましく  なりおじいさんも一緒になって餅をつきたくなりました  ネズミさんネズミさん 私にも餅をつかせて下さい と言って 餅つきをし ている みんなの所に出て行きました 『おじいさんが ネズミ達の中に入って行っても ネズミ達が〔 怖い〃〕っ て逃げなかった?』  おじいさんを見たネズミさん達は おじいちゃん よくいらっしゃいました  一緒に餅をついてみませんか と言って 優しく仲間に入れてくれました  おじいさんは ネズミ達が歌っていた唄を 一緒になって唄いました  なんぼになっても ネーゴの声こは 聞きたぐねエー  ネズミ達は おじいさんは歌も上手だし餅つきも上手だネ とほめました 『おじいさんが お昼にダンゴも食べていないので お餅をついたら また腹 が減ったでしょう』 ネズミ達は なんて人の良い おじいちゃんだろうっておじいちゃんを大好 きになりました 餅がつけると みんなでいっしょにおいしいおもちをたべました 画像P2  ネズミ達はみんなで〔お爺ちゃん大変楽しい餅つきでした。ありがとう ございました〕と言って感謝しました そして おじいさんが帰る時にネズミたちはかかえきれないほど いっぱいの 宝物をくれました」 『おじいさんが どうやって宝物を持って穴から出てきたの』 「ネズミ達に手伝ってもらって 出て来たの」  そして おばあさんに 宝物を見せて ネズミさんの話をすると おばあさ んは とても喜びました  おばあさんに説明していると 隣の意地悪おじいさんが 障子の影で耳を 澄ませて その話を全部聞いてしまいました   次の日 意地悪おじいさんが よしよし 私も山に行って宝物を貰って来ま しょう と意地悪おばあさんから 中にアンコの入らない マズイ麦ダンゴを 作って貰って 昨日の場所に行って わざと麦ダンゴを転がし ネズミの穴に 手で押し込みました するとダンゴは ネズミの穴に ゴロゴロと転がって入 って行きました 意地悪おじいさんはダンゴを追いかけてネズミの穴に入って 行きました 穴に入ると 昨日と同じくネズミ達が 歌を唄いながら 餅つき をしていました   おいしくなーれ お餅さん おいしくつけたか お餅さん  なんぼになっても ネーゴの声こは 聞きたぐねエー   なんぼになっても 地獄さ行っても ネーゴの声こは 聞きたぐねエー 意地悪おじいさんは 昨夜盗み聞きしたときに この歌が聞こえた時に どう すれば良いのか聞いていませんでした   そこで 猫の歌に合わせなくちゃと思って ニャーオ と声を出しました するとネズミ達は 怖いのと驚きで 餅つきも止めて電気を消して みんなで 一目散に逃げてしまいました  穴の中に残された意地悪おじいさんには 辺りは暗くて何も見えません 出口も分からないし どうやって穴から出られるのか さっぱり分かりません 小さな穴を オイッチニ オイッチニと 後ずさりしながら 暗闇の中を手さ ぐりで やっとのことで外に出ることができました  外に出ると 日もとっくに暮れて 山も真っ暗で 辺りは何も見えませんで  した  意地悪おじいさんが エンヤラヤットのことで 家に着いた時は真夜中で  体は泥だらけだし 靴は片方しかはいてなく 着物はあっちこっちが穴だら けで見すぼらしい恰好で家に帰ったので 意地悪おばあさんは 何処のおじ いさんが来たのかと びっくりして言いました お前は 隣のおじいさんの 物真似をして行くから こんな事になるんだよ この恥さらし じいっちゃ  わたしゃ村の皆さんに顔向けが出来ないじゃないか 意地悪おじいさんは おばあさんに ひどくしかられました   だから 意地悪おじいさんの好きなお酒も飲めなかったし 夕飯も食べさ せて貰えなかったし 踏んだり蹴ったりでした 『意地悪おじいさんは駄目だね 人の真似をするから そうなるんだよネ』 「そうだよ 人真似とか 盗み聞きは いけないことなんだよ」 『花 人真似はしないよ 人の言っているのを 盗み聞きしないよ』 「人まねは いけないことだよ 幸せは自分の力でつかみなさい と言うこ となんだよ」 『おじいちゃんは 何でも知っているんだね』 「おじいちゃんが子供の時に おじいちゃんのお母さんから聞いたお話なん だヨ」 『花も おじいちゃんから聞いて 覚えておくといいよね』 それからネエ 心の良いおじいさんは ネズミから頂いた宝物のおかげで おばあさんと ズーット ズーットと 一緒に幸せに暮らしたとサ  お話が終わる頃 花はいつものように 〔ZZZZZZZ〕となっていた  満足そうな花の寝顔でした                ドットハライ   坂頂 睦水 作    挿絵は、切手「昔ばなし」シリーズの図案から       文頭へ 【むかしばなし】へ 【ホーム】へ