キ ツ ツ キ  と  ス ズ メ  の お 話  今日は キツツキとスズメのお話をしよう。  むかーし むかし ある所に 二人姉妹がいました。姉をキツツキさん 妹を スズメさんと言いました。優しいお母さんと一緒に 毎日が平和で楽しい暮らし でした。  二人の姉妹は喧嘩することもなくお母さんの言うことをちゃんと聞いて お手  伝いをしたり お仕事をして お母さん思いで とても優しい子ども達でした。 姉のキツツキさんは 美容学校を卒業して 近くの村のお店に努めていました。 妹のスズメさんは スズメの学校を卒業して 隣の村の農協に努めていました。 キツツキさんとスズメさんは 給料を貰うとお母さんへ 着物や履物や お菓子 など,お土産をどっさり買って来て とても親孝行な姉妹でした。  ある時 お母さんが体を悪くして 隣の町の病院に入院することになりました。 キツツキさんとスズメさんは心配して いつも見舞いを欠かしませんでした。 ある日突然 キツツキさんとスズメさんの働いている所に電報が届きました。  〔ハハ・キトク・スグコイ〕とありました。  スズメさんと キツツキさんは それぞれ電報を受けてビックリしました。 妹のスズメさんは 仕事の途中で 顔や手や体中が汚れていましたが そのまま の姿でお母さんの所に急いで飛んで行きました。姉のキツツキさんは,まだ来て いませんでした。  お母さんが スズメさんに言いました。 『スズメさん 仕事中忙しいのに早く来てくれた。スズメさんは小さい時からお 母さんの言うことをよく聞いてくれたネ。お手伝いもしてくれたネ。心配して早 く来てくれて お母さんは幸せです。スズメさんにはきっと良いことがあるよ。 神様からごほうびがあるよ。スズメさん いつまでも幸せに暮らすんだよ。  ありがとう』  そう言ってお母さんは スズメさんに大層感謝しながら,息を引き取りました。 スズメさんは 悲しみの中にも お母さんを見送ることができて とても嬉しく 思いました。  親切だったお母さん。いつも私達のことを心配してくれたお母さん。小学校に  入る時は一緒に付いて行ってくれたお母さん。運動会や遠足には 大きなオニ  ギリを作ってくれたお母さん。山にも海にも公園にも 連れて行ってくれた  優しいお母さん。  スズメさんは 息を引き取ったお母さんのふところに伏して 目に大粒の涙を  流して泣きました。母の優しさに 止めどもなく涙が流れました。  姉のキツツキさんは〔母キトク〕の電報を見て思いました。 「昨日まで元気だったお母さんが『キトク〃といっても まだ大丈夫だろう   あわてて病院に行くこともないだろう』と思い 仕事で顔も手も足も体中が汚れ ていたので このまま行くと見舞いに来た親戚の人達に病院で会ったら恥ずかし い。少し顔や手足を洗って 化粧をしてから行こう と思いました。 顔に赤や紫色などベッタリと厚化粧をして 口と手には赤いマニキュアを塗り 派手な色合いの着物を着こんでから出かけて行きました。  時計を見ると電報を受けてから,三時間も経っていました。  お母さんのいる病院に着いた時は お母さんはすでに息を引き取った後でした。  親切で優しいお母さんの「死に目」に合えなかったキツツキさんは 泣いても  泣いても もう遅かったのです。 「お母さん 遅くなってごめんなさい お母さん ごめんなさい・・・」 キツツキさんがいくら泣いても 亡くなったお母さんは戻ってきませんでした。 汚れた姿で 直ぐに飛んで病院に来てくれたスズメさん。 厚化粧をしてから おもむろに病院に来たキツツキさん。 その二人の様子を 神様が天からチャーンと見ていました。 神様は キツツキさんとスズメさんを呼んで 二人に言いました。 【キツツキさん お前は母がキトクだと言うのに 自分の身の回りを第一にして そのうえ厚化粧などで時間をかけて,お母さんの死に目にも合えなかった。 親不孝なお前は これからは山奥に入って 古木の中から虫けらを突っ付いて食 べて暮らすがよい】と 言いつけました。 一方 妹のスズメさんには  【スズメさん お前は母がキトクだと言う時に 仕事の途中に,自分の身なりも 考えずに第一番にお母さんの元へ飛んで行った。スズメさんの気の優しさをほめ てつかわす。その親孝行をみんなの模範とする。これからは人様の周りに住んで お米や 穀物を食べて暮らすがよい】と 言いました。  それ以来 キツツキは厚化粧をしたので 口先や羽根は赤く黄色く とてもハ  デな色をしているのです。山奥に行くと カラカラカラッ カラカラカラッと   山々にコダマする音はキツツキが 木を突っついて 虫ケラを探している音   なのです。  一方 スズメは地味な茶色い服を着て 口先は黒く エントツから出て来て汚  れたような恰好をしていますが 人様と一緒に人里を住家にして 人様が食べ  るお米や穀物やパンを食べて暮らしているのです。      画像P1    画像P2 親孝行していると きっと良いことがあるのです。 親孝行は口先ではなく行いが大切ですよ と言うことです。 神様がチャーンと見ているんですぞ。分かったかな よい子たちよ。  これで キツツキさんとスズメさんのお話は おしまーい ドットハライ。                 坂頂 睦水 作 文頭へ 【むかしばなし】へ 【ホーム】へ