ほんではまず、前ページで紹介したプラケ側面から繭玉の内部を確認できた個体の、手元に残っている簡単な記録を書いておこう。
この個体は、孵化からほぼ1年で羽化に至った。飼育温度はなるべく25℃くらいになるようにしていた。成虫になってくれたのも幸いではあるが、繭玉を作った場所が良かったため、繭玉を掘り出して一部に穴を開けてみるといったことをしなくても、蛹化日と羽化日がわかったのがなんと言ってもラッキーであった。
そしてここで疑問となったのが、羽化後どの程度経過したら繭から取り出しても平気なものなのか、いつ頃から活動(後食)を開始するものなのかということであった。自ら繭を壊して出てくるのを待つのが一番良いことであるとは思うが、後食を開始しない内に繭の中で☆してしまう個体もあると聞いた覚えがあり、少々不安だったのである。 そこで、様々な昆虫の飼育経験を豊富にお持ちで、ゴライアスにドッグフードと言えばこの人!FanLin氏に伺ってみたところ、「個体の大きさにもよるが、1ヶ月〜1ヶ月半くらいで活動を開始する」とのご回答を頂いた。ところがこの個体は、羽化後1ヶ月半を経過しても繭から出てくる気配がなく、2ヶ月近くが経過しようとした頃に「ま、FanLinさんの言っていた期間も過ぎたことだし、引っ張り出してもだいじょーぶっしょ」ってことで繭を割ってみた。すると...
ゴライアスオオツノハナムグリ(Goliathus goliatus)は、エリトラ(甲虫類の上翅)の色彩変異が豊富で、ほぼ全体がこげ茶色のものから四隅を残して殆どが白いものまで存在し、その紋の出方によっていくつかのフォームにわけられそれぞれに名前が付けられている。そのことに関してもFanLin氏のホームページBeetle Breeding Webの中で詳しく紹介されている。ご存知でない方、ご興味のある方は、参考にされることをお奨めする。また同氏は、今月発売の昆虫専門雑誌「KUWATA(13)」に、フォームや飼育方法などについて投稿されている。大変参考になるので記しておく。 上の画像の個体は、エリトラのサイド部分に白いスジが出ているものの、エリトラ後部までは白い紋が入っておらず、ゴリアトゥス(G.goliatus f.goliatus)と言えるであろう。このような中間的なものまで存在するのである。あっしはチョコエッグを購入したことがないのだが、どれが出るかわからないところも魅力のひとつなのであろう。こっちの方がもっと楽しいかもよ。大変だけど、、、 この個体のサイズであるが、頭をおもいっきし上げた状態で計測すると、72mmをちょいと超えるくらいの大きさであった。FanLin氏に羽化後の活動について質問をした時に、大きさについても「繭玉と同じくらいかそれ以上」とのレスを頂いていた。そのとーし!流石である。♂であれば角がある分、繭玉よか大きい個体を得られるのであろう。それにしても随分と窮屈な中で羽化するものである。
繭玉から引きずり出した後も、しばらくは活動せずにじっとしていた。そしてこの個体が活動を開始したのは、7月に入ってからであった。ゴライアスはブンブンと良く飛ぶと聞いていたので楽しみにしていたのだが、ほん投げてみても下翅は出すものの飛ぶことはなかった。「気温が高くないと活性しないのか?」とも思い、たまに日当たりの良い所に置いてみたりもしたのだが飛んでくれず、、、 んでもF1マシンを思い出させる、エアロダイナミクスから考え出されたかのようなそのフォルムから、かなりな速度で飛行できるのではないかと思われる。身近な虫では、カナブンも似たような形状をしている。ほんっとに良くできている。
そしてこやつは、親元の♂が羽化するのを待っていたのだがうまく行かず、未交尾のまま産卵させることもせず、2001年7月20日に他界した。なんと羽化後14ヶ月近くも生きていたこととなる。産卵させなかったとは言え、こんなに長生きするものだとは思わなかった。因みにその間に与えた餌は、昆虫用ゼリーのみであった。 |