曲がるな!
=ヘラクレスオオカブトの角曲がりを減らせ=
by ピーコ



 さて、大変前置きが長くなったが、いよいよ本題に入るとしよう。え?

 ここからがあっしが実際に角を曲げないようにするために行っていることの紹介である。

 前にも書いたが、これらのようにプラケの側面から蛹室内部が見えてしまうような場合には、角が曲がってしまう可能性が高いと考えている。そしてこのような状態になってしまった場合には、蛹化する前に蛹室の一部を暴くか、人工蛹室に移すようにしている。ただし蛹室側面が外部から確認出来るような場合ではその必要はないと思う。
 尚、このふたつの画像は、どちらも蛹室のお尻側がプラケの側面から確認出来たものであり、これから紹介するやり方はこういった場合に行っている。この窓の大きさは左の物が直径約2.5cm、右の物で4cm程であった。


 おっと、飼育経験がない方のために一応書いておくが、なぜ蛹室の向きを判断できるかと言うと、ヘラクレス♂の蛹室は左の画像のような形状に作られるため、ケースの底と側面の窓から方向の判別がほぼつくのである。


 上のふたつのケースでは、プラケ内部では蛹室は左の絵のような状態となってしまっていて、蛹室の長さが不足してお尻側がつかえてしまい、結果として角が曲がってしまうのではないかと考えている。

 

 そして次に問題になってくるのは、いったいどの時点で蛹室を暴けば良いのかということである。蛹室が完成してからそんなに時間が経過しないうちに暴いてしまうと、幼虫は危険を感じてであろう、別の場所へと移動を始めてしまい、場合によっては最悪の結果を招きかねない。実際に餌交換をしようとして容器をひっくり返したところ、そのような状態の幼虫が出てきてしまい悲惨な結果となってしまったという話も聞いている。ヘラクレスの飼育には、透明度の高い飼育ケースを使用して、幼虫の色がある程度黄ばんできたら最低でも月に一度程度はケースの底を見ることが大切なように感じている。
 あっしは蛹室完成後2〜3週間経過した頃を目安に蛹室を暴くようにしている。では次の画像をご覧頂こう。

ヽ( ´ー‘)ノ
 だいたい蛹室完成後2週間程度が経過すると幼虫はこのような状態となる。幼虫は「もうお手上げ!」って感じで足を動かすことが出来なくなり、表皮がシワシワとなる。特にお尻の先端部分はご覧の通りである。このような状態が容器の底や側面から確認できることと思う。こうなったらこっちのもんである。そしてこのような状態になってから蛹化するまでの期間は2週間程はあるので、その間に暴くようにしている。

 

 それでは、このページの一番上の左側のケースを実際に暴いてみた画像を紹介していこう。

12
 蛹室付近まで余分なマットをどかし、その辺りからはそーっと掘っていくと、手触りなどから「ここからが蛹室だな」とわかるものである。そしてなるべくマットを蛹室内部に落とさないように注意しながら頭部側をそっと暴く。おっと、こりゃ今にも蛹化しそうな幼虫だ。
 そして指で蛹室の頭部側のスペースを角がひっかからないように広く加工してやる。この時に注意していることは、オリジナルの蛹室の緩やかなカーブを延長するような感じに加工することである。それにしても透き通るように白い手だ。(^^;;

34
 ま、こんな感じに仕上げておけばOKであろう。蛹室内部に落ちてしまったマットは、ピンセットや箸でつまみ出して綺麗にしておく。おっとっと、幼虫は既に蛹化する体勢に入ってるような...
 それから数時間が経過し、見てみたらこの通り。わざわざ蛹室を暴く必要はなかったかな?どう思われます?ま、角が曲がらなくて良かった。

 きっとこれを読んでいて「蛹室の向きもわかってるわけだから、蛹室を暴くなんてことまでしなくてもプラケを傾ければ良いだけなんじゃないの?」と思われる方もいらっしゃることと思う。あっしはそれをお薦めすることは出来ない。実際に蛹化している最中にケースを傾けてみたことがあるからである。蛹はお腹を曲げたり伸ばしたり縮めたりを繰り返し、懸命に体液を角へと送り込むのであるが、一旦伸びた角がケースを傾けることによってしぼんでしまったのである。縮んだのではない。少しの間や角度であればケースを傾けても問題はないが、ずっと傾けたままの状態が続けば相当な体力を消耗してしまい、良い結果が得られるとは思えないのである。それに少しくらい傾けただけでは意味がないようにも思えた。これも画像がないのが残念、、、

 この時、ヘラクレスと同じDynastes属のネプチューンオオカブトムシ(Dynastes neptunus)では良く知られている(か?)蛹化中に起こる面白い現象が、ヘラクレスでも起こることを観察&撮影することが出来たので、また話が脱線してしまうが次のページで紹介させて頂く。以前にも観察することはできていたのであるが、その時には撮影することは出来なかった。



Page 3/7 へPage 5/7 へ

Page 4/7