11]今年7月、3匹80g以上になったマレーコーカサス幼虫を購入しました。80gは、100gから7.5cmになった事からして、「成虫胴体長の3乗が幼虫体重に比例する(角の長さが同じなら)」と仮定して7cm位で、これはマレーコーカサスが長角になる最低の大きさ胴体長6.7cmを十分クリアーしています(月刊むしの胴体長と頭角長のグラフから読み取りました)。

それらを、底に粘土を7cm位固めた、深さ25.5cmの中型の衣装ケースに、マットと共に入れました。しかし、粘土は掘りにくく、幼虫は1ヶ月近くマットと粘土の境界をうろうろして、2匹がマット上に出てきてしまいました。やむを得ず、別の場所から赤土を採って来て入れ直しました。

1匹は粘土に潜って蛹化しましたが、角の長さこそ今まで最高の頭角2.7cm、胸角2cmだったものの短角には違いありません。最大81gとの事で、その後の体重変化は蛹室を作りたいのかどうなのかはっきりしなかったので測定出来ませんでしたが、1ヶ月上に出て来ないまでもかなり縮んだのでは、と思っています。

羽化した個体は、全長8.7cm、胴体長7cm、頭角2.7cm、胸角1.9cm程で、今までの胸角1cmもない状態からは脱した、というだけです。

12]赤土の個体のうち、1匹は入れた赤土が、住宅地で採取したためシロアリ忌避剤入りで3回も幼虫が出てきて、やっとまともな土を入れたら今度は1日冷房を入れ忘れて室温が35℃以上になって幼虫がまたマット上に逃げ出して、合計5回(粘土中でも何とか蛹室を作ろうとしているのを出して農薬入りの赤土に入れたりしたので)は出てきた事になり、測定しなかったものの先の92g幼虫が1回出てくるごとに2g縮んでいたことから、10gは縮んだでしょう。

出てくる毎に高タンパクゼリーを与えていましたが、確か1個で1gしか戻らなかった筈なので、出てきて3回与えたのでせいぜい3g回復の7gの減少でしょう。

この個体は最大95gが85gになった所で購入し、最初に出て来た時89gにむしろ増えていましたが、農薬と高温で相当なダメージを受けた筈です。その間の体重減少は、量る気もしませんでした。

しかし、この個体が蛹化した後測定すると、頭角3.3cm、胸角2.7cmと、短角というより中角と呼べそうな形にはなったようです。頭角3cmは、1つの壁でした。これをやっと突破出来たのです。

13]私は某掲示板でしつこく「縮まないように、老熟して暴れ出したら土を入れろ。100gなくてもマレーコーカサスやスマトラコーカサス80g、ジャワコーカサス70gで長角になる」と書いておりましたが、まちかね掲示板にも稀にいらっしゃるNOBU様が信用して下さり、その御友人と共に、大ケースで80g台のジャワコーカサスを、底の半分〜7割の深さまで黒土を入れて飼育して下さいました。NOBU氏は、85gの個体が暴れて73gになった所で黒土を入れられ、そこでも幼虫がかなり暴れたもののマット上には出てこず、頭角3.5cm、胸角2.5cmの中角になったとの事でした。羽化したら、全長9.2cm、頭角3cm、胸角2.3cmだったとの事です。

その御友人の方も、89gが79gになったとまで測定され、その後黒土を入れて落ち着かせた後掘ってみたら、頭角5cm、胸角4cm以上もの長角蛹が出たのでした!!!冒頭に上げた写真が、この個体です。

更に、NOBU氏自身、長角をやはり黒土内で蛹化させておられます。幼虫最大時84g、蛹は上の長角より少し小柄なものの、角長は4.5cmに達したとの事です。

NOBU氏は、もう2匹長角を蛹化させられました。1匹は最大86gで、その後測定無し、蛹は130mmに達し、特に角が長かったとの事です。

もう1匹の長角は最大83gにも関わらず、立派な長角だったとの事です。

表4.長角4匹の幼虫時代体重変化
幼虫時代
最大(g)
89
84
86
83
最終(g)
79
データなし
データなし
データなし
最大/最終
89%

「データなし」なのは、最大の状態で土を入れたためです。その後すぐ土に潜ってしまい、測定出来なかったとの事です。

角の長さについては、写真でお分かりの様に、頭角長さ5cmにもなりそうなものばかりです。細かい測定を行っても良いのですが、最早見たままで良いと思います。

ところで、これらの蛹に「コーカサス特有の頭角突起がない」とおっしゃる方が多いと思いますが、そんな方のためにアトラス長角蛹を提示します。

少しアトラスの方が角が細く、また上の巻尺の目盛と比べると分かりやすいのですが、アトラスの方が頭角が短くなります。ジャワコーカサスとアトラスは殆ど大きさに差がないのですが、コーカサスの方が頭角が5cm位になるのに対し、アトラスは4cm程です。

ジャワコーカサスは、標本などで見ると頭角5cmは殆どいないようなのですが(私の家に118mm標本がありますが、頭角先端から口先までで47mmです)、蛹の段階では5cm以上あるようで、上の羽化した成虫は見ておりませんが、大して変わらないでしょう。今まで飼育では長角にならないと言われていましたが、飼育の方が角が長くなるのかもしれません。

私の3匹目は、11/28に見た所、まだ土中で幼虫で、蛹室作りかけだったらしく、1cmほど穴をあけて見てしまったのですが、あわてて塞ぎました。年末に見ようかと思っていますが、この刺激で長角は殆ど絶望的です。書いている本人が頭角先端から口先まで33mmの中角しか出していないのは恥ずかしいのですが、それで表題での私の名前を最後にいたしました。様々なデータを提供して下さったNOBU氏とキャスバルレムダイクン氏に感謝します。

14]ところで、蛹の重さも測定したのですが、このような結果が出ました。

表5.幼虫最大時と蛹の重さ
幼虫最大(g) 蛹化後重さ(g) 最大時と蛹化後の比
(1)NOBU氏の中角
84
64
0.76
(2)私の粘土中での短角
81
63
0.78
(3)私の中角
95
74
0.78
(4)NOBU氏御友人の長角
89
70
0.79
(5)NOBU氏の長角
86
74
0.86

これでは、縮んでいることで角が長くなる事にならなそうです・・・が、別の結果があります。

私の中角について、蛹化確認後も重さを量って行きました、結果、12/5に71gに減少していました。蛹化後も、少しづつ代謝などで重さを減じているわけです。

(4)の個体は、蛹化後かなり時間が経って(蛹化がかなり迫って)測定された物とのことです。それで、

表6.蛹化後十分時間が経ってから測定した蛹の重さと幼虫時最大体重
幼虫最大(g) 蛹化後重さ(g) 最大時と蛹化後の比
(3)私の中角
95
71
0.75
(4)NOBU氏御友人の長角
89
70
0.79

で、6gの差が1gにまで減っています。5g差が角の差、と考えて良いかもと思っています。

(1)の個体については、本当の最大は91gで、その後73gに減ってから84gに戻り、その後もう1度73gになったとの事でした。このような体重増減を繰り返すと角が長くなるのでは?など、この問題はまだ結論が出ていません。私の粘土中での蛹化個体の測定もし忘れてしまいました。

「縮み」は角の長さを変化させる理由を定性的には説明するものの、定量的に完全に説明するのは無理そうです。