歩け!走るな ★★☆
(Walk, Don't Run)

1966 US
監督:チャールズ・ウォルタース
出演:ケーリー・グラント、サマンサ・エッガー、ジム・ハットン、高美以子

左:ジム・ハットン、中:ケーリー・グラント、右:サマンサ・エッガー

内容として特に優れたところがあるわけではない作品ですが、内容面とは別に2点見る価値があります。1つは、ケーリー・グラントの実質的なラスト・フィルムであることです。その彼のお相手役を務める恩恵に浴したのは、彼同様イギリス出身のサマンサ・エッガーであり、派手さはないけれども、いいところのお嬢さん的な風情がある人です。言い方は少し変ですが、ウイリアム・ワイラーの「コレクター」(1965)で、テレンス・スタンプ演ずる変質者に誘拐される女子大生が実によく似合っていました。「歩け!走るな」では、ケーリー・グラントよりも30才以上も若いサマンサ・エッガーが、彼とあつあつの関係になるわけでは勿論なく、ケーリー・グラントは彼女とジム・ハットン演ずる競歩ランナーの間に立つキューピッドの役を演じています。とここまで書いて気付きましたが、実生活においては、この時ケーリー・グラントはサマンサ・エッガーとほぼ同い年のダイアン・キャノンと結婚していたのであり、まさに事実は小説よりも奇なりというところでしょうか。いずれにしても、実生活とは違い映画の中では万年独身貴族の権化のようなケーリー・グラントのキューピッドぶりは、なかなか笑えます。くだんの競歩ランナーが出場している競歩種目に、競技の途中で割り込んで彼に話し掛けたりするのです。さて、見る価値の2点目は、「歩け!走るな」は東京オリンピック当時の東京に舞台が置かれていて、撮影はおそらくかなり多くの部分が日本国内で行われていることです。「60年代の日本の街並ってこんな風だったかな?」と思わせる箇所もあるにはあり、そのような箇所はスタジオ撮影だと思われますが、個人的に当時は東京に住んでいたこともあってか、作品を見ながら「ああ、あの頃の東京の街の様子はこんな風だったんだな」とノスタルジックな気分に浸ることしきりです。勿論、当時の街の様子を味わいたいのであれば、当時の日本産映画を見た方が余程マシなことは確かですが、外人の目から見た当時の日本のイメージにもオツなものがあることは確かです。あいも変わらずクリーシェ的な日本描写がそこここに見受けられるとはいえ、やはりケーリー・グラントが主演しているだけあって、少なくともそれなりに楽しめる作品には仕上がっています。


2001/09/24 by 雷小僧
(2008/10/30 revised by Hiroshi Iruma)
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