ガールハント ★☆☆
(The Honeymoon Machine)

1961 US
監督:リチャード・ソープ
出演:スティーブ・マクイーン、ジム・ハットン、ブリジット・バズレン、ポーラ・プレンティス

上:スティーブ・マクイーン

1960年代初頭に公開された作品の中の一本に「ボーイハント」(1960)があり個人的な贔屓映画でもありますが、この作品の邦題「ガールハント」はそれを意識したのでしょうか。偶然なのか、どちらにもジム・ハットンとポーラ・プレンティスがカップルとして出演しています。けれども、いわゆる青春映画である「ボーイハント」とは異なり、「ガールハント」では一種の泥棒コメディが繰り広げられます。そもそも、海軍のミサイル弾道計算用コンピュータを利用してルーレットの出目を予想しカジノから大金を巻き上げるというストーリーは、どう見ても馬鹿馬鹿しいとしか言いようがありません。しかしながら、この作品には注目すべき点が1つあります。すなわち、「ガールハント」は、スティーブ・マクイーンが主演する恐らく唯一の正真正銘のコメディ作品であり、何と!スティーブ・マクイーンのコメディパフォーマンスが拝めるのです。必死こいて札束を数える、いつもと一味いや百味違うマクイーンの姿には笑えます(上掲画像参照)。確かにウィリアム・フォークナー原作の「華麗なる週末」(1969)にもコメディ色があるとはいえ、「ガールハント」のようなスラップスティックに近いコメディパフォーマンスが繰り広げられるわけではありません。テンションの高い俳優さんなのでコメディには向きそうにないように見えますが、意外にマクイーンのコメディパフォーマンスは悪くなく、これならばもう少しコメディに出演していても面白かったのではないかとすら思わせます。また、ド近眼娘を演じているポーラ・プレンティスのコメディセンスが光り、あのハワード・ホークスの傑作(と考えている人は実は多くありませんが)「男性の好きなスポーツ」(1964)で見せてくれる神出鬼没のパフォーマンスを既にこの作品で予見することができます。実を云えば、ヒロイン役はブリジット・バズレンという聞くところによれば当時MGMが売り出そうとしていた女優さんに割り振られています。にも関わらず、完全にプレンティスの存在感の方が勝っていて、バズレンという女優さんはこの作品以外では全く名前を聞かないのもむべなるかなという気がします(※)。加えて、アーネスト・ボーグナイン顔負けの醜男ジャック・ウエストンのコメディパーフォーマンスが冴えていて、殊にバーボンをグイグイ飲み干すシーンは傑作です。マクイーンの新たな側面が見出せるか、それともイメージが壊れて幻滅するかは是非見て確認して下さい。それから些細な疑問を付け加えておくと、この作品に限らず映画を見てていつも不思議に思うことでもありますが、イタリアのお札は本当にあんなに馬鹿でかい、或いはあんなに馬鹿でかかった(上掲画像参照)のでしょうか?

※ニコラス・レイの「キング・オブ・キングス」(1961)で有名なサロメの踊りを踊りながらジョン・ザ・バプティストの首を要求するサロメを演じているのが彼女であることに気が付きました(2004/06/24追記)。


2001/11/10 by 雷小僧
(2008/10/15 revised by Hiroshi Iruma)
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