奥様の裸は高くつく ★★☆
(The Gazebo)

1960 US
監督:ジョージ・マーシャル
出演:グレン・フォード、デビー・レイノルズ、カール・ライナー、ジョン・マクギヴァー

左:グレン・フォード、右:デビー・レイノルズ

グレン・フォードとデビー・レイノルズのコンビということで、両者ともに正確にはコメディアンでないながらもコメディセンスが光る俳優さんであり、かなり期待が持てます。実は、このコンビは前年にも同じくジョージ・マーシャルが監督した「それはキッスで始まった」(1959)でも共演しています。個人的な印象では、「それはキッスで始まった」の方はかなり凡庸な出来であるように思われ、このコンビから期待される妙味がほとんど得られず、イマイチに感じられます。それだけに、「奥様の裸は高くつく」はなかなか面白いように思われます。というのも、「奥様の裸は高くつく」には、ブラックなセンスが加味されており、それがグレン・フォードのとぼけた味とうまくマッチしているからです。個人的には、「Dear Heart」(1964)と共に当時のグレン・フォードのベスト作品ではないかとすら考えています。何しろ、自分の奥さん(デビー・レイノルズ)が若い頃撮ったヌード写真をネタにゆすられますが(邦題はそれに由来します)、困った彼は犯人を自宅に招いてズドンと一発お見舞いして殺してしまう(と自分では思う込む)という非コメディ的なストーリーが、そこまでは展開されます。しかしながら、さあ死体をどのように処理するかという段になってハチャメチャが始まります。ヒッチコックの「ハリーの災難」(1955)のようなとぼけた展開になり、実際ヒッチコックの名前が実名で作品の中で何度も登場します。ミステリーTV番組プロデューサーの主人公(グレン・フォード)が、TV番組製作の為を装って、死体をどう処理するべきかなどと、その方面の専門家ヒッチコックに電話で相談するのです。結局、彼は庭に新たに設置した四阿の下に死体を埋めますが(というわけで原題は「The Gazebo」なのです)、雨が降って死体を塗りこめたはずの外壁が崩れ落ちてしまいます。詳細については実際に作品を見て頂くこととして、いずれにせよこの後の死体を巡るブラックコメディにはなかなか笑えます。個人的なお気に入りは、自分が殺したと思っていた人物が実は自分をゆすっていた人物とは違う事実を知った主人公が、あわててアドレス帳を開いて親戚やら何やらに片っ端から電話をかけまくって無事かどうか確かめているシーンで、グレン・フォードのとぼけた味がいかにも絶妙に活かされています。また、デビー・レイノルズも、この頃は、それなりに年季を積み且つまだ若く愛らしかった時期でもあり、とぼけたグレン・フォードと好対照をなしています。ただ、個人的なお気に入り性格俳優であるジョン・マクギヴァーのみは、いつもの彼のマクギヴァー節が聞かれず少々残念である一方、その代わりにこれまた名性格女優のドロ・ミランダが、女中役を演じ独特の甲高い声を張り上げ、ここでも異彩を放っています。この作品にはコンピュータでカラー化されたバージョンもあるそうですが、カラー化する必然性が全くない作品なので、手に入れる場合はオリジナルの白黒バージョンを購入することをお薦めします。


2001/11/10 by 雷小僧
(2008/10/14 revised by Hiroshi Iruma)
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