小さな目撃者 ★☆☆
(Eyewitness)

1971 UK
監督:ジョン・ハフ
出演:マーク・レスター、ライオル・ジェフリーズ、スーザン・ジョージ、ジェレミー・ケンプ

左:スーザン・ジョージ、右:マーク・レスター坊や

「小さな恋のメロディ」(1971)のマーク・レスター坊やが活躍する、というよりも逃げ廻る作品であり、子供向け映画であると見なせるかもしれません。あるアフリカの国からきた大統領を狙撃した犯人の姿を偶然現場で目撃してしまった少年(マーク・レスター)は、人々にその事実を知らせようとするにも関わらず、普段狼少年のように振舞っていた過去の行状が災いして、最初は誰にも信じて貰えないというストーリーが繰り広げられ、そのような展開からは童話的な教訓たんであるような印象を受けます。というよりも、敢えて狼少年の寓話を利用する必要はなかったようにも見え、それがなくともスリリングであり、もう少しストレートな展開にした方が効果的であったように思われます。大人になった現在見返しても興味がそそられるのは、メインキャストに関してよりもむしろ子供向け作品には余り縁のなさそうな脇役の方に関してです。子供達が活躍する「若草の祈り」(1970)を監督した実績のあるライオネル・ジェフリーズについては子供向け作品に出演しても大きな不思議はありませんが、警察署長(?)を演ずるジェレミー・ケンプと悪徳警官を演ずるピーター・ボーンはこのジャンルの作品としては意外なキャスティングに見えます。しかしながら、それは必ずしもマイナスではなく、個人的な印象では効果的であるように思われます。公開当時であれば、自分とほぼ同年齢のマーク・レスター坊やに感情移入し、逃げても逃げても悪漢に追いかけられる悪夢のようなストーリーとして見たであろうことは必至であり(当時小生は小学生だったので映画館は保護者同伴でなければ立入禁止でした)、また、ラストのカーチェイスシーンなどは子供向け作品とは思えない程のリアリティと迫力があるのも確かで、息継ぐ暇なくこれらのシーンに見入っていたに違いないでしょう。さすがに、大人になってからこの作品を見ると、子供時分のような単純な見方は可能でなくなっていることもあり、様々な欠陥に気が付いてしまうので罪なものです。たとえば、先程の狼少年のくだりについてもそうですが、そもそも悪徳警官(ピーター・ボーン)がなぜアフリカの大統領を暗殺したか不明であるどころか、政治的信条など持っているようにはとても思えない一介の警察官がなぜ要人暗殺をする必要があったかに関する説明は皆無であることにいやでも気付かされます。勿論、それを解明することに作品の焦点が置かれているわけではないとしても、見ていて不自然さを払拭し切れないのは事実です。いずれにせよ、それは大人の視点から見た場合であり、余計なことを気にしなければそれなりに楽しめる作品であることに間違いはなく、それ以上のものではないとはいえ、子供向け作品としては出来は悪くありません。イギリス出身の監督ジョン・ハフは、この後アメリカで活躍するようになり、「ヘルハウス」(1973)、「小さな目撃者」に出演しているスーザン・ジョージが主演する「ダーティー・メリー・クレイジー・ラリー」(1974)及びいくつかのディズニー作品を監督します。


2005/02/26 by 雷小僧
(2008/11/17 revised by Hiroshi Iruma)
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