トリプル・クロス ★☆☆
(Triple Cross)

1966 UK
監督:テレンス・ヤング
出演:クリストファー・プラマー、ユル・ブリナー、ロミー・シュナイダー、トレバー・ハワード
左:ロミー・シュナイダー、中:クリストファー・プラマー、右:ゲルト・フレーベ

テレンス・ヤング監督といえばジェームズ・ボンドシリーズがすぐに頭に浮かびますが、それ以外の作品ということになると知名度の割にはこれといった作品が思い浮かばないのが正直なところです。というよりも、凡作が多いのですね。恐らくジェームズ・ボンドシリーズ以外で最も知られた作品といえば、オードリー・ヘップバーンが主演した「暗くなるまで待って」(1967)であると考えられますが、これとてヘップバーンのネームバリューに依存したところがあり、個人的にはそれほど気に入っている作品ではありません。そもそも、「暗くなるまで待って」で悪役を演じているアラン・アーキンはどうしてもコメディアンのイメージがつきまとう為にどうもしっくりとしません。では、それ以外にテレンス・ヤングの60、70年代の作品の中で多少なりとも評価できる作品があるかと問われれば、「トリプル・クロス」と答えるでしょう。二重スパイならぬ三重スパイの物語で、イギリスを裏切ったように見せかけて実はイギリスに有利になるようドイツ側に情報を流していたイギリス人スパイ、エディ・チャップマンに関する実話を元にした作品です。なんと、そうとは知らないナチスは彼に鉄十字勲章までも授与してしまいます。そのエディ・チャップマンを演じているのが貴族的な風貌を持つクリストファー・プラマーであり、ジェームズ・ボンド流のド派手なアクションがあるわけではないけれども、エディ・チャップマンが実際に置かれている立場から考えると彼の演ずるキャラクターがどこかジェームズ・ボンド風にカジュアルなのは、やはり監督がジェームズ・ボンドシリーズのテレンス・ヤングであることとも関係しているかもしれません。その他の俳優さんでは、ユル・ブリナーがドイツ軍将校を演じているのが興味深く、また「トリプル・クロス」で最も目立っているのは、大きな体躯を持ちながら細かいことを詮索するのが好きなドイツ軍将校を演ずるゲルト・フレーベです。勿論、ロミー・シュナイダーの名前も挙げておきましょう。類似する題材を扱った作品として「偽りの売国奴」(1961)が挙げられ、キャラクタースタディという面からいえばそちらの方が遥かに優れた作品であるとはいえ、エンターテインメント性という観点から見れば「トリプル・クロス」も監督がテレンス・ヤングであるだけにそれなりの作品だと評価できます。60年代70年代のジェームズ・ボンド以外のテレンス・ヤング作品の中では、最も見られる作品であることには間違いがありません。昔はよくTVで放映されていましたが、現在では見ることが困難になった作品の1つです。


2003/12/06 by 雷小僧
(2008/11/03 revised by Hiroshi Iruma)
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