コーマ ★☆☆
(Coma)

1978 US
監督:マイケル・クライトン
出演:ジュヌビエーブ・ビジョルド、マイケル・ダグラス、リチャード・ウイドマーク、E・アシュレー

左:マイケル・ダグラス、右:ジュヌビエーブ・ビジョルド

小生は、ペーパーバックが置いてある書店に入ると、マイケル・クライトンとロビン・クックの新刊が出ていないか捜し廻るのを常としていますが、「コーマ」は、両者が共に関係しているので、無視するわけにはいかない作品なのです。両者とも医者上がりのベストセラー作家であり、「コーマ」に関していえば、ロビン・クックが原作を書き、マイケル・クライトンが監督をしています。余談になりますが、マイケル・クライトンは弟と共同で書いた小説に関しては、マイケル・ダグラスの名前で出版したこともあるそうであり、当時は役者としてはまだまだひよっ子であったマイケル・ダグラスを準主演に起用しているのは、偶然であろうとはいえなかなか興味深いところです。ロビン・クック+マイケル・クライトンという強力コンビの手になる「コーマ」には、両者ともに医者上がりとあって、医療施設を舞台とするミステリーというそれまでにはあまりなかった新鮮なアイデアが見て取れます。病院を舞台とし、ミステリー要素を合わせもつ70年代の作品としては、「ホスピタル」(1971)が思い起されますが、そちらには医療制度批判的色彩が濃厚にあったのに対し、「コーマ」は純粋にミステリーとして楽しめます。コーマに陥った患者を収容するジェファーソン施設の非人間的で官僚的な運営や臓器売買など、「コーマ」にも医療制度批判が全く見られないわけではないとはいえ、フィクション性が際立っているので現実的な医療制度批判が込められているようには見えず、「コーマ」はむしろたまたま医療施設に舞台が置かれるミステリーであると見なすべきしょう。それに対し、「ホスピタル」は、たまたまミステリー仕立ではあっても医療制度批判が本来意図されている作品であると見なせます。いずれにしても、事故に見せかけて手術中の患者を故意に脳死状態にし、臓器を売って金儲けをする悪辣な医療組織が暗躍するストーリー展開には、よくよく考えてみると凄まじいものがあります。そのような素材は、たとえ思い付いたとしても、少しでも信憑性を持つ作品へと仕上げるのは極めて難しいはずであるにも関わらず、ロビン・クック+マイケル・クライトンのコンビは、軽々とそれを成し遂げるのです。まさに、両者の面目躍如といったところでしょう。また、探偵役にあたる主人公を演じているのが丸顔ベビーフェースのジュヌビエーブ・ビジョルドであるのも、この手のミステリー作品としては新鮮です。たとえばエルキュール・ポワロやミス・マープルのような高名な探偵が主人公であると、事件そのものからは離れた立場に立つ名探偵が、外から事件を客観的に観察するという展開になりがちであるのに対し、「コーマ」の主人公は、自分自身が事件の内部にいやでも関わらざるを得ない弱い立場にあり、最後は自らも危機一髪の状況に追い込まれるのです。いわゆる巻き込まれ型のサスペンスが、巧みに醸成されているということです。ということで、スリリングなストーリー展開には面白味がありますが、とはいえロビン・クックやマイケル・クライトンのベストセラー小説を何度も繰り返して読む人は恐らくほとんどいないはずであるのと同様に、彼らのベストセラー小説の映画化に関しても、一度ストーリーが分かると何度も見たくなるタイプの作品たり得ないことも確かであり、よって★1つの評価に留まっています。最後に付け加えると、医者の一人としてエド・ハリスが出演しています。彼は「コーマ」がデビュー作ではないかと思われますが、当時から既にいかにもエド・ハリス的な雰囲気があります。


2003/04/26 by 雷小僧
(2008/12/05 revised by Hiroshi Iruma)
ホーム:http://www.asahi-net.or.jp/~hj7h-tkhs/jap_actress.htm
メール::hj7h-tkhs@asahi-net.or.jp