まごころを君に ★★☆
(Charly)

1968 US
監督:ラルフ・ネルソン
出演:クリフ・ロバートソン、クレア・ブルーム、リリア・スカラ、ディック・バン・パットン

左:クレア・ブルーム、右:クリフ・ロバートソン

主演のクリフ・ロバートソンは、この作品によりアカデミー主演男優賞に輝いています。知恵遅れのチャーリー(クリフ・ロバートソン)が脳外科手術を受け、アインシュタインも真っ青の天才になるというストーリーが展開され、殊に前半は、一介の清掃員が瞬く間に出世し大会社の社長になる「努力しないで出世する方法」(1967)のようなかなり都合の良いサクセスストーリーのバリエーションであると見なせないこともありません。さんざん馬鹿にされていたチャーリーが、次第に馬鹿にしていたチンケな輩を見返していくプロセスには爽快なものがあり、そのようなチャーリーの姿に感情移入するのはた易いはずです。けれども、「まごころを君に」は、「努力しないで出世する方法」のようなコメディでは全くなく、ハッピーエンドでは終りません。チャーリーが受けた手術には一時的な効果しかないことが分かり、最後に元の知恵遅れのチャーリーに戻ったところでジエンドになるからです。ある意味において、この結末は必然的であるかもしれません。というのも、殊にキリスト教社会においては、神の創造物たる人間が神によって授けられたはずの能力を自らの手で変えることは、傲慢であると考えられるのが普通であり、神聖冒涜であると見なされるからです。その意味において、「まごころを君に」はキリスト教的な倫理観が強く現れている作品でもあり、たとえばマイケル・J・フォックスが主演したサクセスストーリー「摩天楼はバラ色に」(1987)のようなハッピーエンドには決して終わらないのです。というよりも、実力主義のアメリカ人の目からすれば、脳外科手術によって天才になり有名人になるというのは、アブドラ・ザ・ブッチャー並みの反則技なのかもしれません。いずれにしても、天才になるにつれて次第に性格も変化していくチャーリーを演ずるクリフ・ロバートソンのオスカーパフォーマンスは、作品の見所の1つです。またラビ・シャンカールの音楽が独特であり、一種異様な雰囲気がそれによって醸し出だされています。尚、ダニエル・キイスによる原作のタイトル「Flowers for Algernon」と同じく、「アルジャーノンに花束を」と題される場合もあるようです。


2001/04/22 by 雷小僧
(2008/11/09 revised by Hiroshi Iruma)
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