遺言シネマ殺人事件 ★★☆
(The Cat and the Canary)

1978 UK
監督:ラドリー・メツガー
出演:オナー・ブラックマン、マイケル・カラン、ウエンディ・ヒラー、キャロル・リンレイ

左:キャロル・リンレイ、右:オリビア・ハッセー

「遺言シネマ殺人事件」を監督しているのはラドリー・メツガーという御仁ですが、「誰それ?」と思ったとしても何の不思議もないはずです。というのも、彼は本来ポルノ映画の監督だからです。とはいえ、近所のエロビデオショップで売っているエロビデオの監督とは違い、アンディ・ウォーホールのようなビッグネームも賞賛するスタイリッシュなポルノ映画を監督しているようです。調べてみると結構不思議な人で、片やヘンリー・パリスという別名でハードコアポルノを撮っているかと思えば、片や大学で映画製作に関する講義などもしているようです。肝心の作品に関してですが、「遺言シネマ殺人事件」はホラーミステリー調の作品であり、リメイクです。同じ題材が何度かリメイクされているようであり、1939年に製作されたバージョンではボブ・ホープが主演しています。コメディアンのボブ・ホープが主演するミステリーとは興味深いものがありますが、個人的には現在のところ見たことがないのでコメントは残念ながらできません。ラドリー・メツガー版に関してまず最初に挙げねばならないのは、ポルノ映画の監督さんが監督しているにもかかわらず、出演メンバーが豪華であることです。オナー・ブラックマン、マイケル・カラン、エドワード・フォックス、ウエンディ・ヒラー、オリビア・ハッセー、キャロル・リンレイ、ダニエル・マッセー、ウィルフレッド・ハイド・ホワイト(キャロル・リンレイ以外はイギリスの俳優さん達です)と出てくる出てくる。しかも中にはウエンディ・ヒラーのように、当人が出演するだけで映画の格が1つは上がる俳優さんまで含まれ、実に魅力的なキャストです。また、ラドリー・メツガーがスタイリッシュなポルノ映画を撮るとは、嘘ではなかろうことが「遺言シネマ殺人事件」を見ていると分かります。というのも、撮影や室内インテリアなどを含め扱いが極めてスタイリッシュなのです。とはいえ、何よりも魅力的なのは、屋敷に大勢の人々が招待され、一人二人とメンバーが次々と殺されていくというミステリー仕立てのプロット展開であり、このようなストーリーはいつの時代にもオーディエンスを魅了してきたことが、同じ素材が何度もリメイクされている事実からも分かるはずです。謎解きにあたる部分が多少イマイチな印象を受けるとはいえ、屋敷に閉じ込められた各メンバーの運命やいかにと、或いは次に誰が殺されるのかと、ワクワクドキドキハラハラしながら見ることができるのがこの種の作品の持つ醍醐味であり、その点でも「遺言シネマ殺人事件」はオーディエンスの期待を裏切らないはずです。また、この手のミステリーは一回見てしまえば後はネタが分かってそれ以上見たくなくなるのではないかと考えられるかもしれませんが、意外なことにこの手の作品は、ネタが分かったからといって、必ずしもオーディエンスの興味が完全に削がれるわけではないようです。恐らくミステリー映画ではあっても、謎解きの結末だけに重点が置かれているわけではなく、それに至るプロセスがより重要であるからではないかと思われます。いずれにしても、「遺言シネマ殺人事件」は、安っぽい邦題にも関わらず、ミステリー映画の伝統を忠実に守ったなかなか面白い作品であると評価できます。


2001/10/21 by 雷小僧
(2008/12/12 revised by Hiroshi Iruma)
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