黒ひげ大旋風 ★★☆
(Blackbeard's Ghost)

1968 US
監督:ロバート・スティーブンスン
出演:ピーター・ユスティノフ、ディーン・ジョーンズ、スザンヌ・プレシェット、エルザ・ランチェスター

左:ピーター・ユスティノフ、右:ディーン・ジョーンズ

ロバート・スティーブンスンが監督したディズニー映画「難破船」(1962)を取上げたついでに、「黒ひげ大旋風」も取り上げておきましょう。この手の作品は、あれこれ評価するよりはとにかく家族揃って単純に楽しもうというノリで見るべき作品なのでここで敢えて述べるべきことはほとんどありませんが、「難破船」同様に「黒ひげ大旋風」も一家団欒ホノボノ映画の典型であると見なせます。ディズニーは、このタイプの作品を製作するのに長けていたことが「黒ひげ大旋風」や「難破船」などを見ているとよく分かります。この手の作品は、配役を見ただけでどのようなタイプの映画であるかが一目瞭然になるのですね。ピーター・ユスティノフが海賊の亡霊を演じていると聞いただけで、必ずやユーモラスな亡霊に違いないと予想できます。考えて見れば、彼は「クォ・ヴァディス」(1951)で暴君ネロを演じていましたが、そのネロですらどこかコミカルなタッチがありました。また、同じくロバート・スティーブンスンが監督した「ラブ・バッグ」(1969)が思い出されるディズニー御用達俳優ディーン・ジョーンズは、典型的にこの手のお子様映画にマッチした俳優さんです。エリザベス・テイラーを丸型にしたイメージを持つスザンヌ・プレシェットは、それにも関わらずエリザベス・テイラーとは異なり、ロンパールームの先生になればさぞかし似合うだろうと思わせる、殊に低年齢層の子供に受けそうなパーソナリティと雰囲気を持っています。そのようなイメージの為に、彼女はトップスターになり損なったとも言えるかもしれません。怪優チャールズ・ロートンの奥さんであったエルザ・ランチェスターがいつものように陽気なキャラクターを演じています。このようなディズニー映画に典型的に見出されるキャラクターが登場する中で、ピーター・ユスティノフ演ずる海賊の亡霊が、至るところで騒動を起しながら、町を仕切る悪漢を懲らしめるコミカルで単純なストーリーが繰り広げられ、いわばトリックスターテーマのバリエーションが展開されると考えれば良いでしょう。ところで、「黒ひげ大旋風」には不思議なことが1つあって、それはほとんどのシーンが夜間撮影されていることです。100分ほどの上映時間の内、昼間のシーンはあわせて5分にもならないはずです。町の運動会のシーンですら夜間であり、そもそも夜間である必然性などどこにもないはずです。意図的であるか否かは定かではありませんが、確かに夜間撮影であるだけに、どこかファンタスティックな雰囲気が醸し出されているようにも見えます。


2003/03/29 by 雷小僧
(2008/11/07 revised by Hiroshi Iruma)
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