難破船 ★★☆
(In Serch of the Castaways)

1962 US
監督:ロバート・スティーブンスン
出演:ヘイリー・ミルズ、モーリス・シュバリエ、W・H・ホワイト、マイケル・アンダーソン・Jr

左:モーリス・シュバリエ、中:ヘイリー・ミルズ、右:マイケル・アンダーソン・Jr

ロバート・スティーブンスンが監督したディズニー映画であり、ガキンチョをメインターゲットとした作品です。通常のボーイガキンチョであれば、たとえば「宝島」や「地底探検」などの冒険物語をワクワクしながら読むのが、コンピュータゲームなど存在しなかった頃のガキンチョライフの一齣であったわけですが、「難破船」という作品はまさにそのようなノリの冒険ファンタジー映画です。主人公のやんちゃ娘(ヘイリー・ミルズ)が、海岸で拾った瓶の中に入っていた手紙を元に、世界のどこかで難破した父親を捜して世界中を冒険しまくるという単純なストーリーが展開され、洪水あり地震あり火山の噴火ありの典型的なガキンチョ向けアドベンチャーが繰り広げられます。とはいえ、どちらかと言えばガキンチョだけが一方的に楽しむというよりは、一家揃って皆でホノボノと楽しむことが念頭に置かれているファミリー映画でもあります。単なるガキンチョ映画とは、ガキンチョ一人で映画館に見に行かせるとPTAがうるさいので、大人にとって全く面白くなくとも同伴せざるを得ないので大人も一緒に見ざるを得ないたぐいの作品を指しますが(ということで興行者側は倍の収入が得られる仕組みになっています)、ファミリー映画とは、一家団欒の一貫として真に大人と子供が一緒に見ることのできる作品を指します。世界を冒険する一行というのが、二人のガキンチョと二人のじいさん(モーリス・シュバリエ、ウィルフリッド・ハイド・ホワイト)、及びそれに加えてどう見てもヒーロータイプには見えないマイケル・アンダーソン・Jr演ずる青年であり、たとえば最近の作品では「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのような、確かにファンタジーではあっても葛藤するヒーローを主人公とするシリアスなアドベンチャーストーリーが繰り広げられる作品とは異なり、「難破船」においては、一見すると危機一髪に見えるシーンがふんだんに挿入されていても、基本的にはアドベンチャー・ファミリータイプのほのぼのファンタジーが繰り広げられます。たとえば、一行は山岳地帯で大地震やそれによって発生した崖崩れに見舞われながらも、次のシーンでは崩れた岩にソリのように乗っかって氷河の上を滑っていくという具合に、危険な場面に遭遇しても次の瞬間にはそれが魔術のように解消されていくのです。いわばアドベンチャーストーリーでありながら、鋭いトゲは予め抜かれており、たとえれば消化しやすいように予め骨が抜かれて調理された魚料理というようなところでしょうか。先程挙げた「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや、或いは「ハリー・ポッター」シリーズにしても、子供から大人になる為の一種のイニシエーションとして主人公が冒険に巻き込まれる側面が強くあり、従って危機に直面した主人公は己の力で状況を打開することが要求されるのに対して、「難破船」にはそのような大人になる為のイニシエーションなどあまり関係はなく、危機的状況は状況そのものによってマジカルに解決されるのです。そこが、ディズニー的であると見なせるかもしれません。独特なアクセントのシュバリエ調イングリッシュを操るモーリス・シュバリエがいつものようにノホホンとした調子でメインキャストに加わっていると言えば、だいたいどのような作品であるか想像できるのではないでしょうか。ということで、家族揃って見る作品としてはパーフェクトであると評せるでしょう。そう言えば、背の高い原住民が登場しますが、「キング・ソロモン」(1950)のワトゥーシ族がモデルでしょうか?


2003/03/29 by 雷小僧
(2008/10/20 revised by Hiroshi Iruma)
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