『ジャングル大帝』と二つの映画

佐藤和美

 手塚治虫は映画からいろいろな影響を受けたマンガ家である。

 霜月たかなか編『誕生!「手塚治虫」』(朝日ソノラマ)は手塚治虫が影響を受けたいろいろなものを追求した本である。その中の石上三登志の書いた「手塚少年と幻の戦前映画」から『ジャングル大帝』に関連していると思われる二つの映画に関して引用・紹介しよう。

・その一 『パンジャ』
 「たとえば、'34年(昭和9年)に日本公開されている、これはマレーでの猛獣捕獲ドキュメンタリー『パンジャ』('34年)−見たか見ないかはともかく、この題名の記憶がジャングルの王の名前に利用されたに違いない。この映画、原題は『ワイルド・カーゴ』つまり「凶暴な積荷」だから、パンジャはたぶん虎かなんかの名前なんだろう。」

・その二 『密林の王者』('33年)
 「アフリカの奥地。そこのライオンの守り神のような野生児ライオン・マン(クラブ)が、ある時、捕らえられた「仲間」を逃がそうとしてナントカ族の集落に近づき、逆に白人ハンターの罠にかかってしまう。しかしアメリカに船が着く直前、彼は海に飛び込んで逃亡。泳ぎついて後に出会った女性に心ひかれ、人間生活を決心。彼女から「人語」を教わりながら、サーカスのショウにライオンたちと一緒に出演。でも、やはり野生こそが自分の世界と納得し、貯めた金でライオンたちを買い、アフリカへと帰ってゆく……。
 あのジャングルの王である白ライオン……パンジャ=レオ=ルネ三代のドラマを、ここに重ねられること、ターザン映画どころではないだろう。その上、映画のクライマックスにはサーカスの火災スペクタクルがあり、これは象の暴走、建物の崩壊、バスの横転と、かなり凄い。そして、だからこそ『ジャングル大帝』にも、サーカス火災のスペクタクルは受け継がれた?」

(2001・2・4)


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