網膜の映像

佐藤和美

 「瞳の中の訪問者」として映画化された「ブラック・ジャック・春一番」(少年チャンピオン昭和52年4月11日号)だが、この作品では死の直前の映像が網膜に写真のように焼き付くというアイディアが使われている。

 このアイディアには先行する「白い幻影」(女性セブン昭和47年8月8日増刊号)という短編作品がすでに存在する。(この作品では死の直前の映像ではないが。)

 だがこのアイディアもさらに先行する「ケン1探偵長・ゴリラ事件」(少年クラブ昭和30年お正月大増刊号)で使われていたのだ。

 こうして調べてみると、このアイディアもずいぶん古くから使われているが、これはさらに溯れるのだ。

 手塚治虫はアメリカ映画「透明光線」(1936年)に関して、石上三登志との対談で次のように語っている。(講談社版全集「手塚治虫対談集3」)
「それで、苦悶のまま死んだ男のですね、目を調べる。そうするとね、相手がうつったまま死んでる。だからそこは、まったく「ブラック・ジャック/春一番」でありまして。」

「網膜の映像」はアメリカ映画「透明光線」が原点だったのである。

(2000・05・28)


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