「シュマリ」でのイナゴ・ネズミの大発生

佐藤和美

 「シュマリ」では北海道でのイナゴ・ネズミの大発生が描かれている。

 北海道でのイナゴ・ネズミの大発生について、朝日新聞アイヌ民族取材班「コタンに生きる」(岩波同時代ライブラリー)に興味深いことが書かれているので、ここに引用する。

原野に分け入る開拓にとって、北海道独特のエゾオオカミの存在は大きな脅威だった。オオカミ狩りには懸賞金がかけられ、屯田兵らによって手当たり次第に射殺された。エゾオオカミが絶滅したのは明治二十九年ごろと推定されている。このとばっちりを受けて、キタキツネも一時、激減した。野ネズミやウサギなどの小動物を補食する天敵が少なくなったため、樹皮や小鳥のタマゴが食い荒らされるなどの被害が出た。すると、小鳥のエサになっていた昆虫類が大繁殖して地上に現れた。その代表的なものがイナゴの大発生である。
 北海道でのイナゴ・ネズミの大発生は天災ではなく、和人による食物連鎖の破壊が原因であり、人災だったのである。

(1998・9・9)


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