言葉・思いつくままに



フライトナイト

佐藤和美 (2021/08/04)

「フライトナイト」という映画があります。「フライトナイト」と言っても飛行機とは無関係で、吸血鬼の映画です。飛行機のフライトは「flight」ですが、「フライトナイト」のフライトは「fright」です。「フライトナイト」は「恐怖の夜」と言う意味でした。



マタ

佐藤和美 (2021/07/19)

野比のび太君が言ってたな。
ヤマタノオロチは首が8だから、マタは七つなはずだけど、なんでヤマタって言うんだろ。

「フタマタ」っていう言葉があるけど、マタは一つなはずだけど、なんで「フタマタ」なの。
のび太君なら、なんていうかな。



両国

佐藤和美 (2021/07/13)

筆者はかつて次のように書いたことがあります。

>佐藤和美 (1998/05/21)
>両国という地名の由来ですが、あのあたりは「武蔵」(むさし)と「下総」(しもうさ)のくにざかいにあたるところで、両方の国ということで、両国という地名がつきました。両国橋という橋があって、この橋が「武蔵」と「下総」をつなげていたそうです。これが両国という地名のもとになったのですね。

朝日新聞社会部『東京地名考』朝日文庫
「両国」の項には
「両国橋へ。(中略)橋名は、昔は隅田川をはさんで武蔵国と下総国に分かれていたことによる。」
と、あります。

また、Wikipediaの両国(東京都)の項にも「 1686年(貞享3年)(一説によれば寛永年間(1622年-1643年))に、のちの南葛飾郡が武蔵国へ編入されるまでは隅田川(当時は大川)が下総国と武蔵国の国境であったため、大橋(両国橋)はその両方の国に跨っていた。これが両国橋の名称の由来となっている。」と記述されています。

ところが、この「両国橋という橋があって、この橋が「武蔵」と「下総」をつなげていたそうです。これが両国という地名のもとになったのですね。」というのが、まちがっていたようなのです。

筆者がこのことに気づいたのは次の文章を読んだときでした。

「東京人」2015年5月号 特集「東京35区」の境界線を歩く
谷口榮「水と歴史の東京「東」散歩」
「大きく見ると、古代・中世まで本所区・深川区域と、向島区・城東区域が、武蔵・下総の二国に分かれていたものが、江戸時代になって武蔵国へ編入された。近代に入って、明治十一年に本所区・深川区域が東京市、向島区・城東区域が東京府南葛飾郡とに分かれる。その境はかつての武蔵・下総二国の国境で線引きされている。」
「現在の墨田区向島五丁目辺りから隅田川が東西に分流し、墨田区向島は三角州状になっていたのである。家康の江戸入部以降、隅田川の改修によって、今の西に落ちる隅田川の川筋が本流となり、東へ落ちていた本来の隅田川の川筋は細流化とともに隅田川としての記憶は失われていくが、境界の記憶だけは受け継がれ、近代になると東京市と東京府南葛飾郡の境、そして本所区と向島区を分ける境となっていた。今の墨田区の「鳩の街商店街」がかつての武蔵と下総両国の境となっていた隅田川の川筋の故地にあたる。」

つまり、両国橋は武蔵と下総をつなげてない! 両国橋の両側ともに武蔵である!
ビックリしました(汗)。

『角川日本地名大辞典 13東京都』
「両国橋」の項
「明暦3年の江戸大火後、江戸市域を隅田川以東に拡張するため、万治2年普請奉行柴山権右衛門・坪内藤左衛門のもとに起工され、寛文元年に竣工した御入用橋(官設の橋)。古称は大橋であったが、当時の江東方面は下総国であったことから両国橋と俗称され、元禄6年に新大橋が架設された際に俗称の両国橋を公式の名称とした。」

つまり、
×「両国橋は武蔵と下総をつなげている」
〇「両国橋は武蔵と下総方面をつなげている」
ということでしょうか。





佐藤和美 (2018/06/03)

「亀」は英語で「タートル」だとばっかり思ってたんですが。

吉村昭『お医者さん・患者さん』(中公文庫)
「そうした情景に毎日接している私は、唐突なことではあるが、亀の英語である tortoise(陸上または淡水に棲む亀)、turtle(海亀)という言葉を思い起こす。
 その二つの言葉は、語源的にラテン語の「ねじ曲げる」という言葉から発しているが、それは亀の肢がねじ曲がった形をしていることに由来するという。
 さらにラテン語の「ねじ曲げる」という言葉は、torture(拷問)という英語も生み出している。これは、体や手、足、首、指をねじ曲げて肉体的苦痛をあたえ、自白を強要することから必然的に作られた言葉なのである。」

いちおう、英語の辞典も確認しておきましょう。

『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
「亀 a turtle;[陸生の] a tortoise(<米>では亀を全部 turtle と呼ぶが、陸生のものを tortoise とも言う。<英>では turtle はおもに海水産のもので、陸生・淡水産の亀を通例 tortoise と言う)」

吉村昭が書いているのは、アメリカ英語ではなく、イギリス英語のことのようですね。



三四郎は、父親が三男、本人が四男

佐藤和美 (2018/05/07)

三四郎は、父親が三男で、本人が四男だったという話。

奥富敬之『名字の歴史学』(角川選書)より。
「太郎・次郎・三郎というのは、もともとはたんに長男・次男・三男を表しているだけのもので、名前ではなかったというのである。
 生まれた順番であって名前ではなかったという意味で、これを「輩行(はいこう)ノ仮名(けみょう)」という。
 この「輩行ノ仮名」は、長男の意味である太郎からはじまって、次郎・三郎・四郎……九郎・十郎から、さらに”余り一”とでもいうように、余一郎・余次郎・余三郎……余九郎まである。つまり男子の定員は、十九人ということになる。そしてのちに余一郎などの「余」は、「与」を用いて「与一郎」とも書くようになる。このとき”余太郎”とはいわない。長男というのはただ一人だけであり、”余太郎(余りの長男)”などというものは、絶対にあり得ないからである。
 源平合戦の前後の頃、父が祖父の太郎で、その五郎が自分だというとき、太郎五郎と名乗っている例がある。三郎四郎だったら、父は祖父の三郎(三男)で、自分は父の四郎だというのである。二重型の「輩行ノ仮名」ともいえる。その短縮版といえるものも現れた。太郎五郎の短縮形が太五郎あるいは大五郎で、三郎四郎の短縮形が三四郎である。なお父が祖父の太郎で、自分も同じく父の太郎である場合、「太郎太郎」とはいわない。又太郎・弥太郎あるいは小太郎といった。ちなみに北条義時は、小四郎と名乗っている。父時政が四郎で義時は時政の四男だったからである。」



「脇」と「脅」

佐藤和美 (2017/11/16)

漢字には異体字というのがあります。
「峰」には「峯」という異体字があります。パーツである「山」の位置が違いますね。

さて、「脇」と「脅」は「月」と「力」が三つで、パーツは同じです。「脇」と「脅」は異体字の関係なんだそうです。
以下、円満字二郎『漢和辞典に聴け!』(ちくま新書)より
「それでは、「脇」と「脅」はどうだろう。この二つも、パーツの位置が変わっただけの漢字だ。しかし、「脇」は「わき」であって、「脅」は「おどかす」「おびやかす」だから、意味は全然違う。異体字同士とは、とうてい思えない。しかし、音読みはどちらも「キョウ」である。そこで漢和辞典の説明をしっかり読むと、両者は昔は異体字の関係にあって、「わき」と「おどかす」「おびやかす」の両方の意味を合わせ持っていたと書いてある。それが次第に、、「わき」の意味の場合は「脇」に、「おどかす」「おびやかす」の意味の場合は「脅」にと、分裂していったのである。」

「脇」と「脅」が異体字の関係だなんて、驚いてしまいますね。



立(リツ)

佐藤和美 (2017/11/15)

「断トツ」ですが、「断然トップ」の略とのこと。「トップ」の略が「トツ」って言うのも、おもしろいですね。

さて「立」の音読みは呉音・漢音で「リュウ(旧仮名、リフ)」です。「リツ」は慣用音です。
「建立」は「コンリュウ」ですね。

以下、円満字二郎『漢和辞典に聴け!』(ちくま新書)より
「さて、この「リフ」は、次に続く漢字によっては、発音が変化することがある。「立腹」を「リフフク」と読むのは読みにくいので「リップク」、「立脚」も同じような事情で「リフキャク」ではなく「リッキャク」となる。このように、ある発音が次に続く発音とのつながりの上から変化して、小さい「ッ」と読まれるようになることを、「促音便」という。
 ところが、「立」の場合、この促音便が一人歩きしてしまい、「独立」とか「設立」のように、次に何も続かない場合にも「リツ」と読まれるようになってしまったのだ。」

「立」が「リツ」になるくらいだから、「トップ」の略が「トツ」になっても不思議はない?



tomb

佐藤和美 (2017/01/29)

ゲド戦記シリーズの二冊目「こわれた腕環」の原題は「The Tombs of Atuan」(アチュアンの墓所)です。
ところで、この「tomb」はなんて発音するのかな?
調べればすぐわかるのでしょうが、取りあえず「トンブ」にしておくか。(発音することもないだろうし)

「tomb」の発音がわかったのは、映画「トゥームレイダー」からです。
「トゥームレイダー」って、スペルは? 意味は?
「トゥームレイダー」のスペルは「Tomb Raider」。意味は「墓荒らし」か。カッコよく言えば「トレジャーハンター」ってとこですね。
インディージョーンズシリーズの1作目が「レイダース」でしたね。あれもトレジャーハンター物ですね。
それにしても、「tomb」って、「トゥーム」って読むのか!



クエン酸

佐藤和美 (2017/01/21)

言葉とは全然関係ないと思ってる本でも言葉ネタは転がってるんですね。

日本化学会編『化学・意表を突かれる身近な疑問』講談社ブルーバックス 114ページ
「「クエン」は、なにやらむずかしい漢字で「枸櫞」と書きますが、これは中国の古語でレモンのことですから、「クエン酸」イコール「レモン酸」だというわけです。」

「クエン酸」の「クエン」って、中国語由来だったのか!

以下、『大辞林』より。

くえん【枸櫞】
マルブシュカンの漢名。また,広く柑橘類をさすこともある。

まるぶしゅかん【丸仏手柑】
シトロン(1)の別名。

シトロン〖フランスcitron〗
(1)ミカン科の常緑低木。インド原産。果樹としてヨーロッパで古くから栽植される。果実は長さ15センチメートル 内外の卵形で,果皮が厚く,香気がある。果肉は酸味が強く苦みがある。果実を砂糖漬けや飲料とし,果皮や葉からは香油をとる。丸仏手柑(まるぶしゅかん)。

レモン〖lemon〗
ミカン科の常緑低木。インド原産。暖帯で広く栽培され,カリフォルニアや地中海沿岸地方が主産地。果実は長楕円形で両端はとがり,淡黄色に熟す。果肉は酸味が強く,香気があり,料理の添え物・菓子・清涼飲料などに用いる。果皮からはレモン油を搾り,香料とする。〔「檸檬」とも書く〕

「「クエン酸」イコール「レモン酸」」と言うより、「「クエン酸」イコール「シトロン酸」」って言ったほうがいいのかもしれないですね。

「シトロン酸」って、「ウルトラQ」のリトラの「シトロネラ酸」に似てるな、と思ったら、wikipediaのリトラの項で以下の文章を発見。
「「シトロネラアシッド」は、ミカン科の植物citron(シトロン)の香りを持つイネ科の植物citronella(シトロネラ)と acid(アシッド、日本語で「酸」の意味)の合成語。」
「シトロネラ」って、「シトロンの香りを持つイネ科の植物シトロネラ」だったんですね。



郭公(カッコウ)

佐藤和美 (2017/01/10)

郭公(カッコウ)の語源ですが、吉田金彦編著『語源辞典動物編』(東京堂出版)には次のようにあります。
「わが国の異名・方言の中に多く見られるように、世界各国とも同じで、カッコウは明らかに鳴き声による命名と思われる。たとえば、漢名は郭公、英名は cuckoo、仏名は coucou、独名は kuckuck、蘭名は koekoekであって、わが国でも当然、鳴き声による命名であることは世界共通である。」

「閑古鳥が鳴く」の「閑古鳥」は「カッコウ」のことです。
山口佳紀編『暮らしのことば新語源辞典』(講談社)には次のようにあります。
「ホトトギス科の鳥であるカッコウ(郭公)異名。カッコウドリの転じたものかといわれている。」
「カッコウドリの転じたもの」だとすると、「閑古鳥」もまた擬音語に由来すると言えそうです。

田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』(草風館)によると、アイヌ語(沙流方言)でもカッコウをカッコクkakkokと言い、ここでも擬音語による命名です。





佐藤和美 (2013/12/15)

輔弼(ほひつ)という言葉があります。

『大辞林』から。

ほひつ【輔弼・補弼】
(1) 天子の政治をたすけること。また,その人。
(2) 旧憲法で,天皇の権能行使に対し,助言を与えること。 「国務各大臣は天皇を─ し其の責に任ず /大日本帝国憲法 」

「弼」には「たすける」の字義があります。

幕末の人で「井伊直弼」という人がいます。

『大辞林』から。

いいなおすけ ゐいなほすけ【井伊直弼】
1815〜 1860 江戸末期の大老。近江彦根藩主。将軍継嗣(けいし)問題で水戸派と対抗,一四代将軍に紀州家の慶福 (よしとみ)(家茂)をつけ,また,1858年,勅許を待たず安政五か国条約に調印。これに反対する勢力を弾圧して安政の大獄を起こし,60年,桜田門外で水戸浪士らに暗殺された。

「直弼」は「なおすけ」と読みますが、「弼」には「たすける」の意味があるんだから、「直弼」を「なおすけ」と読むのも納得できるというものです。



六平直政

佐藤和美 (2013/12/07)

俳優の「六平直政」は「むさかなおまさ」と読みます。ここでは「平」を「さか」と読ませています。
「ひら」と「さか」に関しては以前書いたことがあります。

>日本語「ひら(平)」とアイヌ語「ピラ(崖)」(2004/12/31 16:08)
>日本語「ひら(平)」とアイヌ語「ピラ(崖)」が関係あるんだかどうだか。
>山田秀三『アイヌ語地名を歩く』(北海道新聞社)118ページ
>「日本語の古語では「ひら」は急斜面の地形のことである。当時はこう書いて「フィラ」と両唇音で発音したのだという。アイヌ語の「ピラ」とまるで似ていて面白い。東北地方の北部の山中では、今でもその古語が残っていて、山の急斜面を「ひら」といい、それをフィラと発音している。」
>http://www.hyogo-u.ac.jp/soc/soc/kokugo/annai/annai-2004/2004-6.htm
>上記ページに外間守善『沖縄の歴史と文化』(中公新書)からの引用があります。
>「「坂」のことを沖縄語では「ヒラ」という。日本古語では「黄泉比良坂」のように「ヒラサカ」と言っていた。沖縄語に「ヒラ」が残り、日本語に「サカ」が残って、半分ずつお互いが分け持ったことになる。」

「六平直政」の「平」・「さか」もこのことと関係あるんでしょうか?



法師の仲間達

佐藤和美 (2013/12/03)

「法師」のつく言葉を集めてみました。

『大辞林』からです。

かげ ぼうし ─ ぼふし【影法師】
光が当たってできる人の影。

つくつく ぼうし ─ ぼふし【つくつく法師】
セミの一種。頭からはねの先まで45ミリメートル 内外の細形のセミ。体は暗緑色で黒い斑紋があり,胸部の背に淡緑色の紋がある。夏が終わり,秋風とともに多く現れ,オーシーツクツクと鳴く。日本各地と朝鮮・中国に分布。クツクツボウシ。筑紫恋し。法師蝉。 季語 秋。 《夕飯や ─ かしましき / 正岡子規 》

おきあがり こぼし【起き上 が り小 法 師】
底に錘(おもり)を仕込み,倒れてもすぐに起き上がるようにした人形。達磨(だるま)の人形が多い。不倒翁。起き返り小法師。

ひとり ぼっち【独りぼっち】
〔 「独り法師」の転。「ひとりぽっち」とも〕 肉親や仲間がいなくて,ただひとりであること。孤独であること。

だいだ ぼっち【大太法師】
だいだらぼうしに同じ。

だいだら ぼうし ─ ぼふし【大太法師】
伝説上の巨人の名。富士山を一夜で作ったとか,榛名 (はるな) 山に腰掛けて利根川で足を洗ったとか,また,足形をした沼や窪地をこの巨人の足形だとかいう話が多い。だいだぼうし。だいだらぼっち。だいだぼっち。だいだらぼう。

東京の世田谷区に代田(だいた)という地名がありますが、この地名は「大太法師」に由来します。

以下、『東京地名考(上)』(朝日文庫)の「代田」の項からです。

ダイダラボッチも住んだ。氏は巨人。その足跡が守山小学校付近のくぼ地で、彼のかけた橋が京王線の駅名になって残る代田橋(大原二丁目。むかし代田村のうち)で、代田の地名はダイダラボッチに因む。もとより、各地にある巨人伝説の一つだが、楽しいではないか。

【追記】2014/11/15

「ぼんち」も「法師」の仲間のようです。

牧村史陽編『大阪ことば事典』(講談社学術文庫)より。

ボンチ
坊っちゃん。他人の息子の愛称。このボンは、ボンボンのボン[坊]ではなく、法師(ホッシ)の訛ったものである。独りぼっちも、独り法師であって、一はボンチとなり、一はボッチとなったものと見てよい。

『大言海』より。

ぼんち 坊稚
[法師のぼッちの転]ほふし(法師)ノ条ノ(二)ヲ見ヨ。

ほうし 法師
(二)昔、男ノ児ハ、スベテ頭髪ヲ剃レリ、故ニ、法師ト称ス。男ノ子。ボッチ。ボンチ。




輪王寺、鑁阿寺

佐藤和美 (2013/11/30)

連声(れんじょう)』に寺を二つ追加。

goo辞書から。

りんのう‐じ〔リンワウ‐〕【輪王寺】
栃木県日光市にある天台宗の門跡寺院。山号は、日光山。天平神護2年(766)勝道が開創。四本竜寺(のちの満願寺)と称した。慶長18年(1613)天海が入寺、徳川家康の墓所として東照宮を造営。のち、後水尾天皇の皇子守澄法親王が初代門跡となり輪王寺と改称。明治4年(1871)神仏分離令により東照宮と分かれた。本殿・相の間・拝殿は国宝。平成11年(1999)「日光の社寺」の一つとして世界遺産(文化遺産)に登録された。日光門跡。

ばんな‐じ〔バンア‐〕【鑁阿寺】
栃木県足利市にある真言宗大日派の本山。山号は、金剛山。開創は建久7年(1196)、開山は理真、開基は足利義兼(法名鑁阿)。通称、大日堂。



「星の王子さま」と「愛の妖精」

佐藤和美 (2013/11/28)

今年は『星の王子さま』出版70周年だそうです。さてこのタイトルですが、光文社古典新訳文庫では『ちいさな王子』となっています。原題はフランス語で「Le PetitPrince」ですから(petit はプチ だから、「ちいさい」っていう意味ですね)、『ちいさな王子』のほうが原題に忠実だといえそうです。

岩波文庫からジョルジュ・サンドの『愛の妖精』という小説が出版されてます。

こんな内容です。

舞台はフランス中部の農村地帯ベリー州.野性の少女ファデットが恋にみちびかれて真の女へと変貌をとげてゆく.ふたごの兄弟との愛の葛藤を配したこまやかな恋愛描写は,清新な自然描写とあいまってこれをサンド(一八〇四―七六)の田園小説中,屈指の秀作としている.主人公は少女時代の作者自身をモデルにしたものという.

岩波文庫の『愛の妖精』には「プチット・ ファデット」というサブタイトルがついています。原題はフランス語で「La Petite Fadette」(小さなファデット)なので、「プチット・ ファデット」というのは原題によるものですね。

フランス語の形容詞には男性形と女性形があります。男性名詞には男性形容詞が、女性名詞には女性形容詞がつきます。「王子」についている「petit プチ」が男性形で、少女ファデットについている「petite プチット」が女性形というわけです。さらに「petit」の複数形(男性複数形)は「petits」、「petite」の複数形(女性複数形)は「petites」になります。形容詞に男性形・女性形の違いがあり、さらに単数・複数の違いもある。日本語育ちとしてはわけわからない状態ですね。なお「petit」、「petite」は辞典には「petit(e)」のように載ってます。

「プチフラワー」っていう少女マンガ雑誌がありました。フランス語と英語のチャンポンですが、実はフランス語では「fleur フルール(花)」は女性名詞なんで、「プチ」じゃなく、「プチット」のほうを使って、「プチットフラワー」じゃなくてはダメそうですね!? 「プチ」は外来語として定着してますけど、「プチット」はそうではない。そういうことなんでしょうか?



Re:「ti」の表記

佐藤和美 (2013/07/01)

>Re:「ti」の表記 (2011/08/08)
>「ti」の表記 (2000/11/02 12:32)
>>「ti」の表記に関して、おもしろい例を見つけました。
>>「fetishism」を今どき「フェチシズム」と書く人はいないでしょう。
>>普通は「フェティシズム」でしょうね。
>>で、その「フェティシズム」の短縮形ですが、
>>なぜか「フェチ」で「フェティ」じゃない。
>>フシギですねぇ。
>そういえば、「スマートフォン」の短縮形は「スマホ」ですね。

「コーディネイト」の短縮形は「コーデ」ですね。「コーディ」でもなく、「コーヂ/コージ」でもなく、なぜか「コーデ」。



武井咲(たけいえみ)

佐藤和美 (2013/06/09)

「武井咲」は「たけいえみ」と読みますけど、「咲」を「えみ」なんてずいぶんかわった読ませ方をしてますね。
なんでも、「咲という名前は、花が咲くように笑みの絶えない子にと付けてもらった」んだとか。

漢和辞典で「咲」という字を調べてみましょう。

「新漢語林」(大修館書店)

字義 笑の古字。わらう。 国(訓) さく。花が咲く。
名前 えみ・さ・さき・さく

「咲」は「笑」の古字だから、「えみ」と読んでもいいというわけのようですね。



mist と fog

佐藤和美 (2011/09/05)

テレビで「ミスト」っていう映画をやってたんで、録画して観たんですが、そういえば昔、「フォッグ」っていう映画も観た気がする。
「mist」と「fog」って、両方とも「霧」っていう意味だと思うけど、意味の違いがあるのかな?

goo辞書からです。

mist
1 [C][U]霧, かすみ, もや(▼fogより薄くhazeより濃い. ⇒HAZE[名]1);((米))こぬか雨

fog
1 霧, 濃霧(▼通例mistより濃い);霧などが一面に立ちこめている状態;(霧がかかったように充満した)ほこり, 煙, しぶき. ⇒SMOG

haze
1 もや, かすみ(▼mistやfogより薄く湿気が少ない);((しばしばa 〜))もや状のもの.

霧の濃さが fog>mist>haze ってことなんですね。



本名とペンネーム

佐藤和美 (2011/09/02)

「松本清張」は本名とペンネームが漢字で書くと同じですが、読みが違います。ペンネームは「まつもとせいちょう」ですが、本名は「まつもときよはる」です。

「安部公房」も本名とペンネームが漢字で書くと同じです。ペンネームは「あべこうぼう」で、本名は「あべきみふさ」です。

「土井晩翠」ですが、wikipediaによれば、「本来姓は「つちい」だったが、」「1932年(昭和7年)、生前から姓「つちい」を、誤って「どい」と多く読まれたことを受け改姓。晩年には両姓の読みの誤りを訂正することを止めたため両方の表記が多く残っている。」だそうです。

「水上勉」ですが、これもwikipediaから。「苗字の読み「みずかみ」は本姓であり、筆名(ペンネーム)としては、長年「みなかみ」が使用された。一時、筆名(ペンネーム)としても「みずかみ」を使用するも、徹底しなかったために「みなかみ」に戻したとの説もある。」



Secret Base

佐藤和美 (2011/08/27)

今月は「10年後の8月」なんだそうですけど、あ、ZONEの「secret base〜君がくれたもの〜」のことです。
ところで、「Secret Base」って、どういう意味? 「秘密基地」か。そういえば、「Base」には「基地」って意味もあったな。歌詞の中にも「秘密の基地」なんて言葉もでてきてるし。



「戦場ヶ原」という地名の由来

佐藤和美 (2011/08/21)

奥日光に戦場ヶ原がありますが、この地名にはどういう由来があるのでしょうか。

柳田国男『日本の伝説』(新潮文庫)の「神いくさ」の章からです。
「それよりも更に有名な一つの伝説は、野州(やしゅう)の日光山と上州の赤城山との神戦でありました。古い二荒(ふたら)神社の記録に、くわしくその合戦のあり様が書いてありますが、赤城山はむかでの形を現して雲に乗って攻めて来ると、日光の神は大蛇になって出でてたたかったということであります。そうして大蛇はむかでにはかなわぬので、日光の方が負けそうになっていた時に、猿丸太夫という弓の上手な青年があって、神に頼まれて加勢をして、しまいに赤城の神をおい退けた。その戦をした広野を戦場が原といい、血は流れて赤沼になったともいっております。」
「利根郡老神(おいがみ)の温泉なども、今では老神という字を書いていますが、もとは赤城の神が合戦に負けて、逃げてここまで来られた故に、追神ということになったともいいました。」

また、老神温泉のHP(http://www.oigami.net/)にはこうありました。
「湯の歴史は古く、その昔、赤城山の神(ヘビ)と日光男体山の神(ムカデ)が戦った時、弓で射られた赤城山の神が赤城山山麓に矢を突き刺すとたちまちお湯が沸いてきたのが始まりとか。赤城山の神がそのお湯に傷を浸すとたちまち治り、男体山の神を追うことができたことから「追い神」と呼ばれるようになり、それが「老神」になったと伝えられている。」

ちなみに、「日光」は「二荒(ふたら)」の音読み「にこう」に「日光」の字を当てたものです。



大和撫子

佐藤和美 (2011/08/19)

女子サッカーがワールドカップ優勝&国民栄誉賞受賞ですね。

さて、「大和撫子」ですが、
山口佳紀編『暮らしのことば新語源辞典』(講談社)からです。

大和撫子(やまとなでしこ)
植物ナデシコの異称。また、日本女性の美称。
 ナデシコの語源は未詳だが、「撫でし子」のように解され、「撫子」表記となったのだろう。撫子に大和(やまと)の語が加えられた理由は、日本原産の撫子と中国から渡来した唐(から)撫子(石竹(せきちく))を区別するためである。大和撫子は「古今和歌集」等で女性の比喩としても用いられ、それが日本古来の美徳とされ、か弱そうに見えるが、心の強さと清楚な美しさをそなえている女性像をいうようになった。



つつがない

佐藤和美 (2011/08/13)

白土三平の『真田剣流』を初めて読んだのは昭和40年代前半でしたが、(以下、ネタバレになりますが)この作品の中で「つつがない」の語源がツツガムシがいないことだというような話が出てきます。当時、私は中学生でしたが、「呪いの科学的解明」と「つつがない」の語源説に感動したものでした。さて、よく聞く語源説ですが、この説は正しいのでしょうか?

山口佳紀編『暮らしのことば新語源辞典』(講談社)からです。
つつがない
「障害がないこと。無事なこと。「差し障りがある、病気になる。」意の動詞ツツム(恙む)と同源の名詞ツツガ(障害・病気の意)に、ナシ(無し)がついたもの。また、動詞「恙む」の名詞形にはツツミもあり、ツツガナシと同じ意味でツツミナシという言い方もあった。
 なお、ツツガが虫の名として用いられるようになるのは、中世以降で、「恙虫(つつがむし)がいない」の意をツツガナシの語源とするのは後世の俗説。」

「後世の俗説」だそうです。



Re:「ti」の表記

佐藤和美 (2011/08/08)

「ti」の表記 (2000/11/02 12:32)
>「ti」の表記に関して、おもしろい例を見つけました。
>「fetishism」を今どき「フェチシズム」と書く人はいないでしょう。
>普通は「フェティシズム」でしょうね。
>で、その「フェティシズム」の短縮形ですが、
>なぜか「フェチ」で「フェティ」じゃない。
>フシギですねぇ。

そういえば、「スマートフォン」の短縮形は「スマホ」ですね。



「乖離(かいり)」の「乖」と「北」

佐藤和美 (2011/08/07)

「乖離(かいり)」の「乖」という字をよく見てみましょう。
「乖」から「千」の部分を取り除くと、「北」という字が残ります。
「乖」と「北」って、関係あるの?

以下、『新漢語林』(大修館書店)からです。


解字 象形。ひつじのつのと背の相互にむきあった形にかたどり、そむきはなれるの意味を表す。


解字 会意。人+ヒ。二人の人が背をむけている、そむくの意味を表し、転じて、にげるの意味を表す。また、人は明るい南面に向いているのを好むが、そのとき背にする方、きたの意味を表す。北を音符に含む形声文字に、背などがあり、これらの漢字は「そむく」の意味を共有している。

「乖」と「北」って、関係あり、ということですね。「二人の人が背をむけている」のが共通しているというわけです。

ちなみに「燕(つばめ)」にも「北」が含まれていますが、こちらは「二人の人が背をむけている」とは無関係のようで。



漢字で書くと その5

佐藤和美 (2011/07/31)

「しゅぜんじ」を漢字で書くと、
「修善寺」と「修禅寺」があります。
その違いは?

goo辞書からです。

しゅぜんじ【修善寺】
静岡県、伊豆市の地名。桂川の渓谷に沿う温泉町。修禅寺や、空海が掘ったという独鈷(とっこ)ノ湯がある。

しゅぜん‐じ【修禅寺】
静岡県伊豆市にある曹洞宗の寺。山号は肖廬(しょうろ)山。延暦年間(782〜806)空海の弟子杲隣(こうりん)の創建と伝える。鎌倉時代に真言宗から臨済宗となり、戦国時代、北条早雲によって隆渓繁紹が入り、曹洞宗に改めた。源範頼・頼家が幽閉・殺害された寺。

「修善寺」は地名で、「修禅寺」は寺名ということですね。



漢字で書くと その4

佐藤和美 (2011/04/09)

東京都調布市に「深大」寺がありますが、
そのとなりにあるのが「神代」植物公園。

朝日新聞社会部『東京地名考(下)』(朝日文庫)247ページからです。
「その神代植物公園。深大寺町にあるのに神代を名乗る由来を要約すると、こうだ。明治二十二年、深大寺村と六カ村が合併して神代(かみよ)村。深大に通じる神代で折り合ったらしい。深大寺は大字となる。昭和三十年に調布町と合併して市になった折、神代は分解消滅し、大字の方は深大寺町となる。今も神代を名乗る学校や団地はその名残とか。」



Re:赤死病の仮面

佐藤和美 (2011/04/03)

「赤死病の仮面」佐藤和美(1998/05/25 22:00)
>ところで、エドガー・アラン・ポーの短編小説に「赤死病の仮面」というのがありますね。この小説の原題は「The masque of the red death」です。
>「mask」の意味は「仮面」ですが、「masque」だと「仮面劇」になります。(発音は同じで、区別がつきません) 「The masque of the red death」は正しくは「赤死病の仮面劇」だったんですね。内容からして、「赤死病の仮面劇」のほうが正しそうです。最初に訳した人が誤訳したか、「仮面劇」というのが日本語になじまないとでも思ったのでしょうか。

新潮文庫の『黒猫・アッシャー家の崩壊』の解説に「The masque of the red death」のタイトルに関して興味深い文章があったので紹介します。

『黒猫・アッシャー家の崩壊』解説より(巽孝之)
「赤き死の仮面」"The Masque of the Red Death"
原典タイトルは翻訳家泣かせである。この疫病が明らかに「黒死病」(The Black Death)すなわちペストを想定しているため、それに準じて「赤死病」と訳すのが筋なのだが、ひとたび作中の多彩な象徴空間に眩惑されてしまうと、なぜか「赤き死」と呼ぶのがふさわしく感じるのだ。しかも、疫病を遮断する堅牢な城の内部で続く豪奢な仮面舞踏会そのものの意味を深めるため、ポーは初出のあとタイトルに手を加え、"The Mask"から"The Masque"へと書き換えているので、こうなると一語にして「仮面劇」「仮面劇役者」「仮面舞踏会」「仮面舞踏会参加者」など複数の意味を帯びてしまう。そこで本書ではこれがゴシック・ロマンスの名作であることに留意し、あえて象徴的な方向を選んだ。



長寿の年齢の言い方

佐藤和美 (2011/03/21)

長寿の年齢の言い方、いろいろありますね。
「大辞林」からです。

かんれき【還暦】
〔干支 (えと) が六〇年たつと一回りして,元にかえるところから〕
数え年で六一歳をいう語。本卦 (ほんけ) がえり。華甲 (かこう) 。 「 ─ を迎える」

こき【古希・古稀 】
〔杜甫「曲江詩」中の「人生七十古来稀」の句から〕
七〇歳をいう。 「 ─ の祝い」

きじゅ【喜寿】
〔 「喜」の字の草体「㐂」が「七十七」と分解できるところから〕
数え年の七七歳。また,その祝い。喜の祝い。喜の字の祝い。

さんじゅ【傘寿】
〔 「傘」の略体の「仐」が「八十」と分解できることから〕
数え年の八〇歳。また,その祝い。

べいじゅ【米寿】
〔 「米」の字が八十八に分解できることから〕
八八歳。また,その祝い。

そつじゅ【卒寿】
〔 「卒」の略体の「卆」が「九十」と分解できるところから〕
数え年の九〇歳。また,その祝い。

はくじゅ【白寿】
〔 「百」の字から「一」をとると「白」の字になるので〕
九九歳。また,その祝い。



モン

佐藤和美 (2011/03/09)

フランス語で「モン」(mont)は「山」って意味ですよね。

「モンブラン」は「モンmont」(山)+「ブランblanc」(白い)で、「白い山」。

世界遺産の「モンサンミシェル」は「モンmont」(山)+「サンsaint」(聖)+「ミシェルMichel」で、「聖ミカエルの山」。

アメリカにバーモント(Vermont)っていう州があります。
このmontもフランス語「モン」(mont)の仲間で、バーモントも元はフランス語だったのが、英語化した地名のようです。
「vert」(緑の)+「mont」(山)で、「緑の山」。「山」+「緑の」じゃなくて、「緑の」+「山」になってし、発音も英語化してますね。。



チャングム、チニ

佐藤和美 (2011/03/07)

韓流ドラマで「チャングムの誓い」と「ファン・ジニ」というのがありますが、その主人公の名前について。

まずは「チャングム」。

wikipediaから。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%A0%E3%81%AE%E8%AA%93%E3%81%84
「ソ・ジャングム/テ・ジャングム(チャングム)(徐長今/大長今)」

「大長今 テジャングム」(角川文庫)にはこう書いてありました。
「韓国語には、語頭にくる音は日本語話者には非濁音に聞こえるという特長があります。このためテレビ放送などで人名をグミョン→クミョンのように表記・発音する場合がありますが、本書では読者の混乱を避けるために、フルネームから姓を抜いた表記の場合も、チェ・グミョン→グミョンの形で統一しています。ただし、ソ・ジャングムは、ドラマタイトルなどで、チャングムという名前で馴染(なじ)んでいるので例外とし、フルネームもソ・チャングムと表記しています。」

次は「ファン・ジニ」

wikipediaから。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%8B_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E)
「このドラマの主人公のファン・ジニ(黄真伊)は李氏朝鮮中宗期に実在したと言われる妓生(キーセン)である。」
「韓国では喋るときの最初の文字は濁らないという習慣があるため「ファン・ジニ」の名前だけを呼ぶときは「チニ」となる。」

NHKでやってたドラマの中でも、「チニ」と呼ばれてましたっけ。

ちなみに、
「大長今」(テジャングム)の「大」は語頭なので「テ」で、
「金大中」(キムデジュン)の「大」は語頭じゃないので「デ」
ですね。



波の花

佐藤和美 (2011/02/26)

忌言葉(いみことば)』に追加。

佐竹秀雄「日本語教室 Q&A」(角川文庫)166ページより
「あるいは、「シオ(塩)」が「死」を連想させるとして「波の花」と言い換えたり、」

「波の花」も忌言葉だったのか。



puma

佐藤和美 (2010/08/21)

動物のpumaはピューマですが、これは英語の発音によります。
では、スポーツ用具メーカーのPumaがプーマなのは?
スポーツ用具メーカーのPumaはドイツの会社です。
プーマというのは、ドイツ語の発音によります。



「嫁(とつ)ぐ」PART2

佐藤和美 (2010/08/16)

「嫁(とつ)ぐ」(2008/06/15)の追加です。

以下、
田中貴子×田中圭一『セクシィ古文』メディアファクトリーの新書
によります。

『日本書紀』にイザナギ・イザナミのところで次のような記述があるそうです。
「遂に合交(まぐあわ)せむとして、其(そ)の術(すべ)を知りたまはず。時に鴒(にわくなぶり)有り、飛び来り其の首尾(かしらお)を揺(うごか)す。二神(ふたはしらのかみ)見(そこなわ)して学び、即ち交道(とつぎのみち)を得たまう。」

鴒」はセキレイのことだそうで、イザナギとイザナミに「とつぎのみち」を教えたことで「嫁ぎ教え鳥」という名で呼ばれたこともあったそうです。

『今昔物語集』に精液のついたカブを食べて妊娠してしまう話があります。
その一節から。
「然(シカ)レバ、男女(オトコオンナ)不娶(トツガズ)ト云ヘドモ、身ノ内ニ婬(イン)入(イリ)ヌレバ此(カク)ナム子ヲ生(ウミ)ケルトナム語リ伝ヘタルトヤ」

ここにも、「とつぐ」登場。

なお、「嫁ぐ」の語源は、
「と(陰門(女性器))」+「接(つ)ぐ(欠けたところをふさぐ)」
だそうです。
(『セクシィ古文』での語源説で、定説ではないでしょう)



She Loves You

佐藤和美 (2010/08/15)

ビートルズの曲で「She Loves You」っていうのがありますが、この曲名を見るたび思い出すのが、「三単現のs」です。
「三単現のs」って、三人称・単数・現在のとき動詞の後ろにsをつけろ、ってことですね。(中学英語)
sheは三人称単数で、現在の文ですからloves。
「She Loves You」で「三単現のs」を覚えましょう!(笑)

そうそう、こんな本も持ってます。(絶版だと思いますが)

林育男「ビートルズで英語を学ぼう」講談社文庫



ゆべし

佐藤和美 (2010/06/30)

お菓子で「ゆべし」っていうのがありますが。

『大辞林』
ゆべし 【柚餅子】
米の粉に味噌・砂糖・柚 (ゆず) の皮などを加えて、こねて蒸した餅菓子。ゆびし。

「柚 (ゆず) 」をつかっている餅菓子のようで。



漢字で書くと その3

佐藤和美 (2010/06/29)

ニッコウキスゲ、エゾキスゲのキスゲを漢字で書くと、「黄菅」。

花が黄色で、葉が菅(すげ)に似てるから、「黄菅」なんだそうで。



KY首相

佐藤和美 (2009/01/21)

「ゲーム脳の恐怖」っていうトンデモ本があったけど、「マンガ脳の恐怖」ってとこか?(笑)

KY(漢字読めない)首相の漢字関連をまとめておきましょう。

有名なのは、
頻繁 はんざつ
踏襲 ふしゅう
未曾有 みぞうゆう
ですね。

焦眉の急 しゅうびのきゅう
なんてのもあります。

↓こんなページがありました。

http://www.nikkansports.com/general/news/p-gn-tp0-20090115-450301.html
麻生首相が読み間違えた主な漢字
(1)怪我−かいが
(2)完遂−かんつい
(3)焦眉−しゅうび
(4)順風満帆−じゅんぷうまんぽ
(5)措置−しょち
(6)思惑−しわく
(7)低迷−ていまい
(8)破綻−はじょう
(9)頻繁−はんざつ
(10)踏襲−ふしゅう
(11)前場−まえば
(12)未曾有−みぞゆう
(13)有無−ゆうむ
(14)詳細−ようさい

書き間違いもあります。

平成廿十一年

「廿」の一字で「にじゅう」と読みます。
「廿十一」では「にじゅうじゅういち」になっちゃうんだそうで。



みずあげ

佐藤和美 (2008/11/10)

NHKで韓国のドラマの「ファン・ジニ」っていうのをやってます。
主人公はキーセン(妓生)だとのこと。
妻がこのドラマをみてたのですが、その中で、「みずあげ」という言葉がでてきました。
まさかNHKで「みずあげ」なんて言葉がでてくるとは、思わなかったですね。
妻は意味がわからなかったようですが、意味がわからない人もけっこういるんだろうなぁ。

『大辞林』からです。

キーセン【妓生】
〔朝鮮語。キーサンとも〕
(1)朝鮮で、もと歌舞・音楽をもって宮中に仕えた官妓。ぎせい。
(2)朝鮮の芸妓。

みずあげ【水揚げ】
(名)スル
(1)船の荷物を陸に揚げること。陸揚げ。
「桟橋に―する」
(2)漁獲高。数量・金額いずれをもさす。
「―が落ちる」
(3)営業の売上高。
「―が少ない」
(4)芸妓・娼妓がはじめて客と肉体関係を結ぶこと。
(5)生け花で、花材が水を吸い上げて長持ちすること。また、花材に処理を施して、水の吸い上げをよくすること。

「ファン・ジニ」の「みずあげ」は「水揚げ」(4)の意味ですね。



『広辞苑』の「ユーカラ」

佐藤和美 (2008/10/13)

『広辞苑』第五版には「ユーカラ」は次のように出ていました。

『広辞苑』第五版
ユーカラ【Yukarアイヌ】
(物真似する意という)アイヌに口承されてきた叙事詩の一。孤児として育った少年ポイヤウンペが、両親の仇討や許嫁の奪還のために敵と交える激戦の数々の物語。節をつけて語る。広義には女性、自然神(カムイ)を主人公とする叙事詩を含む。ユカラ。

田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』(草風館)からです。
yukar
1 [自動]ユーカラ(英雄叙事詩)を歌う。
2 [名]ユーカラ、英雄叙事詩。
3 (語構成要素として)[自動](1)ものまねする(人の言った言葉も仕草もそっくりにまねする)。(2)[<(1)]叙事詩を歌う。

「ユーカラ」には、確かに「物真似する」という意味はあるようです。でも『広辞苑』「ユーカラ」の項に「物真似する意という」とあるからには、叙事詩をさす語義よりも、「物真似する意」という語義のほうが古い必要があります。『アイヌ語沙流方言辞典』の語義で1、2よりも3(1)のほうが古いという根拠はあるのでしょうか? 私には『広辞苑』第五版の「物真似する意という」というのは、間違いとは言えないまでも、本当にそうなのか疑問でした。

さて、「ユーカラ」、第六版ではどうなったでしょうか。

『広辞苑』第六版
ユーカラ【Yukarアイヌ】
アイヌに口承されてきた叙事詩。孤児として育った少年ポイヤウンペが、両親の仇討や許嫁の奪還のために敵と交える激戦の数々の物語。節をつけて語る。広義には女性、自然神(カムイ)を主人公とする叙事詩を含む。ユカラ。

「物真似する意という」は削除されていました。めでたし、めでたし。



新皇

佐藤和美 (2008/10/02)

連声(れんじょう)』に追加。

今、夢枕獏『陰陽師 瀧夜叉姫』を読んでるところです。

平将門の話が出てくるんですが、平将門の自称「新皇」って「しんのう」って読むんですね。
「しんこう」だとばっかり思ってた(汗)。

『大辞林』
しんのう ―わう 3 【新皇】
〔「しんおう」の連声〕
(1)新しく皇位についた人。
(2)天慶(てんぎよう)の乱のときに平将門が自ら称した、支配者としての称号。



事実上の更迭

佐藤和美 (2008/09/20)

「農相を事実上の更迭」だそうです。

さて「更迭」の意味ですが、

『大辞林』
こうてつ かう― 0 【更迭】
(名)スル
ある地位に就いている者を他の者にかえること。ある役職の人を替え改めること。

そうすると「事実上の更迭」ってどういう意味になるんでしょうか?
「ある地位に就いている者を他の者にかえること」に「事実上」をつけて意味があるんでしょうか?

「更迭」を「クビにする」みたいな意味だと思ってる人もいますから、そういう人が書くと「事実上の更迭」になっちゃうんですかね?



「架線」の読み方

佐藤和美 (2008/09/18)

今日の朝の通勤は快速が止まってて、各駅停車で出勤でした。
車内放送で「がせん」と言う言葉が出てきました。
「がせん」て「架線」のこと?
JRの人は「架線」の読み方も知らないのか?
と、思ったら、

『大辞林』
かせん 【架線】
(1)電線などを架設すること。また、その電線。
(2)電車に動力用電力を供給するために、線路上方に張る電線。鉄道関係者は「がせん」という。

「鉄道関係者は「がせん」という」だって。
でも、やっぱり、車内アナウンスは一般人用なんだから、「かせん 」を使うべきじゃないか?



玄翁

佐藤和美 (2008/09/15)

連声(れんじょう)』に追加。

先日、栃木県那須町にある殺生石に行って来ました。
ところで、九尾の狐が石になった後、この石を打ち砕いたのは「玄翁」で、「げんのう」って読むんですね。
と言うことで、「玄翁(げんのう)」を「連声」に追加。

『大辞林』より

せっしょう-せき ―しやう― 3 【殺生石】
(1)栃木県那須町湯本にある溶岩の大塊。鳥羽天皇の寵姫玉藻前(たまものまえ)に化けた金毛九尾の狐が殺されて化したと伝えられる石。後深草天皇のとき、玄翁(げんのう)和尚が杖で石を二つに割り、現れた霊を成仏させたという。

げんのう げんをう 【玄翁/源翁】
南北朝時代頃の曹洞宗の僧。諱(いみな)は心昭。越後の人。遊行中、下野(しもつけ)那須野の殺生石を杖で打ち砕いたという。生没年未詳。



漢字で書くと その2

佐藤和美 (2008/09/13)

「ワオキツネザル」を漢字で書くと「輪尾狐猿」です。
「輪模様のついたシッポ」なので「輪尾」。
ちなみに、英語は「Ring-tailed lemur」です。

「セアカゴケグモ」を漢字で書くと「背赤後家蜘蛛」です。
背中が赤いので「セアカ」、交尾後にメスがオスを食べちゃって、メスは後家になるので「ゴケ」、
ということで、「セアカゴケグモ」でした。
ちなみに、英語は「Red-back widow spider」というそうで。

「セキセイインコ」を漢字で書くと「背黄青鸚哥」です。
背中に黄色と黒の模様があるので、「背黄青」。



出納

佐藤和美 (2008/09/01)

「出納」は「すいとう」と読みます。
不思議な読み方ですねぇ。
「出」を『新漢語林』(大修館書店)で調べると、漢音「シュツ」、呉音「シュチ」以外に、「スイ」という音があります。 「納」の「トウ」という読みは慣用読みだそうです。

前回は「レッドクリフ」のことを書き込みましたが、なぜ今回は「出納(すいとう)」かというと、「出」の「すい」という読みで思い出すのは、諸葛孔明の「出師の表(すいしのひょう)」ですよね。

ちなみに、『大辞林』の「出納(すいとう)」の項の(2)には「しゅつのう(出納)(2)に同じ。」とあり、「出納(しゅつのう)」の項の(1)には「すいとう(出納)」に同じ。」とあります。



RED CLIFF

佐藤和美 (2008/08/24)

吉川英治の「三国志」を読んだのは、ずいぶん昔のことです。
主役の諸葛孔明が登場するのが中盤くらいで、その後まもなく、劉備玄徳・孫権連合軍と曹操軍との戦いである赤壁の戦いがあります。
で、「レッドクリフ」。
秋にやる映画の題名で、赤壁の戦いをえがいたものなんだそうです。
「赤壁」で「レッドクリフ」。
なんか、カルチャーショックというか、めまいがしそうというか、すごいタイトルにしたもんですねぇ(笑)。



MMK

佐藤和美 (2008/08/19)

「KY」と言えば、「空気読めない」ですが、
大分前に読んだ「ちびまる子」に「MMK」というのが、出てきました。
「MMK」は「もてて、もてて、こまっちゃう」なんだそうです。
ところで、今回、『KY式日本語』という本を読んでて、ビックリしました。

北原保雄編著/「もっと明鏡」委員会編集『KY式日本語』(大修館書店)
MMK
=MOTETE MOTETE KOMACCHAU
  (モテてモテて困っちゃう)
「旧日本海軍の隠語。多くの場合、実際困るというよりは軽く自慢するようなニュアンスで用いられたと思われる。」
「現在使われているKY語の中で、確認できるところでは最も古い時期から使われているもののひとつ。大日本帝国陸軍がドイツの軍制を規範としたのに対し、海軍はイギリスのそれを導入した。そのためもあってか、海軍では英語経由の隠語が多く使われた。そのなかには関連として挙げたもののほか、「S(淋病、Rとも)」「after(後家さん)」「エヌる(のろける)」のように、男女関係にまつわるものも多い。」

「MMK」って、戦前から使われてた言葉だったのかぁ。なんか、ちょっと感動してしまったという次第です。



な〜そ

佐藤和美 (2008/07/05)

古語では「な〜そ」で禁止を表します。「な泣きそ」は「泣くな」ってことですよね。
関東と奥州の境に「勿来(なこそ)の関」がありました。(常磐線の茨城県と福島県の県境の福島県側に勿来駅があります。)「勿来」も「な〜そ」の仲間で、「な来(こ)そ」つまり、「来るな」ってことですね。なんで「勿来」っていう地名がついたのか、いろいろな説、伝説があるようです。
ところで、「勿忘草」は「わすれなぐさ」と読みますが、「なわすれぐさ」が正しいんじゃないのか、と思うのは、私だけ?



嫁(とつ)ぐ

佐藤和美 (2008/06/15)

山口仲美さんの本、去年からいろいろ読んでますが、今回は『新・にほんご紀行』(日経BPP社)を読みました。そうしたら、「嫁ぐ」について興味深い文章をみつけました。
『今昔物語集』に以下の文章があるそうです。
「経師、一人の女を見て、たちまちに愛欲の心をなし、淫盛りに発(おこ)して蹲(うずくま)りて女の背に付きて、衣をかかげて婚(とつ)ぐ」
さて、この「嫁ぐ」の意味ですが……

山口仲美さんのHPにも「とつぐ」に関して書いてあるページがありました。

http://www015.upp.so-net.ne.jp/naka0930/kotoba3.html

『今昔物語集』巻四第六話に以下の記述があるそうです。
「汝ヂ 愛欲ヲオコシテ 此クノゴトク為り、速ニ 我レヲ 娶(とつぐ)ベシ。」
それでこの「とつぐ」の意味ですが、
「『娶ぐ』というのは、『嫁ぐ』とか『婚ぐ』って書くこともあるけれど、現代語で言えば、エッチすることね。」
だそうです。

『大辞林』からです。

とつ・ぐ 2 【嫁ぐ】
(動ガ五[四])
(1)よめに行く。縁づく。
「娘が―・ぐ」
(2)男女が交わる。交合する。
「蛇、女にまき付きて即ち―・ぐ/今昔 24」
[可能] とつげる

「蛇、女にまき付きて即ちとつぐ」
ウーン、なんとエッチ!



ペアレントだけがモンスターじゃない

佐藤和美 (2008/01/31)

「モンスターペアレント」っていう言葉があります。

『デイリー新語辞典』
モンスターペアレント〔(和製) monster+parent〕
学校の教師に対して,理不尽な要求や苦情を突きつける親のこと。教師が宿題を忘れた子どもを叱(しか)った際,その親が学校に怒鳴り込んでくる場合など。学校運営に支障を来すことから社会問題化している。モンスター親。

最近はいろんなところで怪物出現なようで。

『デイリー新語辞典』
モンスターペイシェント〔(和製) monster+patient〕
医療機関や医療従事者に対して,理不尽な要求や苦情を突きつけたり,暴力をふるうような患者(またはその家族など)のこと。待ち時間が長いなどの理由で,医師に対して暴力をふるう場合などがある。怪物患者。

これからはいろいろなモンスター○○○○っていう言葉が作られていくんでしょうか?



鮭アイヌ語語源説について

佐藤和美 (2008/01/14)

『広辞苑第六版』
さけ【鮭・C】
「アイヌ語サキペ(夏の食物)からともいう」

鮭アイヌ語語源説についてですが、中川裕さんは次のよう書いています。

前田富祺監修『日本語源大辞典』(小学館)157ページ
テーマで探る言葉の由来 アイヌ語
かなりあやしいもの
サケ
「アイヌ語の sakipe は「夏の食べ物」の意でマスを指す。サケは夏ではなく秋に川をのぼるので、 cukipe (発音はチュキペ)「秋の食べ物」と言う。金田一京助は江戸期に和人がサケとマスを区別せずに、 sakipe を日本語風になまったシャケンベという名称で呼んだのが語源だと説くが、ではいつからサケとマスを区別するようになったのか? 名称のすり替えが気になる語源説である。」

『広辞苑第六版』の「鮭」の項の記述に中川裕さんはどれだけかかわっているのでしょうか?



Re:『広辞苑第六版』のアイヌ語

佐藤和美 (2008/01/13)

『広辞苑』のアイヌ語
>後記には執筆協力者の一覧が載っているが、その担当分野の中には「アイヌ」も「アイヌ語」もない。これでちゃんとしたアイヌ語解釈ができるのか。

『広辞苑第六版』の後記に載ってる、執筆・校閲協力者の中には次の方々がいました。

上杉一紀[北海道地名]
中川裕[アイヌ]

『広辞苑』のアイヌ語が改善されたのは中川裕さんのおかげかな?

「根室」の「アイヌ語の樹林の意のニムオロからともいう」は「北海道地名」担当の上杉一紀っていう人の責任かな?



『広辞苑第六版』のアイヌ語

佐藤和美 (2008/01/12)

『広辞苑第五版』のアイヌ語の間違い・疑問点に関しては、「『広辞苑』のアイヌ語」にまとめてありますが、『広辞苑第六版』が出版されたので、第五版と比較してみました。

あきあじ
五版:「アイヌ語アキアチップの転という。「秋味」と当てる」
六版:「「秋味」と当てる」

アシカ
五版:「アイヌ語」
六版:[削除]

うとう【善知鳥】
五版:「アイヌ語で突起の意」
六版:[削除]

江戸
五版:「古今要覧稿に「江所(江に臨む所)」の意とし、アイヌ語源説では宇土・烏頭と同じく出張ったところの意とする」
六版:「古今要覧稿に「江所(江に臨む所)」の意とする」

おんこ
五版:「(アイヌ語から)[植]東北地方でイチイ(一位)のこと。」
六版:「[植]東北地方でイチイ(一位)のこと。」

からむし【苧・枲】
五版:「「むし」は朝鮮語mosi(苧)の転か、あるいはアイヌ語 mose(蕁麻)の転か」
六版:「「むし」は朝鮮語mosi(苧)の転か、あるいはアイヌ語 mose(蕁麻)の転か」

コロポックル
五版:「アイヌ語。フキの葉の下に住む人の意」
六版:「アイヌ語。フキの葉の下に住む人の意」

さけ【鮭・C】
五版:「アイヌ語サクイベ(夏の食物)からとも、サットカム(乾魚)からともいう」
六版:「アイヌ語サキペ(夏の食物)からともいう」

さる【猿】
五版:「またアイヌ語に、猿をサロ・サルウシという」
六版:[削除]

しなのき【科木】
五版:「「しな」はアイヌ語で「縛る」の意」
六版:[削除]

シャモ
五版:「(アイヌ語シサム(隣人)の転か)アイヌが非アイヌ系日本人を指していう称。」
六版:「(アイヌ語シサムまたはシャモルンクル(ともに和人の意)の転か)アイヌが非アイヌ系日本人を指していう称。」

利根川
五版:「トネはアイヌ語 tanne(長い、の意)からか」
六版:[削除]

根室
五版:「アイヌ語の樹林の意のニムオロから」
六版:「アイヌ語の樹林の意のニムオロからともいう」

やつ【谷】
五版:「(関東地方でいう。特に鎌倉辺に地名として多く現存。アイヌ語からか)低湿地。やち。やと。(地名としては、「や」ともいう)」
六版:「(関東地方で)低湿地。やち。やと。特に鎌倉辺に地名として多く現存し、地名としては、「や」ともいう。」

ルイベ
五版:「アイヌ語で、溶けた魚、または食物の意」
六版:「アイヌ語で、溶ける食物の意」

私の指摘した点はかなり改善されてますね。(まぁ、「改善」というよりは、単純に削除しただけの項目のほうが多いですが)
それにしても「根室」の「ともいう」を追加しただけというのは情けないですね。アイヌ語をちょっとかじれば、「アイヌ語の樹林の意のニムオロからともいう」などとは絶対書かないと思いますが。



漢字で書くと

佐藤和美 (2008/01/07)

宮城県の「シオガマ」市を漢字で書くと、
「塩竈」市です。
でもJRの駅名は「塩釜」駅です。

東京都葛飾区に「アオト」という地名があります。
東京都葛飾区「青戸」です。
でも京成線の駅名は「青砥」駅です。

東京都足立区に「タケノツカ」という地名があります。
東京都足立区「竹の塚」です。
でも小さい違いですが、東武線の駅名は「竹ノ塚駅」駅です。

東京都大田区に「センゾク」という地名があります。
東京都大田区南/北「千束」です。
でも池の名は「洗足」池です。
東京都大田区北「千束」に隣接しているのが、東京都目黒区「洗足」です。

大分県に「ユフイン」という町名があります。
かつての「湯布院」町です。(平成の大合併で現在は由布市(ゆふし))
でも温泉の名は「由布院」温泉です。

こういうのって、他にもいろいろあるんでしょうねぇ。



ベオウルフ

佐藤和美 (2008/01/06)

「ベオウルフ」っていう映画をやってますけど、このタイトルを見たとき思ったのは、「ベオウルフ」ってひょっとすると「ベーオウルフ」のこと? なんで「ベオウルフ」なの? ですね。
私はこのタイトルを岩波文庫の「ベーオウルフ」で覚えていたので、ちょっとした違和感があります。
「ベオウルフ」って、「Beowulf」を文字読みしただけなんでしょうか?

「ベーオウルフ」岩波文庫
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/32/4/3227510.html
正義を愛する若き勇士ベーオウルフは,夜ごと襲い来る怪物グレンデルの悪業に苦しむデネ(デンマーク)の王の噂を聞き,海を渡って救援に赴いた.こうしてベーオウルフと怪物との間に壮絶な一騎打ちが始まる.スカンジナヴィアの伝説を題材に,英雄の武勇を力強くうたいあげた古英詩の記念碑的作品.



天和

佐藤和美 (2008/01/05)

連声(れんじょう)』に追加。

先日、テレビで八百屋お七のことをやってたのですが、お七の放火事件(実際はボヤ程度だったそうですが)があったのが、天和3年3月29日で、この「天和」を「てんな」と発音してました。
と言うことで、「天和(てんな)」を「連声」に追加。

『大辞林』
てんな てんわ 【天和】
〔「てんわ」の連声〕年号(1681.9.29-1684.2.21)。延宝の後、貞享の前。霊元天皇の代。



P波・S波

佐藤和美 (2007/09/30)

明日から緊急地震速報が始まります。地震は最初に弱いゆれがあり、その後強いゆれがきます。弱いゆれを感知し、強いゆれの地震速報を流そうということのようですね。
最初のゆれを起こすのがP波、二番目のゆれを起こすのがS波です。
その意味ですが、
Primary wave(第一波)
Secondary wave(第二波)
です。

私が就職したころ(30数年前)ですが、よく「プライマリー」、「セカンダリー」、「ターシャリー」という言葉を聞きました。「セカンダリー」は「second」に似てるので、「ターシャリー」は「third」に似てるのかなと勝手に思ってましたが、今回初めて調べてみました。あまり似てなかったですね。

『EXCEED 英和辞典』
tertiary
a., n. 第三(位,次,期)の; 【地学】(T-) 第三紀[系](の); 【文法】三次語(句) ((副詞相当語(句))); (やけどが)ひどい[第三度の].



おめでたくなる

佐藤和美 (2007/09/17)

忌言葉(いみことば)』に追加。

最近、芥川龍之介を読み返してるところです。
今、読んでるのが『河童・或阿呆の一生』(新潮文庫)。
その中の「玄鶴山房」46ページからです。
「お目出度くなってしまいさえすれば……」
この「「お目出度くなって」ですが、注解(三好行雄)によると、
「死んでの意。忌み言葉で、反対の表現。」
だそうです。

『大辞林』
おめでたくなる
「死ぬ」を忌んでいう語。



犬は「びよ」と鳴いていた

佐藤和美 (2007/09/16)

山口仲美さんの『ちんちん千鳥のなく声は』は鳥の声の擬音語をあつかった本ですが、山口仲美さんのもうひとつの本に動物の声をあつかった『犬は「びよ」と鳴いていた』(光文社新書)があります。
現在では犬の声の擬音語は「わんわん」に決まってますが、昔はどうだったかというと、「犬は「びよ」と鳴いていた」というわけです。

本の紹介文です。

「「私が一番最初にひっかかったのは、平安時代の『大鏡』に出てくる犬の声です。「ひよ」って書いてある。頭注にも、「犬の声か」と記してあるだけなのです。私たちは、犬の声は「わん」だとばかり思っていますから、「ひよ」と書かれていてもにわかには信じられない。雛じゃあるまいし、「ひよ」なんて犬が鳴くかって思う。でも、気になる。これが、私が擬音語・擬態語に興味をもったきっかけでした。」―英語の三倍・一二〇〇種類にも及ぶという日本語の「名脇役」擬音語・擬態語の歴史と謎を、研究の第一人者が興味深く解き明かす。」

平安時代の犬の擬音語は「びよ」とか「びょう」だったようで。

最近、30数年ぶりに芥川龍之介を読み返してます。

芥川龍之介『地獄変・偸盗』(新潮文庫)
「偸盗」
63ページ
「犬は三頭が三頭ながら、大きさも毛なみも一対な茶まだらの逸物で、犢(こうし)もこれにくらべれば、小さい事はあっても、大きい事はない。それが皆、口のまわりを人間の血に濡らして、前に変わらず彼の足もとへ、左右から襲いかかった。一頭の頤(あご)を蹴返(けかえ)すと、一頭が肩先へ躍りかかる。それと同時に、一頭の牙が、すんでに太刀を持った手を、噛もうとした。と又、三頭とも巴のように、彼の前後に輪を画いて、尾を空ざまに上げながら、砂のにおいを嗅ぐように、頤を前足へすりつけて、びょうびょうと吠え立てる。」
76ページ
「群がる犬の数を尽して、びょうびょうと吠え立てる声を聞いた。」

「びょうびょう」なのがジーンときてしまいました。さすがは芥川龍之介、かつての犬の声が「わんわん」ではなく、「びよびよ/びょうびょう」なのをちゃんと知ってたんですね。



可愛可愛と鳴くんだよ

佐藤和美 (2007/09/09)

山口仲美さんは擬音語・擬態語が専門のようですが、『ちんちん千鳥のなく声は』(大修館書店)は鳥の声をどのように日本人がとらえてきたかをあつかった本です。

本の紹介文です。

「テッペンカケタカ、ヒトクヒトク、ヤチヨ、ノリスリオケはどんな鳥の声?日本人は鳥の声をどう聴いてきたのか?そこには知られざる日本人の顔がある。ホトトギス、ウグイス、チドリ、フクロウなど、様々な鳥の声をうつす言葉の歴史。」

さて童謡「七つの子」に次のような一節があります。

かわい かわいと からすはなくの
かわい かわいと なくんだよ

この「かわい かわいと なくんだよ」ですが、『ちんちん千鳥のなく声は』に興味深い記述があります。

「鈴木棠三編『日本俗信辞典』(東京堂)には、日本の各地でカラスの声がどのように聞かれているかが記されている。たとえば、福井県では「カァエー」、愛媛では、「カーカポ」「カオカオカオ」。その中に、兵庫や広島で聞く、「カワイカワイ」があったのだ! その本には、日本全国の状況が記されているわけではないから、「カワイカワイ」と聞く地方は、ほかにも相当あるにちがいない。」
「童謡「七つの子」の作者、野口雨情は、茨城県生まれ。その後、北海道にも渡っている。民謡も創作している雨情のこと、各地の方言には詳しかったであろう。そうした雨情が、「カワイカワイ」というカラスの声のうつし方を知っていた可能性は強い。これはいけると雨情は思い、この写生語「カワイ」に「可愛い」の意味を掛けて、童謡に登場させた。そう考えられはしないか。」

カラスは「カアカア」に決まってると思ってたら、「カワイカワイ」と聞いていた地方もあったんですね。今度、「七つの子」を聞いたときはこの事を思い出してみてください。



九州

佐藤和美 (2007/07/08)

Yahoo!知恵袋に次のような質問があります。

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http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail.php?queId=4333

九州は8県しかないのに、なぜ九州と言うのですか?

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ベストアンサーに選ばれた回答で私のHPにリンクが張ってありました。

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回答日時: 2004/4/9 10:35:27

やはり、
筑前、築後、豊前、豊後、肥前、肥後、日向、大隅、薩摩
の九つの国からきているという説がもっともらしいですね。
http://www.asahi-net.or.jp/~hi5k-stu/nihongo/kokumei.htm

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「もっともらしい」というのにはちょっとカチンときますねぇ。

その他の回答にはなさけないのがあります。

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回答日時: 2004/4/9 14:09:21

筑前国(筑州)筑後国(筑州)肥前国(肥州) 肥後国(肥州)日向国(日州、向州) 大隅国(隅州)薩摩国(薩州) 壱岐国(壱州)対馬国(対州)
対州と壱州を加えると9つの州があります。まずこれで間違いなさそうです。
と、検索した日記にはありました。
http://www.google.co.jp/search?q=cache:wGyX98gx7iwJ:d.hatena.ne.jp/alpinix/20040312+%E4%B9%9D%E5%B7%9E%E3%80%80%E7%94%B1%E6%9D%A5&hl=ja&ie=UTF-8

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おいおい、豊前・豊後が抜けてるぞ。
それでもって、九州じゃなくて、十一州に名称変更か?

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回答日時: 2004/4/9 10:35:12

江戸時代の藩が9つあったからだそうです。

筑前(現・福岡県中西北部)
筑後(現・福岡県南部)
肥前(現・佐賀県と長崎県)
肥後(現・熊本県)
豊前(現・大分県北西部と福岡県北東部)
豊後(現・大分県の大部分)
日向(現・宮崎県)
薩摩(現・鹿児島県西部)
大隅(現・鹿児島県東部)
http://www.moebbs.com/test/read.cgi/azuentrance/1066317614/

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それでは問題です。

Q.福沢諭吉は九州何藩の出身か?

A.中津藩の出身です。

『大辞林』
ふくざわ-ゆきち ふくざは― 【福沢諭吉】
(1834-1901) 思想家・教育家。慶応義塾の創立者。豊前中津藩士。大坂の緒方塾で蘭学を学んだのち、江戸に蘭学塾を開き、また英学を独習。幕府の使節に随行し三度欧米に渡る。1868年塾を慶応義塾と命名。73年(明治6)明六社の創立に参加。82年「時事新報」を創刊。個人および国家の独立自尊、社会の実利実益の尊重を主張した。著「西洋事情」「学問ノススメ」「文明論之概略」など。

それと北原白秋ですが、

http://www.yanagawa-net.com/midokoro/hakusyu/hakusyu.html
明治・大正・昭和と生き、日本の近代文学に偉大な足跡を残した詩人北原白秋は代々柳川藩御用達の海産物問屋を営む旧家に生まれました。

九州には柳川藩もあったんだぞ!!

九州にあった藩の数は9どころではないです。以下をご覧ください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%97%A9%E3%81%AE%E4%B8%80%E8%A6%A7
藩の一覧

ちなみに『大辞林』にはこうあります。

きゅうしゅう きうしう 【九州】
(1)日本列島の四大島のうち、最南西にある島、およびその属島。五畿七道のうちの西海道で、筑前・筑後・豊前(ぶぜん)・豊後(ぶんご)・肥前・肥後・日向(ひゆうが)・大隅・薩摩の九か国。現在、福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島の七県よりなる。九国。

九州は「九つの国からきているという説がもっともらしい」?



圧(へ)す

佐藤和美 (2007/07/07)

「おっぺす」は「「押し圧(へ)す」の転」ということですが、その他の「圧(へ)す」の仲間達ですが、

『大辞林』
へしお・る ―をる【▽圧し折る】
(動ラ五[四])
強い力を加えて折る。おしつけて折る。たわめて折る。
「枝を―・る」「高慢の鼻を―・る」

『大辞林』
おしあい-へしあい ―あひ―あひ【押(し)合い▽圧し合い】
(名)スル
狭い所で、多くの人が入りまじって混雑すること。
「われ先に乗ろうとして―する」

杉本つとむ『語源海』東京書籍
おみなえし ヲミナヘシ 【女郎花】
ヲミナ・ヘシと二語よりなる。ヲミナは若い女性をさす(オミナの仮名遣いでは老女)、ヘシは俗にヘシ折ルというヘシと同じ、強く押さえつける意。『万葉集』に、<姫押>をあて、ヲミナヘシと訓(よ)ませる例がある。花の美しさは、美女も圧倒されるほどであるというところからの命名。至上の美花の意。

堀井令以知編『決まり文句語源辞典』東京堂書店
べそをかく
べそはもと「へし口」から。へし口は口をヘス(圧す)。口を押さえ付けること。能面のベシミ(圧見)からともいわれ、口をへの字にして黙ること。能面に大圧面(おおべしみ)があり、天狗に力を貸す鬼神などに用い、子供が泣く顔付きに似る。「べそを作る」とも。渋面を作ること。江戸時代から使用。



おっぺす

佐藤和美 (2007/07/01)

私は東京都墨田区の出身で、話してるのはほとんど共通語です。
ただ一つ小中学校の頃、自分でもこれは方言かな? と思って(ときどき、恥ずかしく思いながら)使ってたのが「おっぺす」です。
母が千葉県中央部の出身なのでその影響なのだと思います。
数日前に気がついてびっくりしたのですが、この「おっぺす」、『大辞林』にも『広辞苑』にも載ってるんですね。

『大辞林』
おっぺ・す 3 【押っ▽圧す】
〔「おしへす」の転〕押す。押しつぶす。

「おっぺす」は辞書にも載ってるような言葉だったのかぁ。
それでもって、「「押し圧(へ)す」の転」だったのかぁ。由緒ある言葉なんだなぁ。
なのやら、感動してしまった瞬間でした。



クマのウンコちゃん

佐藤和美 (2007/06/24)

「クマのプーさん」の「プー」ですが、スペルは「Pooh」です。

これを辞典で調べると、

『プログレッシブ英和中辞典』
pooh
《英話》くさい, いやなにおいだ.
《主に幼児語》《英俗》うんち do a 〜 うんちをする.

「クマのプーさん」て、「クマのウンコちゃん」て意味なんですかね?(笑)



筒井順慶

佐藤和美 (2007/06/23)

筒井順慶に関連した二つのことわざを『大辞林』から引用します。

・元の木阿弥

元の木阿弥(もくあみ)
一時よい状態になったものが、また前の状態にもどること。
「欲ばりすぎて、―になる」
〔一説に、戦国大名の筒井順昭が病死したとき、その子順慶が幼かったので、死をかくして順昭に声の似た盲人木阿弥を替え玉として病床に置いた。順慶が成長したのち、順昭の死を公にし、木阿弥はまたもとの生活にもどったという故事からという〕

・洞ヶ峠をきめこむ

つついじゅんけい【筒井順慶】
(1549-1584) 戦国大名。大和筒井城主。松永久秀を討って大和一国を支配。以後、織田信長に属す。本能寺の変では明智光秀に誘われたが居城を動かず、山崎の戦いののち、羽柴秀吉に参じた。そのため洞ヶ峠(ほらがとうげ)に軍をとどめて形勢をうかがって日和見(ひよりみ)を決め込んだという俗説が生まれた。

ほらがとうげ【洞ヶ峠】
(1)京都府八幡市と大阪府枚方(ひらかた)市の境にある峠。海抜63メートルにすぎないが、淀川・天王山が眺望できる。山崎の合戦で筒井順慶が明智勢に味方するかどうか戦況をながめていたという言い伝えで知られる。
(2)〔(1)の筒井順慶の故事から〕有利な方へつこうと形勢をみること。二股膏薬。日和見。
「―をきめこむ」



キャスティングボード

佐藤和美 (2007/06/17)

恥ずかしながら、間違えて覚えてました。
「キャスティングボード」

Google検索
キャスティングボード 26000件
キャスティングボート 22000件

同類は多いようで一安心。

『デイリー新語辞典』(三省堂)
キャスティングボート【casting vote】
二つの大きな勢力がほぼ等しい場合,大勢を決める力をもっている第三の勢力。



ドライカッパ

佐藤和美 (2007/06/14)

初めて「ドライカッパ」という言葉を聞いたときは何のことかと思いました。
「(心が)ドライな河童」? 「頭の皿の乾いた河童」?

wikipedia ドライカッパ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%91

ドライカッパとは、電気通信事業者所有のツイストペアケーブル(銅製=copper)通信線路のうち、その事業者が使用していない回線の事を言う。

私は「ドライカッパ」で覚えたんですが、「ドライカッパー」っていう表記もあるようです。

http://e-words.jp/w/E38389E383A9E382A4E382ABE38383E38391E383BC.html
ドライカッパー【dry copper】
 電話回線網を構成する(メタルケーブルの)加入者回線のうち、未使用の回線。自前の加入者回線網を持たないADSL事業者などが電話加入者に通信サービスを提供する際には、NTTなどからドライカッパーを借り受ける必要がある。
 回線を水道管になぞらえて、信号が流れていないことを「ドライ」(乾いた)と表現している。「カッパー」とは "copper" すなわち銅のこと。メタルファイバーが銅線であるためこのように呼ばれる。

岩波文庫にチャールズ・ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』(David Copperfield)という本があります。「David Copperfield」をどうカナ表記するかは、何種類かのパターンがあるのでしょうが、岩波文庫では『デイヴィッド・コパフィールド』となってます。「copper」の表記は「コッパー」とか「コッパ」「コパ」等でしょうが、「カッパ」っていう表記はちょっとしたオドロキでした。

マジシャンで「David Copperfield」という人がいて、その表記は「デヴィッド・カッパーフィールド」のようですね。「copper」の表記はこれから「カッパー」、「カッパ」、「カパ」等になってくんでしょうか?

ちなみに「Copperfield」っていう名字はむりやり日本語訳すれば、「銅野」さんってとこですかね? 先祖が銅の採掘される野原にでもいたんでしょうか?



ひんひん

佐藤和美 (2007/06/10)

山口仲美編『暮らしのことば 擬音・擬態語辞典』(講談社)に「ひんひん」の項があるのを見逃してました。

ひんひん
「馬の鳴き声。江戸時代の中頃から「ひんひん」と「ひ」の音で写すようになった。」
「江戸時代の中頃までは、馬の鳴き声は「い」「いん」と、「い」音で聞いていた。ハ行子音が現在の[h]ではなく、[F]音だったため、実際の馬の声に近いのは、「ひ[Fi]=フィ」ではなく、「い[i]」の方だった。奈良時代には「馬声」と書いて「い」と読ませた例があり、馬の声が「い」だったことがわかる。馬の声「い」に「鳴く」を付けて出来た「いなく」の語もある。平安時代には、馬の声は「いう」と表記され、「いん」に近い音で発音していた。「いうといななきて引き離れていぬべき顔したり」(落窪物語)。「いななく」の語も、「いん」という馬の声に「鳴く」を付けて出来たもの。」

『暮らしのことば 擬音・擬態語辞典』(2003年)の『落窪物語』の引用ですが、「駒のいななき」(1944年)にはこのようにあります。

「それでは、馬の鳴声をヒまたはヒンとしたのはいつからであろうか。これについての私の調査はまだ極めて不完全であるが、私が気づいた例の中最も古いのは『落窪物語』の文であって、同書には「面白の駒」と渾名(あだな)せられた兵部少輔(ひょうぶのすけ)について、「首いと長うて顔つき駒のやうにて鼻のいらゝぎたる事かぎりなし。ひゝと嘶(いなな)きて引放(ひきはな)れていぬべき顔したり」と述べており、駒の嘶きを「ひゝ」と写している。これは「ひ」がまだfiと発音せられた時代のものである故、それに「ヒヽ」とあるのは上の説明と矛盾するが、しかしこの文には疑いがあるのである。すなわち池田亀鑑(いけだきかん)氏の調査によれば、ここの本文が「ひゝ」とあるのは上田秋成(うえだあきなり)の校本だけであって、中村秋香(なかむらしゅうこう)の『落窪物語大成』には「ひう」とあり、伝真淵(まぶち)自筆本には「ひと」とあり、更に九条家旧蔵本、真淵校本、千蔭(ちかげ)校本その他の諸本には皆「いう」となっている。そのいずれが原本の面目を存するものかは未だ判断し難いが、「いう」とある諸本も存する以上、これを「ひゝ」または「ひう」であると決定するのは早計であって、むしろ、現存諸本中最も書写年代の古い九条家本(室町中期の書写)その他の諸本におけるごとく、「いう」とある方が当時の音韻状態から見て正しいのであるまいかと思われる。そうして「いう」の「う」は多分現在のンのごとき音であったろうから、「いう」はヒンでなく、むしろインにあたるのである。」

この部分、校訂は「いう」で決着したようですね。



駒のいななき

佐藤和美 (2007/06/09)

馬の鳴声は現在では一般的には「ヒヒ−ン」です。ハ行音の発音の変遷は「は行音について」にまとめてありますが、昔は今の「ヒ」という音はありませんでした。では馬の鳴声の擬音語はどのようだったのでしょうか?

山口仲美編『暮らしのことば 擬音・擬態語辞典』(講談社)の「ひひーん」の項にはこうあります。

「馬の鳴き声を「ひ」で始まる音で写すようになるのは江戸時代後期から。それ以前のハ行音は現在のようなhの音ではなかったので「い」で写された。」

岩波文庫の橋本進吉『古代国語の音韻に就いて』に「駒のいななき」という数ページの文章が収録されています。(著作権が切れてるので青空文庫にもあります。http://www.aozora.gr.jp/cards/000061/files/396_21658.html)

「駒のいななき」は馬の鳴き声の擬音語の変遷を考察したものです。その中で『万葉集』時代の馬の鳴き声についてふれているところがあるので引用してみましょう。

「『万葉集』巻十二に「いぶせくも」という語を「馬声(イ)蜂音(ブ)石花(セ)蜘(クモ)」と書いてあって、「馬声」をイに宛て、「蜂音」をブに宛てたのをみれば、当時の人々は、蜂の飛ぶ音をブと聞いたと共に、馬の鳴声をイの音で表わしていたのである。」

「いななく」は馬専用に使います。豚がいななくとか、牛がいななくとは言いません。「いななく」にはいくつか語源説があるのですが、「いななく」の語頭の「い」は「馬声」だろうというのはほぼ共通しています。



反切

佐藤和美 (2007/06/05)

漢字は表意文字ですが、中国語(漢字)の昔の発音がわかるのはなぜなのでしょうか? 昔の発音を推理する上で重要なものに、反切というものがあります。

『大辞林』からです。

はんせつ【反切】
ある漢字の字音を、それと声(頭子音)の同じ字(父字)と韻の同じ字(母字)各一字を選び、上下に並べ二字の組み合わせによって示すこと。例えば、「三」の字音を「思甘切」のように表し、「思」の頭子音 [s] と「甘」の韻 [am] とで [sam] を表す類。なお、この原理を日本語に応用し、日本語の語形変化について説明することも行われた。かえし。切韻。

この反切の資料が多く残っているので、中国語(漢字)の昔の発音も推定できるというわけです。

(その他、日本の仮名等も漢字の昔の発音の推定に役立ってるようです。)



人は「かか」と笑うか?

佐藤和美 (2007/06/03)

人はハ行音で笑うといいます。

「ははは」
「ひひひ」
「ふふふ」
「へへへ」
「ほほほ」

さて時代小説などにでてくる表現ですが、「呵呵(かか)と笑う」というのがあります。人は「かか」と笑うのでしょうか?

『大辞林』
かか【呵呵】(副)
大声で笑うさま。あはは。

まずは「は行音について」を読んでください。

「呵」のピンインは「he」です。つまり「呵呵」は現在の日本語では「かか」ですが、もとはハ行音の笑い声だったんですね。

「呵」の中国語での発音の変遷です。
(藤堂明保編『学研漢和大字典』による)
har → ha → ho → h(hē)



この世の果てまで

佐藤和美 (2007/06/02)

「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」が上映中です。さて「ワールド・エンド」の意味ですが。

1960年代の歌で、スキーター・デイヴィスっていう人の歌う「この世の果てまで」っていう歌がありました。「この世の果てまで」の原題が「THE END OF THE WORLD」です。

『EXCEED 英和辞典』から

end
n. 終り, 終末; 端, はて; ((形容詞的)) 端の, 末端の; 限界, 限度; 最後, 死; 行為の終末; 結果; 目的; (pl.) (使い切った)残り, 断片; 役割, 受け持ち; 〔米〕 部分, 部門, 方面; 〔米〕 【フットボール】エンド, 翼.
the end of the world 地の果て; ((否定文で)) 重大事.

「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」(PIRATES OF THE CARIBBEAN: AT WORLD'S END)は「世界の果て」まで行って、大冒険するお話のようですね。



T字路

佐藤和美 (2007/02/28)

きのうのテレビ朝日の報道ステーションの交通事故のニュースで、「T(ティー)字路」と言っていたのを聞いてビックリしました。私は「丁(てい)字路」派で、「T(ティー)字路」という人もいるというのは聞いたことがあったんですが、まさかテレビで堂々と聞くとは思いもしませんでした。

『大辞林』から。

ていじろ【丁字路】
丁字形に交わる道路。T 字路。三つ辻(つじ)。

ティーじろ【T字路】
「丁(てい)字路」に同じ。

http://ja.wikipedia.org/wiki/T%E5%AD%97%E8%B7%AF
T字路
T字路(ティーじろ)は、道がアルファベットのTの形のように枝分かれしている交差点である。本来の名前は「丁字路(ていじろ)」であり、法律用語としてもこちらが正しいが、「丁」の字の発音、字形ともにアルファベットのTに似ているため混同され、現在「T字路」の方が一般的である。

Google検索

T字路 約347000
丁字路 約 60200

ホントだ。「現在「T字路」の方が一般的」なんですね。私のほうが少数派だったんだ。

ただ、表記としては「T字路」が優勢でも、発音は「てーじろ」のほうが優勢なような気がするんですが、どうなんでしょう?



ブロンテのスペル

佐藤和美 (2007/02/03)

『嵐が丘』のエミリ・ブロンテ、『ジェイン・エア』のシャーロット・ブロンテなどで知られるブロンテ三姉妹のブロンテのスペルは「Brontë」です。英語では「ë」などというのはあまり見かけないですね。

英語では単語の語尾の「e」は発音されることは少ないでしょう。母音があるんだぞ、母音を発音してね、と強調したいために「ë」と、点々がついているんでしょうね。

ナイキNikeとかアドビAdobeはもともとの英語の単語ではないようです。(ニケはギリシア神話の女神だし、「adobe」っていう単語はスペイン語から入ったようだし)ブロンテさんちもアイルランド系のようだし。語尾の「e」を発音してるのは、もともとの英語の単語じゃないのでは、とか考えてしまいます。

ちなみに、日本では「Brontë」は一般的には「ブロンテ」と読みますが、英和辞典で発音記号を見ると「ブランティ」って感じですね。「ブロンテ」というのは文字読みなんでしょう。



バラバラ殺人

佐藤和美 (2007/01/23)

ここ数年、松本清張をぼちぼち読んでます。で、今読んでるのが短編集で角川文庫『失踪の果て』。この中に「額と歯」という短編がありました。読んでみると東京都墨田区の玉の井(現在では存在しない地名です。吉行淳之介あたりを連想する?)での殺人事件の話。そう言えば昔玉の井で殺人事件があったと聞いたような気がする。(墨田区生まれなもんで)この話って、ノンフィクション? で、検索してみました。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%89%E3%81%AE%E4%BA%95%E3%83%90%E3%83%A9%E3%83%90%E3%83%A9%E6%AE%BA%E4%BA%BA%E4%BA%8B%E4%BB%B6
玉の井バラバラ殺人事件
「この事件で特筆すべきことは、殺害された被害者の遺体を切り刻む猟奇的犯罪に対し「バラバラ殺人」という日本語が定着した初めての事件であることである。」
「発見された遺体は警察においてホルマリンにつけて保存されたが、事件の解決が長引くにつれて報道機関の注目を集めるようになった。最初この事件について「コマきれ殺人」などといわれていたが、後に東京朝日新聞(現在の朝日新聞)が命名した「バラバラ殺人事件」という表現に統一され、以後の同様の事件報道において定着することになった。」

へぇ、玉の井が「バラバラ殺人」の語源の地だったか。

それにしても、
「犯人(当時39歳)は被害者の男性(当時27歳)が秋田県にもつという財産目当てに近づいたが、実際には一文なしで貧しい犯人宅に居座ってしまった男性が邪魔になり、妹と弟とともに2月11日に殺害し、その後遺体の遺棄が行いやすいようにバラバラにして東京の各地に捨てたものであった。そのためバラバラにした動機は単に遺体の運搬のためであったといえる。」

清張の「額と歯」とはずいぶん違うなぁ。どっちが正しいんだ?



「かおり」の旧仮名

佐藤和美 (2007/01/17)

「かおり」の旧仮名は?

有名な話でしょうが「シクラメンのかほり」の「かほり」って実は間違ってます。

じゃ、正しい「かおり」の旧仮名は?

「眞鍋かをり」の「かをり」です(笑)。



「蛍の光」の係り結び

佐藤和美 (2007/01/14)

以前、伝言板に「仰げば尊し」に係り結びがあると言う話を書いたことがあります。
(「仰げば尊し」の係り結び」1999/03/14 19:00)
「今こそ別れめ」の部分で「こそ」があるので係り結びにより「む」が已然形の「め」になっている。「こそ」を取り除くと「今別れむ(今別れん)」だ。
と、いうようなことを書きました。

実は卒業式のもう一つの定番ソング「蛍の光」にも係り結びがあるんですね。
山口仲美『日本語の歴史』(岩波新書)を読んで知りました。97-101ページあたりです。

あけてぞけさは、別れゆく

「ぞ、なむ、か、や」があると連体形になりますが、「あけてぞ」の「ぞ」があるので、「ゆく」は連体形とのこと。でも「ゆく」って終止形も連体形も同じですよね。「仰げば尊し」の「こそ」よりおもしろさにかけるという気がします。

現在、山口仲美さんは埼玉大学の教授ですが、埼玉大学のHPに山口さん本人の文章がありました。

http://www.saitama-u.ac.jp/koho/intro/newsletter/no3/p6-2kyoin-yamaguchi.html

身近にいきづく昔の日本語

最近、『日本語の歴史』(岩波新書)という、いかにも売れそうもない固いタイトルの本を出しました。ところが、不思議に売れる。今の日本語がどんなふうにして生まれてきたのか? こういうことを一般の人に分かる形で書いた本がなかったかららしいのです。
 ここでは、拙著『日本語の歴史』にも登場する話で、身近な話をしてみたいと思います。日本では卒業式に必ず歌う歌があります。「蛍の光」や「仰げば尊し」です。歌詞を書いてみますから、ちょっと意味を考えてみてください。まずは、「仰げば尊し」。これは、明治一七年ごろに作られた小学唱歌です。

 仰げばとうとし、わが師の恩。教えの庭にも、はや幾年(いくとせ)。
 思えばいと疾(と)し、この年月(としつき)。今こそ別れめ、いざさらば。


 最後の「今こそ別れめ」には、昔の日本語が顔を出しています。「こそ」は、「別れめ」の「め」と呼応して「係り結び」を作っているのです。「さあ、今こそお別れしよう」の意味です。「め」は、意思を表す助動詞「む」の已然形で、「こそ」に呼応して強調表現を作っています。平安時代に栄えた「係り結び」が、現代の歌の中に化石的に残っているのです。
白状すると、私は、小学生の時、「め」は「目」で、「つなぎ目」「境目」などとおなじ意味の目だと思っていたのです。「今こそ別れ目(=今こそ別れる節目)」だとばかり思って歌っていました!
 次は、「蛍の光」。同じく意味を考えつつ、歌詞をご覧下さい。

 ほたるの光、窓の雪。書(ふみ)よむ月日、重ねつつ、いつしか年も、すぎの戸を、あけてぞけさは、別れゆく。

 明治一四年ごろに作られた小学唱歌ですが、故事を踏まえ、掛詞まで使っているので、意味を取ろうとすると結構難しい。現代語にしてみると、「蛍の光や窓の外に積もる雪を明かりにして本を読み学ぶ月日を重ねて、いつしか年も過ぎてしまったが、杉の戸を開けて、夜が明けた今朝は、別れてゆきます」という意味ですね。「あけてぞ」の「ぞ」が、「ゆく」という連体形と呼応する「係り結び」です。小学生の頃、「ぞ」が係助詞であるなどとは知りませんから、「あけて」までで息を使い果たし、息継ぎをして「ぞけさは」と歌っていたことを思い出します。「ぞけさ」って何だろうと思いながら。
こんなふうに、身近なところに昔の日本語が息づいています。日本語の歴史を知る。それは意外に深い日本語の姿を教えてくれます。



ひげを当る

佐藤和美 (2007/01/09)

も一つ『忌言葉(いみことば)』に追加。

『大辞林』
ひげを当る
江戸語・東京語では「(ひげを)剃(そ)る」を「する」というので、「剃る」の忌み詞。



鏡開き

佐藤和美 (2007/01/08)

もうまもなく鏡開きですね。

さて、なんであの餅を鏡餅と言うのか?

鏡餅
「形が鏡に似ていることからこの名がある。鏡は古くは円形で、現在でも神社の御神体として円形の鏡が祭られている。」
(山口佳紀編『暮らしのことば語源辞典』講談社)

次になんで「開き」なのか?

同じく『暮らしのことば語源辞典』の「鏡餅」項から。

「なお、「鏡開き」の「開く」とは、鏡餅を「切る」という語を避けて用いたことば。」

なお、『大辞林』の「鏡開き」の項ではこうありました。

「「開き」は「割る」の忌み詞」

ということで「鏡開き」を『忌言葉(いみことば)』に追加。



「母(はは)」の発音

佐藤和美 (2006/09/18)

「母(はは)」の発音については「は行音について」で書いたことがありますが、実はこれではふれていないことがあります。

小学館『日本国語大辞典』からです。

はは【母】
語誌
(1)ハ行子音は、語頭ではp→φ→h、語中ではp→φ→wと音韻変化したとされる(φは両唇摩擦音。Fとも書く)。これに従えば、「はは」はpapa→φaφa→φawa→hawaとなったはずで、実際、ハワの形が中世に広く行なわれたらしい。仮名で「はは」と書かれたものの読み方がハハなのかハワなのかは確かめようがないが、すでに一二世紀の初期から一1の挙例「古本説話集」「法華経単字」「日蓮遺文」など、「はわ」と書かれた例が散見されるから、川のことを「かは」と書いてカワと読むごとく、「はは」と書いてハワと読むことも少なくなかったと考えられる。キリシタン資料を見ると、「日葡辞書」ではFafa(ハハ)とFaua(ハワ)の両形が見出しにあるが、「天草本平家」などにおける実際の用例ではハワの方が圧倒的に多い。
(2)一七世紀初頭までは優勢だったハワが滅んで、現代のようにハハの形のみが用いられるようになったのには、次のようないくつかの原因が考えられる。(イ)他の親族名称、チチ・ヂヂ・ババからの類推が働いた。すなわち、これらの親族名称は、二音節語、同音反復、清濁のペアをなす、といった特徴があるから、ババから期待される形はハハである。(ロ)江戸時代には、日常の口頭語で母を意味する語としては、カカ(サマ)・オッカサンなどが次第に一般的となり、「はは」は子供が小さいときに耳で覚える語ではなく、大人になってから習得する語になっていた。(ハ)江戸時代でも、仮名表記する際には「はは」が一般的であり、この表記の影響による。

「母(はは)」の発音の歴史はいろいろ複雑なようですね。



プラトンとプルートー

佐藤和美 (2006/08/27)

(ギリシアの)プラトンの英語でのスペルは「Plato」です。なぜか語尾に「n」はありません。ただし、「-ic」をつけた「Platonic」(プラトニック)には「n」があります。
(ギリシア神話の)プルートーンの英語でのスペルは「Pluto」です。これも語尾に「n」はありません。そして「-ium」をつけた「plutonium」(プルトニウム)には「n」があります。
プラトンとプルートーの不思議な共通点(?)でした。



プルートー

佐藤和美 (2006/08/26)

冥王星が惑星から削られることが決まりました。
ま、妥当な決定でしょうね。
こういう歴史に残るような一瞬に立ち会えるとはちょっと感激です。

『EXCEED 英和辞典』
Pluto
n. 【ギリシア神話】下界の王; 【天文】冥王(めいおう)星.

Plutoはギリシア神話によるとありますが、一般的にはギリシア神話の冥界の王はハデスのはずです。

『大辞林』
ハデス
(1)ギリシャ神話で、冥府の王。見えない者、の意。クロノスとレアの子。ゼウスの兄。姉妹の女神デメテルの娘ペルセフォネをさらって妻とした。プルトン(富める者)・クリュメノス(名高き者)などの別名をもつ。ハイデス。
(2)死の国。冥界。

ギリシア神話に出てくる名称は、日本では一般的には長音は省略されます。
「ヘーラクレース」→「ヘラクレス」
「ポセイドーン」→「ポセイドン」
「アポローン」→「アポロン」
といった具合です。
「ハデス」の別名に「プルトン」があります。
「プルトン」の長音を補うと「プルートーン」になります。
この「プルートーン」が英語では「プルートー」になったというわけです。

『EXCEED 和英辞典』
プルートーン
《ギ神話》Pluto ((冥界を支配する神)).

なお、プルートーンはローマ神話のディスに対応します。

『EXCEED 英和辞典』
Dis
n. 【ローマ神話】ディス (Dis Pater) ((冥府の神;ギリシア神話のPlutoにあたる)).

『大辞林』の「プルートー」の項に「ローマ神話」とあるのは間違いです。

『大辞林』
プルートー
(1)ローマ神話で冥界の神。ギリシャ神話のハデスにあたる。
(2)冥王星。



煌(ファン)

佐藤和美 (2006/08/08)

「煌(ファン)」はコカ・コーラから出してる烏龍茶です。

http://www.cocacola.co.jp/products/lineup/huang/index.html

「煌」はピンインでは「huang」です。つまり「ファン」ではなく、「フアン」です。「huang」はURLの一部にも使われてますね。

コカ・コーラはなんで「フアン」ではなく「ファン」としたのでしょうか?

・「フアン」だと「不安」を連想して、縁起が悪い?
・「フアン」よりも「ファン」のほうが発音しやすくて、かっこいい?
・「huang」は1音節で発音されるので、それを強調して「ァ」と小さくした?



リアル鬼ごっこ

佐藤和美 (2006/08/07)

ついに『リアル鬼ごっこ』(単行本)読みました。
べつに小説を楽しもうと思って読んだわけではなく、「校正の練習用テキスト」として読みました。
それにしても、文庫版の校正の人、たいへんだったろうなぁ。

有名な「馬から落ちて落馬して」はこんな文章です。

http://www.nhk.or.jp/a-room/kininaru/2004/05/0524.html
いにしえの昔の武士のさむらいが 山の中なる山中で 馬から落ちて落馬して 女の婦人に笑われて 赤い顔して赤面し うちへ帰って帰宅して 仏の前の仏前で 短い刀の短刀で 腹を切って切腹し 死んであの世へ行っちゃった

『リアル鬼ごっこ』の文章も「馬から落ちて落馬して」式の文章で「頭が頭痛」になりました。

さて、私も「佐藤さん」だし、この小説の主人公だったらどうしよう。
養子に行くのもめんどくさいし、ハワイにでも一週間行くとしますか。

(「クリスマスの最終日」っていう章があるけど、12月24日はクリスマスじゃないぞ!)



爆笑

佐藤和美 (2006/08/06)

恥ずかしながら、知りませんでした。
「爆笑」の定義(?)です。

『大辞林』
ばくしょう ―せう 0 【爆笑】
(名)スル
大勢の人が一度にどっと笑うこと。
「満場の人が―する」

「爆笑」って「大勢の人が一度にどっと笑う」ことなんですね。
笑う人が「複数」だとは知らなかった(汗)。



きおつけ

佐藤和美 (2006/07/22)

体育の時間などに使う言葉「きおつけ」
この言葉、辞典で調べても出てきません。
それもそのはず、「きおつけ」じゃなくて「きをつけ」なんですね。

『大辞林』
きをつけ 【気を付け】(連語)
(1)直立不動の姿勢を要求する号令。
「―、礼」
(2)直立不動の姿勢。
「―の姿勢をとる」

Googleで検索(「気をつける」等も含まれます)
きおつけ 12200件
きをつけ 37500件
気おつけ 12300件
気をつけ 2640000件
気お付け 19900件
気を付け 1280000件

「きおつけ」はともかく、「気お付け」って書く人は一体どんな人なんだろう?



フューチャリング

佐藤和美 (2006/03/04)

wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0

「フィーチャリング (featuring) 」項
「日本では語感から「フューチャー」(future、未来)と混同されて「フューチャリング」と間違われることが非常に多い。」

はい、私もその一人です(汗)。

googleで検索

フィーチャリング 208000件
フューチャリング  45800件



フィギュア

佐藤和美 (2006/02/26)

荒川静香さん、金メダル記念。

『EXCEED英和辞典』
figure
━━ n. 形, 姿; 体型; 肖像; 外観; 風采; 人物, 名士; 象徴; 図面; 図案; 図解; (アラビア)数字; けた (three 〜s 3けた); 合計額; 値段; (pl.) 算数, 計算; 【スケート】フィギュア ((一連の動作)); (フィギュアスケートで)氷上に描く図形; 【数】図形; ことばのあや; 【楽】音型; 【ダンス】(ひと)旋回.

スケートにはスピードスケートとフィギュアスケートがありますが、スピードスケートはスピードを競うスケートで、フィギュアスケートは(氷上に描く)図形を競うスケートなんですね。

ちなみに「Fig. 1」は「Figure 1」、つまり「図1」の意味です。



Re:Akasaka

佐藤和美 (2006/02/25)

「Akasaka」佐藤和美(2006/02/08)
>テープを逆回転するとローマ字で書いたのを逆から読んだのと同じになる、「Akasaka」は逆から読んでも「Akasaka」なので、テープを逆回転しても「赤坂」は「赤坂」に聞こえる、なんてことが書いてありました。

>私自身はまだ、横着してて、確認の実験をしたことはありませんので、念のため。

昨日の夜、テレビ朝日の「笑いの金メダル」なんてのをなにげなく見ていると、
エロ〜、エロ〜(スーパーは「ERO ERO」) て、歌詞の歌が流れてました。
何かと思ったら、これが逆回転すると、
オレ〜、オレ〜(スーパーは「ORE ORE」)で、「マツケンサンバ」になっちゃう。
「確認の実験」をテレビにしてもらったってことかな?



「猿」アイヌ語語源説

佐藤和美 (2006/02/19)

『広辞苑』のアイヌ語』から

さる【猿】
「またアイヌ語に、猿をサロ・サルウシという」

田村すず子『アイヌ語沙流方言辞典』(草風館)では「猿」として「saru」、「saro」があるが、日本語から入ったとされている。

----------------------------------

遅まきながら気がついたんですが、北海道(ブラキストン線の北側)には野生の猿は生息してませんね。「サル」がいなければ、「サル」という言葉はないでしょう。



龍 RON

佐藤和美 (2006/02/12)

「ビッグコミックオリジナル」で連載中の『龍-RON-(ロン)』の「RON」っていうのは、考えてみれば不思議な表記ですね。 「龍」はピンインでは「LONG」です。「RON」って、一体どこから来た? 実はこれ、「ロン」を(日本語で)ローマ字表記しただけです。作品中のどこかに出ていたはずです。



ぼうとく

佐藤和美 (2006/02/09)

「冒涜」だなんて「冒瀆」に対する「ボートク」だ!



Akasaka

佐藤和美 (2006/02/08)

40年ほど前に「少年マガジン」で読んだような気がするんですが(よほど、印象が強かったんでしょうね)、「赤坂」と言う発音をテープで逆回転したらどうなるか? という話です。
その本(「少年マガジン」?)には、テープを逆回転するとローマ字で書いたのを逆から読んだのと同じになる、「Akasaka」は逆から読んでも「Akasaka」なので、テープを逆回転しても「赤坂」は「赤坂」に聞こえる、なんてことが書いてありました。

検索すると、同じような内容の書き込みがありました。

http://www.tobunken.com/oldlog/log0007.html
日本語をテープに吹き込んで逆回転再生すると、ローマ字読みの逆読みになる。(母音=>子音の順が逆転するため。)よって「赤坂」を逆再生しても「赤坂」。

私自身はまだ、横着してて、確認の実験をしたことはありませんので、念のため。



アマゾン 追加

佐藤和美 (2006/02/05)

http://oriharu.net/jlogbbsASH4.htm

古代ギリシャでは、アマゾンの女戦士の伝説が有名である。ディオドロスの『世界史』によると、小アジアのアマゾン女族の女王は、「法律を定め、女たちには従軍させ、男たちには卑しい奴隷の仕事を課した。男児が生まれると、脚と腕を不自由にして、戦えなくし、これに対して女児は右の胸を焼かれて、大きくなったときに戦場で[右の乳房が弓を引く上で]邪魔にならないようにした。それゆえ、この民族はアマゾン[乳房がないもの]と呼ばれるようになった」。

このディオドロスの話は到底史実とは思えない。右利きの女性の体験談によると、弓を射る上で邪魔になるのは、むしろ左の乳房の方なのだそうだ。戦う上で、右の乳房をつぶす必要はないし、実際、ギリシャで描かれるアマゾン女戦士の像には、乳房は二つともある。また、言語学者によれば、《アマゾン=ア+マゾン=乳房がないもの》というギリシャ人による通俗的解釈は誤りである。「アマゾン」の語源に関しては、まだ定説はないが、「月の女神の子供」を意味する古代ペルシア語の"uma soona"に由来するのではないかという説がある。



アマゾン

佐藤和美 (2006/02/04)

「アマゾン」ですが、『大辞林』にはこうあります。

アマゾン
(2)ギリシャ神話に登場する勇猛な女武者からなる部族。黒海沿岸、コーカサスなど既知の世界の果てに住み、戦闘と狩りを好む。弓をひきやすいように邪魔な右の乳房を切り取っていたので、アマゾン(「乳なし」の意)といわれたという。トロイ戦争では、トロイア側に来援した。

「アマゾン」って「乳なし」って意味?

『大辞林』は松村明の編ですが、もう一つの松村明監修の辞典『大辞泉』にはこうありました。

ギリシア神話で、女性ばかりからなる部族。勇猛で、弓を引くのに右の乳房がじゃまになるとして切り取ったという。また転じて、女傑・女丈夫の意に用いる。アマゾネス。
◆通俗語源説ではギリシア語で「乳なし」の意。南アメリカのアマゾン川も、その流域に女のみの部族がいると伝えられたことから、名づけられた。

こっちは「乳なし」は「通俗語源説」だって。松村明さん、なに考えてた?

http://minzocu.denpark.net/1038314965.html
アマゾネスが右側の乳房を切除していたというのは
ギリシア人の思い込みで事実ではない。
実際、乳房があっても弓を使うことに支障はない。
アマゾンというのはアマゾン族の自称で意味は不明。
それをギリシア人がギリシア語で「一つの乳」とこじつけたことからでた誤解。
日本人がブラジルを「ブラジャーの汁」と解釈するようなもの。

これで、あってるのかな?



アタッシュケース

佐藤和美 (2006/02/02)

この歳になるまで知りませんでした。
「アタッシュケース」が間違いだったなんて。

『大辞林』
アタッシェ-ケース 5 [attaché case]
厚さ5センチメートルほどで、書類を入れる箱型のビジネスマン用手さげかばん。アタッシュ-ケース。

「アタッシュケース」じゃなくて、「アタッシェケース」だったのね。



連想ゲーム

佐藤和美 (2006/02/01)

緋色の研究 A Study in Scarlet

緋文字 The Scarlet Letter(ホーソンの小説)

大文字 capital letter

首都 capital





A Study in Scarlet

佐藤和美 (2006/01/28)

最近、小説の題名ネタを何回かやりました。

さて、今回は、
「A Study in Scarlet」
コナン・ドイルのシャーロック・ホームズシリーズの最初の作品です。
一般的には『緋色の研究』という題名です。
ところがこの題名に誤訳疑惑があるんですね。
で、新しい題名が『緋色の習作』。
「Study」にはいろいろ意味があるようで。

EXCEED英和辞典
study
━━ n. 勉強; 調査 ((of, in, on)); 研究, 学問; 研究事項; (pl.) 学科; 研究に値するもの, 見もの ((of, in)); 習作; スケッチ; 研究論文; 練習曲, エチュード (etude); 書斎, 研究[勉強]室; 努力; ねらい; 沈思; (せりふを憶える能力から見た)俳優.

こんなページもありました。

http://www.hon-pro.com/cgi-bin/pt.cgi?room=takuteru
日本では『緋色の研究』という邦題で定着している話ですが、解説を読むと「研究」は誤訳なんだとか。正しくは「緋色で描かれたもの」、それを訳すと「習作」が適当であるらしいです。



もてき

佐藤和美 (2006/01/23)

娘の言葉の中に聞いたことのない言葉が出てきました。
「もてき」
何のことか聞いたら「もて期」なんだそうで。
そんな言葉があったのか?

Googleで検索
もて期 1250件
モテ期 32700件

けっこう普通に使われてる言葉なんだなぁ!

gooの「デイリー新語辞典」にも載ってました。

モテ期【モテき】
若者語で,異性からもてる時期のこと。



違和感を感じる

佐藤和美 (2006/01/22)

北原保雄編著『続弾!問題な日本語』(大修館書店)を拾い読みしてたら「違和感を感じる」という項目を発見。

このページでも二つの書き込みで「違和感を感じます」を使ってました(汗)。
「おいてきぼり?」(2005/07/21)
「映画の言語」(2005/12/30)

以下、『続弾!問題な日本語』の「違和感を感じる」の項からです。

「「〜感」という語は、「安心感」「一体感」「危機感」「責任感」「不安感」「不快感」「劣等感」などたくさんありますが、「〜感を感じる」というのは重複表現になるから、「〜感を覚える」と言うべきだと考える人が多いようです。」
「以上のような論理を理解して、もう一度「違和感を感じる」について考えてみますと、単なる「感」を「感じる」というのであれば全く意味のない、不自然な表現ですが、「”違和”感」を「感じる」というのですから、あまり不自然ではない言い方であるということになるでしょう。」

まとめとして、次のようにあります。
「「違和感を感じる」は、重言ですが、<違和の>という情報が加わっているので、それほど不自然ではない表現です。」

「違和感を感じる」はオマケでセーフってとこかな?



ワクチン

佐藤和美 (2006/01/19)

「ウイルス」は英語じゃなかったけど(伝言板「ウイルス」1999/06/28 12:31)、「ワクチン」も英語じゃないんですね。

『大辞林』
ワクチン【(ドイツ) Vakzin】
(1)感染症の予防のため各種伝染性疾患の病原菌から製した抗原の総称。弱毒化した病原体を含む生ワクチン,殺した病原体を含む不活化ワクチン(死菌ワクチン),病原体の毒性をなくしたトキソイドがある。予防接種剤。
(2)((英) vaccine)コンピューター-ウイルスの活動を検出して,システムの改変を未然に防止するプログラム。また,コンピューター-ウイルスを検出したり,被害を防止,または修復する抗ウイルス-プログラムの総称。アンチ-ウイルス-ソフト。ウイルス-チェッカー。

ちなみに英語は

『EXCEED英和辞典』
vaccine
━━ n., a. 痘苗(とうびょう); ワクチン(の); 【コンピュータ】コンピュータワクチン ((コンピュータ・ウイルスを防御・検知・除去するプログラム)).



ブラインド

佐藤和美 (2006/01/15)

なんでも「ブラインド」は差別用語なんだそうで、それで「ブラインドタッチ」は「タッチタイピング」なんて言い方に変更されたそうです。

http://e-words.jp/
ブラインドタッチ 【タッチタイピング】
別名 : touch typing, blind touch
 キーボードを見ずに文字入力を行なうこと。原稿や画面だけを見ながら入力が行なえるので、いちいちキーボードを確認しながら打つよりも格段に入力速度が速い。「Fキーに左手の人差し指」「Jキーの右手の人差し指」といったように、基本となる指の配置(「ホームポジション」と呼ばれる)を決めることで、キーボードと指の位置のずれを抑えている。以前は「ブラインドタッチ」と呼称していたが、視覚障害を持った人への配慮(blind:「目が見えない」)から、近年ではタッチタイピングという呼称が定着しつつある。

メールの送り先の「cc」は「カーボン・コピー」の略ですが、「bcc」は「ブラインド・カーボン・コピー」です。そうすると「bcc」も差別用語、使っちゃダメってことになる?



ジュール・ヴェルヌ『海底二万……』

佐藤和美 (2006/01/14)

ジュール・ヴェルヌの代表作です。
『海底二万……』
そのあと、何でしたっけ?

海底二万里
海底二万海里
海底二万マイル
海底二万リーグ
海底二万海里リュー

いろいろ、ありますねぇ。
わけがわからん。(笑)

wikipediaの「リーグ (単位)」の項からです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0_(%E5%8D%98%E4%BD%8D)
「リーグ(league)は、ヤード・ポンド法における長さの単位である。」
「現在のリーグは、イギリスで19世紀ごろ定められた1リーグ=3マイル(海上では1リーグ=3海里(ノーティカルマイル))が一般的であるが、それ以外にも各種のリーグの定義がある。」
「フランス語ではリュー(lieue)と言い、いくつかの変種があるが4 km程度である。海上では3海里と定義されていた。1795年のメートル法施行により公式には廃止されたが、その後も長い間、民間では広く使用された。日本では『海底二万マイル』という題名で広く知られているジュール・ヴェルヌの小説は、原題では"Vingt Mille Lieues Sous Les Mers"(海底二万リュー)であった。英語でも"Twenty Thousand Leagues Under the Sea"(海底二万リーグ)とそのまま訳された。日本では、リューやリーグという単位になじみがないことから当初は『海底六万哩(マイル)』と単位を換算して訳されたが、これと原題とが混同されて『海底二万マイル』という題名が広まった。」

これで、やっと、なっとく。



financial

佐藤和美 (2006/01/09)

みずほフィナンシャルグループ
日本ファイナンシャルプランナーズ協会

この「フィナンシャル」と「ファイナンシャル」って、「financial」なんでしょうが、「フィナンシャル」、「ファイナンシャル」のどっちが正しい?

いちおう、Googleで検索。

フィナンシャル  683000件
ファイナンシャル 625000件

人気(?)を二分してますね。

英和辞典で発音を確認すると、「フィナンシャル」、「ファイナンシャル」の両方が載ってるけど、使い分けが全くわかりません。「フィナンシャル」、「ファイナンシャル」のどっちでもいいってことなんでしょうか?



白髪鬼のリベンジ

佐藤和美 (2006/01/07)

江戸川乱歩に『白髪鬼』という小説があります。これは黒岩涙香の『白髪鬼』をリメイクしたものです。黒岩涙香の『白髪鬼』は翻案で、メアリ・コレリの『ヴェンデッタ』が原作です。

『白髪鬼』は「白髪鬼」の復讐の物語です。「ヴェンデッタ」も「復讐」という意味のようですね。

Goo辞書から。

vendetta
n. (Corsica島などの)家同士の(代々にわたる)復讐(ふくしゅう), あだ討ち; 宿恨.

英和辞典にも載ってますが、元はイタリア語だったようです。

http://www6.big.or.jp/~tebaland/makuai2001/01_10.htm
ヴェンデッタ(vendetta):イタリア語。コルシカ島をはじめ、サルジニア、シチリア、バルカン半島にみられた俗習。殺害、傷害の復讐が、加害者の一族全体に及ぶこと。

ヴェンデッタに関してはこういうのもありました。

ナポレオンとヴェンデッタ(復讐)の島―十九世紀前半におけるコルシカの表象についての一考察―
http://www.meijigakuin.ac.jp/~french/doc/sugimoto1.doc

「vendetta」の語源ですが、

http://www.m-w.com/
vendetta
Etymology: Italian, literally, revenge, from Latin vindicta

さて、次は「リベンジ」。

また、Goo辞書からです。

revenge
━━ n., v. 仕返し[復讐(ふくしゅう)](する) (She was 〜d [She 〜d herself] on her husband.); 恨み(を晴らす); 復讐の機会.

語源は、

『英語語源辞典』(研究社)
revenge
Middle English revenge(n) - Old French reveng(i)er(変形) ← revencher(French revanche) < Late Latin revindicāre ← RE-(A)+Latin vindicāre 'to VINDICATE'

どうやら「vendetta」と「revenge」は同系の言葉だったようで。

『白髪鬼』は「白髪鬼」のリベンジの物語なんですね。



ヰタ・セクスアリス

佐藤和美 (2006/01/04)

『ヰタ・セクスアリス』ですが、岩波文庫では『ウィタ・セクスアリス』となっています。

岩波文庫から。

『ウィタ・セクスアリス』
「題名は“性欲的生活”の意.性欲に冷淡だと自称する哲学者が自己の性生活を六歳の時の思い出から始めて年を追いつつ淡々と正直に告白してゆく形の自伝体小説だが,その背後にある“人生は性欲のみではない”という作者の思想が作品にいっそうの深みを与えている.明治四二年に発表され発売禁止の処分をうけた.」

『ヰタ・セクスアリス』の最後のところはこうなっています。

「金井君は筆を取って、表紙に拉甸(ラテン)語で
  VITA SEXUALIS
と大書した。そして文庫の中へばたりと投げ込んでしまった。」

「ヰタ・セクスアリス」はラテン語「VITA SEXUALIS」にあてたものなので、岩波文庫のように「ウィタ・セクスアリス」とするのは正解でしょう。(「イタ・セクスアリス」だったら最悪。)

『ヰタ・セクスアリス』の本文から。
「そこへ独逸から郵便物が届いた。いつも書籍を送ってくれる書肆から届いたのである。その中に性欲的教育の問題を或会で研究した報告があった。性欲的というのは妥(おだやか)でない。Sexual は性的である。性欲的ではない。しかし性という字があまり多義だから、不本意ながら欲の字を添えて置く。」

岩波文庫の「題名は“性欲的生活”の意」というのも、作者の意を汲んだものなんでしょう。



孤島の鬼

佐藤和美 (2006/01/03)

「江戸川乱歩の数ある長編のなかでも、『孤島の鬼』が最高傑作と衆目のほぼ一致するのはいうまでもない。」(光文社文庫版『孤島の鬼』の解説から。以下、光文社文庫版による。)

『孤島の鬼』自作解説から
「その岩田君が、『鴎外全集』を持って来ていて、その中に何かのついでに二三行書いてあった片輪者製造の話を読んで、非常に面白く感じた。それがマアあの小説の出発点になったのだ。第一回分を書いたあとで、東京へ帰って、古本屋を探して、『虞初新誌』を買ったり、西洋の不具者に関する書物を猟ったりした。」
「この小説は鴎外全集の随筆の中に、シナで見世物用に不具者を製造する話が書いてあったのにヒントを得て、筋を立てた。」

『孤島の鬼』の本文301ページから
「君は支那の虞初新志という本を読んだことがあるかい。あの中には見世物に売る為に赤坊を箱詰めにして不具者を作る話が書いてある。」

ここには鴎外の具体的な作品名が出てきませんが、実はこれ、『ヰタ・セクスアリス』なんです。

森鴎外『ヰタ・セクスアリス』
「十五になった。」

「もっと非道いのは支那人だろう。赤子を四角な箱に入れて四角に太らせて見せ物にしたという話があるが、そんな事もし兼ねない」
「どうしてそんな話を知っている」
「虞初新誌にある」

乱歩の文章の中に何で急に『虞初新誌』って書名が出てくるのか、これで納得ですね。



映画の言語(タイムライン)

佐藤和美 (2006/01/02)

「タイムライン」っていう映画があります。(原作は読んでません)現代人が14世紀のフランスにタイムスリップする話ですが、この中で現代の英語と14世紀の英語、現代のフランス語と14世紀のフランス語のそれぞれの会話シーンが出てきます。こういうのの映像化では14世紀でも現代と同じに話してるのがお約束なんでしょうが、難しいとこですね。それと現代と14世紀で会話は成り立つんでしょうか? 特に英語には16世紀に母音の大変化がありましたから。



映画の言語

佐藤和美 (2005/12/30)

古代ローマを舞台にした映画でローマ人が英語を話しててもたいして気にならないですね。画面では「ピーター」、「ポール」って言ってるのが、字幕では「ペテロ」、「パウロ」とか出てくるのはごあいきょうですが。
「ラスト・エンペラー」では中国人が英語を話してましたけど、このあたりになってくと、どうも違和感を感じます。
さて今度の「SAYURI」。主役の日本人役を中国人のチャン・ツィイーがやってて、話すのは英語だって。まー、なんと言いましょうか……



メリー

佐藤和美 (2005/12/25)

今日はクリスマスですね。
さて「メリークリスマス」の「メリー」って、どんな意味?

Gooの英和辞典から。

merry
━━ a. 陽気な, うきうきした, 愉快な; 〔英話〕 一杯きげんの; 〔古〕 楽しい.

A merry [Merry] Christmas (to you)! クリスマスおめでとう.

merryの項で、こんなのも発見。

merry-go-round 回転木馬; めまぐるしさ.

merry-go-roundもメリーの仲間だったんですね。

Gooの大辞林から。

メリーウィドー [The Merry Widow]
レハール作曲のオペレッタ。三幕。1905年ウィーンで初演。有名な「メリー-ウィドー-ワルツ」「ビリアの歌」は単独で演奏されることが多い。
〔原題 (ドイツ) Die lustige Witwe の英訳。陽気な後家さんの意〕



韓流

佐藤和美 (2005/10/01)

重箱読み(音読み+訓読み)とか湯桶読み(訓読み+音読み)とか言う言葉がありますが、「韓流」を「はんりゅう」と読むのはいったい何読みと言うべきなんでしょうか?
重箱読みでも、湯桶読みでもないし。
やっぱ、「はんりゅう」読みですか(笑)。



屋久島の語源はアイヌ語「鹿」?

佐藤和美 (2005/09/25)

Okwebで見つけた質問の一部に次のような一節がありました。

http://okweb.jp/kotaeru.php3?q=1645177
「実は、世界遺産の屋久島の語源を調べたところ、アイヌ語で、鹿という意味だという説にたどり着きました。」

Google で「屋久 アイヌ語 鹿」で検索して見ましたが、126件ありました。
屋久島アイヌ語「鹿」説を信じてる人もいるようですね。

アイヌ語には「yak」とか「yaku」という単語は存在するんですが、「鹿」とは無関係ですね。
アイヌ語で「鹿」は「yuk」です。「ヤク」じゃ、ありません。

それと、もう一つ。

知里真志保『分類アイヌ語辞典・動物編』
yuk
「この語は、いま、もっぱらシカの意に用いられるが、もとはもっと意味がひろく、狩のえものの中で食料として重要であったクマ・シカ・エゾタヌキ等のどれをもさす名称であった。」

これでも、屋久島は「アイヌ語で、鹿という意味だ」と言えるんでしょうか?



ニューオリンズ

佐藤和美 (2005/09/09)

今まで「ニューオリンズ」だとばかり思ってたんですが、今度のハリケーン「カトリーナ」のニュースを新聞・テレビ等で見てると「ニューオーリンズ」だらけですね。以前は「ニューオリンズ」だったと思うんですが、いつのまにか、かわったんでしょうか?
ちなみにテレビでは表記は「ニューオーリンズ」ですが、発音は「ニューオリンズ」のようで。

一応Google で検索しときますか。

ニューオーリンズ 492000件
ニューオリンズ  416000件



鯨の座礁

佐藤和美 (2005/09/06)

鯨が陸地に乗りあげることがありますが、テレビを見てたら、「座礁」というような言葉を使ってました。最近はこういう言葉を使うんですかね。

今の日本では鯨関係の文化は忘れさられようとしてますが、「寄鯨」(よりくじら)なんて言葉はもう忘れられた言葉、死語なんでしょうか。

『日本国語大辞典』
よりくじら【寄鯨】
負傷したり死んだりして海辺へ漂着した鯨。



クォ・ヴァディス

佐藤和美 (2005/09/03)

「クォ・ヴァディス」っていう映画がありましたが、これは何語なんでしょうか?
ラテン語だと思ってたんですが、岩波文庫で新訳で出たときのタイトルが「クォ・ワディス」です。
言われてみたら、「vadis」をラテン語読みしたら、「ヴァディス」にはならないでしょうね。
「クォ・ヴァディス」ってのは、ラテン語「Quo vadis」の英語読みってとこなんですかね。



ミミズバーガーとホットドッグ

佐藤和美 (2005/08/27)

「ミミズバーガー」っていう、都市伝説がありますよね。
ハンバーガーにミミズが入ってるっていう話です。

真・都市伝説101夜 第38夜 ミミズバーガー
http://osi.cool.ne.jp/UL/n38.htm

この話を聞いて思い出すのは、「ホットドッグ」の語源です。

「ホット・ドッグ」佐藤和美 (2000/09/02 09:31)
>「ホット・ドッグ」の語源説は二つあるようですね。
>一つは「ダックスフント」との形の連想からで、
>もう一つは「犬肉を使ったといううわさから」
>(「英語語源辞典」研究社)

ほんとに「犬肉を使ったといううわさ」があって、「hot dog」と命名されたのかどうかわかりませんが、「犬肉を使ったといううわさから」っていう説があること自体が、まさに元祖「ミミズバーガー」、都市伝説ですね。



鹿児島県の「エ」の発音

佐藤和美 (2005/08/23)

以前、次のように書き込んだことがあります。

「鹿児島方言の母音」佐藤和美 (2000/07/21 12:42)
>鹿児島方言の母音ですが、
>「鹿児島県のことば」(明治書院)には次のように書いてあります。
>「ア、イ、ウ、オ」の音は共通語に同じ。「エ」は全域「イェ」である。ただし語中では「ウエ(上)」「マエ(前)」のように「エ」となることが多い。種子島では「オ」を「ウォ」という。また「シウォ(塩)」「イウォ(魚)」のように、語中の「オ」だけを「ウォ」というのは周辺地域に多い。

で、言葉とは全く関係なさそうな本を読んでて、この鹿児島県の「エ」の発音のことが出てきました。

谷崎潤一郎『台所太平記』(中公文庫)22ページ
鹿児島県出身の「女中」さんの発音について、次のような記述があります。
「「えつ」と云う女中のことを前に云いましたが、この「えつ」と云う音も、普通に発音する「えつ」とは何となく云い方が違っていました。「えつ」の「え」は ye と云うように発音し、 yetsu の場合は ye の上に強いアクセントがありますので、「イエーツ」と云うようになりました。」

まさか、谷崎潤一郎を読んでて、言葉ネタを拾うとは思わなかった(笑)。



マーライオン

佐藤和美 (2005/08/18)

Yahoo の知恵袋に次のような質問がありました。

http://knowledge.yahoo.co.jp/service/question_detail.php?queId=5665755&flag=2&burl=L3NlcnZpY2Uva3Nicm93c2VyLnBocD9wYWdlPTcmZG51bT0xMzcmdHlwZT1ua3M=&more=Y

投稿日時 : 2005/ 8/17 15:26:38
シンガポールの『マーライオン』って、『マー/ライオン』と区切っていいんですか?
もしそうだとしたら『マー』の部分にはどんな意味があるんでしょう?
『ライオン』は百獣の王の“ライオン”でいいんですか?
どなたか詳しい方、教えてください。

そのベストアンサーに選ばれた回答

投稿日時 : 2005/ 8/17 17:20:52
「マー」(mer-)は、「海」という意味です。
「海のライオン」。
詳しくは下記サイトを。
参考: http://www.asahi-net.or.jp/~hi5k-stu/bbs/omoitukumama.htm

なんと参考サイトはこのページですね。
これは 2005/08/06 の書込み「人魚」のことでしょう。
「マーライオン」も「人魚」(?)の仲間でしたか。



マグニチュード

佐藤和美 (2005/08/18)

「マグニチュード」って、地震の大きさの単位専用かと思ってたら、違うんですね。

goo辞書の国語辞典から。

マグニチュード【magnitude】
地震の規模を表す尺度。また,その数値。記号M 地震波の最大振幅・震央距離・震源の深さなどを公式に当てはめて算出するが,観測条件などの違いに対応して各種の公式がある。震度が土地の揺れの強弱を表すのに対し,地震そのものの大小を示すが,大きい地震ではその値が頭打ちになる。

これが一般的に知られている「マグニチュード」でしょう。

同じく英和辞典から。

magnitude
━━ n. 大きさ; 重要度; 【天文】(星の明るさの)等級; (地震の)マグニチュード; 【数】絶対値.
of the first magnitude 【天文】1等星の; 最高に重要な.

「magnitude」にこんなにいろんな意味があるなんて、恥ずかしながら知りませんでした(汗)。



カーディガン

佐藤和美 (2005/08/16)

カーディガンの語源です。

「クリミア戦争(一八五三〜五六年)のとき、イギリス陸軍の将軍カーディガン七世が、軽騎兵隊を率いて戦い負傷したが、その際、保温のために軍服の上から重ねて着たのが始まり。今では女性用のものや子ども用のものがあるが、かつては、もっぱら英国紳士のファッションだった。」(山口佳紀編『暮らしのことば語源辞典』講談社)



人魚

佐藤和美 (2005/08/06)

英語で「人魚」をなんと言うでしょうか?
え、「マーメイド」に決まってる?
そうでもないみたいですね。

『プログレッシブ和英中辞典』
人魚
[女性の]a mermaid;[男性の]a merman

「マーメイド」って「女性の人魚」だったのか!
それでもって、マーマンが「男性の人魚」ね。
そう言えば、ドラクエに「マーマン」っていう半魚人みたいなのが出て来るけど、あれ、人魚だったのか。

『プログレッシブ英和中辞典』
maid
1 《しばしば複合語》メイド,お手伝い.
2 《古》少女,娘,おとめ,若い未婚の女性;《古》処女.
3 《old 〜 で》(婚期を過ぎた)未婚女性.→「オールドミス」「ハイミス」は和製英語.
4 《the M-》ジャンヌ・ダルク(Joan of Arc).

(「人魚」とは無関係だけど、「オールドミス」「ハイミス」は和製英語で、ほんとは「オールドメイド」なんですね)

現在の日本語では、メイドはこの1の意味で使いますが、「マーメイド」の「メイド」はこの2の意味ですね。

「mermaid」は「maid」だから「女性の人魚」、「merman」は「man」だから「男性の人魚」なんですね。

では「mer」の意味は何なんでしょう?
「人魚」と「mer」という語形で思い出すのが、フランス語の「mer」(海)です。
「mermaid」の「mer」はフランス語「mer」と同語源の言葉のようですね。

『スタンダード英語語源辞典』(大修館書店)
mermaid
人魚(女の)[14世紀から;英語mere「海」(ドイツ語Meer,フランス語mer,ラテン語mare,ロシア語moreのように広く印欧諸国に共通)+MAID.「男の人魚」はmerman.《◆アンデルセンの「人魚姫」は英語 the little mermaid.ドイツ語 die kleine Meer(または See)-jungfrau.フランス語 petite sirène.デンマーク語では den lille havfrue という》]

なお英語「maid」とドイツ語「Mädchen」(少女)は同語源のようです。
『スタンダード英語語源辞典』の「maid」の項には「MAIDENの短縮形。eve,gameの場合と同様,古英語にあった語末の-nが落ちた。」とありました。「maiden」と「Mädchen」ならさらに似てますね。



フランケンシュタイン

佐藤和美 (2005/08/03)

調べ物をしてたら目にとまりました。

『日本国語大辞典』
フランケンシュタイン
(原題 英 Frankenstein, or the Modern Prometheus)怪奇小説。イギリスの女流作家メアリ=ウォルストンクラフト=シェリー作。一八一八年刊。物理学者フランケンシュタインが、死体から超人的な力をもつ怪物をつくるが、彼自身もこの怪物に殺される。一九三一年以降、幾度も映画化された。

この文章を読んで思ったのは、この文章を書いた人は『フランケンシュタイン』を読んだことないんじゃないかということです。私が『フランケンシュタイン』を読んだのは30年以上も前のことなので、あまり大きな事言えませんが、実際に読んだ人なら絶対こうは書かないと思います。

ついでに他の辞典もチェック。

『広辞苑』
フランケンシュタイン【Frankenstein】
1 Mシェリー作の怪奇小説。一八一八年刊。科学者フランケンシュタイン博士の製作した醜怪な人造人間がさまざまな殺戮を行い、北極洋に姿を隠すまでを描く。
2 1の映画化作品。一九三一年、アメリカで製作。

これも、違うなぁ。

『大辞林』
フランケンシュタイン [Frankenstein]
〔原題 Frankenstein, or the Modern Prometheus〕シェリー夫人メアリ作の小説。1818年刊。青年科学者フランケンシュタインによって造られた醜悪な外見と純粋な魂をもつ怪物が人間社会から疎外される様を描く。

これはいいかな。

ま、国語辞典で小説の内容を知ろうとするのは、やめといたほうがいいのかも。

メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』がどんな作品かって?
このページはどうかな。

http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya0563.html



スカイタイピング

佐藤和美 (2005/08/02)

スカイタイピング

初めてこの文字を見たときは「スカイダイピング」かと勘違いしましたが、次から次に新しい言葉は生まれて来るんだなぁと思いました。

ポカリスウェットのCMで空に「POCARI SWEAT」って字が書いてありますが、あの空に(飛行機雲で)字を書くのが「スカイタイピング」なんだそうです。

POCARI SWEAT のスカイダイピングのHP
http://www.waterlanders.com/event_sky_top.html



腹話術の言語学(by いっこく堂)

佐藤和美 (2005/07/30)

以前、いっこく堂の公演を見に行ったことがあります。
その時の内容の一部を再現してみました。
(だいぶ前のことなので、記憶違いがあるかもしれませんが)

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

さて、腹話術の練習をしてみましょう。

口を指一本分くらい開けて、唇を動かさないで発音しましょう。

あいうえお
かきくけこ
さしすせそ
たちつてと
なにぬねの
はまやらわ

どうですか、できてますか?

さて、次がいよいよマ行ですね。

まみむめも

どうです、発音できますか?

マ行は閉じた唇を開いて発音するので、唇を動かないと発音できないんですね。
こういう音を唇音っていいますが、腹話術では唇音をどう発音するかが問題です。
私、いっこく堂は数年かけてこの問題をクリアしました。
どう克服したかは、企業秘密です。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

とのことです。

『大辞林』
しんおん【唇音】
(1)唇を調音器官とする音。両唇音([p] [b] [m] [w])と唇歯音([f] [v])とがある。



「キャンドル」の仲間達

佐藤和美 (2005/07/24)

「candela」佐藤和美(2000/01/06 12:39)
>ラテン語の「candela」は「ろうそく」という意味です。
>光度の単位の「カンデラ」はこのラテン語によります。
>ラテン語「candela」はオランダ語では「kandelaar」です。
>この「kandelaar」が日本語に入り「カンテラ」になりました。
>ラテン語「candela」は英語では「candle」です。これが「キャンドル」。
>ラテン語「candelarius」(ろうそくをつくる人)がフランス語では「chandelier」です。日本語では「シャンデリア」。
>ラテン語「candela」の仲間はいろいろありますね。
>(三省堂「コンサイスカタカナ語辞典」を参考にしました。)

「キャンドル」の仲間、もう一つ見つけました。

『大辞林』
チャンドラー [Chandler]
(1)〔Raymond C.〕(1888-1959) アメリカの推理作家。フィリップ=マーロウを主人公とするハード-ボイルド推理小説で知られる。作「大いなる眠り」「さらばいとしき人よ」「長いお別れ」など。

「candle」と「Chandler」で、似てるのがわかりますね。

『EXCEED 英和辞典』
chandler
n. ろうそく屋; 雑貨屋; =ship('s) chandler.

「Chandler」のご先祖様は「chandler」(ろうそく屋)だったんでしょうね。

http://www.m-w.com/
chandler
Etymology: Middle English chandeler, from Middle French chandelier, from Old French, from chandelle candle, from Latin candela
1 : a maker or seller of tallow or wax candles and usually soap
2 : a retail dealer in provisions and supplies or equipment of a specified kind <a yacht chandler>



おいてきぼり?

佐藤和美 (2005/07/21)

私は東京墨田区出身なんで、「おいてきぼり」という言葉にはどうも違和感を感じます。(「おいてけぼり」は本所七不思議に由来しますが、本所は墨田区なもんで。)

Googleで検索してみましょう。
おいてけぼり 8270件
置いてけ堀 718件
おいてけ堀 574件
おいてきぼり 12800件
置いてき堀 14件
おいてき堀 14件

「おいてけぼり」よりは「おいてきぼり」のほうが優勢のようですね。

『大辞林』から。

おいてけぼり【置いてけ堀】
(1)江戸本所七不思議の一。夕方、魚籠(びく)を提げて通りかかると、堀の中から「置いてけ、置いてけ」という声が聞こえ、魚籠の魚がなくなっているという。錦糸堀・亀戸東方の堀など諸説がある。
(2)「おいてきぼり」に同じ。
「―にされる」

おいてきぼり【置いてきぼり】
〔「おいてけぼり」の転〕仲間を見捨てて行くこと。置きざりにすること。おいてけぼり。
「―を食う」

「おいてきぼり」って、辞典で立項されてる言葉なんですね。

さて、なんで、「おいてきぼり」なのか?

『日本国語大辞典』
おいてきぼり
語誌
「おいてけぼり」(置堀)の変化。この変化の背景には「連用形+名詞」の形式で多くの複合名詞が作られることがあり、それへの類推として本来、命令形であったテケ(「テ+イク」に由来)が連用形にとらえなおされたことが考えられる。



ヒフティーヒフティー

佐藤和美 (2005/07/19)

Yahooの記事の中で「ヒフティーヒフティー」という言葉を発見。

「最終章、書くのが怖い」「今後は別名で執筆」=ハリポタ作者
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050718-00000026-jij-ent

いつものgoogleで検索。
ヒフティーヒフティー 68件
ついでに
ヒフティヒフティ 158件

どうやら少数派のようなんで一安心でした。

以前、書き込んだものです。

「ファ、フィ、フォ」佐藤和美 (1999/09/16 07:37)
>「f」が「h」になってしまったという話。
>「ファ」→「ハ」
>プレファブ→プレハブ
>「フィ」→「ヒ」
>トラフィック→トラヒック
>フィレ肉→ヒレ肉
>「フォ」→「ホ」
>プラットフォーム→プラットホーム
>「フェ」が「ヘ」になる例が思いつかないですねえ。
>なにかありますか?

「ヒフティーヒフティー」、「ヒフティヒフティ」もこの例に入るんでしょうね。



肋骨

佐藤和美 (2005/07/18)

「肋骨」って、何と読むでしょうか?
「ろっこつ」に決まってる?
いえ。いえ。そう、決まってるわけではないんですね。

『大辞林』から

ろっこつ【肋骨】
(1)背骨と胸骨とに付いて胸郭を形成する弓形の長骨。左右一二対あり、胸部の器官を保護する。あばらぼね。

あばら-ぼね【肋骨】
肋骨(ろつこつ)のこと。

「ろっこつ」と「あばらぼね」って、同じ物だったんですね。



「しびん」の「し」って何?

佐藤和美 (2005/07/16)

「シビン」ってオシッコを入れるビンですが、「ビン」は「瓶」なんでしょうけど、じゃ「シ」って何?

『大辞林』
しびん 【溲瓶】
〔「しゅびん」の転〕病人などが排尿するための瓶。尿器。尿瓶。

もともとは「しゅびん」でしたか。
「溲」はあまり見かけない字ですね。

『新漢語林』

二-2 小便。ゆばり。「溲瓶シュビン・シビン」

「溲」一字でオシッコの意味もあるんですね。

ちなみにこの辞書では「シュ」というのは唐音だとあります。



味あう

佐藤和美 (2005/07/13)

講談社文庫の松本清張『遠くからの声』の解説に「味あう」って語があったので、びっくりしてしまいました。
以前、「味あわない」のことを書いたことがあります。
(「味わう」の未然形は?(2000/09/21 12:42))
これをさらに推し進めると「味あう」になるんでしょうね。

googleで検索してみました。
5880件
けっこう、「味あう」って書いてる人、いるなあ。

検索に引っかかった中にはこんなのもありました。

大江健三郎のことば
http://www.asahi-net.or.jp/~QM4H-IIM/k980823.htm

ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎さんも「味あう」派か(笑)。



師長

佐藤和美 (2005/07/12)

「師長」、聞きなれない言葉ですね。
以前、「看護婦」と言っていた時代には、その長は「婦長」でした。
そして「看護婦」が「看護師」にかわり、その長の名称も「師長」になりました。
数年前に看護師のタマゴだった娘に聞いた話です。

その後、テレビで「ナースマン」っていう番組をやってて、その中で「シチョー」っていう言葉が使われていました。
なるほど、娘の言うとおりだと、感心したものでした。

ちなみに『大辞林』には「師長」はこのように載ってました。

しちょう【師長】
先生と目上の人。尊者。

何年か先に出版される辞典には「看護師の長」という語義が掲載されるでしょうか。

看護師のタマゴだった娘も今年の春の看護師試験に合格、本物の看護師になりました。



卍の画数

佐藤和美 (2005/07/11)

「……?」イルボンヌさん(2000/04/25 12:30)
>「卍」の書き順て、どうなんでしょうか? 漢和辞典に5画と載ってはいますが、さすがに書き順まで紹介されてません。

「卍の書き順」佐藤和美(2000/04/26 07:46)
>イルボンヌさんwrote
>>「卍」の書き順て、どうなんでしょうか?
>>漢和辞典に5画と載ってはいますが、さすがに書き順まで紹介されてません。
>以下のHPに「卍」の書き順がありました。
>QuickTimeによる動画です。
>書き順日本語ホームページ
>http://www.wind.ne.jp/gahoh/homej.html
>「常用漢字外」の中にあります。
>ここでは六画で書いてますね。
>IMEの辞書も六画になってます。
>漢和辞典もいくつか見ましたけど、みんな六画でしたけど。

なぜ卍が六画なのか、興味深い話がでてたので引用します。

阿辻哲次『部首のはなし』中公新書
「さてこの「卍」の画数はいったいいくらになるだろう? どうか実際に書いて、計算していただきたい。おそらくほとんどの人は、これを五画と計算するのではないだろうか。わたしだって実際に「卍」を書くときの運筆で計算すると五画になる。しかし漢和辞典の総画索引は、これを六画のところに収めている。理由は、「卍」が所属する部は《十》部であり、部首別索引では「卍」は《十》部四画の漢字とされるからだ。
「卍」から《十》を取り去ると四本の短い線が残る。これを書くにはもちろん四画必要である。ところで《十》は二画の部首だから、二+四で結果として六画になる、というわけだ。なんだかマジックのような計算方法である。だまされたような気がされるだろうが、そこに部首索引と総画索引の矛盾がある。」



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