ポートランド日記 |
8月20日(月)──20日目 足りないものがあるので、今日はひとりでバスでダウンタウンまで買い物。 寮のある丘の上からは15分ほどだから、ダウンタウンに出るは簡単だ。ポートランドだけで約六十万人、周辺を合わせると百数十万人の大都会なのに、ダウンタウンのすぐそばの山の上がまるごと大学と病院の区画になっていて緑がいっぱいある。 オフィスデポで買い物。宛名シール、セロテープ、梱包用テープ、スポンジなど。 そのあと、郵便局へ。 僕はホームページでニコレット・ラーソンとビージーズという二組のアーティストのページを作っている。両方のホームページで目指しているのは、彼女と彼らの日本での活動の様子をなるべく細かく記録しておくことだ。 海外には、それぞれのアーティストのイギリスやアメリカでの動きをまとめて公開しているホームページはあるが、日本に関する情報は少ない。 たとえばシングル盤は、日本では日本語のタイトルが付いて、独自の(あるいはちょっと似た)デザインで発売される。 この日本独自のシングル盤への海外からの関心はけっこう高い。二組のアーティストのページでも、そうした日本独自のシングル盤を掲載しているが、英文のページもあるので、海外からの反応はけっこう多い。 日本でいつどんなシングルやLPが発売されたかという情報は、なかなかまとめて見ることができない。ビートルズやビーチボーイズのようなもっとメジャーなアーティストなら解説書が何冊も出ているが、その次くらいのアーティストになると、情報はまったくないことになる。 それで4年前に始めたのが、今のニコレット・ラーソンとビージーズのホームページだ。実際は、「パソコンやインターネットの解説書を書いている以上、自分でホームページを作らないといけないな」と考えて、児童文学のページとビージーズのページを作ったのがスタート。思わぬ反応のよさに更新を重ねて、現在に至っている。 これまで発売されたシングルやLPのデータをまとめるには、現物を手に入れる必要がある。雑誌などで、発売情報が載っていても、現物を手にしないと、本当に発売されたのかどうか確認することはできない。シングルやLPには、発売月も書いてあるし、解説書(ライナーノーツ)もついている。これが、当時の状況を知る貴重な手がかりになる。 しかし、ひとことで、昔のシングルやLPを集めると言ってもなかなか大変だ。最初は、東京を中心に中古レコード店を廻って探したが、ある程度まで行くと、それ以上新しいものは見つからなくなる。足を棒にして歩き回っても、1枚も見つからないとだんだん気持ちがめげてくる。 そんなときに知ったのが、インターネットのオークションだった。日本では「ヤフーオークション」が人気だが、世界的に見ると一番人気は「イーベイ」。人気があれば人も商品も集まる。以前から、雑誌で、「イーベイなら何でも手に入る」と聞いていたが、実際に使ってみたら、それは本当だった。 まず見つからないと思っていた珍しいシングルやLPが、それほど高くない値段で手に入る。これで、ホームページのための、資料としてのシングルやLPは一挙に充実した。 しかし、日本からオークションを利用していると、ネックになるのは郵送料と代金の支払いだ。2〜3ドルで落札できたレコードでも、郵送料がエアメールなら10ドル近くかかることもある。素人が利用しているオークションと言っても、今はセミプロみたい人や商売にしている店も多いから、郵送料プラス梱包手数料も取られるとかなり高くなる。 さらに、代金の支払いにも手数料がかかる。結局、200〜300円で落札したレコードでも、手にしたときには、送料手数料込みで2000円になっていたということも少なくない。 それでも、日本ではまず手に入らないものだからしかたないのだが、やはりちょっと悔しい。 今回アメリカに来ることになって、インターネットオークションのことを考えた。アメリカなら、郵送料も手数料もそれほど気にせずにオークションの取引ができる。それに、売り手側には海外への発送を嫌う人もいる。そういう品物は、いくらほしくても日本からは買うことができなかった。この機会に、貴重なシングルやLPをなるべく安い価格で手に入れよう。 せっかく来たアメリカでの目的のひとつがそれだ。 というわけで今日は、郵便局からオークションで落札した商品の代金を送った。封書は、重くなければ米国国内に34セントで送れる。 帰りがけに、ダウンタウンにあるセーフウェイというスーパーに寄っていこうと南のほうへ歩いていったら、教会の隣のビルに英会話の告知が貼ってあるのを見つけた。去年の9月から12月まで教会で英会話の教室を開きますというお知らせだ(ずいぶん昔のものがそのまま貼りっぱなしになっている)。 教会では、信者の獲得ということもあって、無料で英会話の教室を開いていることがある。「お金がかからなくていいし、友達もできるよ」と言われていたので、探していたのだが、偶然見つけた。たぶん、今年も開かれるだろう。そのうち訪ねてみることにしよう。 南の方へ歩いたと書いたが、こちらでは、通りが碁盤目状になっているし、ポートランド全体もSE(サウスイースト)、SW(サウスウエスト)、NE(ノースイースト)、NW(ノースウエスト)、と方角に基づいた区分けがあるので、東西南北を、福島にいたときよりも明確に意識する(たとえば、京都の人はそうかもしれないと想像する)。 セーフウェイで買い物して、バスで帰った。 |
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