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もう一度よみがえるがいい、アナログLP文化

1999年7月1日  鈴木康之


 僕は、十代のころから洋楽が好きで、CDもLPも、かなりの枚数を持っている。一時期は、新しく購入するのはCDばかりという状態が続いていたが、最近、中古のLPを買い求める機会が多くなった。

 中古LPを買うのは、ホームページを開いている好きな洋楽アーティストの、日本でのレコード発売の状況を調べるのに必要だからだ。ビージーズニコレット・ラーソンのページを開いているが、ポピュラー関係のレコードの発売の状況というのは、オンラインデータベースも図書館のようなところもないので、なかなかわからない。

 当時の雑誌に当たる方法もあるが、そのとき発売されていたLPやシングルそのものを手に入れてしまったほうが早い。それに、日本発売の洋楽アルバムには必ず添付されていた“解説”も役に立つ。

 発売当時の少ない資料の中で書いているから、今読むと勘違いや単純ミスも多いが、当時のそのアーティストの受け取られ方(今とは全然違ったりする)がわかって面白い。

 中古LPは、日本では大都市を中心に中古盤専門店が頑張っているので、比較的手に入れやすい。僕が探しているのは、ビートルズ、エリック・クラプトン、ビーチ・ボーイズといった、超人気でプレミアムがついているような盤とは違うので、比較的手に入れやすい。どれも数百円から千円を超えるくらいという、当時の半額程度の値段で売られている。

 中古LPを買うと当然、LPを聞く機会も多くなる。幸いなことに、大学時代にお金をかけて揃えたオーディオセットがまだ健在で、レコードプレーヤーも、時々回転が怪しくなるが、まだまだ現役で使うことができる。

 そして、最近LPを聞いていて思うのは、CDに比べても、いい音してるんじゃないか、ということだ。

●82年に登場したコンパクトディスク

 コンパクトディスクは、80年代の初め、それまでのLPレコードとは全く違う音の記録方式のメディアとして登場した。世界初のレコードは、エジソンが発明した蝋管で、音波と同じ形状の波を溝の形で刻み、それを針で取り出して音を聞いた。LPレコードも原理は全く同じで、カセットテープでは、それが磁気の変化として記録されている。

 それに対してCDでは、音の記録方法が全く違う。標本化(サンプリング)といって、もともとの音の波形を1秒の44,100分の1に分割して、そのときの波の振幅の大きさとして記録する。

 1930年頃に活躍したアメリカのベル研究所の電気工学者・ナイキストの標本化定理によれば、あるHzの周波数まで含む信号は、その2倍以上の細かさで標本化すればいい。人間が聞き取ることのできる音の上限は20kHz(1秒間に2万回の振動)と言われるから、44.1kHzでサンプリングするのは、倍以上であり、定理を満たしていることになる。

 44,100分の1に分割して記録する振幅の大きさは、数値で記録する。このときも、無限に大きな値から小さな値まで記録することはできないから、CDの場合には、マイナス2の15乗(-32768)から2の15乗-1(=32767)までの整数で表わす。

 この65536(2の16乗)個の整数では、2進数では16桁で表わすことができるので、CDは16ビットでサンプリングしているということになる。CDでよく聞く、44.1kHzと16ビットというのは、このことだ。

 1ビットあたり約6デシベルの範囲の音が記録できるので、16ビットなら約96デシベルの範囲の記録が可能になる。これは、人間が聞くことのできる音の強さの範囲(ダイナミックレンジ)より少し狭いが、家庭用としては十分な値になっている。

 当時、僕は新製品や音楽関係の記事を書く機会が多かったが、資料によれば、CDというのは、以上のように理解をしていた。
 こうして、CDという新しい規格はスタートした。ここまで普及しているレコードプレーヤーとLPが、そう簡単にCDに置き換わるとは思えなかったが、(今の印象では)怒濤のような勢いで、LPはCDに置き換わっていった。

 日本初のCDは、1982年10月にCBSソニーレコード(現在のソニーレコード)から発売された、大滝詠一の『ロング・バケーション』と、もう1枚はビリー・ジョエルのアルバムだった。

 当初は、LPに比べてCDの値段が高く(当時はLPはだいたい2800円だったが、CDは3500円と、今から信じられないくらい高かった)、「あんな小さなパッケージでは」とか、「どうも音がうすっぺら」とか、音楽愛好家を中心にCD排斥の声もあったのだが、CDプレーヤーの普及に伴って、その声はかすみがちになった。

●CDはどうしてこんなに受けたのだろう

 CDがこんなに受けた理由としては、ハンドリングの便利さというのが、大きかったと思う。LPレコード全盛時にも、カセットテープという取り扱いやすいメディアが登場して、けっこう幅をきかせていた。

 20分くらいでA面が終わってしまうLPは、そのたびに裏返さなければならないし、針を落とすときも、気を遣う。聴いている間も、どたどたして針を飛ばしてはいけない。盤面に傷をつけたら大変だ。

 いちいちレコードをビニール袋に入れて、アルバムジャケットにしまうというのも面倒だ。重ねておくと、重量でそってしまうから、棚にたてておかないといけない。湿気が多いと、かびがはえてしまう。

 こんなふうに、LPの取り扱いはけっこう面倒で、僕も、好きなLPはカセットテープに録音して聞くことが多かった。カセットなら、自動車の中でも聞けるし、ウォークマンを使えばどこでも聞ける。

 しかし、カセットは音がLPよりも悪かった。そこにCDが登場した。音質はLPと同等だというし、LPのようなスクラッチノイズはない。接触するレコード針ではなく、レーザー光で読み取るから、盤が摩耗して音が悪くなることもない。

 こう考えてみると、CDが急速に普及したのもうなずける。84年4月にはオリコンでCDチャートがスタートし、85年に発売された大滝詠一の『ビーチタイム・ロング』というアルバムは、日本初のCD(とカセット)だけの発売で、LPでは出なかった。

 CDの普及は、レコーディングのデジタル化とも、足並みを揃えている。80年代から、スタジオにミュージシャンを集めて、という従来のレコーディングではなく、コンピューターを使ったレコーディングが行なわれるようになっていた。

 これは、79年に爆発したYMOのコンピューター・ミュージックに象徴されるだろう。シンセサイザーですべての音を作り出し、極端に言えば、ギター、ベース、ドラムス、オーケストラといった楽器がなくても、曲が出来てしまうというものだ(いわゆる“打ち込み”“同期もの”)。

 デジタルでレコーディングされたものなら、デジタルメディアのCDで出したほうがいいというので、LPは時代遅れ、これからはCDの時代ということになった。

 自分の好きなアーティストを例に挙げさせてもらうと、86年には山下達郎が『ポケットミュージック』を出したが、このアルバムはコンピューターが使われているにもかかわらず、以前のアナログの手触りのするサウンドのものだった。これをきっかけに、僕のなかでLPはすっかり過去のものとなってしまった。

 山下達郎のアルバムとしては、LPで出されたのは、89年のライブアルバム『ジョイ』(LPでは3枚組、CDでは2枚組)が最後になる。このころから、新譜として普通にLPが発売されることはほとんどなくなったようだ。

 レコード針のメーカーが工場を次々と閉鎖していくことがニュースになり、電器店でも、レコードプレーヤーを見かけることはなくなった。そして、オーディオコンポに組み込まれるのは、CDプレーヤーということになっていった。

●デジタルのCDの生み出した副産物

 確かに、CDの普及は、さまざまな副産物を生み出した。
 近年、過去のミュージシャンのアルバムが、未発表曲や未発表バージョンをボーナストラックとして追加して発売になったり、総集編的なCDが、やはりボーナストラックを満載した3枚組、4枚組のCDボックスの形で発売されたのは、LPがCDにとってかわったお陰だ。

 LPしかメディアがなければ、未発表曲を入れるには、2枚組にしなければならない(多くのLPは、片面20数分という、音質が悪くなるぎりぎりのところまで詰め込んである)。

 BOXセットなど、8枚組、10枚組になって、価格が高くなってしまっただろう。廃盤になってなかなか手に入らないアルバムも、CDになって多くが再発されるようになった。

 詳しくは知らないが、CD化は盤自体の製造コストも下げたはずだ。LP時代の最後には2800円していた1枚のアルバムの価格は、CDになって、新譜こそ3000円以上と多少上がっているが、旧譜は、1500円と低価格で手に入るものも多い。

 CDになって重量も容積も減少したから、流通コストも低下したはずだ。海外の音楽ファンとLPやCDの交換をすることがあるが、LPは重いので郵送料がかかって困ってしまう。CDなら軽く小さなパッケージで送ることができる。

 CDはポピュラーミュージックの形態にも影響を与えている。以前は、「AB面合わせて45分弱というのが、人間が集中して音楽を聴くのにいい長さ」と言われたものだが、CDになると、収録できるのは最大約74分。そうなると、発売されるアルバムは、45分は超えて60分近いものが増えてきた。

 「AB面で裏返すところで、メリハリが出る」と言われ、A面最後、B面最初の曲というのは重要だったのだが、それもなくなってしまった。しかも、CDは曲順をプログラムして、いろいろに変えて聞くのも自在だ。曲順は、いよいよそれほど重要な要素ではなくなってしまう。

 シングルも、昔はB面がつきものだったが、シングルCDになって、A面(とは言わないが)1曲だけで、価格を500円くらいに安くして出すものも見かけるようになった。

 逆に、普通のCDシングルは、AB面にあたる2曲の他に、必ずといっていいほど、カラオケバージョンが入るようになった。さらに、ミックス違いの曲も入って、昔のLP盤と同じサイズだった12インチシングルの感覚だ。

●LPからCDにかわって失われたもの

 こうして、CDからは、いろんな恩恵も受けているけれど、LPがなくなることで失ったものも多い。CDの技術的な解説のところで触れたが、16ビットでサンプリングしているCDが記録している音の強さは、人間が聞くことのできる音の強さの範囲(ダイナミックレンジ)より、少し狭い。

 「家庭用としては十分な値」ということで規定されたが、これではやはり不足なようで、今はHDCD(HighDensityCompatible
Disc)というその上の規格のCDも出てきた。最近は、新譜のCDで「HDCD」のマークの付いているものが増えているはずだ。
 HDCDは、16ビットより広い20ビットでサンプリングされている。当然音は良くなる。それも、16ビットの従来のCDの規格にうまく4ビット分をプラスするように作られているので、従来のCDプレーヤーでも聴くことができる。HDCD対応のプレーヤーを使えば、もっといい音になる。

 「それなら、最初から20ビットの規格でスタートすればよかったのに」と思うが、CDがスタートした当時の技術では、12センチのCD盤には、それだけの情報を詰め込むことはできなかった。

 そういえば、収録時間を74分にしたのは、「ベートーベンの第9交響曲が1枚のCDにはいるようにする」という、わかったようでわからない理由だった。サイズを12センチにしたのも、確かな理由は聞いたことがない。それでは、未成熟の技術を押しつけられて、LPはCDに取ってかわられてしまったのだろうか、

 おそらく、デジタルでレコードを作る技術が、市販できるところまで進んだので、何とか早くCDという新しい規格を普及させて新しい市場を作り出そうと、メーカーは考えたのだろう。

 CDの規格は、日本のソニーとオランダのフィリップス社との共同で生まれたが、他社との絡みで、早く規格を立ち上げねばならず、とりあえず見切り発車したという部分もあるのかもしれない。その辺りについて、当時の開発担当者に詳しい話を聞いてみたい。

 CDのように、新しい機器(CDプレーヤー)とソフト(CD)が必要な規格の普及というのは、一般に、成功させるのが難しい。
 CDプレーヤーが、ある程度安い価格で多機種発売されて、普及しなければならないし、それに併せてソフトもかなりの数が出ないといけない。しかも、一度決めた規格は、(高い機器を買うのだから)少なくとも10年は持つものでないと困るといわれている。

●さらに高音質のメディアへ

 最初のCDが発売されて17年、ほとんどの新作アルバムがCDで発売されるようになって、10年くらいたつが、そろそろ次の規格の話題が出てきている。
 ソニーが提唱する「スーパーオーディオCD(SACD)」はすでに発売されているが、これは、録音周波数帯域を100kHzまで拡張し、ダイナミックレンジも120デシベル以上と広げている。人間の可聴域をはるかに超えた範囲をカバーしているから、これなら「LPのほうが音がいいんじゃないの」という問題はなくなるようだ。

 SACDは、コンサートホールやスタジオでのクラシックやジャズの生演奏を、聴き手がその場にいるような臨場感で再現するのが目的なようで、今のところクラシックやジャズの再発ものが中心。7月までに、23タイトルが3500円から3800円で発売されている。

 ロック・ポップス系の新譜や再発盤が、ぐんと音を良くしてSACDで発売される可能性はあるのだろうか。今の、スタジオのデジタル録音のクオリティで、SACDの高音質は活かせるのだろうか。

 SACDには3つのタイプがあって、現在のCDプレーヤーでもかけられるタイプのものもある(従来のCDを記録する“CDレイヤー”とSACDを記録する“HDレイヤー”の2枚を貼り合わせたもの)。

 このタイプなら、CDプレーヤーしか持っていないユーザーでも大丈夫だから、このタイプのものが多種発売されるようになれば、SACDを聴ける環境は整ってくるだろう。しかし、今のところSACDプレーヤーの価格は、50万円。やはり、一部のオーディオマニアだけをターゲットにしたもののようだ。

 高音質の新しい規格としては、「DVDオーディオ」も開発が進められている。これは、デジタルで画像を記録したレーザーディスクに代わる新しい規格のDVDに、音楽を記録するものだ。

 当初24ビット/96kHzで検討が進められてきたが、SACDに対抗して、現在は24ビット/192kHzが採用される可能性が高くなっている。発売は今年の秋以降と言われている。これも、CDに代わるものというより、一部のオーディオファンのためのものという位置づけだ。

 DVDプレーヤーでも聴けるようになるDVDオーディオ(といっても今のDVDプレーヤーで聴けるわけではない)か、CDプレーヤーでも聴けるSACDか、どちらにしても、いまのところのメーカーの予測では、CDに取って代わるものになるわけではないようだ。

●マスキング機能でデータを圧縮

 もうひとつ、インターネットを使って音楽を配信する、MP3という規格も話題になっている。MP3は、CDと同じ音質のものを10分の1に圧縮して、配信する。この場合は、サンプリング周波数はCDと同じで、音のマスキング効果を利用して、データを圧縮する。

 マスキング効果というのは、ある音が別の音によって妨害され、聞き取りにくくなる現象のことだ。例えば、大きな妨害音が起きると、その直前の数十ミリ秒の小さな音は、マスキングで聴こえなくなってしまう。

 後の音が前の音を妨害するというのは、因果律から考えると不思議だが、これは、大きな音のほうが、聴覚神経を伝わるときに神経パルスがたくさん発生するために、伝達路が活性化され、パルスの連絡が早くなるために、前の音を追い越してしまからと言われている。

 MD(ミニディスク)では、このマスキング効果を利用して、聴こえない音は記録する必要はないという考えで、データを4分の1に圧縮、MP3ではさらに10分の1に圧縮している。

 僕も、取材のテープ録音にはMDを愛用している。カセットテープではノイズが多いので、DATを使うようになった。そのあと、MDに切り替えたが、音質の低下はほとんど感じない。

 MP3は専用の携帯用プレーヤーもあるが、パソコンで聴くのが基本だ。専用のプレーヤーがいらないというのは、魅力的だ。つまり、音楽をパソコンで聴くようになれば、どんな規格でもソフトウェアで対応できるから、SACDだろうが、DVDオーディオだろうが、いちいち専用機を購入しなくても、楽しむことができる(それぞれから読み込めるCDドライブやDVDドライブは必要だが)。

 そうすれば、規格の統一うんぬんで騒ぐこともない。もっと高音質の規格ができても大丈夫だ(そんなものが必要かどうかわからないが)。おそらく、これからの音楽、特にポピュラーミュージックは、インターネットで有料配信されて、パソコンで聴くという時代になるだろう。

●CDはどうしてあんな見事にLPを駆逐したのだろう

 地上波テレビも、2010年までにはすべてデジタル放送に切り替える方針といわれている。まさに21世紀はデジタルの時代だ。
 デジタル放送になると、今のひとつのチャンネルで、3つのチャンネル分の放送ができるし、画質もよくなる。画像の場合、音楽よりもデジタルの方が、ずっと効率よく圧縮できるから(耳よりも眼のほうが、騙されやすい)、デジタルに切り替えるほうがいいのかもしれない。

 しかし、テレビをデジタル対応のものに買い替えなければ、デジタル放送は見られない。テレビ局の放送施設も、すべてデジタル対応に代わる。大変な投資が必要だ。

 地上波テレビがアナログからデジタルに、そっくり切り替わってしまうのは、はたしていいことなのだろうか。1局くらい、うちはアナログで続けますというテレビ局は出てこないのだろうか。

 それに、今まで録りためた貴重な録画ビデオや買ったビデオが、見られなくなるのでは困る。本当にアナログ放送からデジタル放送にすっかり切り替えたほうがいいのか、もう一度考えたほうがいいような気もするが、どうなのだろう。

 それにしてもなぜ、CDはあんなに見事にLPに取って代わったのだろう。今は、DJが“スクラッチ”でLPを使ったり、デザイン的にも優れていることもあって、若い人の間にもLPは見直され、中古レコード店の客も、昔懐かしいという中年以上より、若い人のほうが多いようだ。

 先日、山下達郎氏が、自分のFM番組で、倉庫で偶然見つけたという『ジョイ』の3枚組LPをプレゼントしたところ、信じられないくらいの応募が殺到したそうだ。

 LP盤『ジョイ』は、当時限定発売だったので、現在中古市場にはめったに出ないし、出てもべらぼうに高い値段がつく。珍しいものはほしい、という心理もあるだろうが、若い人の間でLPに対する憧れみたいなものがあるのも否定できないと思う。山下氏は、最新CD『コージー』も、LP2枚組で限定発売して、人気を呼んだ。

 それなら、LPをどんどん発売してほしい気もするが、LPの生産が少なくなってしまったので、最盛期のようないい音質ではプレスできないのだそうだ。
 そう考えると、長年培ってきた録音技術とLPという規格を捨てて、なぜすべてデジタル録音とCDに切り替えてしまったのだろうと残念に思う。アナログ録音とLPでいい音楽を出し続ける技術がなくなってしまったのは、やはり大きな文化的損失だ。

 CDが急速に普及し、新譜がほとんどCDになった80年代の終わりから90年代の初めにかけては、僕の友人にも、もうLPの時代は終わりと、プレーヤーを始末したり、LPレコードのコレクションを売り払ったりした人が多かった。今となっては、もう手に入りにくい盤も多く、みんな残念がっている。

 音質のいいFMラジオが登場しても、AMラジオはなくならなかった。それとは条件は違うが、なぜ、LPはCDと共存していけなかったのだろうか。僕も一ライターとして、「これからはCDの時代、使いやすくて、音もいい」なんて、書いていたことを反省している。

 もう一度LP文化がよみがえってほしい。これが僕の切なる願いだ。中古レコード店に行けば、程度の良い(ほとんど聴いていないような)LPが2000円以下で手に入る。プレーヤーもレコード針もちゃんと市販している。最近はCDばっかりだという人も、もう一度、昔懐かしいLPを聴き直してみてはどうだろう。

 また、昔買ったけど今は聴かないというLPのある人は、ぜひ中古レコード店に買い取ってもらってほしい。そうすれば、なかなか手に入らないLPが中古市場に流通して、LP文化がもう一度活性化できるはずだ。

 参考資料:『音のなんでも小事典』(日本音響学会編・講談社)
スーパーオーディオCDについてはソニーミュージックのサイトが詳しい。

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