Suzuki Media / Horai Tsushin
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No.7 -2000.5.8


 東京から西では、そろそろ日中は汗ばむほどの陽気でしょうが、福島はよう
やく桜が散り始めた頃。朝晩はまだまだ冷え込みます。

 ゴールデンウィークは一日だけですが、山形県の山寺まで行きました。週2
回のジム通いで鍛えているつもりでしたが、1000段の階段を上り下りして、翌
日は筋肉痛になりました。


//////////////////クリッピングサービスのススメ////////////////////////


 昨年、学生や新入社員向けに情報リテラシーを身につけるための本『必修常
識 情報リテラシー』を書いたが、その中で、一番関心を読んで、いろいろと
質問を受けたのは、クリッピングサービスの話だった。


 まず、その部分を単行本から紹介します。


 クリッピングサービスというのは、キーワードを設定しておくと、指定した
ニュース速報などから、そのキーワードが含まれる記事をすべて拾い出して、
フォルダーに保存してくれるサービス。ニフティサーブで提供されている。
 ニュース速報というのは、ニフティサーブに接続して、ニュース速報のメニ
ューに行き、そこでその時々の新しいニュースを読むことができるもの。新聞
の記事を読むようなもので、見出しから読みたい記事を選ぶことはできるが、
いちいち接続して読みにいかなければならない。

 クリッピングサービスは、その手間をコンピューターが代わってやってくれ
る便利なサービスだ。僕の場合、現在は、「マルチメディア」「図書館」「モ
ンゴル」という3つのテーマでキーワードを設定している。
 クリッピングした記事が新聞切り抜きに比べて優れているのは、電子情報と
して蓄積されるから、検索が簡単にできることだ。マルチメディア関係の記事
を書くときは、保存してある記事を順にさかのぼって読みながら、テーマになり
そうな話題を探していく。テーマが決まったら、それに関するキーワードで保
存してある記事全体をもう一度検索する。それに全部目を通した上で原稿を書
き始める。

 「図書館」には、図書館のほか、「博物館」「美術館」などのキーワードを
設定。僕は、『図書館をしゃぶりつくせ』(宝島社)という図書館の利用法と
全国の図書館の案内を解説した本を書いていることもあって、博物館や図書館
には興味を持っている。「図書館」のフォルダーは、新しい館の開設や、展覧
会の情報などがわかって便利だ。

 「モンゴル」は「モンゴル」のほかに、「福島市」「小児」「看護」などの
キーワードを設定。「モンゴル」はモンゴルに住んで仕事をしている友人のた
めにクリッピングをして、その都度、メールで送っている。日本から見たモン
ゴルの情報というのは現地ではなかなか手に入らないので、友人は仕事仲間に
は、「○○さんは情報通」という評判が定着しているそうだ。
 周りの人は、日本に情報源をいろいろ持っていると思うかもしれないが、実
は僕がクリッピングをしてその情報をメールで送っているだけ。これなど、ク
リッピングが威力を発揮するいい例だ。

 同様に、「小児」「看護」というのは、うちの奥さんが、大学で小児看護学
を専門にしているので、その情報集めに使っている。「福島市」は現在生活し
ている福島市に関する情報を集めるためのものだ。

 クリッピングは、いわば新聞の切り抜きをニフティサーブのコンピュータが
すませてくれるというもの。キーワードで検索するから、自分で新聞を眺めて
切り抜きするときのように、「何となく気になる記事」を拾うことはできない
が、時間と手間の節約ということでは、クリッピングが勝っている。
 しかも、切り抜いた(クリッピング)した記事は、電子情報なので、簡単に
検索ができる。しかも場所をとらずにハードディスクにずっと保存しておくこ
とができる。
(NECクリエイティブ刊『必修常識 情報リテラシー』より)


 『必修常識 情報リテラシー』は、具体的な利用法を解説する本ではないの
で、クリッピングは実際にはどうするのかについては、触れていない。
 クリッピングサービスは、インターネットの時代には非常に便利なサービス
だと思うが、実はそれほど利用されていないように思う。ヤフーで検索してみ
ても、クリッピングサービスを提供しているところは、ほとんどないようだ。

 クリッピングサービスは、質が高い数多くのニュースソースがなければ、実
際に役に立つ情報は集まってこない。ということは、新聞社が単独でできるも
のではないし、新聞社や通信社などのニュースソースに話をつけて、クリッピ
ングサービスを提供するのは、至難の技だろう。
 1日何回か、インターネット上の指定したニュースサイトを巡回して、指定
したキーワードを含む記事をダウンロードしてくるアプリケーションがあれば、
有料のクリッピングサービスに頼らず、自分でクリッピングができるが、その
ようなソフトはあるのだろうか。残念ながら、僕の知っている範囲ではないよ
うだ。

 現在、クリッピングサービスがあまり利用されていないのは、サービスの提
供が少ないのが一番の原因だろう。実際のところ、使い物になるのは、アット
ニフティが提供しているクリッピングサービスだけだ。
http://www.nifty.com/iguide/clip/
 それも、『必修常識 情報リテラシー』を書いていた昨年の段階では、ブラ
ウザで使うには多少問題があった。ホームページ自体に、クリッピングされた
記事をまとめてダウンロードする機能がなかったのだ。

 クリッピングサービスは、キーワードを入力して、ニュースソースを選択す
れば、必要な記事はクリッピングされてくる。しかし、実際に情報として使う
ためには、それをダウンロードして使いやすいファイルにまとめる作業が欠か
せない。
 これに手間がかかるようでは、実際に役に立つデータにはならない。時間の
ないときには、ほとんど手間をかけずに必要な情報だけが蓄積されていく。必
要なときには、キーワード検索をして、必要なデータだけ取り出してくればい
い。これが、電子データの便利で効率的な使い方だ。

 僕自身がどう使っていたかというと、ブラウザではなく、パソコン通信用の
アプリケーション「秀Term」に、自動的にクリッピングされたデータをダウン
ロードするソフト(スクリプトという)を組み込んで、パソコン通信のアット
ニフティにアクセスしていた。
 アットニフティは、ニフティサーブというパソコン通信サービスが進化して
プロバイダーの役割も果たすようになり、それと、富士通のプロバイダーサー
ビス・インフォウェブが合体したものだから、今でもパソコン通信としても使
うことができる。

 これまで、クリッピングだけは、秀Termというパソコン通信のソフトを使っ
て来たが、今回のクリッピングについて解説原稿を書こうと、アットニフティ
のホームページにアクセスしてみたら、クリッピングサービスの使い勝手が向
上していた。クリッピングされた記事を簡単にまとめてダウンロードできるの
だ。
 これなら、みんなにすすめられる。というわけで、アットニフティを使った
クリッピングサービスについて、具体的に詳しく解説します。だまされたと思
って、一度使ってみてください。きっと役に立つはずです。

 クリッピングサービスはアットニフティの会員にならないと利用できない。
ただし、今は、C's会員といって、他のプロバイダーや企業や学校のサーバー
を利用している人向けに、入会金500円だけで、クリッピングなどの有料コン
テンツの利用料金だけを払えばいいコースもある(ただし、メールアドレスも
もらえない。現在はサービス期間中だそうで、入会金も無料!)。
 アットニフティの利用料金については、
http://www.nifty.com/join/charge.htm#open
を参照。

 クリッピングサービスの利用には、月300円の基本料金と1分間30円の利用料
金がかかる。1分間30円の利用料金は、クリップした記事をダウンロードする
のにかかる時間だ。僕の場合、平均して1日150から200本の記事をダウンロー
ドしているけれど、月々かかるのはおよそ3500円。得られる情報の量と質から
考えると、十分ペイしていると思っている。

(以下はクリッピングサービスの具体的な利用法です)

注:このメールサービスでは文章だけですが、
http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/horai7-0.htm
にアクセスすると、画面を見ながら説明が読めます。


 アット・ニフティの会員になって、クリッピングサービスを使うにはまず設
定が必要だ。

 その前に、クリッピングサービスを利用する場合は、ブラウザを、ページを
毎回更新して新しい表示するように設定しておく。
 例えば、インターネットエクスプローラ5の場合は、「ツール」→「イン
ターネット・オプション」→「全般のタグの『インターネット一時ファイル』
の『設定』ボタン→ここで、「自動的に確認する」に設定しておく。「確認し
ない」にしておくと、ハードディスクにキャッシュされている古いページが表
示されて、記事がうまく表示できないことがある。

 アット・ニフティのトップページ(http://www.nifty.com/)から、「ニュー
ス」を選ぶと、メニューの一番上に「クリッピングサービス」の項目が出てく
る。ここをクリックすると、クリッピングサービスの最初のメニューになる。
http://www.nifty.com/iguide/clip/
 ここで、「サービスに入る」をクリックする。

 ここから有料になるため、「インターウェイ」というページが表示され、ア
ットニフティのIDとパスワードの入力が必要になる。アットニフティのアクセ
スポイントから接続した場合にも、ここでもう一度IDとパスワードを入力する
ことになる。

 IDとパスワードを入力すると、クリッピングサービスのページになる。
 「クリッピング設定/解除」というメニューをクリックする。

 最初に利用する場合は、「設定料金の確認」のページになる。
 ここで、「了解する」をクリックする。

 「新規フォルダー設定」のページになる。
 設定には、「フォルダー名」を入力し、「保存期間」を設定し、「ニュース
速報」を選択し、「キーワード」を入力する。その下にある「記事数表示」は、
アットニフティのクリッピングサービスにアクセスしたときに、クリッピング
されている記事数を表示するかどうかだから、「表示」にしておけばいい。

 「フォルダー名」には、わかりやすい名前を入力しておく。「保存期間」は、
1日から14日までの設定ができるが、週に2、3回はアクセスしてダウンロード
するなら、7日間くらいに設定しておけばいい。
 選択できるニュース速報は、毎日新聞ニュース速報、読売新聞ニュース速報、
朝日新聞ニュース速報、共同通信ニュース速報、時事通信ニュース速報、共同
通信経済ニュース速報、毎日新聞企業ニュースリリース、NHKニュース速報、
毎日インターネット情報、スポニチ芸能ニュースの10本。選択したいニュース
速報にチェックを付ければいい。

 いくつ選択しても利用料金は変わらない(ただし、クリッピングされる記事
が増えればダウンロードに時間がかかって利用料金は高くなる)から、10本全
部を選択してもいいが、僕は、共同通信ニュース速報と共同通信経済ニュース
速報は重なる記事が多いので、共同通信ニュース速報だけにしている。また、
キーワードから考えて、あまり関係ないだろうというので、スポニチ芸能ニ
ュースは外して、計8本にチェックを付けている。

 設定で一番重要なのが「キーワード」の入力だ。
 アット・ニフティのクリッピングサービスでは、3つのフォルダーを設定し
て、それぞれに7つのキーワードが設定できる。僕の場合は、3つのフォルダー
で次のようなキーワードを設定している。

マルチメディア: マルチメディア インターネット ホームページ ディジ
タル デジタル CD−ROM CDーROM
図書館: 図書館 ライブラリ 博物館 郷土館 資料館 美術館 図書室
モンゴル: モンゴル 福島県 福島市 小児 看護

 マルチメディアでCD-ROMが2つあるのは、片方はハイフンで、片方は音引き
になっているからだ。このクリッピングを始めた数年前は、CD-ROMという言葉
はあまり一般的でなく、新聞記事でも、ハイフンと音引きの両方が使われてい
た(CDロムなんて表記もあった)。もれなくクリッピングしたかったので、
ハイフンと音引きの両方をキーワードに設定することにした。
 しかし、最近では、CD-ROMという単語自体、マルチメディアの中でもそれほ
ど重要な言葉ではなくなったし、音引きを使うメディアも少なくなったので、
CDー(音引き)ROMの代わりに「ネットワーク」というキーワードを使う
ことにした。こうした、キーワードの見直しと入れ替えも、時代の変化によっ
て必要になる。

 キーワードは取りあえず自分の考えで設定してみて、クリッピングされた記
事を検討して、何度か修正を加えていくのがいいだろう。また、7つまで設定
しなければならないといって、無理して7つ設定する必要もない。「マルチメ
ディア」のような概念的な言葉だと、具体的なキーワードの設定が必要になる
が、モンゴルに関する記事を集めたいなら、「モンゴル」一語で十分だ(モン
ゴルに関して書かれた新聞記事に、モンゴルという単語が入っていないことは
ほとんど考えられない)。

 キーワードは、OR、AND、NOTの3種の条件でつなぐことができる。ただし、
クリッピングの場合は、絞り込むというよりキーワードを含む記事を広く集め
ていくのがいいので、ORを使うのが普通だ。
 クリッピングの場合、どうしても必要のない記事まで紛れ込んでしまう。例
えば、森首相のロシア訪問では、プーチン大統領と美術館で会談したので、美
術館のキーワードを設定している図書館のフォルダーに森首相のロシア訪問の
記事が大量にクリッピングされてしまった。

 これを防ぐにはNOTを使うという方法もありそうだが、必要のない記事をう
まく削るキーワードはなかなかない。
 「看護」というキーワードを設定しているが、ここでは、西鉄バスのバスジ
ャック事件の被害者の一人が看護婦さと、その記事がすべてクリップされる。
新聞記事検索をしているときなら、「NOT 西鉄」として、必要のない記事を
除くことができるが、クリッピングの場合には、予めどんな記事が出てくるの
かわからないから、NOTは使いにくい。

 キーワードの設定が終わったら、「設定内容確認」を押すと、「設定内容確
認」のページになる。もう一度、キーワードなどに間違いがないか確認すれば、
設定は終了だ。

 フォルダーの設定が終わったら、どんな記事がクリッピングされてくるか楽
しみだ。
 一日くらいしたら、アット・ニフティにアクセスしよう。
 設定したときと同じようにして、クリッピングサービスのメニューに進み、
「クリッピング設定/解除」ではなく、「ニュースを読む(\)」を選ぶと、下
のような「フォルダー選択」のページになる。
 ここでフォルダー名(僕の場合は、マルチメディア、モンゴル、図書館の3
つのうちどれか)をクリックして選べば、それぞれの記事を見ることができる。

 表示された「ニュースを読む」のページで、クリッピングされた記事を見て、
読みたいものをクリックすれば、個別の記事が表示される。しかし、このペー
ジを見ている時間はすべて1分30円の料金が加算されるから、その場で読んで
おきたい重要な記事がない限り、まず全記事を保存するのがいい。

 「このページのすべての記事のチェックを『つける』」をクリックすると、
全記事の前にチェックが付く。ここで、「保存」をクリックすれば、「名前を
付けて保存」のウィンドウが開いて、ハードディスクに保存ができる。
 記事の題名を見ながら、不必要な記事のチェックを外してもいいが、それで
は時間がかかるので、よほど暇なとき以外は、記事のタイトルは気にしないで、
全部ファイルにダウンロードしたほうがいい。

 ただし、先述したように、森首相がロシア訪問でプーチン大統領と美術館で
会談したために、美術館のキーワードを設定している図書館のフォルダーに不
必要な森首相の記事が大量にクリッピングされているようなときは、チェック
を外したほうがいいだろう。
 僕も、福島県、福島市、小児、看護、モンゴルという5つのキーワードを設
定しているフォルダーでは、福島に関する記事はすべて検索されてしまうので、
関係ない事件や事故の記事だけは、その場でチェックを外すようにしている。

 「名前を付けて保存」の画面では、ハードディスクのどこにどんなファイル
名で保存するか、設定して、「保存」ボタンを押す。
 最初にクリッピングサービス専用のフォルダーをデスクトップなどに作って
おくといい。またファイル名は、デフォルトで「clip001.log」になるが、必
要に応じて適当な名前を付けておく。

 たとえば、マルチメディアのフォルダーにクリッピングされた記事を2000年
5月8日に保存したなら、「mm000508.log」とする。同じファイル名を使うと、
上書きされて以前に保存したファイルが消えてしまうので注意が必要だ。
 保存したファイルは、そのあとすぐに、ワープロやエディターなどで開いて、
「mm0005.log」(マルチメディアの2000年5月分)などのファイルにまとめて
おくといい。ひとつのファイルにしておかないと、あとで検索して必要な記事
をするのが面倒になるからだ。

 こうして、mm0005.log、mm0006.log、mm0007.log、mm0008.log、とファイル
をためておけば、自分だけの立派なマルチメディアに関するデータベースにな
る。テキストファイルだから、それほどスペースはとらない。一月分のファイ
ルがそれほどお大きくならないなら、2か月分、3か月分をまとめてひとつのフ
ァイルにしてもいい。
(以上)


注:このメールサービスでは文章だけですが、
http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/horai7-0.htm
にアクセスすると、画面を見ながら説明が読めます。


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http://www.mmochida.mn/
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編集と発行:鈴木康之/SUZUKI Yasuyuki
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http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/