Suzuki Media / Horai Tsushin
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No.1 -1999.12.3


福島市は初雪が降りました。今日は、北風が冷たく吹いています。
ノートパソコンを使った海外でのアクセスについての原稿をお読みください。


/////海外からのアクセス/////

 海外に旅行したときほど、インターネットが便利だと思うときはない。もちろん日本国内でも、ノートパソコンを携帯してどこでもインターネットにつなげるのは便利だけど、大半は電話やファックスでもすむ話だ。
 しかし、海外となると、国際電話やファックスではお金がかさんでしまう。それが、インターネットなら、市内通話料金だけで日本とメールのやりとりができる。新聞社のホームページにアクセスすれば、日本の最新ニュースも手に入る。
 日本国内でインターネットを使い始めると、誰でも海外に出かけたときにも、同じように使いたいと思う。僕も、「海外に行くんだけど、どうやったらインターネットにつなげますか?」という質問をよく受ける。そのために、ノートパソコンを買ったという人もいる。
 ただし、ノートパソコンでホテルからインターネットにつなぐ(いわゆるモバイルコンピューティング)のは、実はそれほど簡単なことではない。

 僕自身、まだインターネットなどなくて、パソコン通信だけだった時代に、アメリカでコンピュサーブにつないだ経験があるから、海外からのアクセスということでは、それなりのキャリアがあるつもりだけど、めまぐるしいインターネットの変化についていくために、海外に出かけるたびに新しい情報を仕入れて、その都度対応していかなければならない。
 古いホテルだと、交換機が古くて、パソコンでのアクセスに対応できないところもある。そうなると、お手上げだ。一度、バンクーバーのホテルが旧式の交換機で使えなくて、どうしても原稿をメールで送るために右往左往したことがあった。バンクーバー市内のインターネットカフェにも行ってみたが、ホームページは見られても、メールの送受信はできない。
 日本のように、モジュラージャックの使える電話機もない。結局、取材先のコンピューター会社にお願いして、電話線を使わせてもらい、事なきを得たが、原稿を全部書き写してファックスで送らなければならないかと冷や冷やした。

 でも、海外でのインターネットアクセスは大変、とばかりも言っていられない。海外に行ってインターネットをやりたいという欲求は多いのだ。最近も、3か月アメリカの各地を廻るという女性のパソコンのセットアップの手伝いをした。
 どうかな、大丈夫かなと、心配していたが、トラブルも数々あったが、とりあえず、インターネットにアクセスして、メールの送受信を滞りなくすることができた。初心者だけでなく、ノートパソコンでモバイルしようという人には参考になることも多いので、ここで詳しく紹介することにしよう。

 その女性は、インターネットにアクセスし、メールのやりとりも日常的にしているが、その技術的な面がわかっているわけではない。LANに組み込まれたパソコンでのアクセスだから、家からダイヤルアップで接続するのとは違い、自分でいろいろと設定したことはない。
 つまり与えられたものとしてパソコンを使っているわけで、インターネットにアクセスしているといっても、パソコンのことは何も知らない素人と言っていい。
 そんな彼女が、「3か月アメリカに行くのでその間もインターネットにつないでメールを見たい。ノートパソコンを買ったので、アメリカで使えるように設定してほしい」と言ってきた。

 うーん。アメリカでインターネットにアクセスできるように設定するのはそんなに難しいことではない。でも、ホテルでアクセスするとしたら、外線に出る番号が9か0か、モジュラージャックをどうやって外すか、ホテルを移るごとに市外局番の設定も変えないといけないし、僕が設定しただけでうまくいくのか心配だった。
 まあ、でも、「まったくの素人が、ノートパソコンを持ってアメリカに行ってきちんとインターネットにアクセスできたら面白いだろう」と思って、最大限の努力をしてみることにした。

 パソコンの設定自体は、それほど難しいことはない。その前に、プロバイダーを決めなければならない。それまではニフティに入っていたが、ニフティは基本料金なしで利用料金だけというコースがなくなっていた。使うのは海外に行くときだけなので、毎月基本料金がかかるのは困る。それで、プロバイダーはビッグローブを選択した。
 海外でアクセスするときには、国内のプロバイダーが契約している海外のアクセスポイントを使う。ビッグローブの場合は、グレッグというローミングサービス。ここはかなり手広くやっているようで、ニフティもDTI(ドリームトレインインターネット)も同じグレッグだ。
 アクセス方法は簡単で、グレッグのサイトからアクセス用のソフトをダウンロードして、それをインストール、あとは、ソフトを立ち上げて、自分のいる場所のアクセスポイントを選ぶだけでいい。海外からのアクセスは、今はどのプロバイダーも親切に解説しているので、利用はずいぶん楽になった。
 僕が前回アメリカに行ったときは、アメリカのアクセスポイントの情報を集めて、「ダイヤルアップネットワーク」のフォルダで、その都度「新しい接続」を作って、電話番号やドメインネームサーバーアドレスの設定をしていたのだから、いやはや簡単になったものだ。

 ダイヤルアップネットワークでインターネットに接続さえできれば、あとは簡単だ。アメリカだろうと、アフリカだろうと、南極だろうと、日本で普通に接続しているのと全く変わらない。これが、インターネットの優れたところだ。
 パソコン通信に初期の頃から慣れ親しんでいた僕は、最初はこれが感覚的に理解できなかった。アメリカのアクセスポイントにつないで、そこから、日本と全く変わりなく、日本のプロバイダーのメールサーバーから自分宛のメールが読める。インターネットは世界中のコンピューターがネットワークで結ばれているから、という理屈はわかるのだが、「これがインターネットなのか」と改めて感動したことを覚えている。

 とりあえずグレッグをインストールして、アウトルックエクスプレスのメールサーバーのサーバー名、ID、パスワードを設定して使えるようにした。試しに、グレッグを使ってアメリカのアクセスポイントに国際電話で接続してみた。うまくいくようだ。
 彼女の出発日が迫っていたので、設定をすませたノートパソコンに紙1枚の簡単な説明をつけて渡したが、大丈夫かなと半信半疑だった。「アメリカに行く前に一度試してみて、わからないことがあったら連絡して」と言っておいたが、結局連絡は来なかった。
 まあ、アメリカでつなげなかったらそれも仕方ないだろう。ノートパソコンはワープロとして使えば無駄にはならないし、まあいいかなと思っていた。

 しかし、彼女は自力で何とかインターネットへの接続をやってのけた。ホテルを替わりながら、インターネットへ接続するのはけっこう手間がかかる。メールソフトやプロバイダーのDNS(ドメインネームサーバー)の設定は、誰かにやってもらってもらえばすむが、「ダイヤルのプロパティ」だけは、その都度自分でやらなければならない。
 ホテルの市外局番を調べて、それを入力。外線発信番号を入力。日本だと「0」が多いが、アメリカでは「9」が多いようだ。市内と市外で違う場合もあるので、注意が必要だ。このとき、外線発信番号のあとに、「,(カンマ)」を入れないとうまくつながらないこともある。外線にかけるとき、「9」を回してから、「ツー」という音がするまで少し待つが、その間が「カンマ」の役割だ。
 「ダイヤルのプロパティ」の変え方も、説明に書いておいたのだが、はたしてうまくいくかどうかわからなかった。ホテルの交換機が古ければ、どんなに頑張ってもうまくいかない可能性もある。

 案の定、ロサンゼルスについた彼女から、「うまくつながらない」と国際電話がかかってきた。いろいろ聞いてみると、「日本にメールを出すのだから、日本のアクセスポイントにつなごうとしていた」という。僕の説明は現地のアクセスポイントに接続するのを前提にしているから、それではうまくいくはずがない。
 「そうじゃなくて」と、インターネットの基本から説明した。その上で、ホテルの市外局番と外線発信番号を確認して、「ダイヤルのプロパティ」の設定の仕方を細かく指示する。
 ホテルの電話は1回線しかないから、説明をして設定を変えてもらい、アクセスポイントに接続するたびに、電話は切れる。うまくいかなければまたかかってくる。それを何度か繰り返して、どうにか、インターネットにつながった。ホームページも見られたという。
 ほっとして、あとはメールを送ってみてくださいと言って電話を切った。そのあと、無事に彼女からのメールも送られてきた。

 しかし、翌日また、SOSの電話がかかってきた。メールは送れるが、読むことができないという。その場でアウトルックエクスプレスを開いてもらって、設定を確認したが、おかしいところは見つからない。いろいろと試してみたが、うまくいかない。
 結局、その日はあきらめたが、ここまでうまくいっているのに、メールが受信できないのは残念だ。何とかならないものかと考えて、解決策をひとつ思いついた。
 ホームページでメールの送受信ができるというのを雑誌の記事で読んだことがあった。メールソフトで受信ができないなら、ホームページでメールが読めるサービスを使えば、うまく行くかもしれない。早速、goo(グー)が提供するフリーメール(http://freemail.goo.ne.jp/)にアクセスして説明を読んでみた。
 登録すれば、メールアドレスが無料で利用できて、他のメールアドレスからの転送もできる。これなら、アウトルックエクスプレスでうまく行かなくても、メールの送受信は可能だ。早速、アメリカの彼女の登録をして、メールが使えるようにした。

 翌日、フリーメールの使い方を書いたものをホテル宛にファックスで送った。これなら、ホームページのURLを入力して、あとは画面の指示に従うだけだから、簡単だ。彼女からも、メールが読めた! という電話がかかってきた。
 ホームページでメールの送受信ができるという記事を最初に読んだときは、どんな使い方をするのかなと思っていた。出先で、知り合いのところに立ち寄ったときなど、このサービスに登録しておけば、自分宛のメールを読むことができる。でも、それ以上の使い方は思いつかなかったが、まさか、今回のようなうまい使い方があるとは思わなかった。

 ホームページでのメールサービスは、どこでもインターネットにアクセスできるパソコンがあれば、自分宛のメールを読むことができる。もちろん返事もかける。
 しかし、日本以外の国では、パソコン自体が日本語の表示ができないから、いくらインターネットカフェでフリーメールなんかにアクセスしても、メールを読むことはできない(英語やローマ字のメールならいいが)。
 これ、技術的に解決できないのだろうか。サイト自体に日本語表示機能を持って、海外からのアクセスでも、日本語のメールが読める。ジャバとか使うとできそうな気もするけど、どうなんだろう。

 こうした多少の紆余曲折はあったけど、全くの初心者がノートパソコンでアメリカから無事アクセスできたのは、けっこうスゴイことだと思う。もちろん、彼女の、決してめげないキャラクターも大きい。
 パソコンではどんなことが起きるかわからない。自分の設定や操作が間違っている場合もあるし、そうではなくて、パソコン自体に問題がある場合もある。そのへんの見極めが難しいし、大きなトラブルがあっても、ちょっとしたことで、解決する場合が多いのだ。あきらめないこと、しつこくやることは、パソコンを扱う上での重要なノウハウである。
 ただ、彼女は自分なりの判断をして、操作を省略したりするので、うまくいかないこともあった。パソコンの操作は、きちんと正しい順番にそって進めないとうまくいかないことが多い。ソフトウェアの操作などは、いろんなメニューを開けて、ここは何ができるのだろうと試してみるのは、使い方に慣れるのにいいことだが、インターネットに接続するときに、途中で操作の手順をはしょったりすると、うまくいかないことになる。手順を正確に守るというのも、パソコンをうまく使うこつのひとつだ。

 それにしても、全くの素人がノートパソコンを持って、サポートはあったにせよ、海外からインターネットにアクセスできるようになったのだ。僕のような、パソコン通信の初期からの事情を知っているものには、けっこう感動する事態だ。OSもアプリケーションもそこまで使いやすくなったということだろう、たぶん。
 冒頭に戻るが、海外に旅行したときほど、インターネットが便利だと思うときはない。ノートパソコンさえあれば、インターネットへのアクセスは簡単にできる。あなたも試してみてはどうですか?

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●MSNジャーナルに最新のエッセイが掲載されました。
http://journal.jp.msn.com/default.aspをご覧ください。

映画『メッセンジャー』は1999年の東京の風景を見事に切り取った
(鈴木康之:12月3日)
馬場康夫監督の『メッセンジャー』を見て、自転車便という映画的な題材が、シリーズものとして大きな可能性を持っていることに気がついた。東京から福島に引っ越してきて、シネマコンプレックスの大スクリーンで見る映画の魅力を再確認したが、シネコンとシリーズもの映画は、映画復興の切り札になるかもしれない。

●大西赤人さんのホームページで最新小説『斜塔』の掲載がスタートしています。http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/onishi/shato.htm
●モンゴル歴10年のモチダミツコさんのホームページがスタート。
モンゴルに興味ないという人も一度のぞいてみてください。
彼女の生き方には、共感できる人が多いはず。http://www.mmochida.mn/
●新刊『必修常識 情報リテラシー』(NECクリエイティブ)発売中!
詳しくは、http://www.asahi-net.or.jp/~hh5y-szk/literacy.htm


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編集と発行:鈴木康之/SUZUKI Yasuyuki
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