「それじゃあ、僕は体力・運動力担当ね。もちろん仕事はパイロット部門だよね。」
嬉しそうに速水が言うと確認するように茜が頷いた。
「気力と勉強方面だな。仕事は当然2番機の整備だ。」
茜の発言に今度は師匠が俺を見ながら笑う。…さっきから俺の事話してるのに、
俺のけ者状態なんだけど？それってどーいうことだよ。
「当然俺は坊やの魅力アップの手伝いと異性との話し方の訓練担当だな。」
どう見たって俺をダシにして楽しんでるよな。くそぅ…あんな事
言わなきゃ良かったぜ。
「滝川、聞いてる？」
「…聞いてるよっ！」
速水の声にヤケクソ混じりに答える。ヤケクソにもなるよな。そりゃ、
石津と仲良く…あわよくば付き合う…なんてなりゃ、そりゃ嬉しいけどさ。
そんな簡単にいくわけないわけで。大体石津みたいなタイプって俺みたいに
五月蝿い奴って苦手そうじゃん。目の前のハードルは目茶苦茶高いわけで…。
あーあ、俺だってため息もつきたくなるっつーの。
「じゃ、早速訓練ね。午後の授業は途中から出席するとして…滝川、体力と
運動力どっちの訓練したい？」
何で速水までそんな嬉しそうなんだよ。ああ、もうわかったよ訓練すりゃいんだろ！
「とりあえず体力だな。」
「あ、そうだね。僕ももうちょっと体力つけたいしね。じゃ、行くよ滝川。」
やっぱり俺の意見なんて無視じゃねぇかよ。茜も茜だぜ。勝手に訓練メニューまで
決めんなよな。速水の奴も俺の腕ひっぱってやがるし。師匠は師匠で
手ぇ振ってるし。俺に自由はないのかよ…。
結局昼休みの途中から速水と体力の訓練をして、午後の授業は途中から出席。
芳野先生に何か誤解されそうだったけど(俺と速水がグレたって。んなワケないじゃん。)
とりあえず、夕方まで授業に出て…今は帰りのHRだ。
授業が終わってから本田先生が教室に来るまでの間って、結構ヒマなんだよな。ま、
せいぜい5分とか少ない時間だけどさ。んーでも、割とこの時間、俺好きなんだ。
だってさ、こういう夕暮れ時ってなんか寂しい感じするんだけどさ、周りには速水とか
師匠とか一杯人がいるじゃん。俺は一人じゃないなーなんて思っちゃうんだよ。
なんとなく、後ろを振り返ってみたら、石津が窓の方を見てて、何か寂しそうな
顔してたんだ。もしかして、石津も俺と一緒で夕暮れ時が寂しいって感じるのかな。
「あのさ、石津！」
「…滝川…くん？」
「寂しくないって、俺も居るし！」
あ…あれ？何で周りが静かになるんだ？俺…変なこと言った？速水と師匠が目、
見開いてるし、若宮さんだって、先輩だってぴたっとその場から動かないし。
石津だって俺を少し見てたかなと思ったら俯いちまうし…。
な、何？この変な雰囲気、何だよ。いくら俺が周りの雰囲気を理解できないって
いったって、これくらい分かるぞ。変ってことくらい分かる。
ん…なんか後ろから嫌な予感が…。
「滝川ー！教室で石津を口説くなんていい度胸してるじゃねーか！」
「へっ！？」
振り返ると視界に入ってきたのはマシンガンの銃口。げ！！俺、何かやった？
…っていうか、口説くって…ええーーーーー！？
「グランド50周してこい！！！」
「な、なんでだよ！」
「つべこべ言うと100周だ！」
「…。」
今、本田先生に何言っても無駄か。素直にグランド行ってくるしかないな。はぁ…。
教室を飛び出すとプレハブの階段を駆け降りる。先生の言葉だけが頭の中を回って
離れない。別に俺、変なこと言ったつもりないんだけどなー。大体口説くって
なんだよ。全然普通のこと言っただけじゃんか。
一人じゃないってことってやっぱり重要だ。
だって自分が一人じゃなくてたくさんの人と一緒に居るってことで。
寂しくないって思えることだろ？
それって重要なことだって思うんだけどなー。
他の奴は違うのか？
…そりゃあさ、おんなじ事を他の女子に言うかって言われたら、多分言わねぇけど。
俺にとって石津はやっぱり好きな子だから、寂しいって思って欲しくない。
新井木あたりだったら別にあんな事言わないね。…って言うか、アイツがそんな
風に思うなんて想像出来ないけどな。
そう思うとさ、やっぱり俺にとって石津っていうのはトクベツなんだ。
アイツに寂しいなんて思って欲しくないし、楽しいこともみんなアイツに
分けてやりたい。そりゃ、アイツから見たら俺なんて五月蝿いし、もしかしたら
好きなタイプじゃないかもしれない。
そんなこと関係ないんだ。アイツに笑って欲しいんだよな。
楽しいって思って素直に笑ってほしいんだ。
それって…俺の我が侭になるのかな…？
＜あとがき＞
早く続きを書こう、書こうと思っていたのに随分時間がかかってしまいました。
別のキャラの曲ではありますが、勝平さんの歌を聞いていたら今までよりも
進みが早くって…(笑)
滝川って気負ってしまうと好きってことを中々言葉に出来なさそうですが、
気付かず、大胆なことを言ってしまいそうな感じがします。
そういうのって女の子は結構グラッとくるんじゃないでしょうかね。
萌ちゃんはどうでしょうか…？
後2,3話で完結するつもりなのですが…まとまるかな…(汗)
