史上初の三冠への道

第4回Vリーグ、バーバラの個人表彰に関する記事で、日本人選手がもう少し踏んばってやれば、バーバラの三冠すら夢ではない、と書いた。つまり、スパイク賞(最高アタック決定率)、猛打賞(最多アタック決定本数)、サーブ賞(最高サーブ効果率)を同時に獲得することである。しかし、それを今シーズンまさか実現するとは思わなかった。もちろんこれは、かつての日本リーグとVリーグ、男女通じて初めての快挙である。

タイトル争いは、昨シーズンよりもさらに厳しさを増していた。昨シーズンはバーバラ・アル・ガビーの3人で争っていたところに、リューバ・ゴーシャ(ゴディナ)が加わったのだから当然のことであろう。特に、猛打賞(あるいは最多得点―この2つは以下の議論では特に断りのない限り一つのタイトルとして扱う)についてはそうである。昨シーズンは、決定本数2位の選手の決定数は726本。1試合あたりにすれば、35本に届かない。しかし、今シーズンは833本で2位。1試合あたりでは45本を超えている。最多得点をとるには、1試合20得点が必要という状況。昨シーズンのバーバラでさえ、出場1試合あたり20点には届かなかったのだ。

まずは、最も早く決着がついた猛打賞(ないし最多得点)。これも、序盤は東洋紡がもつれた試合が多かったために、アルに大きく引き離された。これを逆転したのは、今や伝説となった前期最終戦の東洋紡戦、そして後期最初の試合のヨーカドー戦、この二度にわたる死闘だった。この2試合でアタック決定数は実に157本、総得点74に達した。この後はバーバラが引き離す一方だった。バーバラはVリーグに出場したシーズン全てでこのタイトルを獲得したことになる。
このシーズン、バーバラのアタック決定数は940本。19試合出場で達成した昨シーズンの記録931本もわずかに上回る史上最高記録とした。そして、総得点411も間違いなく史上最高記録である。そして、アタック決定数については、この記録は不滅の記録となるであろう。というのは、来シーズン以降は25点ラリーポイント制に移行するからである。25点ラリーポイント制では、フルセットで最高にもつれた試合を考えても、チーム全体のアタック決定数が80本程度である。その中で、一人の選手のアタック決定50本は、理論的な限界に近い。それが18試合なり22試合続くことなど、決してあり得ない。

図1.最多得点
第5回Vリーグ女子・総得点

図2.猛打賞
第5回Vリーグ女子・アタック決定数

アタック決定率についても、今シーズンは過去に例を見ない外国人エースの戦場となった。序盤からバーバラ・リューバ・アルの3人がアタック決定率のトップ争いに絡み、それに昨シーズンこのタイトルを獲得した吉原を加えた争いとなった。第4週あたりからはもう一人の本命といえるペレスが急激に決定率を上げ、この争いに加わった。この中で、バーバラはほぼ常時2番手の位置を保っていた。第2週に意外な選手の割り込みはあったものの、それを除くと、第3週までは大筋でソコロワがトップを守り続けた。第4週以降は、ソコロワ、イエリッチ、吉原の3選手が入れ替わり立ち替わりトップに立つという展開が第7週前半まで続いた。
この状況が大きく変動したのは第7週後半(2/13-15)だった。日立とNECのフルセットの激闘の末、ソコロワが大きく決定率を落とし、この争いから脱落。オレンジもNECと長時間の試合を戦い、この試合で吉原も大きく決定率を落とした。バーバラは逆にこの間に日立佐和と東芝相手に決定率を大きく上げた。特に、東芝戦で打数105決定63(決定率60%)の荒稼ぎが大きかった。この週の終了時点で、バーバラが決定率トップに。第2週以降では初めて、2位との差が1ポイント以上に広がった。逆転可能な圏内に残ったのはガビー一人だった。

逆転可能な圏内と書いたけれども、2試合を残したこの時点で、決定率トップのバーバラと2位ガビーの差は約1.4ポイント(51.66% - 50.27%)。しかも、後半に入ってから、バーバラは決定率5割を切れる試合はほとんどない。バーバラが残り2試合、決定率5割でいったとすれば、逆転のためには決定率60%でもまず足りない。常識的に考えれば、逆転不可能な状況といってもいいほどである。
しかし最終週の1試合目、信じがたい事態が発生した。ガビーは日立相手に65%という驚異的決定率を記録した。試合自体はストレートで負けているのに、なぜだ!バーバラは決しておかしかったわけではない。この週の第1試合のユニチカ戦でも決定率53%と逃げ続けている。それでも、その差は0.8ポイントまで縮まった(51.72% - 50.92%)。
残り1試合で0.8ポイント―これは全くわからない差だった。というのは、ガビーのヨーカドーが最後に残した対戦相手が、ほかならぬ小田急だったからだ。バーバラが最終のオレンジ戦、やはり5割で逃げたとして、ガビーが30打数24決定、決定率80%でこの差はほぼ吹き飛ぶ。前半の小田急戦でのガビーは打数28決定数22、決定率は実に8割近い。この仮定は、あり得ないことでは決してなかった。正直なところ、ガビーと小田急という組み合わせでは、どんなとんでもない数字を出されても不思議ではないと思われた。
しかし、この試合が最後となる小田急が、意地を見せたのか。ガビーの決定率55%と、よく押さえ込んだ。これでバーバラの逃げ切りは確定した。

図3.スパイク賞
第5回Vリーグ女子・アタック決定率

サーブ効果率については、過去に類を見ない低レベルでの争いとなり、毎週上位選手がめまぐるしく入れ替わった。サーブ効果率の水準が昨年より下がった理由ははっきりしており、サーブのトスのやり直しが禁止されたことである。このタイトルはVリーグに入ってから日本人選手が獲得したことが一度もないけれども、一時は10位以内に外国人選手が一人も入らないという事態も発生した。
この混戦模様の中、バーバラは前期最終戦の東洋紡との死闘でサービスエース5発をたたき込み、その前の週のベスト10圏外から一気にトップに立った。さらに、翌週の小田急戦でもサービスエース5発。一時は2位との差は1.4ポイント近くまで開いた。

しかし、サーブ効果率については逆に、第7週の東芝戦が非常に悪かった。東芝はサーブレシーブ断然最下位のチームで、このタイトル争いの観点では大きく稼がなくてはいけない相手なのだが、その相手に何とサーブ効果率3.75%。第7週終了時点で2位との差は0.1ポイントを下回り、誰がタイトルをとるのか全くわからない状況に突入した。そもそも、サーブは全くの水物で、1ポイントくらいの差は1試合で十分に逆転できてしまう。

攻撃4部門の中でもサーブは最も水物であり、毎試合安定して高い効果率を残す選手はまずいない。どの選手にしても、全くゼロに近いような試合はかなりあって、荒稼ぎする試合がまれにあるという形になる。したがって、大当たりしたときにどれだけ数値を上げられるか、という勝負になる。さらに、サーブの部門では、年度ごとに見ても2年以上続けて高い数値を残すことは極めて難しい。この点でもバーバラは完全に飛び抜けた存在である。ブロックもかなり水物で、サーブほどではないにしてもゼロの試合がない選手はまずなく、大当たりしたときにどれだけ稼げるかという要素が大きい。アタック決定本数については、どの程度の水準で争われるかによって事情が異なってくる。第2回Vリーグまでの水準なら、荒稼ぎする試合と極めて少ない試合があってということになるけれども、今シーズンのような高水準の争いになれば積み重ねの要素が非常に強くなり、極端に決定本数の少ない試合があってはまずタイトルはとれなくなる。アタック決定率は1試合で値を大きく上げることはまず不可能なので、完全に積み重ねのものである。全ての試合に水準以上の決定率を残すことがタイトルをとるためには必要である。
最終週の第1試合、佐和の藩が、オレンジをフルセットの末下した試合で多数のサーブ効果を奪う。この試合が終わった時点で、バーバラと2位の藩との差はわずか0.02ポイント。4位の村田までがバーバラと0.3ポイント以内に入っていた。この時点では、正直なところ、私はバーバラのサーブ賞はほとんどあきらめていた。
通常シーズンの最終日。サーブ賞争いに絡むバーバラ、藩、村田の3人はそろってサーブ効果率を大きく落とした。この3人全員が落ちると、一日早く全試合を終了しているNECのゴディナにサーブ賞が転がり込む可能性もあった。しかし、最後は、そのゴディナを0.03ポイント上回るところで止まった。こちらは何とも低水準な争いになってしまったけれども、バーバラは史上初となるスパイク賞と猛打賞の二冠に、サーブ賞も加えて三冠とした。
バーバラは今シーズン、ジャンプサーブをあまり打っていない。バーバラの今シーズンのサーブのうち、おそらく3分の2くらいはフローターサーブだろう。フローターでこれだけエースがとれて相手を崩すことができる選手は、やはり非常に少ない。ジャンプサーブを打つと一般に、サーブ得点がとれる確率は高くなる代わり、コースに入られた場合はきちんと返される確率も大きく、またミスする確率も大きくなるため、これも両刃の剣である。そのジャンプサーブを打つ選手が非常に多いのがNECで、そのためNECはサーブ得点の確率が高い割に効果率は高くなく、サーブミスの割合も多くなっている。

図4.サーブ賞(1)
第5回Vリーグ女子・サーブ効果率(1)

図5.サーブ賞(2)
第5回Vリーグ女子・サーブ効果率(2)

(全体図では最終週の争いは見にくいので、最終週については拡大図を用意したけれども、最終結果はそれでも見にくい。1位のバーバラから4位の多治見までが0.03ポイント間隔で並んでいるのだから、どうしようもない。)

昨年の今頃はごちゃごちゃとしたことを書いたけれども、今シーズンの成績を見れば、バーバラが世界一だということは誰でもわかる。アタック決定数でも決定率でも一番、さらにサーブでも一番なのだから、文句のつけようがない。

後の表2を見ていただければ一目瞭然だが、今シーズンは打数の多いエースがアタック決定率でも上位を独占している。これは昨シーズンまでにはなかった事態である。その一方で、外国人と日本人のエースの力の差は、昨シーズンと比べても顕著に拡大し、今シーズンはついに決定率トップ10から日本人エースの名前が消えた。このような事態が起こった要因としては、リベロ制の導入が上げられる。しかし、別にリベロは日本のローカルルールではなく、今後の国際大会では全てリベロ制が採用されるわけである。すなわち、リベロ制によって、アタッカーの決定力のないチームはますます苦しくなることが明らかになったわけである。(日本人エースで最も決定率が高いのは、今シーズンも大懸で、42.14%で11位である。大懸をリベロに回せるくらい決定力のあるアタッカーが多く出てこなければ、日本は苦しいと思うけれども、それにはほど遠い。)
もっとも、これはアタッカーの力だけの問題ではなく、むしろ世界に通用するセッターが出ていないことが大きいと私は考えている。次の表1を見てほしい。
表1.正セッターにつながったときとそれ以外の場合の決定率の差
Setter(Team) from Setter from the Other Total
Atts. Fault Hits Succ. Succ. % Hits Succ. Succ. % Hits Succ. Succ. %
CACCIATORI Maurizia(ITA) 891 7 884 408 46.15 263 89 33.84 1147 497 43.33 +12.31
VENTURINI Fernanda(BRA) 745 7 738 385 52.17 226 92 40.71 964 477 49.48 +11.46
HE Qi(CHN) 743 5 738 348 47.15 484 188 38.84 1222 536 43.86 +8.31
VASSILEVSKAIA Elena(RUS) 709 10 699 342 48.93 265 114 43.02 964 456 47.30 +5.91
FLEDDERUS Riette(NED) 654 6 648 277 42.75 300 116 38.67 948 393 41.46 +4.08
ONUKI Minako(JPN) 870 2 868 316 36.41 254 114 44.88 1122 430 38.32 -8.48
表1は、世界選手権のベスト8のチームで正セッターを1人に固定していた6チームについて、正セッターからのボールに対するアタッカーの決定率と、正セッター以外からのボールに対する決定率を比較したものである。正セッター以外からのボールには、セッターにつながらなかった場合に加え、セッター自身のツーアタック、相手のレシーブミスをダイレクトで打ったもの、ブロックしたボールを打ったものなどを含む。
セッターのトスの成功(Excellent)とは、アタッカーがそのトスを決めた場合である。したがって、その成功の割合は、そのセッターがトスを上げたときのアタッカーの決定率と言い換えることもできる。これをチーム全体の打数、決定数から引けば、正セッター以外からのボールに対する決定率が出せる。そして、その両者を比較することで、チーム内での相対的な比較ではあるけれども、セッターの力を見ることができる。ただし、トスのFaultはアタッカーにつながらずに失敗になったものであるため、これは決定率の評価からは除外する。セッターがトスを上げた数が表中のAtts.で、それからFaultの数を引いたものが表中のHitsである。

この評価では、従来うまいと言われているフェルナンダ・ベンツリーニや中国の何はよい値を出しており、この評価の妥当性を認めることができる。しかし、この評価でも最も高い値を出したのは、この大会ベストセッターに選出されたイタリアのマウリツィア・カッチャトーリである。イタリアはカッチャトーリからのボールに対する決定率は46.2%、しかしカッチャトーリ以外からのボールではこれが33.8%まで落ちてしまう。ブラジルも同様で、フェルナンダ以外からのボールでは決定率は40%がやっとである。はっきり言えば上手なほうではないロシアのバシレフスカヤ、オランダのフレデルスでも、+4〜+6ポイントの値を出している。ところが日本は、正セッター大貫からのボールに対する決定率が36.4%。大貫以外からのボールを上げたときの決定率は45%に近く、正セッター以外からの決定率ではここに上げたどのチームよりも高い!出場時間が非常に短いため参考程度だが、磯辺がボールを上げたときの決定率は50%に近い。ロシアやオランダはセッター以外の選手もつなぎがうまくないのに対し日本はうまい選手が多い、あるいはセッター以外のボールの中に、相手のレシーブミスなどイージーなボールが多く含まれている可能性もある。この数字を額面通りに受け取れないにしても、日本だけが正セッターにつながったときにこれだけ決定率が悪いという事実は、いくら言い訳しても理解できるものではない。
高さとパワーでは世界にかなうわけはないのだから、日本バレーが世界を相手にするためには世界に通用するセッターの存在が生命線であることは、遙か昔からわかっていたはずである。とすれば、なぜこれまでセッターの養成に金も時間も惜しんできたのか不思議でならない。

デンソーエアリービーズというチームは、「バーバラ一人に頼り切り」という批判(ないし非難)を常に受けてきた。これはアルの東洋紡も同じである。しかしながら、一つの疑問は、打ちまくっているのが外国人選手だから非難の対象になるのではないか、ということである。かつての日本リーグ時代にも、近年のバーバラやアルほど極端ではないにしろ、1試合70本前後を打ちまくっていた日本人エースがいた。果たして、そのチームは、その選手一人に頼り切りといわれることがあっただろうか。
もう一つの疑問は、選手を育てるとはどのようなことか、ということである。日本人選手の戦力が充実しているチームにしても、高校や大学で実績を上げた選手を採用しているのであって、選手をゼロから育てているわけではない。さらに、バーバラについては、他のほとんどの外国人選手と全く異なる事情がある。バーバラはエアリービーズが「発掘した」選手である。国際大会で実績を上げてから日本にきた選手ではない。バーバラが来日した当初はまだ17歳、クロアチアも独立したばかりで、もちろん国際大会での実績など全くない。名馬はいつの世にもいるけれども、その名馬を見つけられる人はなかなかいない、と古人は言い残している。また、月刊バレーボール99年1月号の「松平康隆の異色対談」には、次のようなくだりがある。
世界のエースになれる選手を見つけて、育てなければだめだ。しかし、育てるのは2割、2割は育てられるけれども、あとの8割は自分で育つのだ。だから、そのような選手を見つけることで、8割方勝負は決まってしまうのだ。
この言葉を借りれば、バーバラを連れてきた時点で、デンソーはその8割の勝負に勝ったのである。

さて、このシーズンは、男子でもベルナルド・ジルソンがバーバラと同じ三冠を達成することは極めて濃厚と思われた。男子Vリーグのレギュラーシーズン終了前日の時点で、ジルソンと2位選手の差は、決定率で約1.5ポイント、決定本数で180本以上、サーブ効果率で約2.6ポイントと、いずれも1試合で逆転するのは絶対不可能な大差が付いていた。ところが、レギュラーシーズン最終戦で思いもかけない事態が起こった。2人の選手が規定打数ぎりぎりで滑り込み、ジルソンの決定率を上回った。これで男子での史上初の三冠(ないし、スパイク賞と猛打賞の同時獲得)はなくなってしまった。

注: この事態が起こった直接の原因は、ジルソンが最終戦をまるまる欠場したことにある。最終戦で規定打数ぎりぎりで滑り込んだ2選手は、いずれもサントリーの選手で、ジルソンが最終戦に出ていればそれほど打数が増えることはなく、したがって規定打数に届かなかったと考えられるからである。これは故障ではなく休養のために休ませたものと思われる。しかし、故障でもないのに試合を休ませることには疑問が残る。バーバラはチームの四強入りが決まった後の7試合も、交代も一切なしの全時間出場だった。男子のサントリーの場合、最終戦の結果に関わらず通算2位が確定、最終戦の相手の豊田合成も最終戦の結果に関わらず入替戦出場が確定していたという事情はある。しかし、ベストメンバーで戦えば(豊田合成には失礼ながら)力の差ははっきりしている対戦なのだから、セッターが意識してトスを上げる回数を減らしてやれば(女子のデンソーも東洋紡も小田急戦ではそうしていたように)、軽い調整程度ですんだはずである。
ここで問題になるのが「規定打数」の定め方である。日本のリーグにおけるアタックの規定打数は、男子・女子とも出場セット数×6となっているようである。(当然、出場セット数の規定は別にある。)国際大会のアタックの集計では、規定打数はチーム総打数の15%となっている。ブラジル・スーパーリーガの規定打数は、国際大会よりさらに厳しく、チーム総打数の16〜17%となっている。(なお、イタリア・セリエA1については、決定率と打数をあわせた評価を行っているので、規定打数は極めて少ない。プロリーグレビュー・注釈編参照。)
日本のVリーグ(女子)では、1セットあたりのチームのアタック打数は、だいたいどのシーズンでも平均50本程度である。したがって、日本のリーグの規定打数は、チーム総打数の12%程度となり、国際大会に比べかなり少ないと言える。これが、ほとんどサイドアウトに使うセンタープレイヤーがアタック決定率の上位に多く入る一つの要因となっている。
なお、アタック以外の部門の規定打数(受数)は、サーブについては出場セット数×4、サーブレシーブについては出場セット数×6となっているようである。サーブの規定打数はブラジル・スーパーリーガでチーム総打数の12%(国際大会では近年セットあたりサーブ得点で集計するようになっているため規定打数なし)、チームのサーブ打数はVリーグ女子でセットあたり30本程度なので、女子についてはやや多めに設定されていることになる。これは妥当な設定であると思われる。
サーブレシーブの規定受数は、国際大会ではチーム総受数の25%である(ブラジル・スーパーリーガでも同じ)。Vリーグ女子ではチームの総受数はセットあたり27〜28本程度なので、国際大会の基準よりやや少なく設定されていることになるけれども、これも妥当。国際大会の基準でも、規定受数に達する選手が非常に少ない例はしばしばある。(例えば、98年世界選手権女子で、決勝ラウンドに進出した8チームで規定受数を満たした選手は7人しかいない。)Vリーグ当初は規定受数を国際大会基準よりも多い出場セット数×8と設定したため、規定受数に達する選手が極端に少なく、第1回では何と1人だけ、第2回でも3人しか出なかった。これでは表彰の意味をなさないので、第3回以降は出場セット数×6と緩和された。

これまでのVリーグでも、国際大会の基準に満たない少ない打数の選手がアタック決定率の上位を占めている例は、少なくない。下の表2は過去5シーズンのアタック決定率の上位10選手を示したものだが、かっこのついているのは、国際大会と同じ規定打数とした場合規定打数に満たない選手である。*印のついているのは、規定打数をスーパーリーガと同じ基準とした場合に規定打数不足になる選手である。

表2.過去5シーズンのアタック決定率上位選手

第5回Vリーグ
                    打数  決定数  決定率
  1 イエリッチ      1810     940   51.93
  2 ペレス          1187     606   51.05
 *3 吉原             566     284   50.18
  4 ソコロワ        1119     546   48.79
  5 アルタモノワ    1713     833   48.63
  6 ゴディナ        1264     610   48.26
 *7 小林             490     231   47.14
  8 許               654     300   45.87
  9 藩               848     367   43.28
(10 大森             450     214   43.11)

第4回Vリーグ
                    打数  決定数  決定率
 *1 吉原             574     290   50.52
  2 ペレス          1370     664   48.47
  3 イエリッチ      1988     931   46.83
 (4 森山             484     226   46.69)
 *5 小野             630     292   46.35
 (6 小泉             603     270   44.78)
 (7 小林             548     240   43.80)
  8 大懸             920     399   43.37
 (9 満永             467     202   43.25)
 10 アルタモノワ    1712     726   42.41

第3回Vリーグ
                    打数  決定数  決定率
  1 ティーシェンコ   756     417   55.32
  2 アルタモノワ    1265     636   50.28
 (3 蘇               490     240   48.98)
 (4 チェブキナ       474     231   48.73)
  5 イエリッチ      1632     779   47.73
 *6 多治見           600     284   47.33
  7 バトフチナ       991     466   47.02
 (8 ワイショフ       542     251   46.31)
  9 山内             987     417   42.25
(10 小泉             491     206   41.96)

第2回Vリーグ
                    打数  決定数  決定率
  1 ティーシェンコ   669     381   56.95
  2 カルバハル      1084     575   53.04
  3 大林             863     445   51.56
  4 アルタモノワ     904     456   50.44
 (5 鳥居             544     261   47.98)
  6 バトフチナ      1052     500   47.53
 (7 高山             536     250   46.64)
 (8 チェブキナ       575     268   46.61)
  9 サーベドラ      1140     518   45.44
 10 佐伯             927     418   45.09

第1回Vリーグ
                    打数  決定数  決定率
 *1 ワイショフ       526     291   55.32
 (2 高山             512     248   48.44)
  3 許              1027     496   48.30
 (4 津雲             539     253   46.94)
 (5 甲斐             472     216   45.76)
  6 メンソーワ      1040     469   45.10
  7 アルバレス       799     360   45.06
  8 佐伯            1053     462   43.87
 (9 林               410     179   43.66)
 10 イエリッチ      1450     633   43.66
なお、ここまでの規定打数(受数)の議論は、当然ながら、これまで行われてきた15点サイドアウト制を前提としている。これが25点ラリーポイント制に変更された場合、実際問題としては1シーズン行ってみて集計が出てみないと判断できないけれども、1セットあたりのサーブ打数(すなわち1セットあたりのプレーの数)を考えると、1セットあたりの基準は4分の3倍程度にすべきと考えられる。

今回の男子のような事態が起きると、タイトル争いとしては興ざめなものになってしまうだろう。アタック決定率の評価がエースアタッカーにとってかなり不利になっているということと考えあわせて、アタックの規定打数を国際大会並みに引き上げることを提案したい。

しかし、この少ない規定打数という条件の下で達成されたことが、バーバラのスパイク賞・猛打賞の同時獲得をさらに価値が高いものとしている。規定打数を国際大会と同じチーム総打数の15%とすれば、かつての日本リーグ時代のメジャーズも大林もこれをすでに達成していたことになるからだ。

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