Backnumber (98.7 - 98.12)

ニュースとはいっても、かなり私見が入っています。バレーボール日記をかねている側面もあります。

完全ラリーポイント制に移行(98/10/21 - 11/28)
外国人締め出しへ(98/8/1 - 10/21)
八百長疑惑(98/7/17 - 8/4)
入れ替え戦の方式変更(98/7/14)
世界選手権組分け決定(98/4/21 - 23)

98年1〜6月のニュース


完全ラリーポイント制に移行(98/10/21 - 11/28)

FIVB(国際バレーボール連盟)は、来年の男子の国際大会、第11回ワールドリーグで、サーブ権に関係なく得点が入るラリーポイント制を全てのセットで行う、と発表した。第4セットまでは25点先取、フルセットに突入した場合は15点先取で争う。さらに、2000年のシドニー五輪にもこのルールを採用する方針を固めた。他の国際大会・各国のリーグも遅かれ早かれこれに追随することは確実で、完全ラリーポイント制への移行は決定的となった。さらに、守備専門選手のリベロの制度も99年以降の全ての試合に導入されることが決まった。
なお、今年度の第5回Vリーグは従来のサイドアウト制で行うことが決定された。審判への徹底あるいは公式記録の対応が間に合わないためという。

圧倒的反対が発生した昨年の25分ルール問題のときに比べ、今年に入ってからの全面的ラリーポイント制導入の動きについては、今一つ議論が盛り上がらないままに移行が決まってしまったという印象である。

全面的ラリーポイント制に移行した最大の理由は、繰り返し述べているように、試合時間の長短の差を少なくすることである。だいたい、多くの球技の試合は、延長戦なしで途中の休憩なども入れて2時間におさまる。バレーボールにおいて、最終セットを延長戦と考えれば、1セット25分という制限が導き出される。現在ラリーポイント制で行われている最終セットの所要時間から、1セット25点のラリーポイント制とすれば、大筋で25分におさまることが期待できる。
このあたりは、昨年のグラチャンで大問題となった25分ルール撤回の際の記事でも議論したことだが、全くその通りのルールを導入するとは思わなかった。また、この大会で行われるラリーポイント制でも、昨シーズンのオールスターで試されたセットゲーム制でも、最終セットは1セット15点のラリーポイント制となっており、最終セットは延長戦と位置づけられていることもうかがえる。

このルール変更は、要するにテレビで放送しやすくするためのものである。しかし、観戦する側としても、試合時間の長短の差が少なくなることはメリットである。これは今度の世界選手権あるいはVリーグの観戦ツアーの計画を立てる際に強く感じたことだが、試合終了時間の見当がつかないと、移動の計画を立てるのが非常にやりにくくなる。この新しいルールなら、試合開始からだいたい2時間、多く見積もっても2時間半で間違いなく試合が終了することが期待できる。

ラリーポイント制では、最後の1点が簡単に決まってしまう、点差が開くと逆転するのがほぼ不可能になるなどの問題がある。しかし、一つのミスがそのまま失点につながるため、点差がついていない状態では、一つのミスがセット(ゲーム)、ひいては勝敗に直結することになり、サイドアウト制に比べ緊張感は高まる。
サイドアウト制は、バレーボールが誕生した当初からのルールである。もともとは中高年のレクリエーションとして、ラリーを楽しみながら得点できるようにと採用されたものだったという。また、ローテーションシステムは、全員に攻守のチャンスを平等に与えるようにと追加されたものである。しかし、現代の競技スポーツは、明快かつパワー・スピード感のあるものへという方向にどんどん移行している。そうでなければ観衆の支持が得られない。サイドアウト制は、もはやそれにそぐわなくなっているのかもしれない。また、テニス、卓球、バドミントンなど、バレーボール以外のネットゲームは、全てラリーポイント制である。リベロ制の全面採用とあわせて、バレーボールもまた、競技性および選手の専門性を高める方向に向かうことになる。

日本にとっては、ミスを恐れて外国選手が強烈なジャンプサーブを打てなくなる点は有利に働くと思われる。しかしながら、サーブで冒険ができなくなるという意味では、それは日本にとっても同じことである。さらに、サーブを強く打てなくなれば、当然相手はアタックを打ちやすくなり、それを守るためにはブロックの強化が必要になる。そうなれば、高さのない日本にとってはむしろ不利になると考えられる。

男子世界選手権準決勝ラウンド、日本対キューバ戦。1点があまりにも遠かった第4セット。日本にセットポイント17回、キューバにマッチポイント11回の死闘。
だからこそバレーボールは面白い。

それに、記録屋として一言付け加えると、試合ログを読む分にはやはりサイドアウト制のほうが面白い。というか、ラリーポイント制にされると情報量が減ってしまう。

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外国人締め出しへ(98/8/1 - 10/21)

八百長疑惑に関連する最終的な処分が決定されたのと同じ7月30日の理事会で、日本バレーボール協会は、第6回(1999年度)以降のVリーグから女子の外国人選手を認めないことを決定した。なお、男子では登録・出場とも1人だけ認められる。

このページにも記していたけれども、7月11日の常務理事会では、外国人選手は登録・出場とも1人という方針が固められていた。これを3週間もたたないうちに翻したことにも唖然としてしまう。

宗内徳行・女子強化委員長は、「ラリーが続かなければ、試合は盛り上がらない。女子は男子と比べて外国人の人気も低いようなので、改革に踏み切ることになった」(朝日新聞)と説明している。また、別の新聞報道によれば、今回の決定は、コンビバレーのよさを見直す、大型のエースが育ってきていることなどが理由という。

しかし、委員会の説明はあくまでも「建前」に過ぎず、外国人禁止に至った理由は突き詰めれば金とバレー人気の低下が原因である、という見方がある。不況の中で、協会にも企業にもお金がない。チーム関係者からもこのような見方が出てきており、この見方自体には反論できない。しかし、このような時期だからこそ、ファンとして言いたい。
やはり、それではだめなのではないか。
それでは結局のところこれまでの悪循環の繰り返しだからである。

バレーボールの人気低下を招いた最大の要因は、日本バレーの弱体化である。高校時代などに将来を期待された大型選手も、けがなどのため芽が出ず引退に追い込まれるという事態も続発しており、実際、日本人選手のスター不足は深刻である。その状況で外国人選手を締め出せば、バレー人気の低下にさらに拍車がかかることは目に見えている。私のような外国人選手目当てのファンが離れることにとどまらないだろう。10年来20年来のファンで本当にバレーボールを見ること自体が三度の飯より好きという人、あるいは特定の日本人選手のファン、選手の関係者などは別として、一般の視聴者の多くは外国人の抜けたVリーグにあまり魅力を感じないことは間違いないからである。
さらに、「日本バレーはその程度のものなのだな」という印象を一般の視聴者にもマスメディアにも与えることにもなる。そうなれば、バレーボールはだめなスポーツという決定的な烙印を押され、バレーボールが「見捨てられる」ことになりかねない。そうなれば今以上に休廃部が相次ぎ、バレーボールを続けていく環境そのものがなくなってしまう可能性がある。日本人選手の強化という観点からは外国人選手には賛否両論あるだろうが、外国人選手締め出しに伴う人気低下は、強化にとっても決してプラスにはならないだろう。
日本人のスター選手(特に若いスター選手)が不足する中で、外国人選手はバレーボール人気をつなぎ止めるのに極めて重要な役割を果たしている。今回の決定にはその事実認識が完全に欠けている。

一方、強化の観点では、外国人選手を使えることにより、外国人選手に頼りきりになってしまい日本人選手が育たない、ということは常に言われていることである。個人集計を見ても、特に外国人選手が二人使えた第3回までは、上位のほとんどが外国人選手で占められるという事態が続発した。出場一人となった昨シーズンでも、攻撃部門別タイトルのほとんどは外国人選手がとっている。スパイク賞(最高決定率)は男女とも日本人選手が取っているけれども、他のページで何度も繰り返しているように、打数で3倍も4倍も違う選手の決定率を同格に比較することは全くのナンセンスである。

日本リーグ時代は完全な鎖国だったと思いがちだが、登録選手あるいは表彰選手リストを見ると、外国人選手の名前も決して少なくない。古記録を見ると、その決定力の差は現在以上に大きなものがあったことがわかる。しかし、外国人エースのアタック決定本数の割合は、多い年でも3割強に過ぎない(下表1参照)。当時は外国人選手の使い方にも節度があった。しかし、この「3割ルール」とでも呼ぶべき自主規制はVリーグに入るとあっけなく破られる。Vリーグ第1回でバーバラはチームのアタックの約4割を決めた。一度規制が破られると全く歯止めがかからなくなった。この割合は第3回で半分、昨シーズンには6割を超えた。そうなるとまねをするチームが出てくるのも当然のことである。バーバラ以外にも、アタックを半分打った上サーブの3分の1を受けさせるなど、異常事態が続発した。このような状況になれば、鎖国論が出てくるのも必然である。

表1.古今スーパーエースへの依存度の比較
選手
(シーズン)
決定数
依存度(%)
選手
決定率(%)
チーム
決定率(%)
他選手
決定率(%)
決定率差 寄与度
セシリア・タイト
(第17回日本リーグ)
31.8
(508/1598)
54.22
(508/937)
43.76
(1598/3652)
40.14
(1090/2715)
+14.08 +3.62
ローズ・メジャーズ
(第18回日本リーグ)
30.9
(561/1814)
51.99
(561/1079)
39.93
(1814/4543)
36.17
(1253/3464)
+15.82 +3.76
ガブリエラ・ペレス
(第4回Vリーグ)
39.7
(664/1671)
48.47
(664/1370)
40.55
(1671/4121)
36.60
(1007/2751)
+11.87 +3.95
エフゲーニャ・アルタモノワ
(第4回Vリーグ)
50.5
(726/1439)
42.41
(726/1712)
39.42
(1439/3650)
36.79
(713/1938)
+5.62 +2.63
バーバラ・イエリッチ*
(第4回Vリーグ)
63.9
(931/1456)
46.83
(931/1988)
41.77
(1456/3486)
35.05
(525/1498)
+11.78 +6.72
決定数依存度(%) = その選手の成功数 / チーム全体の成功数×100
決定率差 = その選手の決定率(%) - その選手を除くチーム全体の平均決定率(%)
寄与度 = チームの平均成功率(%) - その選手を除くチーム全体の平均成功率(%)
* 欠場2試合は除外して計算

しかし、日本人選手が育たないのは、

などの事情の必然的帰結であると考える。この状況を改善するためには、選手の育成・発掘体制を改革し、そして指導者の養成(外国に修行に出させるなどして)が必要である。つまり、まずは協会、そして指導者から変わるべきということである。それを伴わないで「外国人選手は出ていけ」では全く筋が通らないし、日本人選手のレベルも今以上に低下するだろう。
逆に、一貫した考え方のもとにきちんとした強化が行われ、実業団チームに入るまでに基礎ができあがっており、そしてそのチームの指導者にも手腕があれば、極端な話以前の外国人2人枠でも頼り切りということにはならないと考える。それだけでなく、チームの中に世界でもトップの選手がいることによって学ぶものも大きいはずである。ゼッターランド・ヨーコ選手が指摘しているように、ブラジルは、外国人選手枠を広げながら強化に成功し、アトランタ五輪ではメダルも獲得している。

そもそも、協会の目指すところは、アイドルの周りに黒山のようにミーハーのファンが集まるようなことなのだろうか。実際にそう考えているとしか思われないふしもある。協会の開く「ファンとのふれあい」的なイベントを見ても、選手はどこかアイドル扱いである。それだけではなく、日本で開かれる世界大会(オリンピック最終予選にも)に本物のアイドルを呼ぶのは恒例と化している。さらに今年は春高バレーにもV6を呼び、女子中高生を動員した挙げ句の果てに、まともなファンも関係者もあまりにもバカにした大失態*が発生した。
アルタモノワにしてもイエリッチにしてもそのような意味での「人気」はない。ミーハーのファンはまずつかないだろう。「プレーがすばらしい」以外の理由でファンになることは極めて考えにくいからである。
* 独断と偏見の女子バレーのぺえじ、「独断と偏見の女子バレー日記」、1998/3/26「日本バレー協会の大失態」

しかし、「本物のファン」、すなわちバレーボールという競技そのもののファンを育てるためには、レベルの高いプレーを見てもらうのが遠回りのように見えて最も効果的であり、またそれしか方法はないはずである。そのような固定ファンが増えれば、「国際大会で成績が悪いと人気が落ちる→目先の勝利至上で長期的な強化に取り組めない」という悪循環からも脱却できよう。バレーボールという競技そのもののファンなら、日本が弱かろうと選手が入れ替わろうと、簡単には離れないはずだからである。
そのためには世界最高の選手がそろっていることはすばらしいことであり最も必要なことである。彼女らのプレーこそが世界のバレーボールの「現実」である。そして、トップページの序文にも書いたとおり、そのプレーは21世紀のバレーボールを体現するものであり、世界のバレーは必ずや彼女らの後を追うことになるだろう。その選手に「出ていけ」とは!
私がネット上で知っている範囲でも、モントリオール五輪前後の山田重雄監督による三冠の時代、あるいは日本女子の五輪最後のメダルであるロス五輪の頃からのファンがほとんど(さすがに東洋の魔女の時代を知っておられる方は多くはないが)で、特に90年代の新規ファンは非常に少ない。新規ファンの減少は現在の出生率の低下以上に急激かつ深刻と思われる。しかし協会は、この状況に危機意識を持つどころか、本当のファンを育てることとはまるで逆の方向にばかり進んでいる。

外国人選手を禁止すれば、確かに金は浮くだろう。しかし、バレーボールの人気がさらに低下することは確実である。また、選手発掘・育成および指導者養成などの体制改革を伴わない鎖国をすれば、「井の中の蛙」となるだけである。これについては世界選手権・全日本雑感に詳しく記すけれども、欧州諸国の選手がどんどん外国に渡り、世界のトップ選手の集まるリーグでもまれているのに、日本だけが鎖国などしていていいのか。これで、人気回復のためには日本代表が強くなるしかないと言っても、それはますます夢物語になってしまう。それではこれまでの悪循環の繰り返しである。

また、協会の説明には、重大な事実誤認・時代錯誤があり、建前にしても問題がありすぎると思われる。

試合が盛り上がるかどうかは試合内容・レベルの問題であり、ラリーが続くかどうかは本質的な問題ではない。例えば、ロシアとキューバの打ち合いを、ラリーが続かないからつまらないなどという人はいないだろう。逆に、強打できる選手がいないからちっとも決まらないというのでは、退屈に感じるだろう。
さらに、今時「ラリーが続かなければ」などとは、女子バレーも高さとパワーの時代にどんどん移行しているという事実にも逆行している。もちろん、日本が戦っていくには粘り強く拾うことが必要である。しかし、それと同時に、高さとパワーでも少しでも差を縮める努力をしなければ、世界との差はますます開く一方だろう。実際、中国にしても韓国にしても、最近のメンバーを見ると、高さでも欧米に負けないチームを作っていると痛感させられる。

これまで述べてきたとおり、外国人選手は人気がないということには重大な事実誤認があると考えられるが、人気がないから出ていけとはさらに暴論である。選手を金儲けの道具としか考えていないからである。第7回以降については後に決定するとしており、鎖国は長続きはしないと私は考えているが、「人気がないから出ていけ」と言われた選手が簡単に戻ってくるはずがあろうか。日本になんて二度と行くものですか、と思われるに決まっている。Vリーグ固定化問題でも露呈されたことだが、相手の立場に立って考える能力の欠如は信じがたいものがある。

もう一つ理解に苦しむのは、女子Vリーグで外国人選手を禁止するに至った事情は男子のVリーグには当てはまらないのか、という点である。金がない、人気がないから外国人選手をやめるというのであれば、女子・男子ともそうするのが自然である。また、デンソー・東洋紡があまりにも極端なため女子のほうが問題視されているが、リーグ全体を見回してみると、得点源を大物外国人エースに頼る傾向はむしろ男子のほうが顕著である。しかも、第4回Vリーグで、女子では必ずしも外国人エースに頼らない(あるいは外国人選手がアタッカーでない)チームが上位を占めたのに対し、男子Vリーグの上位はいずれも「大物外国人エース一人」という体制のチームばかりである。

また、鎖国の直前のシーズンに大物外国人選手を獲得する動きが起こっているのはどういうことだろうか。もし優勝を狙ってということであれば、外国人選手に多くの費用をかけてでもVリーグで優勝することはそれだけの価値(宣伝効果など)があると考えていることになり、「金がない、人気もないから鎖国」ということとは矛盾する。しかも、NECにしても日立にしても、日本人選手だけでまともなチームが編成できるところであり、全日本にも多くの代表選手を出している。1シーズンだけ大物外国人選手を入れれば、チームのバランスを崩し、鎖国後にかえって悪影響を及ぼすおそれもある。特に日立は、これまで純血主義を守ってきたチームであり、その危険は大きいと思われる。NECにしても、これまで4シーズンにわたりチューリナを使い続けたのは、気の利いたうまいことのできる選手、守りのしっかりできる選手をとるという方向性があったからである。今シーズンゴディナをとったことは、鎖国の直前にして、攻撃力最重視に方針を大転換したことを意味する。(ロシアは今シーズンのワールドグランプリで、守りも決してザルではないというところを見せている。しかし、守りは主にモロゾワ・ソコロワ・アルタモノワの3人で行っており、ゴディナは守備は完全に免除である。)

いずれにせよ、選手の育成・発掘体制および指導者の養成体制の改革を伴わない鎖国復活は、決して日本バレーにとってプラスにはならないだろう。興行・強化の両面にわたる失敗を隠蔽し、現状維持・保身を計るものとしか思えない。

そして何より、今回の決定は、よりレベルの高いプレーを見たいというファンの気持ちを無視しているという点でまさしく暴挙である。また、このような理不尽な理由(それが建前であれ何であれ)で筋の通らない決定をすれば、日本バレーは国際的な信用を失うことにもなるだろう。
何の力にもならないだろうが、このページとしても、できる限りの抗議を続けていくつもりである。

一方、世界レベルで見た場合、現在世界一といわれるエースアタッカー3人、世界トップクラスのセンタープレイヤー2人が同時に放出されることになり、水面下で激しい獲得競争が起こることが予想される。その行方には注目したいところである。

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八百長疑惑(98/7/17 - 8/4)

八百長疑惑と呼ばれるものの内容は、実は二つある。

  1. 93年のワールドグランプリ、負けると決勝リーグ進出の可能性が消える1次リーグ最終戦のドイツ戦の前日、当時の米田一典・全日本監督と達川実コーチが八百長試合を画策、ドイツチームのケーラー監督と食事をすることになっていた荒木田裕子アナリスト(戦術分析員)を通して、翌日の試合に勝たせてくれるように頼み、謝礼として100万円を用意した。
  2. 92年のバルセロナ五輪、およびその他の国際大会で、判定を有利にしてもらう目的で国際審判員に数万円相当の宝石や時計などを渡した。

93年ワールドグランプリの疑惑の核心は、100万円を渡そうと持ち歩いていたという点にある。この点については、当事者はいずれも否定している。
対戦相手の監督と会ったときに「明日の試合に勝たせてよ」などと言うのは、言ってみれば挨拶のようなものだろう。たとえ翌日の試合に決勝リーグ進出がかかっていても、それを本気にすることはないと思われる。しかし、単なる挨拶程度だったのなら、そのような話が5年後になって突然出てくることは非常に不自然である。そう思わせるだけのプレッシャーが荒木田アナリストにかかっていた可能性がある。問題の試合の前年のバルセロナ五輪で、日本女子バレーは五輪史上最低の5位に終わっている。このワールドグランプリで結果を残せなければ全員が更迭されるという危機感は実際にあったと、当事者も認めている。
また、この件は米田監督に対する攻撃と見ることもでき、特に、米田監督と選手起用をめぐり対立のあった荒木田サイドからのリークであるという説はかなり流布している。

国際審判員に土産を渡していた件については、当事者も認めている。さらに、これはバルセロナ五輪だけのことではなく、代々の全日本監督の流れでやっていたことだという。

最終的には、7月30日の理事会で、八百長画策などの裏工作はいっさいなかったとして、厳重注意および当分の間の協会役員活動の停止という処分が決定した。達川実コーチは現在女子強化委員を務めており、この役職から外れることになるが、それ以外は実質おとがめなしということである。
サンケイ以外の各社の報道は、八百長を画策した事実はなかった、という雰囲気だった。ところが、この理事会が終わった後の記者会見で、豊田専務理事が返答につまり涙を流す一幕があった。また、サンケイ以外でも、ドイツから謝礼を要求されても現金はあるという意味の会話がかわされた、という報道もある。疑惑はなお晴れていない。

この件は当事者3人の問題ではなく、日本バレー界に長年にわたってたまった膿がたまたま表に出ただけ、ととらえる必要がある。それだけに徹底的な改革が求められる。
協会は倫理規定を含むバレーボール綱領を作り、改革を進めるとしている。しかし、100万円を用意した事実がないからといって実質的な処分なしで終わるのでは、協会の姿勢も非常に疑問視される。ドイツ監督と直接話をした荒木田裕子アナリストが、海外旅行を理由に事情聴取を免除されたのも解せない。
米田元監督は、試合の前日に、「明日の試合に勝たせてほしい」とドイツ監督に言うように荒木田アナリストに言ったこと自体は認めている。これは冗談であっても言ってよいことではない。国際審判員に土産を渡していたことについても、豊田専務理事も「誰もがやっていること」と問題視していないような発言をした。しかし、監督が審判に直接渡したとなれば、試合を有利にしてもらう意図がある、とみられても仕方がない、というか、そう受け取られるのが当然である。協会はいまだにやっていいことと悪いことの区別がつかないのだろうか。
明確な対応を示さなければ、この件を騒ぎ立てるサンケイグループおよび雑誌などの格好の餌食である。一罰百戒の意図を含めて厳重な処分を行うと同時に、八百長はなかったと主張するのなら、サンケイと徹底的に喧嘩する(名誉毀損で訴えるなど)ことも必要だろう。

産経新聞およびサンケイスポーツによってこの疑惑が初めて表沙汰になったとき、私が最も恐れたのは、この件が真実であるか否かにかかわらず、この騒ぎによってバレーボールのイメージが決定的に悪くなり、その結果として日本バレー界全体に決定的かつ回復不可能な打撃が与えられることだった。今のところそのような事態には至っていないけれども、協会はそうなる日まではっきりとした態度をとることができないのだろうか。

このような事態が表沙汰になり、しかも協会は日和見的対応を続け、これでは選手たちがあまりにも可哀想である。

最近JVAはしばしば自民党にたとえられる。古い利害を守りいつまでも改革に取りかかれない、風通しが悪く組織が腐敗している、そして社会では明らかに非常識なことが協会内部では常識としてまかり通っている、このような体質が自民党と類似していると言われる。私個人としては、記者会見で涙を流したと知ったとき山一証券の自主廃業が思い出された。野沢社長が「社員は悪くありませんから」と言って涙を流したところである。山一は業績不振に加えて不祥事が続き、結局大蔵省から自主廃業を迫られた。もしこの件に関し断固とした態度がとれないのなら、外国人締め出しの件と加え、協会はおそらく決定的にファンの信頼を失うことになるだろう。自主廃業ではないが、この件の関係者および現在の幹部が全員引責辞任し、ゼロから組織を作り直すしか信頼を回復する方法はないだろう。そのときに最後通告を行うのはファンの役目である。
腐敗を防止し透明な組織にするためには、外部の人間を入れることが必要である。マネジメントに長けた人材も必要である。バレーボールが好きな財界人を入れることも考えられる。

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入れ替え戦の方式変更(98/7/14)

11日に開かれた日本バレーボール協会常務理事会で、第5回Vリーグでは最下位チームの自動降格をなくし、Vリーグの下位2チーム、実業団リーグの上位2チームで入れ替え戦を行うことを決定した。また、第6回Vリーグでは、外国人選手の制限を、現行の登録2人・出場1人から登録・出場とも1人に変更する方針が固められた。

私自身は入れ替え戦を行うことには反対しない。しかし、Vリーグを10チームに拡張する構想を出した時点では、それと同時にVリーグの構成チームを固定することになっていた。その方針を翻したことになる。

Vリーグ固定化を決めた理由は、若手の育成のためということが一つにあったらしい。しかし、それが若手の育成ということに関して本質的な問題であるとは思われない。その一方で、若手の発掘・育成について本質的な改革の議論は聞こえてこない*。降格がないということによって緊張感のない試合が続けば、選手の育成という面からもかえってマイナスである。そして、実際にそのようなチームがあったと多くのファンが感じている。
* 一部のファンの間では、サテライトの試合の実施を望む声が強い。(ベンチ入りできない選手を別のチームとして編成し実戦を経験させる。プロ野球でいえば二軍のようなもの。)しかし、現状ではほとんどのチームは単独ではサテライトチームを編成できるほど選手はいない。したがって、混成チームを作ることになり、そのためには、同業他社の選手が同じチームでプレーする場合どうなるか、などの問題をクリアする必要がある。(特に、女子の場合、来期のVリーグ10チームのうち、電機が4チーム(3社)、紡績2チーム、小売2チームと、特定業種に集中している。)
現在でもサマーリーグあるいは地域別大会など、若手発掘の機会はあるはずである。とにかく、現在ある機会を最大限に活用することがまず必要と考える。

また、固定化によって企業の協力が得やすくなる(お金が集めやすくなる)という打算もあったようである。しかし、実際には、協力が得られるどころか、Vへの昇格が困難になったという理由で実業団リーグのチームが次々と休廃部するという結果を招いた。固定化した場合、昇格の道を閉ざされる実業団リーグおよび地域リーグのチームがどのような立場に立たされることになるのか。その程度の想像力さえ協会にはなかったのだろうか。

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世界選手権組分け決定(98/4/21 - 23)

4月20日に世界選手権の組分け抽選が行われた。その結果は以下の通りである。

男子

第1シード 第2シード 第3位枠 第4位枠
A組 日本 韓国 スペイン エジプト
B組 イタリア アメリカ カナダ タイ
C組 オランダ 中国 チェコ ウクライナ
D組 キューバ アルゼンチン ポーランド イラン
E組 ブラジル ブルガリア ギリシア アルジェリア
F組 ロシア ユーゴスラビア オーストラリア トルコ

女子

第1シード 第2シード 第3位枠 第4位枠
A組 日本 オランダ ペルー ケニア
B組 キューバ アメリカ イタリア ブルガリア
C組 ロシア ブラジル ドイツ ドミニカ
D組 中国 韓国 クロアチア タイ

この組分けを見て、最初に思ったこと。
「本当にちゃんと抽選したんかいな?」
そう言いたくなるくらい、日本に有利なのだが、どうやら第1シード・第2シードについては抽選ではなく自動的に決めたらしいのである。

例えば、男子の組分けを考える。

  1. 日本抜きでのワールドランキングを作り、日本は0位とする
  2. 0位の日本をA組、1位イタリアをB組、・・・、5位ロシアをF組に振り分ける。
  3. その後、どの組も「第1シードと第2シードの順位を足すと11になるように」第2シードの国を振り分ける。
    つまり、0位の日本と11位の韓国、1位イタリアと10位アメリカ、・・・、5位ロシアと6位ユーゴが同じ組になる。
女子も要領は同じである。女子の場合、参加チームが16なので4組、したがって第1シードと第2シードの順位の合計は7である。

つまり、日本は、最も強い(ランキングの高い)相手でも第2シードの最もランクの低い国としか当たらないことが保証されていたことになる。

女子については、3位枠がペルー、4位枠がケニアと、特に組み合わせに恵まれたという印象が強い。同じ3位枠でも、クロアチア・イタリアあたりが相手だとむしろ分が悪い*し、4位枠でもブルガリア・ドミニカだと取りこぼしがあるかもしれない。しかも、オランダは大エースのウェールシンク・ブリンクマンが登録されていない。予選リーグで3勝すればベスト8はその時点でほぼ確定である。予選リーグで一つ取りこぼしても、C組から準決勝リーグに出てくる出てくる3チーム目は、ドイツにしてもドミニカにしても、日本が勝てる確率はかなり高い。しかし、ベスト4にはロシア・ブラジルのどちらかを破らなくてはならず(現状から言えばロシアよりブラジルのほうがまだ勝てる可能性は高いだろうが)、極めて難しい。
* 6月のBCVカップ・8月のワールドグランプリで、日本はイタリアに連敗。クロアチアは1月の世界選手権予選でそのイタリアをストレートで粉砕している。

そしてバーバラのクロアチアは・・・はっきり言って厳しい。中国と韓国と同じ組である。3年前のワールドカップのように勢いが出れば何ができるかわからないけれども厳しい。ベスト8進出には、韓国・イタリア・アメリカ(イタリアとアメリカは準決勝リーグで対戦するという予想)に対し最低2勝が必要だが、イタリアも最近力を伸ばしており勝ちの計算できる試合がない。攻撃陣は超豪華で大当たりすればベスト4の可能性もある一方で、守りがザルで崩れるとどうしようもないというのも辛い。

なお、予選ラウンドの試合日程も同時に決まっている。

男子

上段: 第1試合、下段: 第2試合
組(会場) 11月13日 11月14日 11月15日
A組
(福岡)
韓国×エジプト
スペイン×日本
エジプト×日本
韓国×スペイン
スペイン×エジプト
韓国×日本
B組
(神戸)
アメリカ×タイ
カナダ×イタリア
タイ×イタリア
アメリカ×カナダ
カナダ×タイ
イタリア×アメリカ
C組
(仙台)
中国×ウクライナ
チェコ×オランダ
ウクライナ×オランダ
中国×チェコ
チェコ×ウクライナ
オランダ×中国
D組
(札幌)
アルゼンチン×イラン
ポーランド×キューバ
イラン×キューバ
アルゼンチン×ポーランド
ポーランド×イラン
キューバ×アルゼンチン
E組
(川崎)
ブルガリア×アルジェリア
ギリシア×ブラジル
アルジェリア×ブラジル
ブルガリア×ギリシア
ギリシア×アルジェリア
ブラジル×ブルガリア
F組
(魚津)
ユーゴスラビア×オーストラリア
トルコ×ロシア
オーストラリア×ロシア
ユーゴスラビア×トルコ
トルコ×オーストラリア
ロシア×ユーゴスラビア

女子

上段: 第1試合、下段: 第2試合
組(会場) 11月3日 11月4日 11月5日
A組
(東京)
オランダ×ケニア
ペルー×日本
ケニア×日本
オランダ×ペルー
ペルー×ケニア
日本×オランダ
B組
(徳山)
ブルガリア×イタリア
キューバ×アメリカ
イタリア×アメリカ
ブルガリア×キューバ
キューバ×イタリア
アメリカ×ブルガリア
C組
(松本)
ドイツ×ドミニカ
ロシア×ブラジル
ドミニカ×ブラジル
ドイツ×ロシア
ロシア×ドミニカ
ブラジル×ドイツ
D組
(鹿児島)
韓国×クロアチア
タイ×中国
クロアチア×中国
韓国×タイ
タイ×クロアチア
中国×韓国

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