'98-99 Superliga Women (Regular Season)

各チーム講評
ハイライト
非公式チーム別技術集計
プレーオフ


各チーム講評

Notice:
ブラジル・スーパーリーガは、今シーズンから1セット25点のラリーポイント制を採用しているが、このページでは、相手がサーブを打つときに得点することに対し、従来通り「サイドアウト」の語を使うことにする。この文中で「サイドアウト」とある場合も得点になるということである。

ブラジルリーグの場合、外国人選手は2人まで(コート上2人まで)、また、ブラジルの選手にはポイントがつけられておりそのポイントの合計が一定の範囲内になるようにチームを編成しなくてはならない。特定のチームに優れた選手が集中するのを防ぐためである。

Rexona
昨シーズンのチャンピオンチームである。アタッカーは10歳代で唯一ブラジルナショナルチームに入っているエリカ・コインブラ、やはりブラジル代表のラクウェル・シルバ、イタリアのエースで現在赤丸急上昇中のフランチェスカ・ピッチニーニという布陣。センターにはオランダのベテランブルスマを補強している。そしてなんと言っても、このチームをまとめ上げるのが世界一のセッター、フェルナンダ・ベンツリーニ。他チームと比較しても隙が見あたらず、今シーズンも優勝の大本命である。

Leites Nestle
昨シーズン準優勝のこのチームのスーパースターは、レイラ・バロスである。さらにDenise Souzaという選手も得点とアタック効果率の両方で上位に入っており、アタッカー陣はRexona以上に強力かもしれない。その一方で、センター線にはブラジル代表のネグロン、クロアチアからチェブキナを増強しているけれども、やや疑問符がつく。とはいっても、対抗はやはりこのチームである。

Uniban/Sao Bernardo
このチームの中心はブラジル代表のスタメンエースであるディアス。そしてCoccoという選手も小柄なエースながらチームを引っ張る。さらに超大型のウクライナのIvanyuskinaとそろったアタッカー陣は、12チーム中最強といえる。センター線はこれに比べると目立たないけれども、ブラジル代表のコンセイソン中心にブロックも少ない部類ではない。(数字を見ているとIvanyuskinaが対角に入り速い攻撃を主にやっているような気がするが、ローテーションの記述がなく、しかもラリーポイント制なので、これは全くの憶測に過ぎない。)

MRV/Minas
このチームは、ブラジル代表チームに入っているドバル、そしてオランダ代表のフィッセルというセンター線が強力で、ブロック力はトップクラスである。一方、アタッカーはNascimentoという選手とドイツのエースのロルがいるけれども、他の上位チームと比べて見劣りするのは否めない。

Universidade Guarulhos
モーゼ、シャガスというブラジル代表のエースが引っ張るチームで、この両選手の決定力は非常に高い。しかし、このチームではこの両選手が突出した存在で、アタッカーの層の厚さという点ではRexona, Leites Nestle, Unibanあたりに比べると劣る。センター線も、クロアチアからクズマニッチを増強しているけれどもやはり不安が残る。そのため、両エースにかかる負担が大きいチームである。
* REX, LEN, UNIあたりは、名前は2人しか挙げていなくても、得点を見るとサイドアタッカー3人に分散している。最もバランスのとれたチームの場合、得点はセンターも含め5人に分散することになる。

BCN/Osasco
アメリカ代表のスコット、そしてクロアチアからレトを補強。この二人がチームを引っ張る形となっている。このチームは、本来アタッカーの選手が4人入り(その場合は本来のセンターは1人しかいない)、そのうち1人がセンターに回るという変則的な布陣をしくときがある。

これ以下のチームには知っている選手が全くいないので割愛させていただきます。ごめんなさい。

このリーグは上位チームと下位チームの力の差が恐ろしく大きい。どのリーグでもその差は大きいけれども、このリーグの場合その落差は格別である。この点を比較するため、サイドアウト制で行われたリーグについては、サーブを打った回数を打たれた回数で割った値を考えることにする。この値はラリーポイント制における得失点率とほぼ等しい値になるはずである。(サーブ権の移動があるため、厳密に同じ値にはならない。)第5回Vリーグ、あるいは'97-98シーズンと'98-99シーズンのイタリアセリエA1でも、この比率は、通常シーズントップのチームで1.1程度である。参考までに第5回Vリーグの10チームについてこの比を示す。

Denso    1.078
NEC      1.115
Toyobo   1.083
Hitachi  1.095
Orange   1.026
Unitika  1.000
Yokado   0.986
Sawa     0.950
Toshiba  0.878
Odakyu   0.771
したがって、ラリーポイント制で得失点率が1.1を超えるようなチームはかなり強いチームで、逆に0.9を切れるようなチームは相当弱いチームである。しかし、このリーグの場合、上位チームのほとんどが得失点率1.1を超えている。この比率が1.3に近いようなチームは、ちょっと想像しがたい。(かつて日本リーグで88連勝した頃の日立くらいか?)逆に、下位3チームは得失点率が0.8前後かそれを切れる。相対的な意味で小田急と同程度に弱いチームが3チームもあるわけで、これも恐ろしいことである。


ハイライト

第1節: Rexona - Universidade Guarulhos
互いにブラジル代表の主力選手を擁するチームだけに、第1,第2セットとも接戦となった。しかし、結果的には昨シーズン優勝のRexonaのストレート勝ち。難敵を下し今シーズンも好スタートを切った。Uni.Guarulhosは両エースに打数が集中するのが苦しいところで、ブロックを食らいまくった。
REX3 (28-26, 25-22, 25-20) 0UNG

第5節: Leites Nestle - MRV/Minas, Universidade Guarulhos - Uniban/Sao Bernardo, BCN/Osasco - Rexona
この節は上位どうしの対戦が集中してあり、ハイライトも3試合になる。
Leites Nestle対MRV/Minasの試合は、アタックではLeites Nestleが、ブロックではMRV/Minasが上回るという対戦である。しかし、第1セットはMRV/Minasが取ったものの第2セット以降は一方的にLeites Nestleが取り、Leites Nestleの勝利。Leites Nestleのアタッカー陣はこの試合も決定率44%と好調*だったのに対し、MRV/Minasの決定率はなんと28%。アタッカーの力の差は決定的だった。
* このリーグのアタック決定率は一般に低い。今シーズンは効果率で集計されているけれども、昨シーズンの場合、決定率の平均は37.4%である。
Universidade Guarulhos対Uniban/Sao Bernardoの試合は、強力なサイドアタッカーを擁するチームどうしの対戦。この試合最も差がついたのはアタックミスの数で、Unibanが6本に対しUni.Guarulhosは13本(いずれもAttack Faultから相手ブロックの数を引いた推計値)。
この節最も注目すべき試合がBCN/Osasco対Rexonaの試合である。BCN/Osascoは第4節まで4連勝、しかしこの間の対戦相手は下位と予想されるチームばかりで、このリーグ最高のスター集団であるRexona相手にどれほど通用するかはやや疑問と思われた。しかし、Osascoはスコット・レトの二人を中心に激しく食らいつき、2セットがデュース、最終セット20-18という大熱戦となった。スコットはアタック決定率6割近く、総得点30点の活躍だった。それでも勝ったのはRexona、女王の貫禄を見せた。
LEN3 (19-25, 25-17, 25-14, 25-18) 1MRV
UNI3 (25-22, 21-25, 25-21, 25-21) 1UNG
REX3 (24-26, 25-17, 21-25, 25-22, 20-18) 2BCN

第6節: Uniban/Sao Bernardo - BCN/Osasco
勝ったのはアタッカーの攻撃力で上回るUniban。全勝を守った。
UNI3 (27-25, 25-18, 18-25, 25-21) 1BCN

第7節: Uniban/Sao Bernardo - Rexona, MRV/Minas - BCN/Osasco, Leites Nestle - Universidade Guarulhos
いよいよトップ3チームの直接対決に突入。私はRexonaが優勝本命と見ていたけれども、UnibanがそのRexonaに土を付けた。Unibanはアタックのミスの少ないチームだが、この試合もミスの多少が勝敗につながっている。(ミスによる失点はRexonaのほうが7点多い。)
MRV/MinasとBCN/Osascoの試合は、4-6位グループの中での争いである。Minasの敗因は、おそらくブロックの不発にある。これまでいずれの試合でも10本以上を決めていたものが、フルセットまでもつれた試合にもかかわらずわずか8本に終わってしまった。
Leites NestleとUniversidade Guarulhosの試合、Leites Nestleの両エース、バロスとネグロンは二人とも決定率5割以上と、きっちりと仕事を果たした。それに対し、Uni.Guarulhosは、シャガスはよく踏んばったもののアナモーゼが総得点11点の不振。Leites Nestleも打数からすると「レイラちゃん一人」になりかかっていたのだが、それでも決めてしまうだからさすがに世界のエースの一人に数えられるだけのことはある。
UNI3 (23-25, 26-24, 25-20, 25-21) 1REX
BCN3 (21-25, 25-22, 26-28, 25-18, 15-13) 2MRV
LEN3 (25-16, 22-25, 25-23, 25-19) 1UNG

第8節: Uniban/Sao Bernardo - Leites Nestle, MRV/Minas - Rexona, BCN/Osasco - Universidade Guarulhos
第7節に続く三強の激突は、いずれのセットも接戦ながら、またしてもUnibanの勝利。前節のRexona戦に続き、Unibanにはブロックが出ていることが強い。私の見る限り、このチームの弱点はブロックの少なさと思われたので、ブロックが多くなれば攻撃面ではこのチームが最強である。エースの打ち合いでもUnibanのディアスが勝った。また、この試合でもUnibanはミスによる失点をLeites Nestleより6点少なく抑えた。一方のLeites Nestleは、大エースのレイラ・バロスはそこそことしても、その次のDenise Souzaが抑えられたのが痛い。センター線でサイドアウトがとれないという弱点が出たかもしれない。残っている対戦相手からして、Unibanの首位折り返し、それも前半戦全勝の可能性がかなり高くなった。
MRV/Minas - Rexonaの試合は、集計を見る限りかなり競った試合である。この試合、ピッチニーニがアタックで大活躍、さらにサービスエース4発をたたき込んだ。MRVのエース、Nascimentoとロルもよく踏んばったが及ばなかった。
BCN/Osasco - Universidade Guarulhosの試合は、4-6位グループの中での対戦ながら、結果は意外にもBCNのストレート勝ち。Uni.Guarulhosは、両エースが「絶」のつく不振で、これではどうにもならないと思われる。一方のBCNはこの試合もスコットがアタックにブロックに大車輪の働きだった。
UNI3 (23-25, 25-22, 31-29, 25-20) 1LEN
REX3 (27-25, 25-18, 17-25, 25-21) 1MRV
BCN3 (25-23, 25-17, 25-21) 0UNG

第9節: Leites Nestle - Blue Life/Pinheiros
このスーパーリーガは上位チームと下位チームの力の差が非常に大きく(どのリーグでもそうだが、このリーグはその差が特に大きい)、この対戦はほぼ間違いなくLeites Nestleがストレートで勝つと思っていた。実際、上位チーム対下位チーム(ここでは6チームと6チームに分けている)の対戦で、フルセットまでもつれた試合はここまで一つもなかった。しかし、おそらくこの試合の前かこの試合中に、Leites Nestleは大きなアクシデントに見舞われた。正セッターのMaria Estela Juniorという選手に故障が発生。この試合の第2セットまではこのセッターを先発させ連取したものの、控えのセッターAndreia Marrasに代えた第3,4セットを続けて落とし、試合はまさかのフルセットに突入。番狂わせこそなかったものの冷や汗ものの勝利、何より後半戦に暗い影を落とす試合となった。この試合、Leites Nestleは完全に「レイラちゃん一人」状態で、Blue Life/Pinheirosのミスの多さに救われた形となった。
LEN3 (25-23, 25-18, 20-25, 23-25, 15-12) 2BLP

第10節: Rexona - Leites Nestle, MRV/Minas - Universidade Guarulhos
正セッターがフル出場できない状態でこのリーグ最強のチームの一つといえるRexonaと互角に戦うのは無理がある。Leites Nestleは、バロスとネグロンの両エースはよく踏んばったけれども、センター線をまともに使えていないのは得点からも明らかである。一方Rexonaはエリカ・コインブラがこの試合絶好調で、内容的にはほぼ完勝だった。
Universidade Guarulhosも両エースが今ひとつの試合が続き、上位との対戦では負けが込んでいたけれども、この試合ではシャガス・モーゼとも踏んばった。一方、MRV/Minasはロルが大不振でNascimento一人の状態になってしまった。それ以上にMRVにとって痛かったのはブロックが少なかったこと。この対戦でブロックの数で負けているようでは、MRVはまず勝てないだろう。
REX3 (25-19, 23-25, 25-22, 25-15) 1LEN
UNG3 (23-25, 25-23, 25-21, 25-22) 1MRV

第11節: Uniban/Sao Bernardo - MRV/Minas, Leites Nestle - BCN/Osasco
MRV/Minasはこれまでアタック力の差から上位との対戦では負けが込み、この対戦もUniban有利と思われた。しかし、この試合は不振が続いたシルビア・ロルが大爆発。さらにリーグ最強のUnibanアタック陣をブロックでよく止め、フルセットの末Unibanの開幕からの連勝を10で止めた。前半戦の星取表は、完全な序列関係に極めて近い。この1勝は実に目立つ。まさに「大金星」である。
Leites Nestleは相変わらず正セッターがフル出場できない状態だが、この試合はその助けを仰ぐことなくセットカウント2-1まではこぎ着けた。しかし、第4セットセッターを途中交代しながら落とすと、最終セットも一方的に落として敗れた。BCN/Osascoはこの試合、エースのRoseli Melloが大活躍。これまで目立っていたスコットやレトを逆に引っ張る形となり、これもフルセットで大きな勝利をおさめた。それにしても最終セット15-4とはいったいどうしたことか。世界トップレベルのこのリーグで、3位と4位という上位チーム同士でほぼ互角の対戦でも、このようなことがあるものである。それほどBCN/Osascoの勢いがすごかったのか。
MRV3 (22-25, 25-23, 12-25, 25-17, 15-13) 2UNI
BCN3 (25-22, 18-25, 18-25, 25-18, 15-4) 2LEN

私はこのリーグ前の予想として、Rexonaが本命、Leites Nestleが対抗と見ていた。しかし、本命・対抗をさしおいて前半戦首位に立ったのはUniban。このチームの強さはやはりアタックにあり、数字で見てもアタック効果率はトップである。ブロックも少ない部類ではなく、全チームの中で最も死角のない攻撃陣と言えよう。
Rexonaは勝ち星の差なしで2位、連覇に向け絶好の位置につけている。ライバルの他のチームに比べると、アタックの効果率は低い一方で、dig(スパイクレシーブやつなぎ)は断然のトップである。堅いチームで安定感は抜群、この後も大崩れは考えにくい。
3位に入ったのはBCN/Osasco。3強の一角を崩し「4強」に構図を塗り替えたのは大健闘と言っていいのではないか。当初はスコット・レトの両外国人選手が引っ張るチームという印象を受けたけれども、ここに来てブラジル人のエースが引っ張って勝つ試合も出てきており、チーム全体が流れに乗っているという印象を受ける。
Leites Nestleは4位でトップと勝ち星2つの差、優勝を狙うには苦しい状況に追い込まれた。強敵との対戦が続く第8節以降ペースダウンしてしまった。4強の他のチームに比べると、センター線の弱さが目立ち、ブロックが非常に少ない。また、レイラ・バロス、Denise Souzaといったアタッカーの充実の割にチーム全体のアタック効果率は高くなく、このあたりにもセンター線でサイドアウトがとれないという弱さがうかがえる。

第12節: Universidade Guarulhos - Rexona
この試合、Rexonaはエリカ・コインブラが絶好調。一方のUniversidade Guarulhosはモーゼはよかったもののもう一枚の看板のシャガスが完璧におさえられた。結果的には、第1,2セットは競ったものの、前半のこの対戦同様Rexonaのストレート勝ち。
REX3 (25-23, 25-22, 25-19) 0UNG

第15節: Petrobras/Macae - Uniban
リーグ最強のアタック力を誇りここまで快調にとばしてきたUnibanにも、大きなアクシデントが発生した。正セッターのエリア・ソウザが欠場(この選手はブラジルナショナルチームでも控えのセッター)。代役のセッターで臨んだ最初の試合、14節のPetrobras/Forca Olimpika戦は、相手がこのリーグでもアタックが最も貧弱なチームだけに何とか勝ったことは勝ったけれども、本来ならストレートで楽勝しなければならない相手に1セットを落とした。
そしてこの試合、チームの歯車が全くかみ合わず、アタッカーはCocco以外全くだめ、ブロックも皆無同然という状態。ここまで9位のPetrobras/Macaeにまさかのストレート負けを喫した。
PMS3 (25-16, 25-19, 25-22) 0UNI

第16節: MRV/Minas - Leites Nestle, Uniban/Sao Bernardo - Universidade Guarulhos, Rexona - BCN/Osasco
前半戦4位対5位のLeites NestleとMRV/Minasの試合は、MRV/Minasが3-1で完勝。この試合ではレイラ・バロスまでもおかしくなり、この試合わずか8得点、第4セットではスタメンから外れる有様だった。こうなっては救いようがない。一方MRV/MinasはアタックではNascimentoが大活躍、さらにブロックもサーブも大爆発した。
Unibanは相変わらず正セッターソウザを欠き、これでは上位との対戦は非常に厳しい。本来ならUniversidade GuarulhosとUnibanを比べればUni.Guarulhosが上回っている点がこれといって見あたらないだけに、Uni.Guarulhosが勝つのは難しいはずである。しかし、この試合もいずれのセットも競り(特に第3セットは5度のデュースを繰り返し)ながら、結局ストレート負け。
Rexona対BCN/Osascoは、1位と3位という好カード。Rexonaは第1セット、ラクウェル・シルバが当たっていないと見るや、Elisangela Oliveiraという選手に交代。この選手が大活躍して、第1セットは落としたものの第2セット以降を一方的に連取、セットカウント3-1で勝利した。これでRexona独走の気配となっている。
MRV3 (25-23, 25-19, 23-25, 25-16) 1LEN
UNG3 (25-21, 25-22, 30-28) 0UNI
REX3 (23-25, 25-15, 25-15, 25-16) 1BCN

第17節: Petrobras/Macae - Leites Nestle, BCN/Osasco - Uniban/Sao Bernardo
第15節に続いて、Petrobras/Macaeが大番狂わせを演じた。Leites Nestleはこの2試合、サーブレシーブも非常に不安定になっており、それまで3分の2に近い成功率だったものが、この2試合は半分を切っている。正セッターがまともに出られず、上位との試合で敗戦が続く中で、チーム全体のリズムが完全に狂っていることがうかがえる。
後半戦に入ってから、Petrobras/Macaeは、上位相手に敗れた試合でも内容としては他の下位チームに比べ断然よい試合をしていた。20点以下しかとれなかったセットは少なく、2点差、3点差のセットが非常に多かった。そのことからすれば、本来上位のチームでも正セッターを欠き力が落ちた相手を食う力はある。しかし、前半戦の成績からすると、上位6チームとPetrobras/Macaeとは、日本のVリーグ女子でいえば東芝とNECかそれ以上の差があった。このリーグの場合、イタリアリーグと違い、シーズン中にメンバーが大幅に替わることはまずない。Petrobras/Macaeも、登録選手はチーム当初と変わっていない。いったいこのチームは何がきっかけで変わったのだろうか。
BCN/Osasco対Unibanの試合、BCN/Osascoはここ何試合か出場していなかったスコットを復帰させ、スコット・レトの外国人選手二本柱が大活躍した。一方、Unibanはアタックが極端に落ち込み、特に最大のポイントゲッターであるディアスが全く決まらなかった。どのセットも競ってはいるけれども、結局1セットもとれずに落としているのは、まるで小田急のようである。この後このリーグは1週間休みで、次の試合は2月20日になる。この休みがUnibanにとって救いとなるのだろうか。
PMS3 (21-25, 25-16, 25-19, 26-24) 1LEN
BCN3 (25-21, 25-22, 28-26) 0UNI

前半戦終了時点では、UnibanとRexonaが10勝で並んでおり、これにBCN/Osasco、Leites Nestleあたりが後半戦の優勝争いに絡んでくるかと思われた。しかし、後半戦はRexonaが優位に立ち、これに続くのがBCN/Osasco、さらに前半戦5位、6位のMRV/MinasとUni.Guarulhosも後半戦に入り勝ち進んだ。通算の順位では、Rexona独走に入る一方、2位以下は混戦模様となった。

この原因は、本来上位2チームの正セッターの故障にある。
まず、第14節以降Unibanの正セッターソウザが欠場している。そして、このチームは第15節のPetrobras/Macae戦以降3連敗、しかも1セットすら奪えなかった。この間ソウザは、ベンチ入りさえ一度もなかった。
Leites Nestleも正セッター抜きでの戦いを強いられている。こちらはベンチ入りはしておりセット途中の交代出場は多いけれども、フル出場できる状態ではないようである。そして、ここにきてチームワーク全体がおかしくなっていると思われる。振り返ってみると、このチームの正セッターが故障したのは、第9節の試合前または試合中と思われる。Blue Life/Pinheiros相手にまさかのフルセットまでもつれた試合である。そしてこの試合を境に、このチームは上位との対戦で一度も勝っていない。のみならず、第17節では8位のPetrobras/Macaeにまで金星を献上してしまった。
ブラジルのリーグは、レイラ・バロスは世界のスーパースパイカーに数えられるけれども、「上げておけば何でも打って決めてしまう」ようなエースは基本的にどのチームにもいない。それだけに、セッターの比重が非常に大きく、正セッターが欠けると致命的な打撃となる。

第18節: MRV/Minas - Uniban, BCN/Osasco - Leites Nestle
この日は第11節と同じ対戦カードという変則日程となっている。(イタリア・ブラジルのリーグの場合、基本的に、後半はホームとアウェーを入れ替えて前半と同じ順で対戦していく。これに対し、日本のVリーグの対戦順は規則性がなく、記事を書く側としても困ったものである。)
先週の1週間休みはUnibanにとって救いの神となった。正セッターのソウザが復帰したとたん、前半戦の強さが戻ってきた。前半戦強かった頃のUnibanは、アタック決定率が高いだけでなく、ミスも少なくブロックにもかかりにくいチームだったけれども、この試合もそうだった。後半戦ここまで6連勝と好調、前半戦唯一黒星を喫した相手でもあるMRV/Minasを、第2セットは4度のデュースとなったもののストレートで粉砕してしまった。
一方のLeites Nestleのほうは、いまだに正セッターがフル出場できる状態ではないようである。それでもセットカウント2-1まではこぎ着けておきながら、第4セットを落とし、最終セットは一方的展開に。第11節の同じ対戦のまさしく完全コピーのような展開で、フルセットの末BCN/Osascoに敗れた。
UNI3 (25-22, 29-27, 25-20) 0MRV
BCN3 (17-25, 27-25, 19-25, 25-20, 15-6) 2LEN

第19節: Rexona - Uniban/Sao Bernardo, BCN/Osasco - MRV/Minas, Universidade Guarulhos - Leites Nestle
Rexona対Unibanの試合は、ブラジルナショナルチームのセッター対決でもある(フェルナンダはもはやナショナルチームからは引退とのことだが)。前半のこの対戦ではUnibanがRexonaに唯一土を付けており、Rexonaの連勝が止まるとすればこの試合しかないと思われたけれども、Rexonaはソウザの復帰したUnibanすら全く問題としなかった。Unibanの両エース、ディアスとCoccoをあわせて14得点と完璧なまでに抑え込んだ。一方Rexonaは、コインブラが大活躍、BCN/Osasco戦以来Elisangela Oliveiraもよいはたらきをしており、全く一方的なストレート勝ちを収めた。
MRV/Minas対BCN/Osasco戦、MRV/Minasはシルビア・ロルが出場なし。エースは実質上Nascimento一人だけという何とも苦しい状態で一方的に敗れた。BCN/Osascoはこの試合、スコットがフル出場、そのスコットとSonia Beneditoという選手が活躍した。このチームの選手起用は多くのパターンがあり極めて複雑なのだが、それがきちんと機能しているのは大したものである。
前節とこの節の間にはまた10日ほどの間が開いたけれども、この間にもLeites Nestleの正セッターの状態はよくなっていないようである。とにかく、レイラ・バロスが3点しか得点していないという時点でこのチームはすでに終わっている。トスの成功数は、正セッターの出場時が17/43なのに対し、それ以外の選手(セッターにつながらなかった場合も含む)が19/76。正セッターが欠けたことでいかにアタッカーが力を出せなくなっているかは、数字からも明らかである。アタックは全く決まらない上にブロックも食らいまくり、第1セットは競ったものの第2セット以降は一方的に落とした。
REX3 (25-15, 25-21, 25-19) 0UNI
BCN3 (25-21, 25-17, 25-13) 0MRV
UNG3 (29-27, 25-19, 25-14) 0LEN

第20節: Leites Nestle - Uniban/Sao Bernardo, Rexona - MRV/Minas, Universidade Guarulhos - BCN/Osasco
セッターの故障により後半波に乗れなかった両チームの対戦は、フルセットまでもつれながら、現在は正セッターがフル出場しているUnibanが勝った。Leites Nestleもよく粘ったと思うけれども及ばなかった。Leites Nestleはこれで上位との対戦でフルセット負けが3度。しかも最終セットの得点が4-15,6-15,8-15と、まるで悪魔にとりつかれたような負け方を繰り返している。このチームはどうして最終セットになるとこれほど弱いのだろうか。
前半の第7節にUnibanに敗れて以降は圧倒的な強さで連勝を続けてきたRexonaだけれども、この日は、前半の対戦でも苦戦を強いられたMRV/Minas相手に大いに手こずった。これは相性もあるのだろうか。アタック力では明らかにRexonaのほうが上回っているのだが、MRV/Minasは実に19発のブロックを決めてRexonaに食い下がった。しかし、結果はフルセットの末Rexonaが振り切った。
Universidade Guarulhos対BCN/Osascoの試合は、3セット連続デュースでストレートという、女子の試合としては珍しい決着となった(男子ではしばしばあるのだが)。Uni.Guarulhosがモーゼとシャガス、BCN/Osascoがスコットとレト、この試合はほぼ2対2の打ち合いだったと思われるけれども、数字的に見るとこの4人の中でシャガスだけが決定率32%と極端に悪く(他の3人はいずれも50%を超えた)、明暗を分けた。
UNI3 (19-25, 25-21, 25-20, 23-25, 15-8) 2LEN
REX3 (21-25, 25-16, 25-22, 21-25, 15-12) 2MRV
BCN3 (30-28, 26-24, 28-26) 0UNG

第21節: Leites Nestle - Blue Life/Pinheiros
Leites Nestleにとって、いばらの道のスタートとなったのは前半戦のこの対戦だった。それ以降このチームは上位との対戦で一つも勝っていないばかりか、8位のPetrobras/Macaeにまで敗戦。もしこの試合で敗れれば、上位6チームによるプレーオフ進出も危うくなる可能性があった。試合内容としては、案の定ぼろぼろで、アタックでもブロックでも互角以上の試合をされた。レイラ・バロス以外のアタッカーはほぼ総崩れだった。本来なら、ブラジルでもスター選手のそろったLeites Nestleが、この相手にここまで苦戦をするはずがない。しかし、試合結果としてはもつれたセットをものにして何とか勝ち、プレーオフ進出を決めた。
LEN3 (25-19, 13-25, 25-23, 25-21) 1BLP

最終節: Leites Nestle - Rexona, Universidade Guarulhos - MRV/Minas, BCN/Osasco - Blue Life/Pinheiros
最終節にいたり、ついにLeites Nestleはレイラ・バロスをベンチ入りさせず、センターのネグロンにセンターエースのような形で打数を集中させた。このショック療法が効いたのか、試合はフルセットにもつれる熱戦に。しかし、結果は最終セット15-13でRexonaの勝ち。なぜこれをもっと早く試してみなかったのか、とも感じられた。
Universidade Guarulhosは、全セットデュースでストレート負けという前節の試合をそのまま引きずってしまったかのようである。この試合、MRV/MinasはNascimentoにボールを集めたのだが、そのNascimentoが37打数21決定の大爆発、Nascimento一人で勝ってしまった。この試合と同じ対戦となるプレーオフ1回戦は直後に迫っており、それに向けてMRV/Minasにとっては非常によい形で、逆にUni.Guarulhosにとっては不安材料を残した。
BCN/Osascoは、前節とこの試合と、本来のリベロが欠場。代役はたてたものの、もともとサーブは強いBlue Life/Pinheirosとの対戦で実に10発のエースを被弾。サーブレシーブの乱れからダニエル・スコット以外のアタッカーがほぼ壊滅状態で、ミスによる失点も多く、Blue Life/Pinheirosにフルセットの末金星を献上してしまった。BCN/Osascoは通常シーズン2位が確定しモチベーションが下がっていたことは否定できないけれども、それを言えばBlue Life/Pinheirosのほうも7位ははるか前から確定的となっている。(Blue Life/Pinheirosは、今リーグただ1チームの「中位チーム」と言える存在で、下位5チームにはよほどひどい試合をしなければ勝てる一方、ちょっとやそっとのことで上位6チームに勝てるような力はない。)プレーオフに向けて非常に不安を残す試合となった。
REX3 (22-25, 25-14, 27-29, 25-23, 15-13) 2LEN
MRV3 (28-26, 25-22, 25-23) 0UNG
BLP3 (21-25, 25-20, 17-25, 25-19, 15-10) 2BCN

これで通常シーズンは終了しプレーオフに入るわけだけれども、Rexonaの優位は揺らぎそうにない。アタックでもブロックでも守備でもトップと、数字的に見てもその強さは圧倒的である。Rexonaに通常シーズン唯一の黒星をつけたのはUnibanだが、これまで何度も繰り返してきたように、正セッターソウザの欠場以来、前半戦の勢いはない。今シーズンの日本のVリーグの決勝ラウンドでは通常シーズン1位のチームが相次いで敗退する波乱があったけれども、このスーパーリーガでは一発勝負でなく2試合または3試合先取しなければならないため、なおのこと逆転は難しい。


非公式チーム集計

注意
この集計はこのページの作者が手元で計算したものであり、公式のものではありません。したがって、誤りがないことを保証するものではありません。

以下の表の各項目の意味するところについては、防御と失敗の集計を参照してほしい。

表1.攻撃側によるアタックの集計
Team Hits Success Blocked Miss Succ. % Blo. % Miss % Efct. %
REX 2475 1085 158 170 43.84 6.38 6.87 30.59
UNI 2453 1041 169 150 42.44 6.89 6.11 29.43
UNG 2375 1005 153 182 42.32 6.44 7.66 28.21
BCN 2735 1126 173 195 41.17 6.32 7.13 27.71
LEN 2834 1131 218 189 39.91 7.69 6.67 25.55
MRV 2799 1077 199 202 38.48 7.11 7.22 24.15
BLP 2490 963 190 177 38.67 7.63 7.11 23.94
PMS 2597 930 227 203 35.81 8.74 7.82 19.25
LON 2442 877 190 221 35.91 7.78 9.05 19.08
REC 2388 812 156 244 34.00 6.53 10.22 17.25
SCE 2323 770 233 191 33.15 10.03 8.22 14.89
PFO 2397 775 245 244 32.33 10.22 10.18 11.93
Total Tournament 30308 11592 2311 2368 38.25 7.81 7.63 22.81

表2.防御側によるアタックの集計
Team Hits Success Blocked Miss Succ. % Blo. % Miss % Efct. %
REX 2584 870 246 200 33.67 9.52 7.74 16.41
MRV 2823 999 252 222 35.39 8.92 7.86 18.60
UNG 2425 881 209 184 36.33 8.62 7.59 20.12
BCN 2903 1037 222 216 35.72 7.65 7.44 20.63
UNI 2514 928 190 199 36.91 7.58 7.92 21.44
BLP 2480 936 164 221 37.74 6.61 8.91 22.22
LEN 2794 1051 182 245 37.62 6.51 8.77 22.33
PMS 2531 990 154 208 39.11 6.08 8.22 24.81
LON 2382 969 163 180 40.68 6.84 7.56 26.28
PFO 2253 961 161 176 42.65 7.15 7.81 27.70
SCE 2172 918 170 145 42.27 7.83 6.68 27.76
REC 2447 1052 198 172 42.99 8.09 7.03 27.87
Total Tournament 30308 11592 2311 2368 38.25 7.81 7.63 22.81

表3.攻撃の値と防御の値の差
Team Attack Won-Lost Won-Lost(Rank) Point Ratio
REX +14.18 21-1(1) 1.281
UNG +8.09 15-7(4) 1.133
UNI +7.99 17-5(3) 1.156
BCN +7.08 18-4(2) 1.136
MRV +5.55 15-7(5) 1.070
LEN +3.21 13-9(6) 1.079
BLP +1.72 11-11(7) 1.034
PMS -5.56 9-13(8) 0.959
LON -7.20 7-15(9) 0.873
REC -10.62 2-20(11) 0.808
SCE -12.87 2-20(12) 0.788
PFO -15.76 2-20(10) 0.783

表4.ブロックの集計
Team Nb. Set Opp. Attack Opp. Error Success Avg. by Set Shut %
REX 77 2584 200 246 3.19 10.32
MRV 83 2823 222 252 3.04 9.69
UNG 72 2425 184 209 2.90 9.33
REC 75 2447 172 198 2.64 8.70
SCE 72 2172 145 170 2.36 8.39
BCN 83 2903 216 222 2.66 8.26
UNI 75 2514 199 190 2.53 8.21
PFO 75 2253 176 161 2.15 7.75
LON 75 2382 180 163 2.17 7.40
BLP 78 2480 221 164 2.10 7.26
LEN 84 2794 245 182 2.17 7.14
PMS 77 2531 208 154 2.00 6.63
Total Tournament 463 30308 2368 2311 2.50 8.27

このリーグ全体としてのもっとも顕著な特徴は、アタック決定率平均が低いことである。アタックミスあるいはブロックされる割合は中程度であり、アタック効果率としても決定率が低い分だけ低い。

アタック力は、RexonaとUnibanがトップグループである。Unibanは正セッターソウザが欠場した数試合が平均値にも大きく影響しているので、それを考慮すればRexonaとの差はあまりないと思われる。ブラジルのスタメンエース2枚を擁するUniversidade Guarulhosも強いけれども、アタックミスが他の上位チームに比べ顕著に多い。BCN/Osascoは飛び抜けたアタッカーはいないけれども、バランスがとれている。Leites Nestleは、やはりセッターの問題だろうがセンター線が使えていないことがうかがわれ、そのため決定率も上位4チームより低くブロックされる率が非常に高い。MRV/MinasはアタックではBlue Life/Pinheirosとほとんど差がなく、中位グループに入ってしまっている。この2チームからかなり落ちてPetrobras/MacaeとLondrina、最下位グループの3チームはさらに大きく落ちる。

ブロックについては、Rexona、MRV/Minas、Universidade Guarulhosの3チームが強い。それに続くのは、意外にも最下位グループのチームである。BCN/Osasco、Unibanは、REX,MRV,UNGに比べブロック力はかなり劣り、リーグの全体平均並みである。上位6チームの中でブロックが極端に弱いのがLeites Nestleで、12チームの中でも最下位グループである。数字的には、このブロックの弱さも苦戦の大きな原因となったことが分かる。

守備(サーブレシーブ除く)はRexonaが断然のトップで、次にMRV/Minasが続いており、この2チームが抜け出している。この両チームはブロックでも第1位と第2位である。逆に、ブロックが弱いLeites Nestleは守りでも上位6チームの中では最悪である。ブロックの強いチームは、スパイクレシーブの相手のミスを引く前の値も低い傾向がある。このリーグのRexona、MRV/Minas、第5回Vリーグの日立、第4回Vリーグのダイエー、といったあたりは全てそうである。しかし、必ずしもこれらのチームにスパイクレシーブのうまい選手がそろっているわけではなく、ブロックが強ければ、レシーブもそれだけしやすくなるということを示していると思われる。

サーブについては公式集計の値を見ていただきたい。しかし、下位の4チームほどを除けば、エースの多いチームはミスも多いという関係が成り立っており、それを考えればサーブ力に有意な差はないと見るべきかもしれない。ミスの数がエースの数の2倍強という比例関係が見事に成り立っているのは驚いてしまう。

図.エースとミスの数の関係
エースとミスの数の関係

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