このページは、私なりの考えで、チームの防御あるいは失敗に関する集計を試みるものである。
バレーボールVリーグでは、攻撃に関する集計は、アタック・ブロック・サーブの各部門とも、個人・チーム別の数値が出ている。ところが、防御に関する集計は、サーブレシーブの成功率だけである。しかし、攻撃・防御は当然「車の両輪」であり、防御の集計も、攻撃の集計と同様に必要であるはずである。そのように考えたのがこのページのそもそものきっかけである。
国際大会では、サーブレシーブ(reception)に加え、スパイクレシーブあるいはつなぎ(dig)およびセットアップ(set)の集計も出されている。しかし、現在のこれらの防御の集計にはいくつかの問題がある。
digあるいはreceptionの集計で、手に当てて落としたりアウトになったりすればそれは失敗と数えられる。しかし、誰もタッチできず決められた場合は、成功も失敗もつかない。(これはブロックで失敗を出す場合にもあてはまる。さらに、バレーボールのみならず、例えば野球でも、打球をグラブに当ててこぼしたりそらしたりしたら基本的にエラー(捕球が難しいと記録員が判断すれば安打とされる場合もある)だが、平凡なフライを見失ったりお見合いしたりして落としても、グラブにさわっていなければエラーはつかない。)
また、現在の防御の集計は、相手のサーブあるいはアタックをきちんと返せたかどうかを見ているけれども、これらの判定基準は攻撃の成功・失敗のように単純明快なものではない。実際、防御の集計の全体平均は大会によって非常に大きな差があり、そのことからも判定基準が異なることがうかがえる。そのため、異なる大会の数値を比較することがほとんどできない。
今回試みる防御の集計は、できる限り短く言えば、「各試合の相手の攻撃の数値を足しあわせて、防御の集計とする」ものである。例えば、あるチームが3試合して、
相手のアタックで奪われたポイント(得点 + サイドアウト) / 相手にアタックを打たれた本数
90/250
70/150
80/200
となっていたとすると、この数値の3試合合計(平均)240/600 = 40%を、アタックに対する防御能力とするわけである。
次の例では、アタックの集計を単純な決定率でなく効果率で行っているので、相手のアタックがミスしたもの(つまり自分のチームの得点またはサイドアウトになる)が含まれるなど、多少複雑になるけれども、考え方は同じである。
この考え方による防御の集計は、現在一般に行われている防御の集計とは大きく異なる次のような性質がある。
攻撃および防御の集計に、失敗の集計も組み入れてみる。そのためには、単純なアタックの決定率の代わりに、「アタックの効果率」という値を用いる。これは、成功数から失敗数(アウトしたボールおよびブロックされたものの合計)を引き、それを打数で割ったものである。一般に「効果率」と言った場合、このように、「成功数から失敗数を引き、それを打数(受数)で割った値」を指すので、注意が必要である。
第5回Vリーグ女子を例に、この集計の例を示すことにする。
Team | (1) Hits | (2) Success | (3) Blocked | (4) Miss | (5)=(2)/(1)*100 Succ. % | (6)=(3)/(1)*100 Blo. % | (7)=(4)/(1)*100 Miss % | (8)=((2)-(3)-(4))/(1)*100 Efct. % |
Denso | 3248 | 1565 | 215 | 214 | 48.18 | 6.62 | 6.59 | 34.98 |
NEC | 3039 | 1380 | 163 | 160 | 45.41 | 5.36 | 5.26 | 34.78 |
Toyobo | 3516 | 1565 | 205 | 190 | 44.88 | 5.40 | 5.83 | 33.65 |
Hitachi | 2905 | 1254 | 204 | 199 | 43.17 | 7.02 | 6.84 | 29.29 |
Orange | 3350 | 1380 | 201 | 226 | 41.19 | 6.00 | 6.75 | 28.45 |
Sawa | 3137 | 1275 | 224 | 174 | 40.64 | 7.14 | 5.55 | 27.96 |
Yokado | 3333 | 1341 | 215 | 201 | 40.23 | 6.45 | 6.03 | 27.75 |
Unitika | 3287 | 1299 | 221 | 203 | 39.52 | 6.72 | 6.18 | 26.62 |
Toshiba | 3257 | 1130 | 219 | 183 | 34.69 | 6.72 | 5.62 | 22.35 |
Odakyu | 2633 | 928 | 242 | 223 | 35.24 | 8.47 | 9.19 | 17.58 |
Total / Average | 31705 | 13130 | 2109 | 1973 | 41.41 | 6.65 | 6.22 | 28.54 |
次に、最初に述べたような「相手の攻撃の集計を足しあわせていく」考え方で、「防御の効果率」を求めることにする。
Team | (a) Hits | (b) Success | (c) Blocked | (d) Miss | (e)=(b)/(a)*100 Succ. % | (f)=(c)/(a)*100 Blo. % | (g)=(d)/(a)*100 Miss % | (h)=((b)-(c)-(d))/(a)*100 Efct. % |
Hitachi | 2978 | 1161 | 265 | 193 | 38.99 | 8.90 | 6.48 | 23.61 |
Orange | 3299 | 1315 | 258 | 216 | 39.86 | 7.82 | 6.55 | 25.49 |
NEC | 3095 | 1215 | 234 | 184 | 39.26 | 7.56 | 5.95 | 25.75 |
Unitika | 3320 | 1364 | 220 | 243 | 41.08 | 6.63 | 7.32 | 27.14 |
Denso | 3211 | 1284 | 202 | 200 | 39.99 | 6.29 | 6.23 | 27.47 |
Toyobo | 3767 | 1534 | 245 | 249 | 40.72 | 6.50 | 6.61 | 27.61 |
Yokado | 3394 | 1398 | 199 | 220 | 41.19 | 5.86 | 6.48 | 28.85 |
Toshiba | 3275 | 1428 | 217 | 182 | 43.60 | 6.63 | 5.56 | 31.42 |
Sawa | 3032 | 1355 | 161 | 180 | 44.69 | 5.31 | 5.94 | 33.44 |
Odakyu | 2334 | 1076 | 85 | 129 | 46.10 | 3.64 | 5.53 | 36.93 |
Total / Average | 31705 | 13130 | 2109 | 1973 | 41.41 | 6.65 | 6.22 | 28.54 |
この方法が妥当なものであることを示すため、攻撃の効果率と防御の効果率の差をとることにする。この方法では、防御の集計においても攻撃の集計と同じ数字を使っており、足しあわせ方が違うだけである。そのため、攻撃の集計と防御の集計の全体平均は必ず同じ値になる。それゆえ、攻撃の値と防御の値の差をとることが意味を持つのである。
さらに、その性質から、異なる大会の値を同じ基準で比較することもできる。攻撃の値は一般に、どの国際大会あるいはリーグでもある程度の範囲内におさまる。例えば、女子の大会のアタック効果率は、だいたいどの大会でも25%前後であり、第5回Vリーグの平均28.54%はかなり高い分類に入る。
Team | (8)-(h) Attack Won-Lost | Won-Lost(Rank) | Point Ratio |
NEC | +9.03 | 13-5(2) | 1.36 |
Denso | +7.51 | 14-4(1) | 1.25 |
Toyobo | +6.04 | 13-5(3) | 1.24 |
Hitachi | +5.69 | 12-6(4) | 1.26 |
Orange | +2.96 | 10-8(5) | 1.07 |
Unitika | -0.52 | 10-8(6) | 1.01 |
Yokado | -1.09 | 9-9(7) | 0.96 |
Sawa | -5.49 | 7-11(8) | 0.87 |
Toshiba | -9.07 | 2-16(9) | 0.70 |
Odakyu | -19.35 | 0-18(10) | 0.47 |
攻撃の効果率と防御の効果率を引いた値は、5位以下のチームについては通常シーズンの順位とも一致し、勝敗の差ともよく合致する。得失点率と比較すると、さらによい一致を示す。得失点率ではこのシーズン、NECが最も高かったけれども、この評価でもNECがトップとなっている。
さて、これまでの防御の集計の中には、「相手のアタックがブロックされた数」という項目があったけれども、これはとりもなおさずそのチームのブロック成功数そのものである。「相手のアタックがブロックされた割合」とは、すなわち打たれたアタックのうちブロックに成功した割合である。
ブロックの集計には、成功率ベースで集計する方式とセットあたり成功数で集計する方式があるけれども、いずれも一長一短である。セットあたり成功数で集計する場合、短いセットが多ければこの値は少なくなり、長いセットが多ければ当然その値も増えるものと考えられる。成功率ベースで集計する場合、その分母は「ブロックで手に当てた数」なので、手に当たらずにアタックを決められた場合は成功も失敗もつかないという問題がある。
そこで、アタックを打たれた総数に対するブロック成功の割合を考えることにすれば、そのような問題はなくなる。この割合はブロック力を表すのに極めて妥当な数値と考えることができる。この値を、このページではかりに「シャット率」と呼ぶことにする。
なお、さらに厳密に定義するなら、
ブロック成功数 | ||
シャット率 | = | |
アタックを打たれた本数 - 相手のアタックミス |
さて、ブロックの集計を「成功率」によって行う場合、その分母はブロックを試みた回数だが、ここで、アウトになった以外の相手のアタック全てにブロックを試みていると仮定すれば、そのときの成功率は上で定義したシャット率そのものである。そして、「アウトになった以外の相手のアタック全てにブロックを試みる」という仮定は、決して不自然なものではなく、むしろごく当然のことと思われる。このことからしても、この考え方が自然で理にかなったものであることがおわかりいただけるだろう。
今回も例題は第5回Vリーグ女子とする。表2の(f)の項目のBlockedの値と次の表4のシャット率が異なるのは、表1,2のBlockedの値の分母はアタックの打数あるいは打たれた数の総計になのに対し、シャット率の分母はアウトになったボールの数を引いた値だからである。
なお、98年世界選手権・非公式チーム別集計の項目でもこのシャット率による集計を試みている。上の注にあるとおり、その項目のシャット率の分母は打たれたアタックの総数である。
Team | Nb. Set | Opp. Attack | Opp. Error | Success | Avg. by Set | Shut % |
Hitachi | 65 | 2978 | 193 | 265 | 4.08 | 9.52 |
Orange | 64 | 3299 | 216 | 258 | 4.03 | 8.37 |
NEC | 63 | 3095 | 184 | 234 | 3.71 | 8.04 |
Unitika | 66 | 3320 | 243 | 243 | 3.68 | 7.84 |
Toshiba | 62 | 3275 | 182 | 217 | 3.50 | 7.02 |
Toyobo | 73 | 3767 | 249 | 245 | 3.36 | 6.96 |
Denso | 66 | 3211 | 200 | 202 | 3.06 | 6.71 |
Yokado | 64 | 3394 | 220 | 199 | 3.11 | 6.27 |
Sawa | 62 | 3032 | 180 | 161 | 2.60 | 5.65 |
Odakyu | 55 | 2334 | 129 | 85 | 1.55 | 3.85 |
Total / Average | 640 | 31705 | 1973 | 2109 | 3.30 | 7.09 |
サーブレシーブについても、同様の考えによる集計の例を示す。この集計と対になるサーブの集計は、公式集計を参照してほしい。なお、日本式の集計におけるサーブレシーブ成功率は、相手チームのサーブの集計から算出することができる。
サーブ受数 = 相手のサーブ打数 - 相手のサーブ失敗数 - 相手のノータッチエース
サーブレシーブ失敗数 = 相手のエース + 相手のサーブ効果
サーブレシーブ成功率(%) = 100×(サーブ受数 - サーブレシーブ失敗数) / サーブ受数
なお、以下の集計は手元の計算によるもので、公式集計の値とはサーブの失敗数およびサーブレシーブの成功率の値がわずかに異なっている。(公式集計の中には、サーブレシーブの成功率とサーブ失敗数がうまくあわない(上記の式が成り立たない)試合がいくつかあった)
Team | Hits | Opp. N.T. | Opp. Ace | Opp. Positive | Opp. Fault | Rcp. Excellent % | Rcp. Fault % | Opp. Effect % |
NEC | 1854 | 11 | 24 | 348 | 134 | 78.23 | 1.89 | 6.32 |
Yokado | 2061 | 19 | 30 | 393 | 147 | 77.68 | 2.38 | 6.85 |
Unitika | 2040 | 26 | 36 | 402 | 153 | 76.46 | 3.04 | 7.61 |
Orange | 2048 | 18 | 38 | 437 | 128 | 75.03 | 2.73 | 7.70 |
Denso | 2055 | 23 | 50 | 408 | 143 | 75.75 | 3.55 | 8.03 |
Hitachi | 1805 | 23 | 34 | 401 | 133 | 73.62 | 3.16 | 8.33 |
Sawa | 2019 | 21 | 41 | 465 | 154 | 72.56 | 3.07 | 8.42 |
Odakyu | 1769 | 13 | 56 | 392 | 111 | 72.77 | 3.90 | 8.80 |
Toyobo | 2191 | 26 | 46 | 528 | 144 | 71.60 | 3.29 | 8.89 |
Toshiba | 2015 | 21 | 55 | 598 | 130 | 64.97 | 3.77 | 10.65 |
Total / Average | 19857 | 201 | 410 | 4372 | 1377 | 73.84 | 3.08 | 8.17 |
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