Woerter und Unwoerter des Jahres 2001年


ことしの新語 ドイツ オーストリア リヒテンシュタイン(なし) スイス(なし)

ことしの変語 ドイツ オーストリア リヒテンシュタイン(なし スイス(なし)


 

○ことしの新語

〈ドイツ〉

1.der 11. September 9.11

 9月11日、現地時間午前8時45分のニューヨーク世界貿易センタービル北棟を皮切りに、同ビル南棟、国防総省に次々に旅客機が激突、さらに1機がピッツバーグ郊外に墜落し、合わせて約3000人の犠牲者を出した。旅客機はハイジャックされたものであり、衝突が意図的であったことが判明し、この事件は米同時多発テロと呼ばれることになる。

 

2.Anti-Terror-Krieg 対テロ戦争

 米国政府は、同時多発テロの首謀者は国際テロ組織アルカイダを率いるオサマ・ビンラディン氏と断定し、潜伏先と見られるアフガニスタンのタリバン政権に対して彼らの引き渡しを要求したが、受け入れられなかった。9月11日の事件以来、反テロを掲げるブッシュ政権は、アルカイダ殲滅と同時にタリバン政権崩壊もねらって、10月7日、英国とともにアフガニスタン空爆を開始。そして、その後のイラク戦争につながっていく。

 

3.Milzbrandattacke 炭疽病攻撃

 9月18日のニューヨーク・ポスト紙とNBCテレビのニュースキャスターを初めとして、米国各地のマスコミや公共機関、政治家などへの配達物から炭疽菌(*1)が検出される事件が相次ぎ、生物兵器テロへの不安が世界的に高まった。ドイツでは、10月25日にテューリンゲン州ルドルシュタット(*2)の職業紹介所あて手紙1通と、同月29日にシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州ノイミュンスター(*3)で発見された小包2つに炭疽菌付着の疑いが持たれた。検査の結果、11月2日にはどちらの疑いも晴れた。また、小包は、ある芸術家が自分の30歳の誕生日に「動く芸術(*4)」として市中にばらまいた30個の石膏入り小包の1つであることもわかった。

 *1 Milzbrand-Bakterien、Bacillus anthracis

 *2 Rudolstadt

 *3 Neumuenster

 *4 Aktionskunst

 

4.Schlaefer スリーパー 潜伏者

 米同時多発テロの首謀者と見られるモハメド・アタ(*1)は、1968年エジプトに生まれ、92年ドイツへ渡った。ハンブルク工科大学(*2)の元学生で、宗教的背景などはうかがえなかったと周囲の人間は語る。また、実行犯の1人であるマルワン・アルシェヒ(*3)、彼らの銀行口座を管理するなど密接な関係を持っていたムニル・エル・モタサデク(*4)等、ドイツ国内で市民生活を送りながらテロの機会を待つ潜伏者の存在が次第に明らかになっていった。

 *1 Mohammed Atta

 *2 Technische Universitaet Hamburg-Harburg

 *3 Marwan Al-Shehhi

 *4 Mounir El Motassadek

 

5.Stammzellenimport 幹細胞輸入

 ヒト胚性幹細胞は、あらゆる身体組織や臓器に分化できることから万能細胞(ES細胞)とも呼ばれ、再生医療への利用が期待されている。その反面、命の始まりである受精卵を破壊してつくられることへの抵抗は、ナチスの優生政策を反省するドイツで特に強い。とはいえ、経済的観点からも雇用創出の面からも、バイオテクノロジーは推進したい。事態の打開を図り、シュレーダー首相は5月2日の閣議で直属の国家倫理評議会(*1)設置を決定した。ところが、既に連邦議会には現代医療の法と倫理調査委員会(*2)があるのに、それをないがしろにするものだとの批判がわき起こった。

 ともあれ、2つの機関は審議を進め、まとめを公表。それらを受けて、連邦議会は02年1月30日に条件つきながら輸入を承認する動議を採択し、4月25日にはこれに沿って作成された法案を可決した。5月31日に連邦参議院もこの法案に同意して幹細胞法(*3)が成立、7月1日施行の運びとなった。

 *1 Nationaler Ethikrat

 *2 Enquete-Kommission 'Ethik und Recht der modernen Medizin'

 *3 Stammzellgesetz(StZG) Gesetz zur Sicherstellung des Embryonenschutzes im Zusammenhang mit Einfuhr und Verwendung menschlicher embryonaler Stammzellen(ヒト胚性幹細胞の輸入及び利用における胚保護の確保を図るための法律)の略称

 

6.Schlafmuenzen 眠っている小銭

 通貨ユーロの使用開始を翌年に控えて、5月4日、ドイツ連邦銀行は特別キャンペーン「眠っている小銭を持ってきて(*)」を始めた。家の中で眠っているマルク紙幣と硬貨を早目に銀行に預金しておけば、それが自動的にユーロに交換されるので導入直後の交換ラッシュを避けることができるし、もちろん利息もつくといった利点をテレビ、ラジオ、インターネットなどで大々的に訴えた。

 * "Her mit den Schlafmuenzen"

 

7.Homo-Ehe ホモ結婚

 2000年7月4日に社会民主党(SPD)と90年連合・緑の党が提出した生涯のパートナー法案(*)は、同性同士の結婚を認め、異性間夫婦とほぼ同等の権利を与えるもの。保守勢力の強い上院の抵抗に遭ったが、両院協議会を経て、翌年の2月16日にラウ大統領の署名をもって成立し、8月1日から施行されることになった。保守のキリスト教民主同盟/キリスト教社会同盟(CDU/CSU)が政権を握るバイエルン、ザクセン両州は、法施行を阻止するために仮処分を憲法裁判所に申請したが、7月18日棄却。同法は予定どおり施行された。さらに、両州及びテューリンゲン州が同法廃止を求めて憲法裁判所に起こした裁判は、02年7月17日、法は合憲であるとの判決が下されて終結した。

 ちなみに、「ホモ結婚」と呼びならわされているけど、もちろんレズビアンにも適用される。

 * Lebenspartnerschaftsgesetz(Gesetz ueber die Eingeragene Lebenspartnerschaftの略称)

 

8.Agrarwende 農業変革

 1985年に英国で初めて発生が確認されたBSEによる被害は、アイルランドやフランスなどにも拡大した。ドイツ初の感染牛(92年)は英国から輸入されたものだったが、2000年11月24日に感染が確認されたのはシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の牛だった。ドイツの牛は安全なので対策は必要ないと説明していたフンケ農業相(*1)は、01年1月、フィッシャー保健相(*2)とともに辞任。これを機に再編された消費者保護・食料・農業省(*3)の大臣に就任したのは、緑の党の元党首キューナスト氏(*4)。標記の言葉は、2月8日の連邦議会における演説の中の「皆さん、私は農業変革を行います。その際、私たちの基準になるのは『量ではなく質』なのです(*5)」から。

 *1 Karl-Heinz Funke

 *2 Andrea Fischer

 *3 Bundesministerium fuer Verbraucherschutz, Ernaehrung und Landwirtschaft

 *4 Renate Kuenast

 *5 "Meine Damen und Herren, ich setze auf die Agrarwende. Unser Massstab ist dabei:Klasse statt Masse."(aus:Regierungserklaerung zur neuen Verbraucherschutz- und Landwirtschaftspolitik)

 

9.Luderliga おばかさん同盟

 Luderとは、もともとは肉食獣をおびき寄せるための腐肉のこと。そこから転じて、男という獣を誘う女の死肉、つまり頭などないばか女という意味になった。何とも失礼な侮蔑語だけど、私はLuderだと誇らしげに自称する女性たちがあらわれ、意味が逆転してしまった。とはいえ、不快に思う人もまだまだいるので、不用意に使うべからず。

 

10.Riester-Rente リースター年金

 5月11日の高齢者資産法(*1)可決成立を受けて、2002年1月1日から始まった、公的年金を補完する私的年金のこと。現役時代の手取り額の70%という年金受給率を67%にまで引き下げるなど、年金制度を維持するための抑制策がとられることになり、それを補うための措置として導入された。法制定時の労働社会大臣リースター氏(*2)にちなみ、こう呼ばれている。

 第9位のLuderligaもそうだけど、頭韻を踏んでいるところが審査員のお気に召したらしいです。

 *1 Altersvermoegensgesetz

 *2 Walter Riester

 

11.simsen  SMSする

 SMSとは、携帯電話同士で160文字までの短いメッセージを送受信するショート・メッセージ・サービスのこと。標記の語は、SMSを使ってメッセージを送ることをあらわす新しい動詞。初めのうちはsmsenという形だったが、発音のしやすさからiが入った。

 ちなみに、Short Message Serviceならば男性名詞だけど、その省略形SMSは女性名詞。「サービス(der Dienst)」の意味が消えて、「メッセージ(die Nachricht)」という意味で使われるのがほとんどからだそうです。

 

12.Und das ist (auch) gut so! 「それもまたいいでしょう!」

 ベルリン銀行協会(*1)に絡むスキャンダル等により、キリスト教民主同盟(CDU)のディープゲン市長(*2)は退陣を余儀なくされた。同党とともにベルリン市の政権を担ってきた社会民主党(SPD)は、6月10日の特別党大会で、連立解消とクラウス・ヴォーヴェライト氏(*3)を次期市長として推薦することを決定。その席で、同氏は「私は同性愛者です。それもまたいいでしょう!(*4)」と告白し、スタンディングオベーションで迎えられた。そして、16日にベルリン市長に就任、10月21日の市議会選挙でSPDを第1党に導いた。

 *1 Bankgesellschaft Berlin

 *2 Eberhard Diepgen

 *3 Klaus Wowereit

 *4 "Ich bin schwul, und das ist auch gut so!"

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○ことしの新語

〈オーストリア〉

1.Nulldefizit 財政赤字ゼロ

 2000年、政府は02年までに国及び地方の新規債務をゼロにすることを目標に掲げ、緊縮財政措置を実施。その結果、01年の財政収支は対GDP比で0・2%の黒字となり、目標は1年早く達成された。しかし、対GDP比65%を超える累積債務が解消されていない状況なのに、「財政赤字ゼロ」とは美化しすぎと言われている。

 ちなみに、02年は0・2%の赤字に戻ってしまい、その後も赤字傾向が続いています。なかなか道は険しい。さらにちなみに、我が日本の財政赤字は、01年6・1%、02年7・9%でした(*)

 *Wirtschaftskammer Oesterreich(WKO)2004年5月の表から。

 

2.EU-Erweiterung EU拡大

 12月14―15日、EU首脳会議がベルギーのラーケン宮で開催され、「欧州連合の将来(*1)」と題する宣言が採択された。このラーケン宣言(*2)には、EU拡大に関する決定事項、すなわち、ポーランド、ハンガリー、マルタなどの新規加盟候補10カ国について、02年末までに用意が整えば、04年実施予定の欧州議会選挙に参加できるよう加盟交渉を行うとの決定が盛り込まれた。

 新語事務局は、加盟国がふえることにはいろいろな懸念があるのに、「EU拡大」が変語ランキングでは19位にとどまり、新語2位となったことに不満を持っている様子で、「拡大」という言葉がいいイメージを与えるためだろうと述べています。

 *1 Die Zukunft der Europaeischen Union

 *2 Erklaerung von Laeken

 

3.Fettnaepfchenpolitik 怒りを買う政治

 ことしの言葉事務局の発表資料によると、政府は運輸や厚生などの分野で国民を怒らせるようなことをやったらしい。ただし、詳細は書かれていないので不明。近隣諸国の態度が冷たいというのは、たぶん前年に行われたSanktionenが尾を引いていたのでしょう。

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○ことしの新語

〈リヒテンシュタイン〉

なし

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○ことしの新語

〈スイス〉

なし

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○ことしの変語

〈ドイツ〉

1.Gotteskrieger 神の戦士たち

 1979年、アフガニスタンの政変にソ連が軍事介入。宗教を否定する共産主義国に対し、イスラム教徒のムジャヒディン(聖戦士たち)が抵抗を開始した。西側諸国や周辺国が抵抗運動を支援する中、義勇兵を募集する組織「アフガン・アラブ」がオサマ・ビンラディンによって結成された。この組織が再編されて誕生したアルカイダが、9月11日、米同時多発テロを決行する。

 

2.Kreuzzug 十字軍

 9月16日、ブッシュ米大統領はキャンプ・デービッドで、米国において同時多発テロを行った勢力に対する軍事活動を十字軍の戦いになぞらえた。しかし、十字軍はイスラム諸国にとってみれば憎悪の的。そのシンボルマークが嫌だといって、赤十字社も赤新月社としてしまうほど嫌っているのだから、当然怒った。かつて十字軍を出したヨーロッパ諸国も、宗教の違いによる不毛な戦争をさんざんやって懲りていて、せっかく相互理解と対話による平和を模索していたのに、それがぶち壊しになるといって、やっぱり怒った。発言はすぐに撤回されたが、本人ではなく、助言者がそうしたらしい。

 

3.Topterrorist トップテロリスト

 9・11米同時多発テロの首謀者と見られるオサマ・ビン・ラディン氏などを指すが、「トップ」がついたことで、害がないような、いいもののような感じのする言葉になってしまった。

 

4.therapeutisches Klonen 治療用クローニング

 1月22日、クローン技術を人間に応用することを認める世界初の法案が英国上院で可決、成立した。これは人間の複製につながらない医療技術であることが条件となっているが、世界に衝撃を与えた。さらに、8月5日にイタリアの医師アンティノリ氏(*)らによってクローン人間産生計画が発表されたこともあり、国際的な規制の国連での検討をドイツ及びフランスが提案した。そして、12月の第56回国連総会で人クローン個体産生禁止条約作成のためのアドホック委員会が設置され、治療や研究のためのヒトクローン胚の作成と利用の是非を含めた検討が行われることになった。

 * Severino Antinori

 

5.Gewinnwarnung 利益警報

 金融界で使われる言葉だが、儲かって儲かって困っちゃうくらい儲かるから注意せよという意味ではない。株式会社は利益の見通しを発表するが、それに到達しない場合、この警報を発して株主等に注意を促すのである。”Verlustwarnung(損失警報)”と呼ぶべきだろうとあちこちから突っ込まれている。

 

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○ことしの変語

〈オーストリア〉

1.Nichtaufenthaltsverfestigte 定住未確定者

 オーストリアの在留資格には、学生や駐在員などに与えられる滞在許可(*1)と、被用者や事業者などに与えられる定住許可(*2)がある。定住といっても、収入を得る手段を欠くなどを理由とする退去を求められないためには、定住許可を受けて5年以上滞在している必要がある。そのため、滞在5年未満の者は、未確定な定住者と言える。

 政府は、国内の安全性を高めることなどを目的として、定住許可を受けようとする外国人にドイツ語の習得などを義務づける外国人同化協定(*3)を導入し、2003年からの実施を目指した。この制度は、2003年以降に定住許可を申請する者には当然適用されるが、その5年前の1998年から滞在している未確定な定住者も対象となる。

 *1 Niederlassungsbewilligung

 *2 Aufenthaltserlaubnis

 *3 Integrationsvertrag または Integrationsvereinbarung

 

2.Restneutralitaet 中立の残滓

 第2次世界大戦敗戦後、連合国による占領を経て、1955年のオーストリア国家条約(*1)をもって独立と主権を回復したオーストリアは、同年10月、憲法第9条aによって永世中立を規定している(*2)。1995年にEUに加盟したが、NATOには加わらずに協力関係(*3)にとどまり、中立政策をぎりぎりのところで堅持している。しかし、1つの欧州構築に向けて、共通防衛政策を含むEU憲法条約締結への気運が高まるにつれ、政府・与党内ではこの見直しが論じられるようになってきた。戦争への関与も軍事同盟への加盟もしないという中立政策最後の砦を「残滓」として排除しようとする姿勢に対し、50年にわたり保ち続けた国のアイデンティティーを軽視するものとして反発する人は多い。

 *1 Oesterreichscher Staatsvertrag(Staatsvertrag von Wien 1955) 5月15日調印、7月27日発効

 *2 immerwaehrende Neutralitaet

 *3 PfF(Partnerschaft fuer den Frieden)

 

3.Nulldefizit 財政赤字ゼロ

 新語1位を参照。

 

# Verbrauchende Embryonenforschung 胎児組織消費研究

 人体を形づくるあらゆる細胞に育ち得る未分化のES細胞(*)は、再生医療に必要なパーツのもとになると期待されている。しかし、その作製には胎児になり得るヒト胚を使用するため、倫理的な側面からの反発が強い。

 標記の言葉は、研究のためにおびただしい数の胎児組織が使われてなくなることを軽く見せかけるものとして、2001年特別変語に選ばれた。

 * embryonale Stammzelle

 

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○ことしの変語

〈リヒテンシュタイン〉

なし

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○ことしの変語

〈スイス〉

なし

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