■ 鬼平犯科帳 (6) ■

 「礼金二百両」


「先代のような、あまい世わたりをしていたのじゃあ、当節、おれたちの稼業はつとまらねえのさ」


 「猫じゃらしの女」


「そのうちに、もうめんどうくさくなって……落ち行く先は乞食坊主」
「三日やったらやめられぬという」
「そのとおりですなあ、まったく。こんなに、いい商売はありませんよ」


 「剣客」


「あら……」
「や、おまさちゃんじゃねえか」
「瀬音のお頭……まあ、お久しぶりでございますねえ」


 「狐火」


「おれは、お頭のためなら、いつでも死ぬ覚悟ができている。死ぬるのはおそろしいことだが……」


 「大川の隠居」


(なるほど、長谷川平蔵さまというのは、ああしたお人だったのか……盗人から見れば、まさに鬼だろうがよ。)


 「盗賊人相書」


「まったく……それにしても利八め、たいせつな御役目を忘れて……まぁ、いまさら年甲斐もなく、焼木杭に火をつけようとは……」


 「のっそり医者」


「この御役目はな、善と悪との境目にあるのだ。それでなくとはつとまらぬのだ。だからといって、田中貞四郎の二ノ舞をだれかがやったら、おれが腹を切る!!」


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