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book journal 2003
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7月
あら、いよいよ切羽詰ってきたような・・・。今月中に、ミクロ経済学を終わらせて、後半は45時間の図書館実習に行って、神戸にミクロ経済学の試験を受けに行って(試験監督を大学の先生にお願いしなきゃいけないので)、荷造りをする・・・と。あ、あは。出来る・・・よね。上旬には風邪まで引いたんだけど。でも本は読む。

★37『風の万里 黎明の空』上・下 小野不由美 (講談社X文庫ホワイトハート) 1994

がんがん読む、十二国記。これは陽子の話、続編。いやー、ますますすごいわ。非常に現代的なファンタジー。自戒も含めて、自分が一番不幸だって思いたがる人、多いものね。それに、王位についたからといって、自動的に全てが上手く行くわけではないし。「めでたしまでたし」を許さない続編。素敵。

★38『図南の翼』 小野不由美 (講談社文庫) 2001

うーん、楽しい。なかなか根性の座ってるわ、このお嬢さんは。何十年も王が立たないのにしびれをきらして、王の選定を受けるべく昇山する富豪の末娘、珠晶。12歳。いやー、麒麟がのほほんと待っている間に、昇山する人たちはこんなに苦労してたのね^^;。でも、この苦労も王を選定する一プロセスであるのかも。珠晶は昇山で苦労しなかったら、気の強いお嬢さんで終わってただろうし。初出は講談社X文庫ホワイトハート、1996年。

★39『黄昏の岸 暁の天』 小野不由美 (講談社文庫) 2001

慶国の陽子+泰麒もの。延国の麒麟の六太、好きだなぁ。騎獣に「たま」とかつけちゃうセンスがたまらなーく好きだ。らぶ。講談社X文庫ホワイトハートの初出も2001年。

★40『あやし〜怪〜』 宮部みゆき (角川書店) 2000

これ、2001年にも読んだのだけれど、あったのでつい・・・。宮部みゆきの時代物。てろんと読むのにちょうどいいのよね。

★41『オレ・ダレ』 越野民雄 高畠純・絵 (講談社) 2002

図書館司書のコースの仕上げに、公共図書館に実習に行った。なかなかに楽しい。本を扱うのは中々に肉体労働であるが。こういう生き方もあったな、とちょっとぼんやりと考える。ま、自分で選んできた道なのだから。で、お話会で読み聞かせもやらせてもらった。その時読んだ絵本。色がとてもきれいで、こどもたちの反応もよく、読んでて緊張したけど楽しかった。高畠純の絵は素敵だなぁ、やっぱり。

★42『うみをあげるよ』 山下春生 村上勉・作 (偕成社) 1999

読み聞かせでこれも読めるな、と思って選んだ本。こどものころ読んだ。村上勉の絵は、コロボックル・シリーズでおなじみだけど、この絵本もいい味出してるわ。初出は1983年。新版型、新原画で新たに出版したもの。

★43『東の海神 西の滄海』 小野不由美 (講談社X文庫ホワイトハート) 1994

本当はこれ、十二国記シリーズ3作目なのだけれど、図書館でなかなか借りれなかったので遅くなった。延国のお話。おお、六太くん、ちゃんと慈悲深いじゃないかっ。寿命の長い延国も色々苦労したのだなぁ・・・。

★44『魔性の子』 小野不由美 (新潮文庫) 1991

十二国記の外伝に当たるもの。泰麒のお話。出たのはこれが一番早い。ホラーなのでちょっとおどろおどろしい。ああ、こんなにいっぱい人が死んじゃって・・・麒麟は慈悲の生き物なのに〜。異世界が交わるとひどいことになる、というのがよく分かるが、わたしはこれを2年ほど前に最初に読もうとして、確か途中でやめてしまったのだ。世界観が作れないと、わたしにはつらいのよ。しかもホラーだし。でも、他の作品を読んだ今では楽しめた。

6月
アメリカの大学院には、prerequisiteと言って、この授業を取る前にはこっちの基礎科目を前もって履修しておかなきゃだめよ、というのが多くある。学部でもあるんだけど。例えば、社会学の「人種と民族」という授業を取るためには、「社会学入門」を先に取っておくべし、とか。で、わたしは大学院での必須科目のprerequisiteを満たすために、「ミクロ経済学入門」を取らなくてはならない。ただ、認可された大学ならどこで取っても良い。夏に渡米して、サマーコースで取ろうかとも思ったけど、1つだけ授業を取るのではビザが下りないみたいだし、インターネット・ベースの通信教育で取ることにする。6月と7月の2ヶ月で何とか終わらせなきゃ。

大学院から薦められたカリフォルニア大学バークレー校の遠隔教育プログラム、いつ始めてもいいようだし、テストも一度だけでやりやすそうなので。オンラインで申し込んで、指定の教科書を2冊買う。オンラインに講義ノートがあるので、それに合わせて教科書を読み、問題を解いてメールで先生に送信。記事を読んで、ディスカッション・ボードに書き込む・・・と。ふむむ。中間試験は、4問のレポート。

★32『夢見るピーターの七つの冒険』 イアン・マキューアン 真野泰・訳 (中央公論新社) 2001

想像にふけってしまう男の子ピーターのオムニバス短編集。おもしろい。こどもの頃って、多かれ少なかれ、こんなんだったよな、と。作者も書いているように、これは「大人のためのこどもの本」だなぁ。こどもがリアルタイムで読むよりも、大人が読んだ方が面白いだろう。最後の一話なんて特に。装丁もおしゃれだし、児童書じゃなくて大人の本の棚でいいと思う。しかし、わたしってこどもの頃から、外で遊ぶよりは家で本読んでいたいタイプだったので、ピーターみたいにいっぱいこどもの遊びをしてたわけでもなく、りんごかじって赤毛のアンごっこしていたくらいだから、ピーターのように想像力があったわけでもないんだけど(でも何となくピーターみたいだった気がしてくるのだ)。The Daydreamer by Ian McEwan, 1994. (うわ、検索してみたら、原書の装丁って、激しく大人向け、というか、シュールだわ。)

★33『ベローナ・クラブの不愉快な事件』 ドロシー・L・セイヤーズ 浅羽莢子・訳 (創元推理文庫) 1995

久しぶりのピーター卿もの。長編シリーズ4作目かな。頂いたので(ありがとうございました〜^^)、新幹線の中で読む。ああ、なんだか懐かしいわ、ピーター卿も執事のバンターさんも。The Unpleasantness at the Bellona Club by Dorothy L. Sayers, 1928.

★34『月の影 影の海』(上・下) 小野不由美 (講談社文庫) 2000

ROMしているわたしの好きな作家のサイトでも散々話題になっていたし、評判が高いので読んでみたいと思っていた十二国記。ふーむ、確かに面白い。下巻の後半まで、さっぱり世界観がつかめないので、ちょっといらいらするんだけど、わかるとひじょーに、面白い。主人公の陽子は、いわゆる「いい子」な女子高生。父親は「女の子はスカートはいてなきゃいかん、成績が良くても、女子高に行け」みたいな人なんけど、その父親の理想にも背かず、同級生全員にもいい顔をし、先生には優等生として見られ・・・ああ、身につまされるわ。この陽子が変わっていくさまがすごい。試練が半端じゃないもんな。いろいろな問題を正面から受け止める、まっすぐで骨太の日本のファンタジー。すごい。初出は講談社X文庫ホワイトハートで1992年。きれいな挿絵がついてるやつ。

★35『風の海 迷宮の岸』 小野不由美 (講談社文庫) 2000

「十二国記」シリーズ、2作目。タイトルが覚えにくいなぁ、えーと、泰国の麒麟の話。これもおもしろい(^^)。世界の設定がちょっと飛躍しすぎ(と言うか、割と過激)なところもあるなあ、と思ったけれど、ファンタジー(SFもかな)の醍醐味は、問題の焦点をはっきりさせるために自由に世界観を作り上げられるところ、と言うのが良く現れているシリーズだわ。えーと、大雑把に言うと、12の国があって、それぞれに王がいる。王は天命に従って麒麟(と言う聖なる生き物)が選ぶ。王と麒麟の寿命は、治世の長さ。この世界では生命は木に成って・・・えーと。知らない人には全然わかんないか・・・。初出は講談社X文庫ホワイトハート、1993年。

★36『へびくんのおさんぽ』 いとうひろし・作/絵 (鈴木出版) 1992

いとうひろしは好き。彼の絵本を読んでいると、ほっと落ち着く・・・。『へびくんのおさんぽ』はまずます、と言ったところ。

しかし、荻原規子もいとうひろしも、恩田陸も同じ大学の同じ学部の出身(早稲田の教育学部)なんだなぁ(荻原規子といとうひろしなんて、児童文学研究会の先輩と後輩だそうだ)。学力とか偏差値云々の前に、「人材の創出」と言う言葉がぴったりくるわ・・・。それとも、そういう人たちを引き寄せる学校のかしらん。それもすごいけど。

5月
ゴールデンウィークはごろごろ。その後は、短期バイトをして、と。

★26『自選・ナース・ステーション』1−6巻 島津郷子 (集英社) 1997−1999

実家に転がっていたマンガをてろてろと読む。主人公が、いささかまっすぐにいい人過ぎる感もあるけれど、結構面白い。

★27『A-A' SF傑作選』 萩尾望都 (小学館) 1995

同じテーマのオムニバス風短編集。図書館で借りてきた。収録作品の初出は1980年代前半。最初のクローンの話がわりと好き。萩尾望都のマンガ、いつか色々読んでみたい。今までに読んだことがあるのは、『ポーの一族』と『トーマの心臓』と『残酷な神が支配する』。この中だと『残酷な神・・・』が一番好き。萩尾望都、作風が多彩だ。この次は『イグアナの娘』を読んでみたい。

★28『魔法使いハウルと火の悪魔―ハウルの動く城1』 ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 西村醇子・訳 (徳間書店) 1997

宮崎駿の次回作の原作をてろてろと読んでみる。ダイアナ・ウィン・ジョーンズは、1934年生まれ。オックスフォード大学セントアンズ校に在学中、かの『指輪物語』のトールキンに師事したそう。52歳で書いたのがこの作品。おばあさんの心理描写(?)が素晴らしい。歳を取ると体は言うことを聴かなくなるけれど、精神的には開きなおって強くなるというか。少々のことでは動じなくなるのだ。性格もちょっと悪くなるがそこがまたいい。現実的な感じ。先月読んだアトウッドの『昏き目の暗殺者』での老女の描写も思い出した。絵本や児童文学に出てくる「おばあさん」というと、「よき理解者」タイプか、単に善良でやさしいか、魔女のようにいじわるなタイプが多いが、『ハウル』や『暗殺者』の老女はいいなあ。わたしも歳を取ったらきっとあんな風になるんだわ、と思える。あは。 Howl's Moving Castle by Diana Wynne Jones, 1986.

★29『歴史とは何か』 E・H・カー 清水幾太郎・訳 (岩波書店) 1962

評論系の本は、読んでもここに感想は書かないのだけど、これは読んでいてジョセフィン・ティの歴史ミステリ『時の娘』を思い出したので。3年ほど前に家族にもらってからほったらかしで、読まずに古本にしちゃおうかとも思ったのだけれど、読んでみてよかった^^;。イギリスの歴史家、E・H・カーによる「歴史を研究する意義とは」をテーマにした連続講演を本にしたもの。バイトの昼休みと通勤時に少しずつ読み進めた。少し読みにくいところもあるけれど、カー氏はなかなかに毒舌で楽しい。歴史にはあんまり興味がなかったのだけれど、読んでみるとおもしろいな。『時の娘』とこの本が歴史の授業の課題だったらいいなぁ、なんて思っていると、文中に「ベーコンの『真理は時間の娘』という言葉・・・」という一節が出てきてにんまりしてしまった。小説『時の娘』には、この言葉は「古いイギリスのことわざ」とあったけれど、フランシス・ベーコンの言葉だったのね。元々は、「真理は時の娘であり、権威の娘ではない」というものだったみたい。 What Is History? by E. H. Carr, 1961.

★30『魔性の馬』 ジョセフィン・ティ 堀田碧・訳 (小学館) 2003

で、タイムリーにも図書館でジョセフィン・ティの新刊を見つけたので。これはわたし好み^^。きちんとした感じのイギリスのミステリ。人物描写もしっかりしてるし、風景描写も魅力的。満足〜。しかし。トリックがはっきり書いてないので、わからない・・・(汗)。なぜ??と思って、もう一度読んでみた。・・・それでもわからない。ネット上で感想を少し読んでみたのだけれど、誰も「トリックがわからない」なんて言ってないので、読解力不足か^^;。んでも、おもしろかったからいいのだ。ふん。 Brat Farrar by Josephine Tey, 1949.

★31『マガーク少年探偵団1:こちらマガーク探偵団』 E・W・ヒルディック 蕗沢忠枝・訳 (あかね書房) 1977

こどものころよく読んだな・・・と、図書館で目に留まって借りてきた。マガーク探偵団、おもしろいのよね。ブンチャッチャ♪ The Nose Knows by Edmund Wallace Hildick, 1974.


4月
と、言うわけで実家に居候中。アメリカの大学院を始めるまでの間、ここで暮らす。高校を卒業するまで使っていた部屋に、荷物を少し広げ、机を組み立てる。仮住まい、と呼ぶには長すぎる。ここで生活を築くには短い。でも、どこにいても、きちんと暮らさないとな、とぼんやり考える。

4月は、気が抜けたのか、思い切り濫読。

★17『虹の家のアリス』 加納朋子 (文藝春秋) 2002

早期退職制度を利用して私立探偵になったおじさんとほんわかしたお嬢さんの助手のお話、『螺旋階段のアリス』の続編。『螺旋階段』を読んだ時は、なんてほのぼのしたお話なんだ^^;と、設定のリアリティの薄さが気になったけれど、今回は一種のファンタジーとして読めると言うか、なかなか面白かった。お嬢さんも色々考えているみたいだし。加納さんは、中上流階級の奥さんたちを描くのがなかなか上手いのだけれど、お育ちがいいのだろうか^^;。ふわんとしているけれどきちんと生きている女の人も魅力的に描く。巻末のインタビューも面白かった。ふわわんとした気分になりたい時には、加納朋子だな。

★18『昏き目の暗殺者』 マーガレット・アトウッド 鴻巣友季子・訳 (早川書房) 2002

アトウッドの新刊。重厚で繊細な織物のような本だ。きれいなのだけれど、よく模様を見るとグロテスクでもあるような織物。持ち上げると、ずっしりと重い。

ある女性の一代記に、工場制機械工業の黎明と不景気、政略結婚、恋、ミステリ、新聞記事、2重の作中作品のSF小説。これだけきっちりとつめこんで、よく破綻しなかったなぁ。作中作のSF小説がいかがわしくて好き。作中の新聞記事も、外側から見た一家の作られたイメージと実情のギャップがおもしろい。香水を手首につけるのって、手にキスされた時に香るように、なんだね。なるほど(知らなかったわ^^;)。The Blind Assassin by Margaret Atwood, 2000.

★19『マインド・スパイラル4 エターナル・マインド―果てしなき世界―』キャロル・マタス&ペリー・ノーデルマン 金原瑞人&代田亜香子・訳 (あかね書房) 2002

レノーラちゃんもの最新刊。うーん、最初の3分の一、これはもう読むのやめようかな、とちょっと思ったんだけど、からくり(?)が分かったら、ふーん、まあまあうまいじゃん、となった。しかし、最初の3分の一で結構損をしているかも。ファンタジーで、現実世界を外部の目から見て語るというのはいい視点だけれど、難しいな。このシリーズもそろそろ打ち止めか。Meeting of Minds by Carol Matas & Perry Nodelman, 1999.

★20『神の守り人 来訪編・帰還編』 上橋菜穂子 (偕成社) 2003
★21『精霊の守り人』 上橋菜穂子 (偕成社) 1996
★22『闇の守り人』 上橋菜穂子 (偕成社) 1999
★23『夢の守り人』 上橋菜穂子 (偕成社) 2000
★24『虚空の旅人』 上橋菜穂子 (偕成社) 2001

高校生のころから、新刊を図書館で見つけては読んできた上橋菜穂子さんの「守り人シリーズ」、この2月に最新刊の『神の守り人』が来訪編と帰還編、上下同時に出たと言うので、図書館で借りてくる。夢中になって読んでしまった。読み終わった後も、心がその世界に残り、たゆたうような、こういう感覚は久しぶり。シリーズの最初の方では、世界観がちょっとつかみにくいな、と思うところもあったのだけれど、『神の守り人』で、きっちり完成したような気がする。思わず、シリーズを全部借りて読み直してしまった。読み直すと、このシリーズは全てちゃんととつながっているのだな、と再確認できて一層好きになった。

主人公のバルサは、30代の女用心棒。1冊目の『精霊の守り人』では30才で、巻を追うごとに少しずつ年齢を重ね、最新刊では33才くらい。30代女性が主人公のファンタジーや児童文学自体、非常に珍しいんだけど、このバルサがすごーーくかっこいいのだ。「すでにこじわが見える」とか描写されてるけど、変に「美人」とかの設定よりもいい。バルサは初対面で「女のくせに用心棒?」と見くびられることはあっても、腕っぷしと人柄で、一目置かれるのだ。かっこいい〜。何しろ強い。バルサの立ち合いのシーンの迫力とスピード感がこのシリーズの魅力の一つ。

そして、バルサは強いだけじゃなくて、暴力を、戦いを求めてしまう自分の心の闇をも見つめようとしている。こんなヒロインはそういない。たとえば、宮崎駿のアニメに出てくる女性(『ナウシカ』のクシャナ妃殿下とか『もののけ姫』のエボシ御前とか)と、バルサは明らかに違う。複雑な子供時代を送ったのに、自己憐憫することを避け、きちんと自分を見つめようとしている。

バルサは作中、時々「中年」と呼ばれる。(30代前半で中年か、若いのに^^;)と思っていたのだけれど、この社会では女の子が15歳くらいで結婚することも珍しくないし、平均寿命も短いので、30代は立派に中年なのだろう。

バルサの幼なじみで恋人のタンダは2つ年下の呪術師。心優しくて料理も上手くて、「癒しの天才」とも呼ばれている。この二人は、「恋人」と呼ぶには少し淡いのだけれど(ファンにはやきもきして読んでいる人も多いかも^^)、信頼が厚く、もっとも大切に思いあっている関係。一瞬抱きしめる腕に、どれほどの想いがこめられているか。怪我をしたバルサの体が少しでも楽なようにと、抱きかかえるタンダ。シリーズの最初の方では、ちょっとぎくしゃくしていた二人も、最新刊ではこんな関係になったんだなーと、しみじみしてしまった。しかし、電話・メールなんてもちろんないし、郵便制度もない遠距離恋愛は大変だな。バルサなんてどこで危ないことに巻き込まれてるかわかんないもんね。

ちなみに、作者の上橋菜穂子さんは、文化人類学の研究者と児童文学作家の2足わらじを履いていらっしゃる方。研究者とストーリーテラーというのは、かなり違う人種(^^;)だと思うんだが、二物を与えられる人もいるのだ。しかも、彼女の作品たちは、文化人類学者でなければ書けないだろうな、と思わされるもので、本当にすごい。国民国家や「神話」の政治性を児童文学で描けるとは(@@)。

このシリーズの全編を流れる、力なき個人への暖かい眼差しのようなものが、とても好きだ。世界もきっちりと構築され、食べ物はおいしそうだし(^^)、小道具もいい。登場人物もそれぞれに魅力的。『神への守り人』は、早くも今年のマイ・ベストの最有力候補。このシリーズを、わたしは日本のファンタジーのトップレベルに入れたい。日本のファンタジーの代表作としてよくあげられるのが、日本土着の小人の世界を生み出した佐藤さとるの「コロボックル・シリーズ」、タブー化さえされている日本の神話を鮮やかにファンタジー化した荻原規子の「勾玉三部作」だと思うのだけれど、「守り人シリーズ」はアジアのファンタジー、という新しい分野を作り出したんじゃないかな。日本以外の東アジアや東南アジアで翻訳しても受けそう。この作品を、高校生の時から、ほぼリアルタイムで追ってこられたのは幸せ。続刊を首を長くして待とうっと。偕成社の新刊宣伝サイトはこちら。ファンサイトも素敵なのがいくつかある(^^)。

★25『月の森に、カミよ眠れ』 上橋菜穂子 (偕成社) 1991

で、上橋さんの他の本も読みたくなって。これは「守り人」の前に書かれたもの。これも好き^^。

そう言えば、先日新聞に厄年の話が載っていた。厄年は、そもそも体調等に気をつける年齢、という文化的意味合いがあったのに、「厄」だけが一人歩きしている。「厄落とししないと、周りに厄が飛ぶのでお祓いしなさい」と言われた女性の話に、文化人類学者が「文化のネガティブな面ばかりが強調される、『文化が衰えた状態』」とコメントしていたが、上橋さんの本を読むと、この言葉の意味がよくわかるわー。

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