限界がきました
「クラインガルテン泉ヶ岳」
の
入り口付近で
乳酸が臨界点に達し
私の足はメルトダウンした
よいちが遅れてやってきたが
まだまだ余裕の表情だ
さすがである
私のバックを勝手に取って
撮影する余裕だ
私はというと
足が全く言う事を聞かない
立てない
よいちの言葉を思い出し
後悔の念にさいなまれる
口から心臓が飛び出そうだ
唾液がスライムのように粘る
苦しい
ボトルの飲み物を少し飲むが
唾液が邪魔してのどを通らない
この時点で
かなり弱気になりました
自分がオーバーペースである事の自覚がないために
こんなはずではない
という
身の程知らずな
想いもあり
また
やっぱり俺には無理なんだ
という
弱気な想いもあり
そんな私の脇で
よいちが
余計な事連発
「そんなんでは髪は生えてこない」
「だから前の彼女にフラレル」
「これからの人生そんなんではだめだ」
「彼女にいいとこ見せたくないのか」
「愛してると言え」
「遠藤さんに顔向けできないぞ」
「鳥海登る気無いのか」
「新しいチャリ買え」
「俺のほうが(髪は)多い」
かなりウルサイ
頭にき始めた頃
「先に行ってるから回復したら登って来い」
「だめなら無理しないでここでまってろ」
そんなことを言い残して
すいすいと登っていってしまった
調子悪いんじゃなかったっけ
よいちが見えなくなって少し考えた
弱気になっていたので本気でやめようかと考えていたのだが
「これからの人生そんなんではだめだ」
よいちの言葉がリフレイン
考えた
辛かったらやめよう
走る前はそう考えていた
でもいまは
よいちの姿を追った
走り出して50メートルほどでまた足をついてしまった
呼吸は荒かったが
無理やり一回深呼吸して
またよいちの姿を追った
「速すぎるぞ」
この言葉を思い出し
ゆっくりとクランクをまわした
絶対登ってやるんだ